◆2009年5月15日再審請求に向け、署名活動が始まりました。
こちらから→「再審請求への署名活動」のページへ
カンパをお願いします。
「片岡晴彦さんを支援する会」は再審請求活動のための募金を募っています。
こちら>>カンパのお願い
第3者だからといって証言が信用できるわけではない
無実の片岡さんが収監されて早 日。 日々、高知県警の罪が重なってゆく。
Recommend
あの時、バスは止まっていた  高知「白バイ衝突死」の闇
あの時、バスは止まっていた 高知「白バイ衝突死」の闇 (JUGEMレビュー »)
山下 洋平

とうとう本が発売される(09/11/16発売予定)。白バイはどす黒い「黒バイ」だったのでしょうか。そうしたのは高知県警ではなかったのでしょうか。
Category
Links
RSSATOM 無料ブログ作成サービス JUGEM
Recent Comment
Search
Calendar
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  
<< October 2019 >>
Archives
New Entries
Recent Trackback
Profile
mobile
qrcode
Sponsored links
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

posted by: スポンサードリンク | - | | - | - |-
裁判長は子供たちのまっすぐなまなざしに答えられるか。高知白バイ事件国賠訴訟。
小学生にでもバカにされるような判決、判決理由。

高知地裁、高松高裁、最高裁のようなくだらない事にならぬよう希望します。

fnnニュース

裁判を身近に感じてもらおうと最高裁判所を見学する催し たくさんの親子連れが参加

裁判員制度も始まり、裁判を身近に感じてもらおうと、普段なかなか見る機会のない最高裁判所を見学する催しが行われた。たくさんの親子連れが、大法廷の厳粛な雰囲気などを肌で感じた。
参加した子どもたちは「子ども裁判員制度研修生」と任命され、最高裁の15人の裁判官全員が審理をする大法廷などを見学した。
スタートしたばかりの裁判員制度についても説明が行われ、「情熱」と「冷静」をイメージした裁判員制度のマークの意味や、裁判員の責任や仕事などが、わかりやすく映像で紹介された。
子どもたちは、宣誓なども経験し、特別に裁判官が着る法服を着て、順番に記念撮影をしていた。
(07/30 12:51)

posted by: enzaix | 裁判員制度 | 00:00 | comments(0) | trackbacks(0) |-
司法制度改革-裁判員制度・刑事検討会(第32回)
裁判員制度・刑事検討会(第32回)
公的弁護制度検討会(第14回)議事録

(司法制度改革推進本部事務局)


1 日時
平成16年7月6日(火)16:45〜17:05

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員) 井上正仁座長、池田修、浦功、大出良知、清原慶子、酒巻匡、四宮啓、皸羚行、土屋美明、樋口建史、本田守弘(敬称略)
(事務局) 山崎潮事務局長、大野恒太郎事務局次長、古口章事務局次長、松川忠晴事務局次長、辻裕教参事官

4 議題
「刑事訴訟手続への新たな参加制度の導入」、「刑事裁判の充実・迅速化」、「公訴提起の在り方」及び「公的弁護制度」について

5 配布資料
資料1 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律
資料2 刑事訴訟法等の一部を改正する法律

6 議事

○井上座長 今回は、第32回の裁判員制度・刑事検討会と第14回の公的弁護制度検討会の合同会議という形で開催させていただきます。
 本日も御多忙の折、御参集いただきまして、ありがとうございます。
 御承知のとおり、前回の会議以後、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案及び刑事訴訟法等の一部を改正する法律案が国会に提出され、いずれも成立しております。本日は、この間の経緯について事務局の方から御報告いただけるとのことですので、お願いします。

○辻参事官 まず、事務的な御報告をさせていただきます。本日は、裁判員制度・刑事検討会と公的弁護制度検討会の合同会議という形で会議を開催させていただいております。従来、公的弁護制度検討会は、当事務局の落合が担当参事官として会議に参加させていただいておりましたが、先日、人事異動がございまして、落合が当事務局を離れましたため、本日は、私が両検討会の担当として参加させていただきます。
 それでは、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律及び刑事訴訟法等の一部を改正する法律に関しまして、法案提出及び成立の経緯について御報告いたします。
 お手元に、成立いたしました裁判員の参加する刑事裁判に関する法律と刑事訴訟法等の一部を改正する法律の条文と新旧対照表をお配りいたしておりますので、御参照いただきたいと思います。
 前回の検討会−第13回の公的弁護制度検討会と第31回の裁判員制度・刑事検討会ということになりますが−におきまして、公的弁護制度、裁判員制度、刑事裁判の充実・迅速化のための方策及び検察審査会制度のそれぞれにつきまして骨格案をお示ししたところですが、当本部におきましては、これらの骨格案を踏まえまして、法案の作成作業を進め、本年3月2日、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案及び刑事訴訟法等の一部を改正する法律案の2法案を国会に提出いたしました。
 両法案は、国会での審議を経まして、本年4月23日、衆議院において、政府提出法案が一部修正の上で可決に至り、同年5月21日、参議院において可決・成立いたしました。2法案は、5月28日に公布されているところであります。
 2法の概要について、簡単に御説明いたします。
 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律は、裁判員制度の導入を図るものでございまして、裁判所法及び刑事訴訟法の特則等を定めるものです。具体的には、合議体の構成、対象事件、裁判員の権限及び義務、裁判員の選任及び解任、裁判員の参加する裁判の手続、裁判員の保護のための措置や罰則等についての規定を設けております。
 個々の内容につきましては、骨格案を踏まえたものでございますので、皆さんよく御承知のところと存じますから、この場では説明を省略させていただき、修正について若干付言いたします。
 細かい修正もいくつかございましたが、大きなところとしましては、守秘義務違反に対する罰則の修正がございました。守秘義務違反に対する罰則の法定刑のうち、懲役刑の上限を引き下げるとともに、裁判員や補充裁判員であった者については、懲役刑の対象となる行為を一定の場合に限定するという修正がなされたところであります。
 それから、環境整備努力義務に関する規定が、附則第3条として設けられました。国は、国民がより容易に裁判員として裁判に参加することができるよう、必要な環境整備に努めなければならないというものであります。
 さらに、見直し条項が設けられておりまして、法施行後3年を経過した時点で、施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、所要の措置を講ずるというものでございます。
 次に、刑事訴訟法等の一部を改正する法律について御説明いたします。
 この法律は、両検討会の検討テーマで申しますと、刑事裁判の充実・迅速化、公的弁護制度の整備、検察審査会制度の拡充の3つの内容に関するものであります。
 このうち、刑事裁判の充実・迅速化のための方策といたしましては、公判前整理手続の創設、証拠開示の拡充・ルールの明確化、連日的開廷の確保、裁判所の訴訟指揮の実効性の担保、即決裁判手続の創設につき、刑事訴訟法を改正するというものでございます。
 国選弁護人制度の整備につきましては、改正法施行の当初は、死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪の事件、改正法施行から3年程度を経過した後には、死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪の事件について、起訴前の国選弁護制度を導入することとし、併せて、弁護人の選任要件や選任手続についての規定を整備しております。また、国選弁護人制度の整備に伴い、少年法についても所要の規定の整備を行っているところであります。
 なお、国選弁護人の選任が迅速かつ確実に行われる態勢の確保を図るために、総合法律支援法に基づいて設立される「日本司法支援センター」におきまして、国選弁護人の選任に関する業務を行うこととなっているところであります。
 最後に、検察審査会制度の拡充については、検察審査会の議決に基づいて公訴提起がなされる制度の導入等について、検察審査会法を改正するというものでございます。
 個別の改正の内容については、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律と同様に、骨格案を踏まえたものでございますし、修正もやや細かいところに及ぶところもございますので、説明は省かせていただきたいと思います。
 以上でございます。

○井上座長 ありがとうございました。特に何か御発言がございますでしょうか。
 よろしいですか。
 ただ今御説明がありましたとおり、この2つの検討会の検討テーマについては、いずれも関連する法律が成立したということで、検討会としては一応の結果を出すことができたと考えております。この機会に、座長として一言申し上げさせていただきたいと思います。
 私どもの2つの検討会は、いずれも平成12年2月28日に第1回の会合を開いて以来、裁判員制度・刑事検討会は、昨年9月の集中審議を含めて32回の会合を行い、公的弁護制度検討会は、14回の会合のほか、3日間にわたる地方実情調査を行うなどしまして、それぞれ長い時間をかけて検討を進めてまいりました。それを踏まえて、先般、推進本部事務局が新しい制度の骨格案をまとめられた上、それをもとに、ただ今御紹介のありました法案が国会に提出され、このほど成立をみたということは、実に感無量のところがあります。
 ここに至るまでには様々な曲折があり、その折々におきまして、各委員において苦渋を味わわれたこともあったと思いますし、内容的に個々的には御不満なところもなお残っているかと存じますが、今回の法案の成立による裁判員制度の導入、公判前整理手続や証拠開示手続を含む諸制度の整備、検察審査会制度の強化、公的弁護制度の拡充というものは、改めて申すまでもなく、1948年の刑事訴訟法の全面改正による変革以来の大改革であります。ここに至って振り返ってみますと、このような刑事司法制度の歴史的変革に参画し、この検討会としても一定の寄与をすることができたことは、私どもにとって大きな喜びであり、また、誇りとするに足りることではないかと存じます。
 この間、私の不手際で議論が混乱したり、時には−「しばしば」かも知れませんが−不用意に失礼なことを申し上げたこともあり、誠に不適任の座長であったと思いますけれども、それにもかかわらず、皆様の御海容と御協力によりまして、ここまで辿り着くことができました。この点、厚く御礼申し上げたいと存じます。
 また、事務局の方々には、様々にサポートしていただき、しかも、私を始め委員の様々な我が儘に適宜適切に対応していただき、本当にありがとうございました。
 御承知のように、今回成立した各法律は、1年半後から5年後にかけて何段階かに分けて順次施行されていくことになっておりますが、この新たな制度をしっかりと根付かせ、さらに成長させていくためには、法曹三者を始め関係方面において、相互に連携を取りながら、運用上様々な工夫をし、きめ細かな手当てを行っていただけなければなりません。特に裁判員制度については、国民の皆さんの理解がまだ十分得られているとは必ずしも言えない状況のように思いますので、今後時間をかけて関係方面において、国民のより一層の理解と協力を得,責任分担をしていただけるよう努力をしていただかなければならないと存じます。私どもも、個々それぞれの立場で、これらの活動に協力していかなければならないと思いますし、協力していきたいと考えているところであります。
 本当にどうもありがとうございました。

○山崎事務局長 それでは私のほうから、御挨拶を申し上げます。
 両検討会のメンバーの皆様方には、長期間にわたり、かつ、長時間にわたり御議論をいただきまして、本当にありがとうございました。心から御礼を申し上げます。
 この両検討会は、先ほど御案内がございましたけれども、32回と14回、大変な回数にわたるわけでございますし、しばしば時間も相当延長して白熱した議論をしていただきました。これも皆様方の本当に熱心な姿勢のおかげであると感謝しております。
 この両検討会が検討の対象としたテーマは、いずれも大変重要な問題でございまして、各方面からの関心も高く、様々な意見が述べられておりまして、本部といたしましても、一定の結論を出すのは非常に難しいということが当初から予想されたわけでございます。そのような困難が当初から予想されたテーマについて御検討をお願いしたわけですから、メンバーの皆様には大変ご労苦をおかけしたことと思います。そういう中で、皆様方には、法律分野のみならず、それぞれの専門のお立場からいろいろな御意見を賜り、また、幅広い観点から極めて多くの論点につきまして詳細かつ熱心な御討議、御議論をいただいたところでございます。
 そのような御議論を踏まえまして、私ども事務局といたしましては、大変困難な作業ではございましたけれども、何とか国会に法案を提出することができました。また、国会において一部の修正を受けたことはございましたけれども、与野党の大部分の御理解を得て、各法律が制定されるに至りましたが、これも皆様方の御努力のおかげであると、改めて心から感謝を申し上げたいと思います。
 また、井上座長におかれましては、その御見識とお人柄をもちまして、個性あふれるメンバーの皆様による非常に熱心で活発な御議論を的確に整理していただき、まとめていただきました。それからまた、座長ペーパーをおまとめいただくという大変難儀な作業もお願いしたわけでございます。節目節目において事務局の作業をお助けいただきまして、その御労苦に対しまして、特に御礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。
 裁判員制度の実現のためにはまだまだ時間がかかると思いますけれども、両検討会で御議論いただいたテーマにつきましては一定の成果を挙げるに至りまして、その役割を十分に果たしていただいたということになり、あとは、法曹三者にきちんとやっていただくということになろうかと思います。我々本部といたしましてもまだまだ残された期間で必要な作業は続けなければならないものもありますけれども、基本的なものは法曹三者にボールが投げられたということになるわけです。仏は作りましたけれども、その中にどうやって魂を入れるかという作業は、これから一番大事な作業として残されているところでございます。私どもも、法曹三者の一角をなしているわけでありますので、頑張っていきたいと思います。今後ともいろいろと御支援を賜りたいと思っております。
 最後にもう一度繰り返させていただきますけれども、本当にありがとうございました。心から感謝をいたしております。

○井上座長 それでは、これで第32回の裁判員制度・刑事検討会と第14回の公的弁護制度検討会を終了させていただきます。
 

(以上)
posted by: enzaix | 裁判員制度 | 00:00 | comments(0) | trackbacks(0) |-
司法制度改革-裁判員制度・刑事検討会(第31回) 議事録
裁判員制度・刑事検討会(第31回) 議事録

(司法制度改革推進本部事務局)


1 日時
平成16年1月29日(水)14:00〜16:10

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員) 池田修、井上正仁、大出良知、酒巻匡、四宮啓、皸羚行、土屋美明、樋口建史、平良木登規男、本田守弘(敬称略)
(事務局) 山崎潮事務局長、大野恒太郎事務局次長、松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、辻裕教参事官

4 議題
「刑事訴訟手続への新たな参加制度の導入」「刑事裁判の充実・迅速化」及び「公訴提起の在り方」について

5 配布資料
資料1 裁判員制度の概要について(骨格案)
資料2 刑事裁判の充実・迅速化のための方策の概要について(骨格案)
資料3 検察審査会制度の概要について(骨格案)
資料4 裁判員制度、刑事裁判の充実・迅速化及び検察審査会制度改正に関する意見募集の結果概要

6 議事

○井上座長 それでは、所定の時刻ですので、第31回「裁判員制度・刑事検討会」を開会させていただきます。
 本日も御多忙の折、御参集いただきましてありがとうございます。
 本日は、まず、事務局から、この検討会のテーマについての意見募集の結果についての報告があるということですので、お願いします。

○辻参事官 先日、当事務局において行いました意見募集の取りまとめ結果について御報告いたします。お手元に配布いたしました資料4がその取りまとめの資料でございます。今回の意見募集は、昨年秋に井上座長から、各検討事項についての考えられる制度の概要の一例をお示しいただいたことを機会として、同年11月18日から12月17日までの間、司法制度改革推進本部のホームページ、新聞、法律雑誌等を通じて実施いたしました。
 意見募集といたしましては、それぞれ3度目ということになります。結果といたしまして、郵便、電子メールを合わせて合計916件の御意見をいただきました。お手元の資料は、お寄せいただいた御意見を個人、団体の別などに従い、3部構成に整理したものであります。
 第1部が、個人から寄せられた御意見、第2部が団体からの御意見、第3部が団体を通じるなどしていただいた御意見となっております。団体名などについては最初の目次に記載してございます。
 意見内容を引用するに当たりましては、当検討会の検討事項に関連する部分のみを引用しておりますとともに、誤字と思われるものは修正をしたりしております。
 また、意見内容の整理に当たりましては、内容が同一であるものは、同文何通という形でお示ししております。
 意見の内容についてごく簡単に御紹介させていただきますと、多くの御意見は、裁判員制度に関するものでございまして、裁判員制度に賛意、期待を示す意見といたしまして、2ページ以下に記載しておりますとおり、「国民も裁判に対して理解ができ、身近で行われているという意識が高まる」、「一般の人の声、考え、思いを取り入れた裁判員制度が早く確立できることを願っています」などの御意見が寄せられております。
 次に、裁判員制度に反対し、あるいは懸念を示す意見といたしまして、6ページ以下に記載しておりますとおり、「今まで法律に携ることなく生活してきた一般の人が急に参加するには無理があると思う」、「自由主義の砦の司法権に民主主義はなじまない。訓練を受けた専門家のみが裁判にかかわるべき」などの御意見が寄せられているところです。
 また、裁判員の員数を多数とすることを求める意見として、29ページ以下に記載しておりますとおり、「裁判に国民の社会常識を反映させるためには、裁判員の人数をできるだけ多くした方がいいと思います」、「裁判員が主体的かつ自由な立場から発言し、裁判に参加するためには、裁判員が十分に多数であることが必要である」などの御意見が寄せられています。
 更に、裁判員の選任方法に関する意見として、59ページ以下に記載のとおり、「個人の人生が左右される大切な事柄に、一般国民から無作為にリストアップされた方がかかわってもよいのでしょうか」、「政府が辞退してもよいと決める理由のあるなしにかかわらず、どんな人にも個人の理由で拒否権を与えるべき」などの御意見が寄せられております。
 このほか、多数の御意見をいただいておりますが、時間の関係もございますので、詳細につきましては、資料を御覧いただければと存じます。
 以上、簡単ではございますが、御報告とさせていたたきます。意見募集のとりまとめ結果につきましては、司法制度改革推進本部のホームページにも掲載させていただく予定です。
 以上です。

○井上座長 ありがとうございました。
 続きまして、お手元に資料として配布されておりますように、裁判員制度、刑事裁判の充実・迅速化及び検察審査会制度という我々の扱っている各テーマについて、事務局の骨格案が作成されましたので、事務局の方から、それについての説明を受けた上で、御意見を伺うということにしたいと思います。
 それでは、説明をお願いします。

○辻参事官 お手元に、「骨格案」と書きました資料1ないし3をお配りしておりますとともに、昨年秋に井上座長に作成していただいた、考えられる制度の概要についてというペーパーとの異同が分かりやすいように赤の見え消しで書いた資料を同時にお配りしておりますので、御覧いただきながら、お聞きいただければと思います。例によりまして、若干だけ長くなるかもしれません。
 それでは、お手元にお配りしております「裁判員制度の概要について」、「刑事裁判の充実・迅速化のための方策の概要について」及び「検察審査会制度改正の概要について」のそれぞれ三つの骨格案の内容を御説明いたします。
 最初にペーパーの性格につきまして御説明をいたしたいと思います。それぞれ表題に「骨格案」という記載がございますとおり、これらのペーパーは、この検討会の三つの検討テーマについて、検討会での御議論を始めとする各方面での御意見を踏まえまして、立案当局である事務局の立場から、裁判員制度を始めとする各制度の概要、言ってみれば骨格を示す案ということで作成したものでございます。
 事務局といたしましては、本日お示しした骨格案の内容に沿った形で各制度に関する法案を作成する作業を進めたいと考えております。
 そのように、あくまで制度の骨格を示すためのものでありますことから、制度の概要を御理解いただきやすいようにすることを優先しております。したがいまして、制度の細部については省略をしている部分や、表現等において必ずしも厳密ではないという部分もございます。今も申しましたように、今後、基本的には本日の骨格案の内容を踏まえた上で、細部の肉づけをしつつ、法制的、技術的な観点からの検討をも加えまして、法案を作成してまいりたいと考えております。
 以上を前置きといたしまして、各骨格案の内容についての御説明に入りたいと思います。いずれの骨格案も構成は基本的に座長にお作りいただいたペーパーの構成に従っております。
 そこで、以下におきましては、主として座長のお作りになったペーパーと内容が異なっている点を中心として説明させていただくということにしたいと思います。
 最初に、裁判員制度の骨格案についてであります。
 これは大分前にたたき台をお示しした歳に申し述べたところでありますが、この骨格案におきましても、「裁判官」という表現が随所に出てまいりますが、これはたたき台の場合と同様でありまして、実際には裁判所あるいは単独の裁判官、あるいは裁判長といろいろな場合があり得るわけですが、それらの区別は、あえてしておりませんで、用語としてはすべて「裁判官」と統一して表現しておりますので、御留意いいただければと存じます。
 まず、裁判員制度の骨格案の「1 基本構造」の部分の「(1)合議体の構成」の項目であります。最初に、アの「裁判官の員数」とイの「裁判員の員数」でありますが、裁判官の員数は3人、裁判員の員数は6人としております。この点は非常に活発な議論をいただいてきた点でありますが、座長のペーパーでも説明がございましたとおり、当検討会におきましては、裁判官3人に対し同数程度、あるいは3ないし5人という御意見が相対的に多数であったところでございまして、座長のペーパーでは、「裁判員は4人とする」としつつ、「5人ないし6人とすることも考えられる」というふうにされていたところでございます。
 事務局といたしましては、これまでの御議論を踏まえまして、評議の実効性の確保や、一人一人個別の裁判員が責任感と集中力を持って裁判に主体的、実質的に関与することができるようにするという観点を無視するべきではなく、そういう観点からいたしますと、合議体の規模にはおのずから限界があるというふうに考えました。ただ、そのような要請を満たすことができる範囲としつつ、同時に、裁判に国民の感覚がより反映されるようにするため、裁判員の数をある程度のものとすることが適当ではないかと考えたところであります。そのような観点から、結論といたしまして、裁判官3人と裁判員6人とするのが妥当ではないかと考えた次第であります。
 合議体の構成につきましては、更にウのところに、「第1回公判期日前の準備手続を主宰した裁判官は、準備手続の結果、被告人が公訴事実を認めている場合において、検察官、被告人及び弁護人に異議がなく、かつ、事案の性質等を勘案して相当と認めるときは、裁判官1人及び裁判員4人の合議体による審判とすることができるものとする」という項目を設けております。裁判員制度の対象となるのは重大な事件ということでありますけれども、そういう事件でありましても、今後は、第1回公判期日前の準備手続の導入により、争点の有無が相当程度公判開始前に明らかになることが期待されているところであります。そういう準備手続の結果、事件によっては事実関係も明白であり、法律解釈や訴訟手続上の問題も公判に至っても生じないであろうということが予想できる事案もあろうかと思われるところであります。そうした場合、そのような事案につきましては、この骨格案の考えによる裁判官3人に裁判員6人という、ある意味相当に規模の大きな合議体での審理が常に必要不可欠とまでは言えないのではないか、すなわち、通常の場合よりも多少少ない人数の構成で審理することとしても差し支えない場合もあるのではないかと考えた次第であります。そこで、そのような場合に限りまして、裁判官1人、裁判員4人の合議体で審理することを可能とする制度を設けてはどうかと考えたところです。裁判官1人、裁判員4人の合議体で審理を行うための要件は、概要は骨格案に記載したとおりでありますが、「事案の性質等を勘案して相当と認めるとき」という部分につきましては、例えば、起訴状に記載しております公訴事実、それ自体は争っていないというものの、動機その他重要な事情について争いがある事案、あるいは特に重大な事案については、やはりここでいう少人数の合議体で審理するのは適当な事件ではないということになるのではないかと考えております。なお、いったん裁判官1人、裁判員4人の合議体で審理を始めた場合でありましても、その後に、公判廷で被告人が事実を争うようになったというような場合には、裁判官3人、裁判員6人の通常の合議体で審理することとするという制度にすることを検討しているところであります。
 次は(2)の裁判員、補充裁判員の権限の項目です。この中の2ページのウの「職権行使の独立」と題した項目ですが、ここの部分は、憲法第76条第3項の表現と同様に、「独立してその職権を行い、憲法及び法律にのみ拘束される」となっていたところでありますが、後半部分の「憲法及び法律にのみ拘束される」という部分は、むしろ裁判員の義務というべきものではないかと考えられますことから、少し先になりますが、9ページの「裁判員及び補充裁判員の義務」のところのウに、「法律に従って職務を行う」義務という形で記載したところであります。具体的には、ウに赤字で書いてありますように、「法令に従い」という文字を加えたということでありますが、そういうことでございますので、内容を変更したという趣旨ではありません。
 次の相違点は「(4)対象事件」の項目の中の3ページでありますが、ウの「対象事件からの除外」という部分であります。この点は、従来からいろいろ御議論いただいたところでありますが、(1)に該当する事件、原則的な対象事件であっても、裁判員、その親族等に対する加害行為がなされるおそれがあるような事件については、例外的に裁判官の合議体で取り扱うことができることとする制度を設けてはどうかと考えました。
 ただ、具体的な要件をどのようにするかという点につきましては、ここに、一例として、従前のたたき台や、あるいは座長のペーパーに書かれていたものとは若干違う要件を考えて記載してみたわけでありますが、なお、更に検討をいたしたいと考えておりますので、具体的な要件については、更に検討する旨を付記してあるところであります。
 次に2番目の項目「裁判員及び補充裁判員の選任」についてでありますが、「(1)裁判員の要件」のところでは、裁判員の要件は、衆議院議員の選挙権を有する者、すなわち年齢20歳以上の者といたしました。より幅広い層から裁判員が選任されるようにする方が適当ではないかと考えたところであります。
 次は「(3)就職禁止事由」のアの「職業上の就職禁止事由」です。ここは(ア)から(ツ)まで職業を列挙しております。この点は、たたき台や座長のペーパーと変わっておりませんけれども、柱書きに「次に掲げる者は、裁判員となることができないものとすることが考えられるが、具体的な事由について更に検討するものとする」と記載いたしました。
 列挙されている職業については、就職禁止事由とすべきであるというふうに基本的に考えられるところでありますが、更に法制的な観点も加えた検討も必要であると考えられますところから、現時点ではこのようなことにいたしております。
 次は5ページ「(4)除斥事由」のケの項目です。検察審査会の関係で、検察審査員等であったことを除斥事由とするというものでありますが、ここに審査補助員というものを加えております。耳慣れない名称でございますが、これは、検察審査会のところで御検討いただいたいわゆるリーガルアドバイザーのことであります。審査補助員という名称もあくまで仮称でありますが、英語の仮称よりは日本語の仮称にとりあえずしてみたということであります。
 次のコですが、たたき台では前審の審判に関与したものについても、除斥事由としておりましたが、この骨格案では、裁判員は第一審で審理に関与するということにいたしておりますので、前審の審判に関与するということはないということになったため、前審の審判という部分は削除するのが適当ではないかと考えました。
 次に5ページから6ページ、「辞退事由」のオの括弧内の記載についてですが、辞退事由のうち、もともとはキの事由により辞退した者を除くとしていたわけでありますが、辞退した者すべてについて、オの辞退事由から外すことにいたしました。辞退事由によって区別する理由はないのではないかと考えたものです。
 次は同じ「辞退事由」のキでありますが、この部分は辞退できる場合をより分かりやすくするという趣旨で、典型的に辞退が認められるのではないかと思われるような事由を3点例示として記載してみました。具体的には「重い疾病又は傷害により、裁判所に出頭することが困難であること」、「介護又は養育が行われなければ日常生活に支障がある同居の親族の介護又は養育を行う必要があること」、「裁判員として職務を行うことによりその従事する事業に著しい損害が生ずるおそれがあること」の3点であります。これは従来からやむを得ない事由に当たるということで議論があったところだと思いますが、それを例示として記載することで、より分かりやすくしてみたというところでございます。
 次は(8)の「裁判員候補者の召喚」という部分です。7ページのイの「検察官及び弁護人に対する事前の情報開示」の(ア)の項目ですが、召喚した裁判員候補者の名簿を検察官及び弁護人に送付する時期につきまして、たたき台等におきましては、「○日前」となっていたのを、「2日前」と数字を入れてみました。当事者が忌避等についての判断材料を得る必要性と、裁判員候補者のプライバシーの保護、生活の平穏の保持の確保の調和を図るという観点から、当事者が手持ちの資料等との照合等をするのに、必要十分な時間はどれくらいかという観点から検討しまして、2日前までに名簿を送付するということにした次第であります。
 同じく(ウ)では、送付を受けた裁判員候補者の名簿の記載内容や質問票に対する回答内容を漏らしてはならない主体、すなわち守秘義務を負う主体として、検察官、弁護人のほか、被告人を挙げることといたしました。忌避理由等の有無を確認するため、弁護人が被告人に対して裁判員候補者の氏名等を示すことが想定されるところですが、そうである以上、被告人についても同様の義務を課すべきではないかと考えたものです。この点は、後の個人情報の保護のところで、裁判員候補者の氏名についても、原則として公開しないという形にしたこととの関係もございます。
 同じページの「(9)質問手続」の(イ)の部分ですが、ここでは裁判員候補者に対する質問を求めることができる者として、検察官と弁護人のほか、被告人を挙げました。必要があるときには、被告人も質問手続に同席が認められることから、忌避理由等の有無を判断するために、必要と考える質問を認めるべきではないかと考えました。また、そのようにしたとしても、実際に質問をするのは裁判官でありますので、弊害ということも余りないのではないかと考えたところであります。
 (ウ)と(エ)ですが、ここは審理予定期間という表現を追加しております。欠格事由等に当たるかどうかの判断は、質問手続を行っている時点だけではなくて、裁判員としての職務に従事する予定の期間、つまり審理が予定されている期間を先に見通して判断するべきではないかと考えまして、そのことを明確にするという趣旨で記載したものです。そのほか若干の表現の整理のための修正を加えております。
 (カ)の部分は、いわゆる理由を示さない忌避の人数の問題でありまして、裁判員の人数を6人、場合によって4人としたことを踏まえまして、理由を示さない忌避ができる人数をそれぞれ4人、あるいは3人としております。
 次は「3 裁判員等の義務及び解任」の項目です。
 「(2)裁判員及び補充裁判員の義務」の部分ですが、ウにつきましては、先ほど御説明したとおりであります。
 「(3)裁判員及び補充裁判員の解任」の項目ですが、10ページのオですが、(ア)の「選任後に生じた2(5)キの事由」、やむを得ない事由ということで、いわゆる個別に判断するべき事情の部分ですが、その2(5)キの事由については、選任後に生じた事由に限り、途中での解任を求める事由にできるということにしたものであります。辞退事由が選任前から存在していて、そのことを知っていたにもかかわらず、選任前には辞退を申し出ずに、裁判員を務めてもよいという意思であった者について、途中での辞退申出を認める必要はないと思われますし、既に進行中の審理に与える影響も大きいと考えられることから、このような限定をしてはどうかと考えたものであります。
 「4 公判手続等」ですが、11ページの「(5)宣誓等」のところであります。
 この部分は、たたき台の段階から、裁判員等に対し、裁判官が裁判員の心得を教示するという表現となっておりましたが、表現について不適当ではないかという御指摘がございましたこともあり、「裁判官が裁判員及び補充裁判員の権限、義務、その他必要な事項を説明」すると、かみくだいた表現としたものであります。
 その次の「(6)新たな裁判員が加わる場合の措置」の部分ですが、最後の1行のところについて、「負担の少ない方法によるものとし、必要な措置を講ずるものとする」という記載にいたしました。公判手続の更新の手続は裁判員に適した方法によるべきものであることは、御議論の結果、大方の御意見の一致するところであり、そのために必要な措置を今後講ずるということでございます。
 同じページ(7)の「証拠調べの手続等」の部分ですが、「イ 証拠調べ等」の部分では、たたき台では、議論のための素材を提供するという性質も踏まえまして、議論の手掛かりとする観点から、運用上の様々な工夫も含めて挙げていたところでありますが、骨格案では、法令の整備を行う必要があると考えたものに限って記載することといたしました。
 2点ございますが、内容はいずれも従前のものと同じであります。骨格案で掲げられていない論点につきましても、もちろん、運用上の工夫が必要で、運用上の工夫として実現することは必要でありましょうし、あるいは、最高裁判所規則に訓示規定を設けるなどの対応も考えられると考えております。
 次は13ページの下の方から始まる「8 裁判員の保護及び出頭確保等に関する措置」の「(1)裁判員等の個人情報の保護」という項目であります。
 ここでは、まずアといたしまして、何人も、裁判員等の氏名、住所その他のこれらの者を特定するに足る事実を公にしてはならないという訓示規定を設けることといたしました。さらに、この義務に関しましては、裁判終了後に裁判員等であった者が同意している場合にまで、その個人情報を公にすることを規制する必要性はないと思われましたので、ただし書きにおいて、その旨を記載しております。
 また、アの一般的な義務を受ける形で、イとして確定記録の公開に関する項目を設けております。ここではアを受けまして、氏名を含め、裁判員等の個人が特定されるおそれのある情報が記載された書類は、公開してはならないとしております。
 なお、たたき台では裁判の公正を妨げる行為の禁止として、何人も裁判の公正を妨げるおそれのある行為はしてはならないという義務と、報道機関が事件に関する報道を行うに当たっての配慮義務に関する項目の記載がございました。議論の素材を提供するという観点で、そのような項目についても記載をし、御議論をいただいたところでありますが、御議論を踏まえまして、この点に関する法律上の措置は行わないということにした次第であります。
 裁判員制度につきましては、以上であります。
 続きまして「刑事裁判の充実・迅速化のための方策の概要について(骨格案)」につきまして、同様に、座長のペーパーの内容との相違点を御説明したいと思います。
 2ページの「準備手続の出席者」のイの部分で「関係人出頭の上での」という記載を加えておりますが、これは、表現上の紛れをなくすためだけのものであります。
 次に7ページですが、「(2)準備手続終了後の主張」というところでございます。座長のペーパーでは、被告人には、いわゆる主張制限の制度は設けないものとする一方、検察官及び弁護人には主張制限を設けるという案が提示されておりました。準備手続における争点整理の実効性を担保する観点からは、そのような制度とすることにも十分な理由があると考えられるところでありますが、この検討会での御議論におきまして、被告人が公判期日において新たな供述をした場合に、弁護人がその供述にのっとって法的観点を踏まえた主張を組み立てて提示することができなくなり、代理人である弁護人の立場としていかがなものであろうかというような御指摘もあったところでございまして、骨格案では、そのような主張制限は設けないものとすることといたしました。
 次に第3の「訴訟指揮の実効性確保」のところであります。8ページの、「2 訴訟指揮権に基づく命令の不遵守に対する制裁等」の項目でありますが、そのうちの「(2)裁判所による処置請求」の部分です。そのイのところですが、「速やかに適当と認める措置を採り」という部分が、たたき台から記載がございましたが、そこを外しております。もともとは、「アの請求を受けた者は、速やかに適当と認める処置を採り、その取った処置を裁判所に通知しなければならないものとする」とあったところを、「速やかに適当と認める処置を採り」を外したということでございます。この部分がなくても、採った処置を通知する義務がある以上、適当と認められる処置を採らなければならないことは、当然と考えられるところであり、刑事訴訟規則303条の規定ぶりとの整合性と言いますか、並びも考えまして、このようにしたところであります。
 第4のところは、表現上の修正にとどまっております。
 第5は「即決裁判手続」でありますが、9ページの「1 即決裁判手続の申立て」の項目のうちの(2)で、検察官が被疑者に対し、即決裁判手続の申立てに同意するどうかを確かめる際に、所要の権利告知をすべきであるとしたものでございます。被疑者の権利保護をより手厚くする趣旨であります。
 次は「2 公的弁護人の選任」の項目で、9ページから10ページにかけてのところですが、公的弁護人の選任につきましては、たたき台の段階から(2)として、「(1)の場合において検察官の意見を聞いた上で、相当と認められるときに、公的弁護人が選任されるものとする」としておりました。その趣旨は、弁護人選任に当たって、検察官に即決裁判手続による意思があるのかどうかを確認するというものでありました。
 ここでの弁護人は、即決裁判手続に同意するかどうかについて助言をするためのものという趣旨でありますので、検察官側にその手続を利用する意思があるのかどうかを確認するべきではないかと考えたものです。ただ、この検討会でも御指摘があったところでございますが、この(2)の記載が、弁護人選任の当否につき、検察官が意見を述べることができるという趣旨であるかのような誤解を招くおそれがあったところであります。そこで、誤解を招くことがないよう、 (2)は削除し、代わりに(1)に、ここの見え消しで書いてあるとおり、「検察官から即決裁判手続によることについて、同意をするかどうかを確かめられ」という部分を加えることによって、同様の趣旨を実現しようとしたものでございます。
 以上が刑事裁判の充実・迅速化でございます。
 最後に検察審査会制度改正の骨格案でございます。
 1ページの下の方の「いわゆる法的拘束力のある議決後の訴追及び公訴維持の在り方」の部分であります。座長のペーパーでは、法的拘束力のある起訴相当の議決書謄本を事件の管轄権を有する地方裁判所又は管轄権を有する裁判所の所在地を管轄する地方裁判所に送付し、その裁判所が指定弁護士を指定するものとされていたところでございます。検察審査会の所在地を管轄する地方裁判所に事件の管轄権があるのが通常であると考えられますものの、事件によっては検察審査会の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域外の裁判所にしか事件の管轄権がないということもあり得ることから、いずれの場合もカバーできるように事件の管轄権を有する地方裁判所に送付するとされたものと理解しております。ただ、事件によりましては、検察審査会にとって、犯罪地が不明確であるとか、被疑者の住居がよく分からないといった事情によりまして、事件の管轄権を有する裁判所が判然としない場合もあり得るのではないかと思われます。そこで、そのような場合にも対応できるよう、骨格案では、原則として検察審査会所在地を管轄する地方裁判所に議決書を送付することができるとするとともに、その地裁に管轄権がないときには、事件の管轄権のある地裁に議決書謄本を送付することができるとしたものであります。
 次は「2 検察審査会の組織、権限、手続等の在り方」の部分でありますが、ここは先ほど申し上げたように、リーガルアドバイザーという英語の仮称を、仮称ではございますが、日本語にしたものでございます。
 「(2)検察審査員の職務の執行の停止」という項目でございますが、ここは現行の検察審査会法第17条で禁錮以上の刑に当たる罪で起訴されたことが、職務執行の停止事由とされているところでありますが、それに加えまして、逮捕又は勾留されていることを加えたものでございます。自らが被疑者や被告人の立場で刑事手続にかかわることになった場合に、この者が他の事件とはいえ、不起訴処分の当否の判断に関与することは適当ではないのではないかと考えたもので、裁判員制度にも同様の事由を掲げているところでございます。
 なお、たたき台では検察審査員の義務・解任の在り方を裁判員制度における検討を踏まえて、検討するものとしていたところでございますが、仮に検察審査会制度において解任制度を設けるといたしますと、検察審査会自身がその議決によってこれを解任するという制度にならざるを得ないと考えられるわけですが、そういたしますと、検察審査会の中での問題ということになってしまって、なかなか適当ではないんではないかと考えた次第で、解任の制度は設けないことにいたしました。
 次は、「(3)罰則」でございます。
 アは、検察審査員、補充員、審査補助員が、職務上知り得た秘密をもらした場合の罰則を整備するというものでございます。現行の検察審査会法自身に規定のある秘密漏洩罪は、会議の模様、または各委員の意見、もしくはその多少の数をもらすことを禁止しているところであります。ただ、検察審査会で取り扱う情報といいますものは、不起訴記録に記載されている情報、すなわち、原則として非公開であるべき情報でありまして、そこには関係者の個人情報など、プライバシーに関する情報がかなり多数記載されているのが通常であります。それが必ずしも会議の模様と言えるのかどうかという点に疑問もなくもないところでありまして、一方、そのような職務上知り得た秘密を保護する必要性は高いと考えられますことから、罰則を整備するのが適当であろうと考えたところであります。
 イは、今回の制度改正によりまして、実質的に検察審査会の判断によって公訴提起が行われるということになりますことから、その検察審査会の構成員等の保護の必要性が高くなるのではないかと考えまして、検察審査会や補充員等に対する威迫行為に対する罰則を新設してはどうかと考えたものであります。
 法定刑につきましては、裁判員制度とのバランス等も考慮しまして、更に検討したいと考えております。
 「(4)検察審査員の資格等」というところでございますが、現行の検察審査会法の就職禁止事由等につきましては、既に存在しない職種を掲げているようなものもございますことから、現在の社会情勢に適合するように、見直してはどうかと考えております。
 多少長くなりましたが、以上でございます。

○井上座長 どうもありがとうございました。骨格案の内容についての御質問は、それぞれのテーマについて御意見を伺う際に、併せてお受けするということにさせていただきたいと思います。
 それでは、御意見を伺うということにしたいと思いますが、一応、今、御説明があったような、裁判員制度、刑事裁判の充実・迅速化、検察審査会制度という順番で、各テーマごとに御意見を伺いたいと思います。
 ただ、申すまでもないことですが、これらのテーマにつきましては、この検討会で2巡り半というか、3巡りくらい、繰り返し議論を重ねてきたところでありますので、時間の制限もあるということを考えますと、骨格案の各項目ごとに御意見を伺うのではなく、三つのの各テーマごとに一括して御意見をお伺いしたいと思います。それと、これまで御意見を伺ってきたことを、またここでもう一度伺うのも何かと思いますので、できるだけ全体について簡潔に御意見を出していただければと思います。そういうことでよろしいでしょうか。
 それでは、まず、裁判員制度についての骨格案について御意見を伺いたいと思います。

○四宮委員 まず初めに、ここに至るまで、座長、そして事務局の皆さんが、この検討会の議論や、各方面の意見を参考にして、今回の骨格案をまとめてくださったということについて敬意を表したいと思います。
 これから意見を述べさせていただくように、個々のテーマについては、私がこれまで述べてきたものと必ずしも同じでないものもあるわけですけれども、今回のこの骨格案を大枠にした立法が行われて、これは清原委員の御意見にも書いてありますけれども、推進計画にしたがって、今国会で成立させて、早く日本の社会に定着するということを、私、個人としては希望しております。その上で裁判員制度の概要について、意見を申し上げます。
 まず2ページの「評決」です。私は、従来、特別多数決制を、1人ですが、述べてまいりました。今回、こういう形で決まりしたが、特に国民の間からは、死刑が想定される事件などについての不安等も聞こえております。私は、とりわけ死刑判決については、なお慎重に特別多数決も考慮されるべきではないかと思います。
 もう一つの希望は、これは座長もおっしゃっておられたように、あくまでも評議は全員一致を目指すということですので、これがどこかに、例えば規則の中などにそういったものが盛り込めないだろうかということを是非御検討をいただきたいと思います。
 それから、6ページの「辞退事由」でございます。今回、こういう形で、国民にどういう場合には辞退できるかということが示されたことは大変有益だと思います。しかし、特に2番目の介護や養育が必要な場合で、それでも何とか義務を果たしたいという人が出てきたときにどうするのだろうかということです。支障があってもやりたいという国民に、是非配慮してほしいということが希望でございます。
 それから、12ページの「証拠調べ等」のところであります。先ほど、参事官から、運用上、あるいは最高裁規則での対応ということが考えられているというお話がありました。内容によってはそのとおりだと思います。ただ、私が2点だけここで申し上げたいのは、一つは、二つ目の○の量刑にかかわる証拠調べと、公訴事実の存否に関する証拠調べというものの区別であります。これは特に争いのある事件で、専門家でない国民が混乱しないで証拠調べを聴くことができるためには、この区別は私は是非必要なことだと思います。これとは直接関係しませんけれども、証拠調べの順序については、例えば、今でも自白調書は後から調べるようにと、刑事訴訟法に規定があるわけで、そういった法律、あるいは規則、私は法律でもいいのではないと思っておりますが、ここは是非区別をしてほしいと思います。
 それから、一番下の新しい(ア)の前の「供述調書の信用性等」の点ですけれども、ここは、立証方法については、今後実施段階までの間に検討することで大方の意見が一致をしていたように思いますので、是非その検討をしてほしいと思いますし、もし、この検討会で何らかのそういったメッセージが出せたら大変ありがたいと思います。
 それから、13ページの秘密漏洩罪の点です。
 私は、従前、国民が参加しやすい、あるいはなるべくしり込みしないためには、この要件を絞ったり、刑罰については、とりわけ懲役刑を外すべきだと言ってまいりました。これについては、同じ意見をここでも維持したいと思っております。特に、参加の意識を促すという点では、是非もう一度法案作成段階では考え直してほしいと思っています。
 特に懲役刑の点では、検察審査会の検察審査員についての罰則の整備ということが先ほどありました。併せて言ってしまいますけれども、検察審査員は先ほど参事官の話にもありましたように、不起訴記録を見ているわけです。それでも現在までのところ、とり立てて新しい罰則を必要とするような事態は生じていないと承知をしております。むしろ、参加してもらえる国民の良識を信頼をして、検察審査会の現在の罰則の方に合わせたらどうかと思っております。
 以上でございます。

○井上座長 ありがとうございました。それでは、酒巻委員。

○酒巻委員 裁判員の部分について、まとめて感想を述べ、若干の質問がありますので、できましたら御回答をお願いします。
 骨格案全体につきましては、おおむね検討会での30回にわたる、ち密な議論を踏まえたところは、世界に誇れる洗練された制度設計であると考えております。ただ、裁判体の構成にかかわる部分につきましては、この検討会では想定せず従って議論をしていないところがございます。私は刑事司法制度を専門に勉強しておりますけれども、比較法的には類を見ない非常に独自な制度と拝見し、少しよく分からないところがありますので、立案の趣旨を教えていただきたいと思っています。
 私は、刑事司法制度の研究者として、今後、この裁判員制度ができ上がって、適切公正に運用されることを望んでおり、また裁判員制度を中心にした我が国の刑事司法改革プログラムについて、諸外国にも正確に紹介したいと考えております。その参考のためにもお教え願いたい点があります。
 たまたまなんですが、昨日、私のアメリカ人の親しい友人で弁護士である人から電子メールが来ました。この人は、かねがねアメリカの刑事司法はかなりひどいが日本のは立派であるという意見の方で、アメリカ人にしては珍しい自己反省的な人なんですけれども、この人が、日本の"lay person's participation in the judicial panel"、要するに裁判員制度のことですが、これはどうなったかという質問がありました。それで返事を書こうといたしまして、全体としては、大変洗練された制度であるけれども、パネルの構成については、おそらくあなたが聞いたら"unreasonable"で"stupid"と言うかもしれない、と書こうとしたのですが、いささか表現が穏当ではないので、"strange and mysterious"というふうに私は書いたのです。
 これが私の感想で、非常に独特で、制度設計として奇想天外というほかはないと感じました。私は刑事司法の専門研究者でありながら、とてもここまで考えが及びませんで、不明を恥じるばかりであります。小さな合議体のところがよく分からないところでありまして、本当にちょっとしたことですけれども、まず、小さな合議体が裁判官1と裁判員4になっているのはどうしてですか。推測するに、これは単純に、大きな合議体の6と3からそれぞれ2を引いたらそうなるんですが、そういうことでよろしいですかというのが一つです。
 それから、先ほど、小さい合議体ではやらない、原則として大きな合議体でやるのはどういう事件かというお話は御説明にあったんですが、小さい合議体でやる場合というのはどういう事件を想定しているのか。裁判員対象事件は、被告人が死刑・無期刑になる可能性があったり、被害者が死んでいるような重い事件であるんだけれども、その中で小さい合議体でやるというのは、いったいどういう事件が考えられるのか。
 もう一点は、大きな合議体については、被告人や検察官がどう言おうが、対象要件に当てはまっていれば実施できるわけですけれども、小さい合議体の場合は、被告人に異議があるとできなくなる。そこはどういうつじつまになっているのかなというのがよく分からないところです。全体としては大変すばらしい司法参加の制度だと思っており、外国の方にもよく説明紹介してゆきたいと念じております。

○井上座長 分かりました。辻参事官、何か。

○辻参事官 まず、裁判官1人裁判員4人という合議体を設けた趣旨ですが、先ほど若干御説明したとおりでありまして、その合議体で扱うのはどういう事件かというところと関係するかと思いますが、先ほど申し上げましたように、準備手続の結果、公訴事実を中心として事実に争いはまずないと、それから、法律問題や、訴訟手続上の問題というのも難しいものはまずないと、通常よくあるようなものだけに限られるということが明らかになった事件が対象となるかと考えております。逆から言うと、中心的な課題は量刑であるという事件ではないかと考えております。
 今回、準備手続をかなり整備しますが、なるべく事前にそういう問題があるのかないのかを明らかにしようという手続でございますので、その結果、そういう事案であるということが分かった場合には、3対6という、ある意味ではフル装備の合議体ではなくて、もう少し少人数の合議体で審理することとして、裁判所、更には国民の負担を軽減するという制度を取ることもリーズナブルではないかと考えた次第でございます。
 人数がなぜ1対4なのかというところでありますが、そういう趣旨を踏まえまして考えたということでございます。

○酒巻委員 要するに訴訟経済のため2ずつ引いたということですか。

○辻参事官 それが理由かと言われますと、ちょっとなかなか難しいところでございますが。
 それから、異議がないというところを要件にした理由でございますが、原則的な形態ではない合議体ということで、手続的な保障という観点からも、被告人の異議、あるいは検察官の異議のないことを要件とするのが適当ではないかと考えた次第です。

○井上座長 高井委員、どうぞ。

○皸羂儖 酒巻委員の質問とやや重複する部分があるとは思いますが、この1ページのア、イ、ウのウは、座長の先ほどの御発言にもかかわらず、今まで一度も議論されていない案件ですので、ここは十分議論する価値があるというふうに思います。
 そこで、まず質問をさせていただきますが、全部認めていて、当事者に争いがない、当事者の異議がないという場合に、こういう別の小さな合議体をつくるという制度設計をする根本的な思想はどこにあるんでしょうか。

○辻参事官 先ほども申し上げましたように、問題が非常に限定されている事案の場合、原則的形態である裁判官3人と裁判員6人ではなく、例えば、裁判官1人、裁判員4人として、ある意味で負担軽減のための措置を取ることも差し支えないのではないかと考えたということであります。

○皸羂儖 そうすると、特別に小さな合議体をつくる思想、趣旨、目的というのは、裁判所及び国民の負担を軽減するというところが根本思想だというふうに理解してよろしいのでしょうか。

○辻参事官 そうですね。

○皸羂儖 そうすると、同じく自分の母親が死んだ、殺された、あるいは自分の子どもが殺されたという被害者の立場から言うと、君のところの事件は、裁判官3人、裁判員6人という本来の合議体でやるに値しない事件だと、君のところのお母さんは殺されたけれども、それは合理化のために1対4の小さな合議体でやれば十分ではないかということを国民に向かって宣言していることにはならないでしょうか。

○辻参事官 そこは、事案の性質等を勘案して相当ということでございますので、相当でないという場合は小さな合議体で扱うことはしないということだと考えております。

○皸羂儖 相当かどうかの判断のときに、被害者の意向というのは参考にされるのでしょうか。

○辻参事官 被害者に特別に意見を聴取する手続というのを設けるべきかどうかというのは別としまして、裁判官として考慮すべき要素の一つかもしれません。

○井上座長 検察官の意見も聞くのでしょう。

○辻参事官 そうですね、検察官として、その点を踏まえて、異議があるかどうかの意見を述べるということも当然考えられるのではないかとは思います。

○皸羂儖 仮にこの制度がこの骨格案のまま運用されるのであれば、被害者の意向というものに対する配慮、被害者の意向を十分に汲み上げるというシステムが補助的に作られるべきであると思います。被害者の遺族の立場から言うと、裁判官の合理化のために、自分の父親の死は3対6ではなくて、1対4の合議体で合理的に裁かれるというのは、我慢のならないところであろうと考えます。
 それから、これも酒巻委員の質問に出ておりましたけれども、合理化がその趣旨であるとすると、1対4の構成にすることが、裁判官の負担軽減につながるのでしょうか。1対4であるとすると、裁判所全体とすれば、その事件に裁判官1人当てれば済むわけですから、人員配置の合理化につながるということは言えるかもしれませんが、その合議を持つ裁判官にとっては1対4ですから、場合によってはその裁判官の負担は、むしろ増大するのではないでしょうか。その点はどのようにお考えでしょうか。

○辻参事官 裁判官と裁判員が協働するという思想でございますので、1人だから直ちに負担が増大するというわけではないのではないかと考えます。

○井上座長 皸羂儖の御質問は、3対6だと、裁判官1人当り裁判員2人の面倒を見ればよいけれども、1対4になると4人にもなってしまうではないかということですか。

○皸羂儖 それもありますし、例えば今までの議論の中で裁判官2人ではだめだというときに、やはり裁判員が入ってくると、合議体への負担が増えるから3人でなければいけないという議論があったと思うんです。それはそれなりの説得力を持った意見だとされていたと思うんですが、その思想から言うと、1対4というのは、その趣旨に反する構成になっていると思うんです。

○辻参事官 その点、裁判官を2人とするのは負担の観点から問題であるというのは、裁判員の数との比率の問題ではなくて、事実関係、証拠関係の整理であるとか、判決書作成の問題とか、そういう観点から問題であるとされていたと思います。ここで対象とする事案というのは、問題点の少ない事案だと思いますので、直ちに当てはまるものではないのではないかと考えます。

○皸羂儖 コンパクトの方が裁判所の合理化になるというのであれば、比率を同じにして、1対2というのもあり得ると思いますが、なぜ1対4なんでしょうか。

○辻参事官 そこの人数は、先ほど申し上げたとおりですが、裁判官2人というのは、やはり国民の意見、感覚を広く反映というところからすると、少ないのではないかということでございます。

○皸羂儖 私がここで、かなり1対4という構成にこだわっているのは、それでは、3対6の構成の裁判体と、1対4の構成の裁判体は、量的に違うだけなのかということなんです。質的に異なるものなのではないかと思うのです。
 要するに、3対6の合議体は、裁判員制度の合議体であり、1対4の合議体は、事実上、陪審制度に近い合議体なのではないか。そうすると、同じ一つの刑事司法制度の中に、本質的には違う性格を持つ二つの裁判体ができるが、それでいいのかと、そういう制度があり得るのか。
 しかも、そのどちらを選択するかは当事者にかかっていると、当事者には異議がないことが要件ということですから、どちらを選択するについては、当事者にもその選択権があるということにならざるを得ないけれども、質的に違うものを二つ用意しておいて、当事者にどちらかを選んでいいよというような制度が、果たして安定した制度と言えるのかと思います。特に、何にも増して安定性が要求される刑事司法の制度としてあり得るのかと、どういう思想に基づいたら、こういうことが考えられるのか理解に苦しむということです。
 もう一つ、多分、質が違うわけですから、例えば弁護人の立場で言いますと、被告人は全部認めましたというときに、どちらの合議体でやった方が有利かと、どちらでやった方が刑が軽くなるかということを考えることになります。3対6の方が軽くなると思えば、そちらを選び、1対4の方が軽いと思えば、そちらを選ぶということになります。もちろん、それはまだ合議体ができる前、実際に裁判員が選ばれる前ですから、その見込みが当たるか、当たらないかは分かりません。しかし、そういう選択をする余地が出てくるわけで、そういう意味では、刑事裁判がゲーム化しないか。戦略化、戦術化しないかと思うのです。
 これまでの議論の中で、私は、当事者に裁判員候補者に対する質問をすることを認めていただきたいと強く言いましたが、それに対しては、そういうことをすると裁判が非常に戦術化すると、長期化するという理由もありましたけれども、だから、それは妥当ではないという御意見があったと記憶しております。確かに、事実を確定するための手続が、余りにも戦略化、戦術化するということは好ましいことではないと思います。そういう観点からすると、こういう制度にすると、刑事司法の戦略化、戦術化、ゲーム化と、あるいは極端なことを言うと賭博化、博打化と、博打とはちょっと言い過ぎですが、しかし、1対4の方が軽くなるか、3対6の方が軽くなるか、これは大事な問題ですね。そういうことについて、一種のゲーム的な考え方、戦略的な考え方が導入されてくるということは、刑事司法の世界にとっては非常に好ましいことではないと思います。
 もう少し言えば、こういう制度ができると、多分、刑事司法がビジネスの対象になる。要するに、ずっと両方の裁判をウォッチしていって分析をして、こういうものであれば、こっちの方が有利ですよと。アメリカにあるような、一種のコンサルタント、これが弁護士法違反になるかどうかは分かりませんが、こういうコンサルタント業のようなものが、ビジネスとして成立する余地があるんではないかとさえ私は思います。

○井上座長 前提として、この制度は、当事者に最初のイニシアチブがある制度ではないのです。裁判所の裁量がまず働き、その上で、当事者としては、検察官も含め、消極的な方向で、それによらないことができるという制度であり、その限りおいて当事者の意思が反映されるというものなのです。

○皸羂儖 その限度を前提にして、今、申し上げているんですが。

○井上座長 完全に最初から当事者の選択であるかのような前提で話されておられるように聞こえたのですが、そうではないということですね。

○皸羂儖 そうではないです。こういう限られた選択権の行使の範囲内でもそういう要素が入ってきて、そういう刑事司法がビジネスの対象にされるという危険性も含んでいるぞということです。それでもなおかつ、非常に奇抜な、世間では芸術的な作品だと言った人がいるようですが、奇抜な制度を運用しなければいけないのかというふうに、私は強く疑問を持ちます。

○井上座長 分かりました。辻参事官、何かありますか。

○辻参事官 ゲーム化、ビジネス化という問題につきましては、今、井上座長の方からも御指摘がございましたように、あくまで裁判官、裁判所が適当であると考えた範囲内での話でございますので、御指摘のような、完全な選択権ではございませんので、ビジネス化、ゲーム化するとは余り考えていないところであります。
 それから、思想の異なる二つの制度ではないかということでありますが、ここも最終的には評価の違いになってしまいますので難しいところですが、あくまでいずれの制度も審議会意見書のいう裁判官と裁判員との協働の制度として十分成り立ち得ると考えているところであります。

○井上座長 本田委員、どうぞ。

○本田委員 この裁判官1人、裁判員4人の裁判体についていろんな御意見が出たんですけれども、この制度の趣旨は合理化だけではないんだろうと思います。例えば、被告人が事実はみんな認めているし、準備手続の中で検察官がある程度具体的な事実を示して、公訴事実以外も広く、冒頭陳述まではいきませんけれども、証拠によって証明しようとする事実を明らかにして、それについて争いが全くない場合、例えば、現行犯逮捕されたような事件について、法律上の問題は全くないといったときに、裁判官3人を投入してまでやらなければいけないのかと、その必要性の問題なんだろうと思います。だから、そこはさまざまな要素、法律上の問題もございませんと、十分な入念な準備手続が行われるわけですし、その上で、その事件に対してどれだけの労力を入れなければいけないのかという観点から見るのでしょう。単に合理化ができるからという話ではなくて、その必要性の問題だというようなことを考えればいいんでしょう。

○皸羂儖 今でも、同じような事件もちゃんと3人でやっているわけですね。そういう争いのない事件で、今、裁判官3人でやっているものを、なぜ1人にしていいのかと、今まで3人でやっていたのは、一体なんなのかということになりませんかね。

○酒巻委員 それとの関連で、普通の法定合議事件ですね、裁判員対象事件でない法定合議事件はそのままになるのですか。それについても裁定による裁判官1人制とかいうのをつくれば整合するかもしれませんがね。

○辻参事官 今、法定合議を裁判官3人でやっているのを裁判官1人だけでやるという制度ではなく、裁判官1人と裁判員4人で審理・裁判するということでございますので、そこが整合しないとは必ずしも考えておりません。先ほど来から申し上げているとおり、中心的な課題は量刑というかなり限定された問題であろうという事案を対象とするということでありまして、かつ、裁判官1人だけでということではなく、そこに裁判員4人を加えて、全体として5人の合議体で審理を行うということですので、トータルで見て、裁判官3人で審理をしている現在の法定合議の趣旨を損うものではないのではないかというふうに考えております。

○井上座長 では、更に。

○皸羂儖 余り言っていると怒られてしまうかもしれませんけれども、そうすると、いわゆる事務局のお考えですと、裁判員はプロの裁判官に代替し得るという論理になりませんか。今までは、多分ここでの議論は、裁判員は裁判官に代替できないということを理論的前提にしていたと思うんですが。

○辻参事官 完全に代替できるというふうに申し上げているわけではないわけでありまして、特に代替の面で問題になっていたのは、恐らく法律問題と、訴訟手続上の問題と、むしろプロである裁判官がふさわしいということについては、この検討会でも御異論のほとんどなかった点についての問題が大きかったのではないかということです。

○井上座長 事実認定についてもですね。

○辻参事官 事実認定についてもまた問題がないという事案が対象になるわけでございますので、そこはトータルとしては趣旨を損うものではないのではないかと考えた次第です。

○井上座長 法律問題についても事実問題についても争いはない。したがって、その点で代替できるかどうかということではなく、量刑としてどのぐらいがいいのだろうかといった点で、審議会意見書の言う国民の健全な社会常識を反映させる。その限りでは、意見書の趣旨はこういう形でも満たされるのではないか。説明としては、そういうことなのでしょう。
 どうぞ。

○平良木委員 このウの小さい合議体というのは、合議までが全部一致することを前提にしているんではないかというような気がしてしようがないです。
 つまり、これは当然裁判ですから、合議が分かれることは考えられるので、合議が分かれた場合どうなるかというと、これは先ほど2ページの3のところの評決の在り方ということで、これが決まってくるはずですね。
 そのときに、例えば、量刑について、裁判員が懲役6年、裁判官が懲役4年といったときに、これは、評決の要件により、裁判官が賛成しないとだめだということになるわけですから、これは懲役4年になってしまうわけです。つまり、裁判官1人でもって決定できる結果になってしまうと、こういうふうに結果としてはなりますね。
 それから、有罪、無罪でも同じことが考えられますね。つまり、4人が有罪だと、ところが裁判官が無罪だと、こういった場合には、裁判官が賛成しない限り有罪にできないと、こういうことになりますね。

○井上座長 しかし、そもそも、そういう有罪・無罪が争いとなる事件が小さな合議体の対象になるのですか。

○辻参事官 理論的には、ただいま御指摘のとおりでありまして、評決を行って、裁判官が無罪である限りは、無罪ということになるわけでありますけれども、先ほどから申し上げているとおり、公訴事実自体については争いがないという前提ですので、仮にそういう事態になった場合には、先ほども申し上げたように、元の原則的形態に戻るべきであろうと思います。

○平良木委員 例えば、被告人が認めているが、どうも結論的に言うと、身代わり犯人であると。裁判員4人は有罪だと、しかし、裁判官は、これは身代わり犯人だから無罪だと、こういった場合はどうなるんですか。

○井上座長 身代わり犯人だということが証拠上出てこないと、そういう意見は出せないのではないですか。単に自分が知っているというだけではだめでしょう。

○平良木委員 その身代わり犯人だという証拠が出てきたときには、それだけで元へ戻すんですか。

○井上座長 戻すのでしょうね。戻して、もう一回審理をやることになるのだと思います。

○平良木委員 なるほど、そうすると量刑の場合が問題になってくるということですね。

○井上座長 そういう御説明だったですね。

○平良木委員 はい。

○池田委員 私はこの案を最初に見たときに、公判で争ってもこのまま小さな合議体でやるという選択肢と、裁判官3人、裁判員6人の合議体に戻すという選択肢の両方があり得るのかと思っていたんですが、今のお話を聞いていると、3人対6人の合議体に戻すというのが基本だということですね。その場合、どこから審理をやり直すんですか、それと、裁判官と裁判員はだれか残るんですか。

○酒巻委員 その点は、私も具体的に聞きたかったことです。

○池田委員 最初に公訴事実を認めると言っていても、公判の途中で争いが出てくるということが結構あるわけでして、もちろん、これから、今度導入される準備手続を行えば、準備の段階でかなりはっきり主張させたりしますので、途中で争いが出てくることは少なくなることは間違いないと思いますが、でも絶対になくなるとは言えないと思うんです。
 そのときに、もう一回3人対6人の合議体に戻して、しかも、また新しい人を選び直してやらなければならないとなったら、なかなか使いにくい制度ではないかなという気がするんですけれども、どの辺りまで戻すことを考えておられるのか。

○辻参事官 その辺りの細部については、なお検討中でありまして、現時点ではお答えは差し控えたいと思いますが、戻す判断は、原則的な権限配分の問題からして、恐らく裁判官がやるということにはなろうかとは思います。

○池田委員 戻すときには、その裁判官はまたその事件にはタッチするんでしょうかね。

○辻参事官 その辺りの細部の手続については、更に検討したいと考えております。

○井上座長 あり得る考えとしては、更新的な形でやるのか、それとも、まるっきり新たにやるのか、そういう両方の選択肢があり、そこはなお検討するということですね。

○池田委員 公訴事実を認めるということでやり出しているというのを知っている裁判員が残っていて果たしていいのかということもあると思います。

○井上座長 ただ、実際問題として、こういう事件の場合に、被告人側が全部認める、証拠についても異議がないということで公判が始まって、やってみたら違ってきたというのは、公判を開いたそのときに、そういうことが分かるということしかなく、そういう事件で何日も審理が続いた後そうなるといったことは考えられないのではないですか。

○池田委員 よく、冒頭では認めていたがその後どうも違うなということになるのは、特に簡易公判などで途中で取り消す時期というのは、被告人質問をやっているときなんですね。
 ですから、もちろん、こういう事件で今回準備手続を行った上でやるんですから、当然その日のうちだろうとは思うんですが、ただ、それまでに書証などを調べて、それで被告人に聞いてみたら、何かどうも言っていることが違うのではないかという疑いが出てくるということではないかと思います。特に日本の裁判では、いろんなところが量刑事情ということになり得るので、その大きさにもよるんですけれども、いろんなところに争いが起こり得るんですね。

○井上座長 御趣旨は分かりました。この点を巡ってなのですが、皸羂儖も言われたように、そもそもこのような別の構成の裁判体によるという選択肢を設けるというようなことは、これまでこの検討会では議論してこず、考えてはこなかった。更に申せば、審議会以来、同じ構成の裁判体でやるという前提で議論をしてきたといってよいと思うのですが、そういう流れから見ると、突然出てきて、唐突だという面があることは否定できませんが、そのことを離れて、事柄それ自体として見た場合、こういう全く争いのない事案で、ほとんど量刑の量的な点だけが問題になるようなものについて、こういう形の対応をするというのも、一つのアイデアとしてあり得るように思います。私個人として、これが適当と思うかどうかは別として、アイデアとしてはあり得るのかなというふうには思うわけです。
 ただ、量刑といっても、裁判員制度の下で扱われる事件というのは非常に重い事件であり、特に死刑か無期かといった刑種の選択とか、かなり重い量刑が予想されるような場合には、小さな合議体による審理というのは、実際上なかなか使えないのではないか、使うのにふさわしくないのではないかという感じはするのですね。
 ほかの方も、ここだけに限らず、全体について、御意見なり御感想を伺えればと思いますけれども、どうぞ。

○土屋委員 今の裁判官1人、裁判員4人の合議体の部分については、私も若干の違和感を感じていますが、私がお聞きしたいと思ったところは、皆さん聞いてくださったので繰り返しません。
 ちょっと質問です。国民の負担という点で、事務局の方に、どのぐらいの制度イメージを持っていらっしゃるのか伺いたいと思うんですが、こういう裁判官3人に裁判員6人という原則的な合議体ができるとして、それで裁判員の候補者として選任されてくる、裁判所に呼ばれる人、これが年間どのぐらいになるのかという辺りの試算がもしありましたら、これは公的には出ていないので、出していただきたいんですけれども。

○井上座長 新聞などでは書かれていますけれども。

○土屋委員 いや、事務局からきちんと出ていませんので。この案でいきますと、裁判員制度対象事件は年間大体2,800件ぐらいであろうということですけれども。

○井上座長 そうです。

○土屋委員 ということですけれども、辞退だとか、忌避だとか、いろんなことを入れると、5倍か6倍か、そのぐらいの人が呼ばれるのではないかとか、いろんな見通しみたいなものがありますけれども、事務局はどのぐらいの規模で考えているのか。

○井上座長 事務局は、何か数字を持っていますか。

○辻参事官 例えば、ということで、いろいろな前提条件を仮定した上でないと、年間どれぐらいの人数の人に裁判所に来ていただく必要があるかというのは、計算できませんが、その前提条件をいかに置くべきかということについて、今、事務局として責任のあるお答えができるかというと、それはやや難しいかと思います。
 そういうことをお含み置きいただいた上で、仮にこういう仮定を置いたとしたらということで一応御紹介いたしますと、裁判員の数は6人ということであります。それで、まず、前提条件の一つとして、補充裁判員を何人にするかということがありまして、それは事件によって予定審理期間の長短に応じて裁判官が判断するということになろうと思いますので、これは恐らく一律に決まりません。平均何人になるかと言われると、恐らく、現在、これを見通すのはできないということになりますので、既にその時点で試算というのは、なかなか難しい問題が出てまいります。
 ただ、そうはいいましても、何らかの計算をしてみるとすれば、あくまで仮でございますが、補充裁判員を3人と仮にした場合には、選任すべき人の数は9人ということになります。
 次に、事件数でありますが、これは平成13年の終局人員の実績で申しますと、この骨格案の対象事件で考えますと、2,749 人ということになっております。
 それをかけ合わせますと、年間に選任される人数は、例えばでございますが、2万4,741人ということになります。ただ、補充裁判員3人という前提が正しいかどうかは別の問題でございますので、そこはくどいようですが、御承知置きください。
 さらに、裁判所に一体何人の人に来ていただくべきかという問題ですが、これは9人という人を選ぶのに、1件当たり、どれぐらいの人を呼べばよいのかという問題でありまして、理由なし忌避の数や、呼び出した人の中に就職禁止の事由に当たる人、除斥事由に当たる人、あるいは極端な場合、出頭してもらえない人をいろいろ考えまして、どれぐらいの余裕を見込むべきなのかということで、恐らくこれも、事件の審理期間の長短によって、非常に、非常にというのはちょっと言い過ぎかもしれませんが、変化の余地があると思います。
 そういうことでございますので、必ずこれでやるということは、今の時点で事務局としても責任あるお答えはできませんので、ここもあくまで仮でございますが、今、土屋委員も御指摘になった5倍という人数を仮に置いたとすると、年間に裁判所に来ていただく人の数は12万3,705人ということになります。
 ということで、一応の答えではございますが、何度もしつこいようですが、いろんな前提条件を置いた上でのことでございます。

○井上座長 よろしいですか、どうぞ。

○土屋委員 もう一つ伺いたかったのは、同じような国民の負担という意味なんですけれども、6ページの裁判員の辞退理由、6ページのキのところに、その他のやむを得ない事由というのが書いてあるんですね。三つ挙がっている理由が辞退理由であるというのは分かるんですが、その他のやむを得ない事由というのは、大体どういう場合を想定されるのかという、なかなか説明が難しいところだと思いますが、事務局としては、どういうことを想定されていますか。

○辻参事官 恐らく、いろんな場合がありまして、考えられる場合をすべて網羅して、法律で書き出していくというのは難しいので、最終的には、表現の問題は別として、いわゆるバスケット・クローズ的なものを設ける必要があると思っております。
 ただ、この骨格案で三つの場合を書きましたが、これに限られるという趣旨ではもちろんありませんので、例示でございます。
 そのほかに、ではどういうものが考えられるかを申し上げますと、例えば、極めて近い近親者、例えば自分の父又は母の葬儀が審理予定期間である明日なり明後日なりに予定されていると、そういうことであれば、これはさすがに父母の葬儀を差し置いて裁判員としてやっていただきたいというわけにはいかないでありましょう。もちろん、子どもの葬儀でもそうでありましょうし、あるいは自分の結婚式、それに引き続く新婚旅行が来週予定されておって、すべて予約万端整っておるという場合に、そこを全体キャンセルして裁判所に来てくださいということにはならないでありましょう。そういう社会生活上、仕事とは違っても重要な用務があるという場合は、やはり辞退が認められるべきではなかろうかと思っております。ただ、そこは、それ以外にももちろん、いろんな要因も考えられると思っておりますが、例えばそんなことが、ここの例示した三つ以外にはあり得るんではないかと思っております。

○井上座長 その場合は、その事件のその期日に都合が悪いから辞退するということであって、名簿からは除かれないのでしょう。その後、都合がつくような事件が巡ってくれば、選ばれる可能性はなおあるということですか。

○辻参事官 そうですね、この骨格案では、1年に一度候補者名簿を作成するとなっておりまして、そういう形で辞退をした方は、もう一度元の名簿に戻ってもらうということを、今のところ考えていますので、その中で再度抽出されれば、選任の可能性はあるというふうに思います。

○井上座長 さっき四宮委員が触れられた介護の問題も、介護自体について、何か制度的手当をするということは、もちろん将来的には考えられるかもしれないけれども、事件によっては半日で済むようなことが予想されるような事件が次に巡ってくれば、裁判員として務めることは可能であり、そういうチャンスは残されているということではないでしょうか。

○土屋委員 それから、ちょっと意見なんですけれども、余り繰り返しにならないように、もう一度ちょっと言っておきたいことがあるんですが、就職禁止事由の列挙です。今日、お配りいただいた池田委員の意見のところに書いていらっしゃる就職禁止事由の見直し、この意見に私は全く賛成です。今、骨子で例示されている範囲は、余りにも広過ぎるというふうに思います。特に、裁判員6人という、この検討会で議論していた中では、かなり大きな合議体が想定されることになると、その給源として、かなり広い人材を確保しなければいけないんだろうと思います。そういう趣旨からいくと、ここをもうちょっと絞り込む必要があるだろうというふうに私は思います。

○井上座長 この挙げられているようなものを除くか除かないかは、余り影響しないのではないですかね、数という意味では。

○土屋委員 そうですね、ただ、考え方として、ちょっとバランスが取れていないかなと思うところがあるのは、例えば弁理士とか、司法書士という、いわゆる隣接法律関係職種の方たちがリストアップされていますけれども、そういう意味では、ほかに行政書士の方もいらっしゃるし、社会保険労務士の方もいらっしゃるでしょうし、土地家屋調査士の方なんかも隣接法律関係職種としてありますね。そういう人たちが入っていなくて、弁理士、司法書士は入っているとか、ちょっと一貫性が取れていないんではないかというふうに私は思います。それを外せという、リストアップしろという意味ではなくて、逆にここに書かれている弁理士、公証人、司法書士、こういった方たちは外して参加していただいていいんじゃないかというふうに私は思うんですけれども。

○井上座長 考え方の問題としてですか。

○土屋委員 はい。それから、大事なのは、やはり、一般公務員の方に、できるだけ参加していただく、そういう制度設計とすることが、この制度を動かしていく上では、とても重要なことだと私は考えております。民間の仕事をしている人間というのは、なかなか忙しいといいましょうか、仕事なんかでなかなか都合が付かない部分とか、いろいろありましょうけれども、そういったところが加重な負担にならないような制度設計がほしいところだというふうに、私は前から思っておりまして、これは一般論ですけれども、そういったときに、人材の供給源として、公務員の方というのは、大変良質な給源であろうと私は思いますので、できるだけ幅広く裁判員になってもらえるような制度設計にしてほしいということです。

○井上座長 その点は、今後、一つ一つについては法案化するときに洗い直すということなのでしょうが、行政機関については、プリンシプルの問題で、三権分立の関係で、行政府で実質的な政策決定をしたり、意思形成に参与している人が司法権の行使に携わってよいのかどうかという問題であり、負担の問題とは違うように思います。
 弁理士とか司法書士については、隣接法律関係の職種のうちで、一定の範囲で訴訟代理権等が与えられている、そういう点との見合いということも考えないといけないのではないでしょうか。

○土屋委員 もうちょっと吟味していただけないかなということです。

○井上座長 そうですね、その点は検討されるということでしたね。

○辻参事官 一般の公務員を広く就職禁止にするという趣旨ではもともとございませんで、幹部職員となっておりますので、その点だけ付け加えたいと思います。

○井上座長 今の点に限らず、全般的に御意見があればどうぞ。

○池田委員 今日は余り時間がないかと思ったので、ペーパーを配らせていただきました。先ほどの辻参事官の説明を聞いて、もう分かったところもあるんですが、書かせていただいたところだけ、ちょっと簡単に申し上げます。
 1の就職禁止のことは、今、話題に出ましたので、もうそれで結構です。更に検討するとされているところですので。
 それから、2の解任のことなんですが、たたき台でも座長試案でも、そこについての意見は言っていないのに、今ごろなんだと言われるかもしれないんですが、だんだん考えるうちに、ちょっとこういう手当てもしておいていただいた方がよいのではないかと思っているところを書かせていただきました。というのは、解任は、この骨格案ですと、出頭義務違反を除いては、ほかの裁判官が行うとなっていますが、ここでも議論がありましたように、受訴裁判所が解任するとなると、裁判官が気に入らない人を解任するのではないかというような疑いを招かないか心配だということで、それは確かにそのとおりだと思います。ただ、明白に義務違反なり、あるいは不適格な人がいる場合にも、別の裁判体で解任をしないといけないということになると、手続が止まってしまいはしないかというのが心配なんです。それで、例えば理由のないことが明らかな解任申立てがあった場合に、それも別の裁判官に回さなければいけないのか。あるいは、今の刑事訴訟法の簡易却下のようなものを設ける必要があるのではないかというふうに思うわけですが、逆に、申立ての理由があることが明らかで、それも特に外から見ていても分かるような場合には、場合によっては、受訴裁判所自体が解任するということも、不出頭の場合だけでなくあり得るのではないかと、その辺りをどこまでできるかというのを検討していただけないかということです。
 それから、3番目の弁論の分離・併合の点は、これは骨格案でも更に検討するということになっているところですが、これも前々から指摘しているとおり、法的措置は必要だと思いますので、施行までに措置を取っていただきたいと思います。
 4番目の証拠調べ手続等というところで書いたのは、先ほどの辻参事官の説明でも、法律には盛り込まない事項だけれども、運用上行うことについて裁判所の規則で定めることもあり得るということで、そのとおりだと思います。
 5番目が出頭の確保という点なんですが、今回、裁判員制度が実施されれば、国民が安んじて出てきていただけるものでないと困るわけで、そのための整備が必要だと思うわけです。今、労働基準法7条に、こういう公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては拒んではならないという規定があるわけですけれども、それに加えて、例えば今回の裁判員休業制度というようなものを設けることを考えておられるのか、あるいは作らないというときには、作らなくても、今の労基法7条がカバーするんだということは明確になされるのか、その辺は説明されるのかという点です。それから、この骨格案にある事業主が、労働者が裁判員休業申出をし、または休業したことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをしてはならないというのは、これは事業主にそういう義務を課すも
posted by: enzaix | 裁判員制度 | 00:00 | comments(0) | trackbacks(0) |-
司法制度改革-裁判員制度・刑事検討会(第30回) 議事録
現在、片岡晴彦さんを支援する会は、高知白バイ事件の再審のために署名活動中です。ezaixは、十万人(以上)の署名が必要と思っています。

皆さん、時速10キロメートルで1メートルのブレーキ痕がおかしいと思ったらぜひ、署名をお願いします

署名はこちらから↓
「片岡さんを支援する会 再審請求への署名のページ


裁判員制度・刑事検討会(第30回) 議事録

(司法制度改革推進本部事務局)


1 日時
平成15年12月10日(水)13:30〜16:10

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員) 池田修、井上正仁、大出良知、酒巻匡、四宮啓、皸羚行、土屋美明、樋口建史、平良木登規男、本田守弘(敬称略)
(事務局) 山崎潮事務局長、大野恒太郎事務局次長、古口章事務局次長、松川忠晴事務局次長、辻裕教参事官

4 議題
「刑事裁判の充実・迅速化」及び「公訴提起の在り方」について

5 配布資料
資料1 「考えられる検察審査会制度改正の概要について」の説明

6 議事

○井上座長 所定の時刻ですので、第30回裁判員制度・刑事検討会を開会させていただきます。
 本日も御多忙の折、お集まりいただきましてありがとうございます。
 本日は、前回に引き続き、まず、「考えられる刑事裁判の充実・迅速化のための方策の概要について」という表題のペーパーに沿って議論をしていただいた後に、前回お示しした「考えられる検察審査会制度改正の概要について」という表題のペーパーの内容を御説明し、その上で、検察審査会制度改正に関して議論していただこうと考えております。
 本日で一応、本検討会の課題のすべてについて議論をしたことにしていただきたいと思いますので、これまでにも増して、御発言は簡潔にしていただき、進行に何とぞ御協力していただきますようお願い申し上げます。
 それでは、刑事裁判の充実・迅速化に関する議論に入りたいと思います。前回も申し上げましたように、議論の進め方として、私の方で更に御議論していただいた方がよいと思われる項目をまず挙げさせていただき、それについて議論していただいた上で、各委員において他にも議論すべきであると考えられることがあれば、そのような御指摘、御意見をいただく、という形で進めるということで御了解をいただいております、本日も、そのように進めさせていただきたいと思います。
 前回、私の方から、更に御議論いただきたい項目として、七つの項目を挙げさせていただき、そのうち、前回は、第1点目の「取調べ請求証拠以外の証拠の開示」というところを御議論いただきましたので、本日は、2番目と4番目に挙げておりました点、これらは相互に密接に関連しておりますので、これらをまず一緒にして議論していただければと思います。その一つは、ペーパーの5ページの「4 被告人側による主張の明示」の中の、「(1) 主張の明示等」というところであり、内容的には、アの主張に関する項目とイの証拠調べ請求に関する項目から成っております。もう一つは、7ページの「8 争点の確認等」の中の「(2) 準備手続終了後の主張」と「(3) 準備手続終了後の証拠調べ請求」という項目です。
 これらは、相互に密接に関連しており、これまでの検討会でも、それらを両方関連付けた御意見が述べられたところでありますので、今回もまとめて議論していただければと思います。なお、御意見をいただくに当たっては、項目が四つありますので、そのうち、どの項目について御発言になっているのかをはっきりさせた上で御意見をいただければと思います。その点が前回までの議論で必ずしも明確でなかったために混乱したという面がありますので、是非御留意願えればと思います。それでは、どなたからでも結構ですので、御意見をいただければと思います。いかがでしょうか。

○四宮委員 この点についても、十分に今まで議論されましたので、従来と同じ意見ですが、最初のすべてについてというと変ですけれども、両方の全体の仕組みについての意見を簡潔に述べたいと思います。特に主張の明示のところでは、座長の試案で「検察官主張事実の全部又は一部を否認する主張」という部分を削除いただいた点は評価させていただきたいと思っています。
 ただ、その上で、この両方の仕組み全体としては、私は準備手続の実効化の担保としては、準備段階で、つまり入り口の段階で弁護人に主張の明示の責任を負わせるという形の制度で十分実効性が担保できるのではないかということを今までも申し上げてまいりましたし、今日も同じ意見です。特に最後で、被告人は主張できるという形にしていただいた点も評価させていただきたいと思いますが、被告人の主張制限を設けなかったという趣旨にかんがみますと、やはり被告人が言っているときに、弁護人が原則として言えないということになりますと、事実上被告人の主張を制限することにならないだろうかというのが、弁護人としての危惧でございます。
 そういった点から従来の主張と同じですが、実効性を担保する仕組みとしては、手続の冒頭で弁護人に主張を明示するという責任を負わせるという形で制度を設計していただけたらと考えております。以上です。

○本田委員 また同じことの繰り返しになるかもしれませんが、まず主張明示のところについて、弁護人に義務をかけるべき云々というお話がありましたけれども、これは前回のとおり、それだけでは何の解決にもならないだろう。また、その場合も、弁護人の義務というのは法的にどういった性質のものなのかという解決も全くされていない。これは座長試案のとおり、被告人・弁護人双方に主張明示の義務をかけ、証拠調べの請求に義務をかけるべきであろうというふうに考えております。
 それから、準備手続終了後の主張制限と立証制限のところですが、主張制限のところは、明示義務をかけるのであるならば、主張制限もかけるというのが理論的にはすっきりしているだろうという考えを持っておりますが、現実問題として、被告人について発言を禁止する、あるいはそれに従わないと退廷といったような訴訟運営が事実上困難であろうということからすると、被告人には、理屈の問題というより現実的な問題として、果たして主張制限をかけるのが妥当かどうかという問題があるかと思います。そうだとすると、例えば、被告人が法廷で新たな供述をした場合に、これを弁護人が法的に整理して取り上げることが全くできないかどうかという点について、若干そこは慎重な検討が必要かなという気がしておりまして、ここについてはもう少し頭の整理等、検討が必要かなという気がしております。
 それから、準備手続終了後の立証制限については、座長試案のとおり、これはきちんとやっておかなければ、準備手続というものはしっかりしたものになりませんし、しっかりしなければ、およそ裁判員裁判に耐え得る制度はできないというのが、これまでの私の主張でしたし、これは今も同じであります。以上です。

○井上座長 ほかの方、いかがですか。どうぞ。

○皸羂儖 まず主張の明示については、この試案のとおりでいいと思います。準備手続終了後の主張ですが、この試案では、被告人は言ってもいいが、検察官、弁護人はだめですよというつくりになっているわけです。しかし、本来弁護人は被告人と基本的には共同歩調をとるものであり、被告人が右だと言っているのに、弁護人だけが左だということは基本的にはないわけですね。仮にこういう法律ができれば、この法律に従って、被告人が右だと言っているにもかかわらず、弁護人が真ん中だということをしたとしても、それは法曹倫理の問題にはならないとは思うのですが、しかし本来の弁護人と被告人の在り方というところから見ると、そういうような現象が出てくることは必ずしも好ましいものではないと思うのですね。
 私は、本来、準備手続終了後の主張制限については、被告人も加えるべきだというのが私の意見だったのですが、それは本来、被告人と弁護人は常に共同歩調であるべきだという前提があったからなわけですね。試案では、主張制限について、被告人が外されております。したがって、この際、弁護人についても主張制限は認めないとしたらどうか。と同時に、検察官についても主張制限はかけない。要するに主張するだけなら、検察官にしろ、弁護人にしろ、被告人にしろ、何を言ってもいい。何言ってもいいというのはオーバーですが、それは自由に言ってもいいではないかというふうにしたらいかがかなと思います。しかし、準備手続終了後の証拠調べ請求の制限は、この試案のとおりに制限するということでいかがでしょうか。要するに主張制限というのは、準備手続を充実させたものにするということのための担保であるわけですね。その準備手続を充実させるという意味は、審理計画をきちんと立てて、裁判員が対応できるようにすることもありますし、真相をより発見しやすくすることもあろうかと思うんです。
 そういう意味では、この準備手続終了後の証拠調べ請求の制限だけがあれば、両方の条件は満たすのではないか。証拠調べ請求も無制限に認めれば、計画的な審理はできなくなりますが、(3)のような形で、証拠調べ請求の制限をかけておけば、単に言うだけですから、主張を述べるだけですから、それほど手続が遅延することはないだろうと思うわけですね。片や、証拠調べ請求については、これをむやみに認めれば、延々と審理が続いて、計画審理が水泡に帰すということは明らかですから、これは制限をかけざるを得ない。
 一方、それをかけた結果、本来出るべき証拠が出なくなって真相解明ができなくなるということは困るわけですが、それは、イの方で職権で証拠調べができるとしておけば、それで十分対処できるということであろうと思います。したがって、準備手続終了後の証拠調べ請求の制限をこの試案のとおり認めておけば、あえて準備手続終了後の主張制限は設ける必要はないのではないかと思います。

○池田委員 主張明示義務の方については、私は主張制限をかけるというのは反対なわけですけれども、主張制限をかけないのであれば、明示義務をこのような形で残すことはいいと思います。特に、ぎりぎり認否を聞くような形の文言だった最初の案が外れたということもあって、このような明示義務を課すのは相当かと思います。今度は主張制限の方ですけれども、被告人に課さないのは、これはこれまでの議論でも大勢だったと思うのですが、私は、検察官に課すことについても反対の人が多いと思っていたのであまり言いませんでしたけれども、弁護人に課されるとなると、被告人がいろいろ言ったときに、弁護人がそれではどうすればいいのか、今、皸羂儖が言われたように、弁護人の義務との衝突というのが起こってこないか、ということが懸念されます。
 また、検察官についても、今の訴因変更請求については、312条は、検察官が公訴事実と同一性のある範囲内で訴因変更請求をすれば、裁判所は許可しなければならないとなっていて、時機に遅れたような場合には、それは別の理屈でできないとしていたわけですけれども、検察官に主張制限を課すと、現行の訴因変更の制度との関連が特に問題になりはしないかと思います。やはり312条というのは、訴追裁量権が検察官に広く与えられているということが背景にあるので、そことの調整はどうするのかという問題があるだろうという気がしております。
 それから、後の立証制限については、前にもお話しましたように、説明義務でもいいのかなというふうに思っておりますけれども、このような立証制限を課すというのも一つの考え方だと思いますが、ただ、一つ気になるのは、こうなると、裁判所は、準備手続終了後に証拠調べ請求があった場合に、どうしても調べようと、これは調べざるを得ないと考える証拠については、請求が許される場合である「やむを得ない事由」には当たらないということで、請求を却下した上で、職権で採用するというような形になるのか、少しぎくしゃくしないかというような感じは持っております。

○井上座長 最初の点についていえば、主張制限については、これまで主に被告人の主張の制限をどうするかということで御議論があり、それに対して、弁護人については、それほど意識的に議論がなされたわけではないですよね。私としては、そういうこれまでの御議論を踏まえて一応まとめてみたわけです。
 また、よく分からないのは、準備手続終了後の新たな主張はよいのだけれども、新たな立証は制限すべきだという議論がされていますが、本来は、訴訟で主張すれば、それを証拠によって立証していくわけですよね。そのような主張と立証の分断ということをどうやって説明するのかです。準備手続終了後、証拠調べ請求の制限は残るが、主張としては、訴訟上ちゃんとした主張として、行うことはできるということで、そこの連関を切断してしまうわけですけれども。争点整理の実効性を担保するということや、審理計画をきちんと守らせるという機能面だけで言えば、それでいいのかもしれませんが、それだけで正当化できるものかどうかということです。
 また、弁護人に主張制限を課す場合と課さない場合とでは、被告人だけが言うことができるのか弁護人も言うことができるのかという点は違ってきますが、その言ったことがどこに反映していくかというと、いずれの場合についても、結局、(3)のイの職権証拠調べに反映させるしかないわけですね。証拠調べの請求は、準備手続終了後である以上、やむを得ない事情がなければできない。そうすると、イの職権証拠調べで受けるしかないですよね。ですから、弁護人に主張制限を課すとしても、その程度の意味の違いしかないので、そんなに大きな問題なのか、そう大きな差があるのか、疑問に思います。要するに、弁護人に主張制限を課すかどうかは、被告人が新たな主張を述べた場合に、弁護人も追随してといいますか、それを主張することを認めるかどうか、だけの差だと思うのです。
 もう一つ、検察官の訴因変更請求は、検察官に主張制限を課すことにしたとしても、通常は、主張制限の例外事由である「証拠調べの結果に照らし相当な理由がある場合」に該当して、許されることにになるのではないですか。他方、当初から別の予備的訴因とか択一的訴因を掲げるべきであったと認められるような場合には、時期に遅れているということで、主張制限にひっかかってくると思います。確かに、刑訴法312条の文言上は、検察官は時期いかんに関係なく訴因変更請求が可能であり、裁判所は公訴事実の同一性があれば許可しないといけないということになっているわけですが、請求が時機に遅れたかどうかという要素を採り入れるならば、最初からできた場合については訴因変更を許さないという帰結も導けなくはないですよね、解釈として。

○池田委員 ええ。

○井上座長 現実に最も多いのは、最初から訴因として掲げることが可能であったという場合ではなく、公判で証拠調べをした結果、新たな事実が判明してきたとか、そういう場合だと思いますので、この主張制限の案でも、カバーされていることになるのではないですか。

○池田委員 そういう意味ではそのとおりだと思うのです。私が気にしているのは、312条のこの文言は、むしろ広いのではないか。検察官は、どの時期でもできるのが原則でしょう。

○井上座長 ですから、そこは、312条の解釈として、時期による制約が働いてくるのではないですか。

○池田委員 準備手続終了後の主張を制限するような条文をつくるとした場合、それと312条とどちらが基本なのか、どちらが上回るのかということは調整をしておかないとまずいのではないでしょうかという話なのです。

○井上座長 検察官の訴追裁量権をこれまでと同じように優先させると考えるのか、争点整理をし審理計画を立てて審理を行うという要請を優先させて考えていくのか、それはそのとおりだと思うのですが、後者の方の選択をすれば、当然、ある範囲で訴因変更請求ができなくなるということになるのではないでしょうか。ただ、実際に訴因変更の請求がなされ多くの場合は、主張制限の例外の「証拠調べの結果に照らし相当な理由がある場合」というところでカバーされる、そういうことになるのではないでしょうか。

○池田委員 実際の訴訟ではそうなるだろうと思うのですけど。

○井上座長 理屈の上のことを問題とされているのですか。

○池田委員 そのあたりの議論が、これまでは全然されておらず、私もそこまではいかないだろうと思ったのでしなかったのですけれども、もしこういう案になるのだったら、そのあたりも詰めて考えておかないと、みんなそれでいいということなのかどうかということです。

○井上座長 私は、当然そういうことも含んで、念頭に置いて皆さん議論されていると思っていたのですけれども。どうぞ、ほかの方。

○皸羂儖 先ほどの点なのですが、例えば、証拠調べが終わり、最初は通常の殺人を認めていたのだけれども、証拠調べが終わった時点で被告人が急に正当防衛だと言い出したとします。しかし、ここに新しい事実が出てきているわけではないので、例えば「証拠調べの結果に照らし相当な理由がある場合」には当たらないという場合に、座長ペーパーの案で言うと、被告人は正当防衛の主張をし、弁護人は通常の殺人という前提に立った弁論をするということになろうかと思うのですが、そうなってくると、本来の弁護人と被告人の在り方ではない状態になるのではないかと思います。

○井上座長 その場合に、弁護人も正当防衛の主張ができることにするとしても、しかし、証拠調べ請求は認められないという場合は、どうなりますか。

○皸羂儖  職権での証拠調べもありますね。

○井上座長 裁判所が職権証拠調べの必要はないと判断した場合は、どうなりますか。

○皸羂儖 それはそれでやむを得ないわけですね。

○井上座長 そうすると、最終弁論は、要するに我々は正当防衛だと思いますけど、証拠調べはしてもらえなかったので、その点の証明はできませんでしたということになるのですか。

○皸羂儖 既に取調済みの証拠をかなり強引な理屈で正当防衛の主張に引用してしまうとか、いろいろだと思いますが、いずれにしても、私が一番気になるのは、被告人と弁護人の主張が齟齬する、食い違ってくるということを制度的に認めることに対する違和感、弁護人としての違和感というものですね。

○井上座長 最後のところで、そういう形で弁護人も言えるかどうかというところが違ってくるということですね。しかし、立証することが許されないのであれば、弁護人が言うことができるとしても、結局無意味だと思うのですが。

○皸羂儖 無意味なんだけれども、被告人と共にそういうことを言うことに意味がある場合もあるわけですね。それは無意味なことなんだけれども、無意味なことでも、被告人と共に行動することに、弁護人の活動として意味がある場合もある。弁護活動というのはそういうものなんです。そういうものを含むものなんですね。そういうところがこれによって消え失せてしまうということになってくることが、被告人と弁護人の一般的な関係に対していい影響は与えないのではないかということを心配しているということです。

○井上座長 御意見は分かりました。

○四宮委員 そこは、弁護人としてはそういうものがありますね。弁護人の使命は被告人の唯一の援助者ということですから、そこの違和感が残ると思いますね。

○井上座長 そうすると、最初のところで、四宮委員が、弁護人に主張明示義務を課すだけでよいのではないかと言われたところも一緒にしないと、逆に、おかしいのではないですか。説明の中で申し上げたと思うのですが、何も被告人を呼んできて、自ら言ってもらうということでなくて、弁護人が主張していることに、被告人も同じ意向であるということさえ確認できればいいので、言い換えれば、その効果が被告人にも及ぶというのが「被告人又は弁護人」とすることの意味だろうと思うのですけれど、そこは足並みが揃っていないとおかしいということにならないですか。

○四宮委員 そういう考え方も分かりますけど、一つは弁護人だけでいいのではないかということと、私、前から言っているように、この検討会でも黙秘権の関係で、慎重であるべきではないかという意見が出ていましたけれども、それは考慮すべきという意味です。

○井上座長 それは四宮委員自身が言及された意見ですよね。

○四宮委員 いろいろな御意見があるということですけど。

○井上座長 そのような考えを紹介されたのですが、それ以上に突っ込んで、抵触するという理由付けは示されなかったですよね。そういう意見があるというだけで。

○四宮委員 私はそういう議論を紹介しましたけど、ほかの委員の方からも、そういうお話があったかとは思うんですけれども。

○井上座長 それに関連して、もう一点だけですが、四宮委員の説でいくとすると、弁護人だけが主張を明示しなければならないということにした場合に、証拠調べ請求の義務もないということになるのですか、被告人については。

○四宮委員 いつの段階ですか。

○井上座長 準備手続でです。

○四宮委員 主張も証拠も被告人については外したらどうかという考えです。

○井上座長 そうすると、準備手続終了後の証拠調べ請求についての制限の前提がなくなるのではないですか。

○四宮委員 私は、立証制限については、たたき台でいうC案ですので、証拠調べ請求についての制限も加わらないという考え方です。

○井上座長 そうすると、被告人が持ち出す限りは、公判段階で、新たな争点の提示も新たな証拠調べ請求もできるということになりますよね。

○四宮委員 請求はできるということです。ただ、これも御議論がありましたけれども、別の理由でそういうものは却下できるのではないか、場合によって、明らかに不誠実なものなどは却下できるのではないかということです。

○井上座長 そう言えるかどうか疑問ですが、御意見としては分かりました。ほかの方、いかがですか。

○平良木委員 私は座長の試案でいいだろうと思います。要するに、迅速な裁判を実現しようということですから、被告人にいろいろな意味で協力義務が生じるのは当然だと思います。ただ、被告人に関しては、前から述べているところですが、黙秘権との関係でやや疑義が生じるおそれがあると。そういう意味で、最初のところで被告人に義務を課しておいて、主張制限のところで被告人を除くというやり方だとすると、ここの疑義はほぼ解消できるのではないかという気がする。その意味で、この案で賛成だということです。

○井上座長 分かりました。どうぞ。

○酒巻委員 私は理屈を詰めていきますと、結論は逆なのですが、本田委員がおっしゃり、皸羂儖が最初におっしゃったことが一番筋が通っていると思っています。つまり、主張明示義務と主張制限、証拠調べ請求義務と証拠調べ制限は、準備手続を実効化するという観点から制度を設計した場合には、いずれについても、義務と制限の主体は一緒になるのが一番筋が通ると思います。ですから、主張制限のところで被告人を外すというのは、専ら政策的なことなのかなと理解しています。理屈としては全部主体は同じになってないと、気持ちが悪いというのが私の意見であります。
 もう一点、今、平良木委員が、主張制限で被告人を外すけれども、主張明示義務は課すという座長案であれば、黙秘権問題が解消されるとおっしゃったのですが、その理屈がよく分からないのです。被告人に主張を明示させる義務を課したとしても、自己負罪拒否特権や黙秘権違反の問題は生じないという点については、座長案の説明のところに縷々書いてあるとおりで、この問題は、それで十分説明されていると思います。コメントですけれども、以上です。
 それから、もう一つ、皸羂儖は当初の御意見と逆に、主張制限は全部とってしまえばよい、という御意見なのですが、いくら主張ができても、証拠調べ請求には制限があるとすると、一体その主張というのはどんな意味があるか、ということが分からないのです。先ほど皸羂儖と四宮委員のコメントで、弁護人の立場としては、そういうことがあるのだなということは理解できるところではありましたが、私は、むしろ、主張明示義務と主張制限、証拠調べ請求義務と立証制限のそれぞれについて、全部セットで導入し、義務と制限を課す主体は同じにするということがいいのではないかという感を持っています。

○井上座長 皸羂儖は、もともとそういうお考えだったのです。

○酒巻委員 それが、理屈が一番通ると思います。

○平良木委員 あえて言うまでもないことかもしれませんけれども、この主張明示義務を課しても、被告人が実際上何も述べなかったと、しかし、その後で述べることができるということになると、ここのところは実際上義務を課したことにはならないだろうという趣旨で述べているわけです。

○井上座長 ほかに付け加えることがあればお伺いしたいと思いますが、このくらいでよろしいですか。
 それでは、次は、7ページの「(4) 証拠の標目の提出命令」のうちのイについて御議論いただければと思います。検察官が証拠標目の提出命令に応じて、裁判所に証拠標目の一覧表を提出した場合に、それを被告人側に開示すべきかどうかという点ですが、この点について更に御意見があればお伺いしたいと思います。

○四宮委員 従来と同じ意見です。

○井上座長 非常に簡潔な御意見表明ですね(笑)。ほかの方はいかがですか。議論すべきところが既に尽きているように思います。議論を封じるつもりはありませんが。

○皸羂儖 これは裁判官をどこまで信頼できるかという問題ですよね、基本的には。

○四宮委員 そうです。私も裁判官を信頼したらいいということなんです。

○皸羂儖 裁判官を信頼すれば、別に一覧表を被告人及び弁護人に開示する必要はないということにならないのですか。

○四宮委員 開示するかどうかも含めて裁判所に判断してもらったらどうでしょうかということなので、別にこれは議論しなくてもいいです。

○井上座長 皸羂儖が言っているのは、あえて見せる必要はないのではないかという、そういうことなんだろうと思うのですが。

○本田委員 四宮委員の御意見は高井委員と全く逆だと思いますね。

○酒巻委員 証拠の標目の提出命令については座長案に賛成です。今少し議論になったとおり、正に、この提示命令の目的は、裁判官を信頼し、裁判官に一定の証拠が開示すべき証拠であるかどうかを具体的に判断していただくための材料を提供することですから、その判断が可能な程度にあえて標目を作成するわけであり、それは具体的なものでないと意味をなさないと思います。逆にそういう機能を果たさせるためであるからこそ、その一覧表を原則開示にしますと、これは事実上証拠を開示したのと同じような機能を果たして適切でない場合があり得る。以上は全部座長案の説明に書いてあるとおりです。

○皸羂儖 アのところですが、「一覧表の提出を命ずることができるものとする」とあります。この場合に、証拠の標目の記載が不十分だというふうに裁判所が考えた場合には、さらに追加の説明を求めることができるという前提ですよね。

○井上座長 一覧表の記載が不十分な場合には、十分な一覧表を出してくださいということになるでしょうし、ある証拠が関連あるかもしれないということになれば、提示命令により、証拠そのものを出しなさいということもできるということでしょう。

○皸羂儖 標目の一覧表を被告人側に開示しないという規定を設けることには、私も賛成です。そうでないと、かえって証拠の標目が具体的でなくなるおそれがあるので、これは必要だと思うのですね。しかし、その前提としては、かなり具体的な標目を書いていただかなければいけないわけで、それを運用で担保するのか、もっと別の何かで担保するのか、それは考えていただく必要があるかもしれないと思います。

○井上座長 しかし、裁判所が証拠開示の裁定をできないと意味がないわけで、こんな一覧表では不十分だということで、補充した一覧表を提出させるか、あるいはオリジナルの証拠そのものを出させるということによって担保するしかないのではないですか。

○皸羂儖 最終的にはそうだと思うんですよ。

○井上座長 ここに何か書いても、結局それを満たしているのかどうかという争いになるだけでしょう。

○皸羂儖 それはそうなんですけど、四宮委員の立場に配慮すると、そういうようなことを言っておいた方がいいかなと。

○井上座長 高井委員、今日はどうかしたのですか(笑)。

○大出委員 混ぜ返すつもりはないんですが、前の議論のときにそういうお話があったことと連動している部分があるのだろうと思うのですが、一覧表について、裁判所から指示があったときに、検察側が、直ちに、言わば完璧なものをちゃんとお出しいただくということでの担保措置というものはどういう形で確保されるのかという問題だと思うんですけれども、つまり、前、お話をいただいたときは一覧表をつくるのは非常に厄介な話なのだというお話があったので、もちろんこういうことであれば、当然おつくりいただくことになるのだろうと思いますし、それをどういう形で見きわめるかというときに、裁判所を信頼しないというわけではないのですけれども、果たしてそれがすべてで、もちろんそれで補正措置を要求するとか何とかということができるということであればいいと思うんですが。

○井上座長 今の御議論は、裁判所に提出された一覧表を被告人側に示すかどうかという問題というよりは、出された一覧表が記載すべき証拠すべてをカバーしているかどうかということなのでしょう。

○大出委員 私は、ですから、それは弁護人に見せるということによって、一つはその担保措置を講じるという意味もあるだろうと思うものですから。

○井上座長 そういう担保機能はないのではないですか。書かれていないものについては、その一覧表を見ても分からないのですから。

○大出委員 だけど、それは書いてないというものについて、これは弁護人がどう見るかという問題ですけれども、書いてないということの不自然性ということが問題になる場合があるわけですね。

○井上座長 例えば、どういう場合ですか。

○大出委員 ですから、本来あってしかるべきものがそこにないという、ないのではないかという。

○井上座長 それは、裁判所に対して言えばいいのではないですか。

○大出委員 ですから、裁判所に言うためには見ないと分からないわけでしょう。

○井上座長 しかし、裁判所としては、一覧表に見る限り、弁護人が請求するような証拠はなかったというだけのことでしょう。

○本田委員 ちょっといくつか整理したいことなんですけれども、証拠の標目をつくるのは大変だと言ったのは、関係のない、開示する必要もない証拠も含めて、標目の一覧表を、全事件、全証拠についてつくれなんて、そんなことは無理ですよ、と言っただけで、座長案のように、ある事件について、類型と範囲を特定して作成せよと言われれば、それは作業として十分に可能なわけですよ。
 もう一つ、証拠があるのかないのかという問題については、弁護人は、こういう証拠があると思っているとおっしゃるなら、そのあると思う証拠を特定して開示の請求をされればいいわけですよ。そうしたら、当然調べて、それが開示が相当な証拠であれば開示するわけですし、また、裁判所が開示の裁定をするために、その証拠を含む類型・範囲の証拠について、標目の一覧表をつくってくれと言われれば、その判断のために十分な標目の一覧表を検察官側でつくるわけです。裁判所から、全体から見て、こういう証拠があるのではないですかと求釈明があれば、そこは当然調べるでしょうし、それがあればきちんと対応することになります。その上で、裁判所が的確に判断していくわけですから、この構造で何らか問題ないはずなんですね。あるはずだとおっしゃるんなら、それはそうだと請求されればいいわけです。だから、一覧表を被告人、弁護人に見せたから解決できるとか、そういう問題とは全然違います。

○井上座長 開示請求は、請求する証拠の特定といっても、例えば、こういう種類の証拠で、こういう事項に関連するもの、といったような特定でよいわけです。また、裁判所は、こういう証拠があれば出してくださいと検察官に命じたり、あるいは、その証拠があるかないかをチェックするために、この類型の証拠の一覧表を出してくださいと検察官に命じることができ、裁判所がその一覧表をチェックした限りでは、開示請求されたような証拠はなかったということであれば、それ以上は、その一覧表を見ても、チェックのしようがないと思うのですが。弁護人としては、いや、そういう証拠はあるはずだと、もう一度裁判所に言うしかないと思うのです。

○大出委員 ですから、言ったときには、裁判所はもう一度補正なり、これでは不十分ではないかということで検察側に対する指示をするということになると思うんですけれども。

○本田委員 そこは裁判所が判断するわけです。

○井上座長 必要があれば、ですね。

○池田委員 もし、あるはずの証拠が、一覧表に記載されていない疑いが本当に強ければ、最終的には、裁判所はその証拠の提示命令をかけるなり、あるいは現に保管している証拠物はみんな持ってこさせるとか、そういうことだってあり得るのではないでしょうか。

○井上座長 そこから先にいくと、結局、検察官が信用できないということになってしまい、それでは、どうすればいいのかということになりますね。 ほかによろしいですか。大体これまでと同じような御議論が出たように思いますが、次は、7ページの末尾からの「9 開示された証拠の目的外使用の禁止等」の「(1) 目的外使用の禁止」というところで、この点も議論があったところですが、さらに御意見があれば伺いたいと思います。いかがでしょうか。

○皸羂儖 私は、前のたたき台の段階では、制限される目的外使用の範囲が広くなり過ぎるのではないかと申し上げた記憶があるのですが、この座長試案の書き方であれば、「複製その他その内容の全部又は一部をそのまま記録した物又は書面」となっておりますので、要旨を説明することは、これは可能になっているわけで、そういう意味では、この書きぶりでいいのではないかと思います。それから、目的外使用をしたときに、どの程度の罰則をかけるかということなんですね。ここでも懲役が入っていますので、いろいろな御意見は出てくるとは思いますが、しかし、この目的外使用でもいろいろな使い方があるわけだと思うんです。社会的非難を受ける度合いにおいて、いろんな程度の差のある使い方があると思うんですね。例えば、いわゆる裁判闘争をするために使ったという場合と、営利目的で使って、例えばインターネットで広く売りさばいたという場合とではこれは全然違うわけですよね。営利目的でインターネットで売りさばくというような弁護士が出てくるかどうか分かりませんが、仮に将来そんなことをした弁護士がいるとすれば、それはやはり懲役相当だろうと思うんですね。そういう意味では、懲役が選択刑として置かれるということはやむを得ないのではないかと思います。

○井上座長 ほかの方は、いかがですか。どうぞ。

○四宮委員 私は従来と同じなのですが、まず、アの方なんですけれども、「内容」を外していただけた点は本当によかったと思います。ただ、この「使用してはならない」という点が非常に抽象的ではないかと思うんです。例えば、仮に証拠の複製を、風呂の焚きつけに使ったと。それは、審理の準備以外の目的で使用したと……

○井上座長 それは、例としてはちょっと……

○四宮委員 いや、だから、誰もそんなことがこれに当たると思ってないと思うんですね。ここで恐らく想定されているのは、使用によって、何かその情報を外へ出してしまったり、あるいは関係者の名誉を侵害したり、あるいは審判に影響を与える、あるいは捜査に影響を与えるというような、そういう弊害が生ずることを想定しているのだと思うのです。そうだとすると、一つは、想定するものをもうちょっと明らかにできないだろうかと思います。最近、犯罪被害者等の関係で記録の閲覧・謄写が認められるようになり、そういう記録の取扱いについての注意が法律上載っていますけれども、そういったものを参考にできないだろうかと思います。例えば、少年法にあるように、「正当な理由がないのに閲覧・謄写によって知り得た事項を漏らしてはならない」とか、「閲覧・謄写によって知り得た事項をみだりに用いて関係人の名誉や生活の平穏を害したり、あるいは捜査・裁判に支障を生じさせるようなことをしてはならない」とか、何かそういう形で特定できないだろうかというのが一つです。
 あるいは、また逆に、前も言いましたけど、弁護士としてのいろいろな、さっきの裁判闘争とは違って、活動ということもあり得るので、「職務上必要がある場合」と、そういった形の規定ぶりはできないだろうかということをアの部分では考えております。
 それからウの部分については、これも従前申し上げてきたとおりですけれども、制裁、特に刑事罰については反対です。これも繰り返しになりますが、今の弁護士倫理の関係では、秘密の守秘義務、記録の保管については、依頼者との関係を超えて、行為規範として規定をするに至ろうとしております。
 それから、被告人との関係は、私はむしろ開示方法の指定などで対応すべきではないかと考えています。例えば、現在も強姦事件の記録などは、被害者の名前が被告人に分かってない場合には記録を見せたりする場合も名前や住所を隠したりしている弁護士が私はほとんどだろうと思いますけれども、そういった開示方法の指定等で対応していくと。ですから、目的外使用についての刑事罰はもうけずに、一般的な刑罰法規に触れる場合には、そちら側で対応したらどうかという意見です。

○井上座長 最後の刑事罰の点なのですが、皸羂儖が言われた点についてはどうなのですか。

○四宮委員 インターネットで売ったという場合ですか。

○井上座長 例えば、調書のコピーそのものを、インターネットでも何でもいいのですけれど、公表したというような場合も、弁護士倫理だけで足りるという御意見ですか。

○四宮委員 刑罰法規に触れればもちろん刑罰法規ですし、刑罰法規に触れない場合は、弁護士倫理でやると。あるいは民事上の損害賠償でやると。

○井上座長 そういう悪質な場合もあるから、法規をつくるべきだというのが、今回の案の趣旨なのです。

○四宮委員 そうですね。

○井上座長 目的外使用について、当罰性はないということですか。

○四宮委員 刑罰との関係ではですね。

○井上座長 そこはよく分からない。結論は明らかなのですけれど、なぜそうなるのかという理由がですね。被告人の開示方法の制限といわれるけれど、渡した場合に、その渡ったものを使うということがここで想定されていることなのです。内容を漏らすということは、処罰対象には入ってこないわけでしょう。いくら墨で塗ったとしても、分かるものは分かる。推認できるときは推認できるわけですね、その物自体が出てしまえば。そういうものは構わないのですか。

○四宮委員 そういった出ることが予想される場合は、そもそも、例えば弁護人限りというような指定をすることも可能なわけですね。

○井上座長 でも、予想に反して実際に出てしまった場合にどうするかということは、また違う話ではないですか。

○四宮委員 そういう意味では弁護人の責任だと思います。

○井上座長 そうすると、その場合、弁護人は何か懲戒の対象にでもなるのですか。被告人を信頼して調書のコピーを渡したのだけれども、その信頼を裏切って被告人が外に出してしまったという場合にですが。

○四宮委員 それは難しいケースかもしれません。

○井上座長 私だけしゃべって申し訳ないのですけれど、最初におっしゃった使用のところは、通常の刑罰法規の解釈でもあり得ることで、趣旨解釈として、薪にくべたとか枕にしたとか、そういうのは使用に当たらないことは明らかではないでしょうか。それに対して、2番目におっしゃったことがよく分からなかったのですけれど、職務上使うというのは、民事訴訟で使うとか、そういうことではないのでしょう。

○四宮委員 そうではないです。これは前にも言いましたけど、例えば、これから公設弁護人ができて、記録を使ったケース研究だとか、そういった形も出てくるだろうと。そのときにいちいち記録を例えばつくり直さなければいけないのだろうかと。限られた範囲での研究、勉強、実務、ノウハウの蓄積、普及という関係ですね。

○井上座長 その場合、検察官から開示されたけれど公判では結局使わなかった調書等をも含めて、開示証拠そのものを使わなければならないという、そこまでの必要が本当にあるものなのですか、ケース研究というものは。

○四宮委員 弁護士一般にもそういう義務がありますが、特に運営主体に常勤で雇われる弁護士などは、運営主体が独自にまたそういった守秘義務等を課す可能性もあると思うんですね。

○井上座長 守秘義務の問題もあるのですけれど、開示された証拠の複製そのものを使うということではなくて、こういうものがあったなどと、その概要を紹介することは禁止されないわけでしょう。

○四宮委員 ええ。

○井上座長 ですから、あえて複製そのものを用いなければケース研究などができないというのは、よく分からないのですよ。

○四宮委員 その方が研究効果が上がるのではないでしょうか。

○井上座長 それで十分な理由となるものかどうか疑問ですけれど、他の方もどうぞ。

○本田委員 「使用してはならない」ということが抽象的であいまいだとおっしゃいましたけど、「職務上使う」という方がもっと抽象的であいまいな気がしてしようがないのですが、ケース研究をされるというなら、それなら事件が確定した後、確定記録の中でそれを閲覧してもらって、それでケース研究してもらえばいいわけで、何も開示したものを用いてやらなければケース研究はできないという話ではないと思うんですね。
 刑事訴訟の記録というのは、手続の各段階ごとに閲覧の主体を制限したり、その内容を制限するなどしている法律がちゃんとできていて、それは、その必要性があって、そういう閲覧のルールができているわけです。したがって、そのルールの中で利用してもらわなければいけないわけであり、もともと何のために証拠開示をしたかというと、争点整理とか、そういうことのために開示をしたものですよね。それをほかの目的のために使うというのは、本来それはあってはならないことなんですよ。誰も、目的外で使用されるということを想定してないわけですから。例えば、供述調書を作成するときでも。

○酒巻委員 前半は本田委員が言っていただいたので同じですが、正にこれは証拠開示の範囲が今よりも広がるということも一つの契機になって、目的外使用を基本的には禁止する。そういう頭で案ができているわけですね。四宮委員の意見には反対です。座長案のとおりでいいと思います。もし、このような規律がなければ、むしろ私が裁判官であれば、証拠開示の範囲を狭く判断する一つの弊害要素が生まれることにもなりかねないと思います。開示された証拠が本来の目的以外の目的で使用されないようにするための押さえがなければ、それは、結局、表現がよくないかもしれませんが、被告人・弁護人が割を食うことになるのではないか。つまり、本来の防御準備の目的に資するべき証拠も、目的外使用により、例えば、第三者に証拠が流出するようなことまで考えて開示の弊害を考えなければいけないということになれば、運用としては開示の範囲が狭くなる方向にいきかねないので、それは本末転倒であろうと思います。
 なお、刑事事件の記録を、刑事事件の審理以外の事柄に使える場合はあると思いますが、それは今、本田委員がおっしゃったとおりであり、別途使う必要がある場合には、それを使うことができるようにするための制度的な手当てができておりますので、その公式のルートでやられるのが筋ではないかと思います。

○井上座長 御趣旨をもう一度確認したいのですが、守秘義務の関係に触れられたのですが、例えば、公的弁護の運営主体に雇われている常勤弁護士などの場合は、運営主体が守秘義務を、当該事件の担当者でなくて、別の弁護士さんにかけることもあるのではないかと言われたのだけれど、考えられるのはそういう場合だけですか。例えば、公的弁護の運営主体ではないのだけれども、日弁連の刑事弁護センターとか、ひまわり基金の弁護事務所とか、そういうところでも同じような要請はありますよね、ノウハウを積み重ねるという意味では。
 そういった場合に、当の事件の担当の弁護人ではない弁護士が、例えば開示された供述調書そのものを見ることになるわけですが、その弁護士に、開示証拠に記録された情報についての守秘義務というのはかかるんでしょうか。現行法では、守秘義務を負わせることはできませんよね。

○四宮委員 どういうシチュエーションで使うかということによって大分違うのではないですか。例えば、公的な組織の、ある公的な委員会とか、そういう形のものと、例えば一つの公設事務所の中の刑事専門のセクションというのは多分できるのだろうと想像しますけれども、その中だけでやるものとはおのずから違うのではないでしょうか。

○井上座長 違うというのはどういう意味なのか分からないのですが、少なくとも守秘義務がかかるかどうかという点では、現行法を前提にする限りは、かからないわけでしょう。

○四宮委員 現行法とおっしゃっているのは。

○井上座長 現行の弁護士法の下で守秘義務がかかるのですか。そこはどうなのですか。

○四宮委員 現行法でも守秘義務はあると思いますけど。

○井上座長 本当にそうですか。

○四宮委員 ええ。

○井上座長 当該事件の弁護人以外の弁護士にも守秘義務がかかるのですか。

○四宮委員 当該事件ということですか。

○井上座長 その弁護士としては、職務上知り得た秘密ではないわけですから、守秘義務はかからないのではないのでしょうか。もしそれがかかるというのなら、公的な委員会であろうと何であろうとかかるように思うのですけれど、それも弁護士としての職務だということになればですね。

○四宮委員 ちょっとそこまでは、私、考えていませんでしたけど。

○井上座長 ですから、その辺をつめて考えたときに、どうなのかということです。運営主体の場合に独自の守秘義務がかかるということならば、守秘義務違反があったときは、運営主体からクビにされるかどうかという制裁の話につながると思いますが、守秘義務がかからないときには、何の規制もないということになってしまうので、その辺との見合いも当然考えておかなければならないわけですよ。ほかの方は、いかがですが。どうぞ。

○樋口委員 「複製その他その内容の全部又は一部をそのまま記録した物又は書面」なんですけど、要約をすれば、その目的外使用は禁止されないということなんですか。

○井上座長 この案ではそうですね。

○樋口委員 この種の規定を置く目的ですが、国民が、参考人として捜査に協力して、情報提供するとか、供述をするというとき、その中身が、本来の協力した目的以外に世間に流布するということは通常好まないわけですね。捜査協力がやりづらくなるようなことはやってはいけないというところに、この規定の目的があるとすれば、これは、要約した方が、協力者は要するに何を言ったのか、どういう情報提供したのかが、クリアーになるということがあります。ですから、当初、たたき台の案は「内容を」となっていたんですね。

○井上座長 そこのところは、規制の対象が広過ぎるのではないかという御指摘があったので、それを踏まえて修文したのです。

○樋口委員 そうなんですけど、これでは、要するに何のための規定なのかというところにかかわるものですから。

○井上座長 しかし、そこは、開示された証拠の目的外使用を禁止するということでカバーするほかないのではないでしょうか。弁護人については、守秘義務でカバーすることになるのでしょうが、問題は、被告人の場合であり、被告人について、そこまでの義務がかけられるかというと、ほとんど不可能ですよね。
 そういう意味では、樋口委員のお立場から言うと、穴があるということになるかもしれません。

○酒巻委員 今の部分は、私も樋口委員と同じことを危惧しているところで、捕捉するのは無理ですか、この条文だと。確認なんですが。

○井上座長 皆さんの御議論を踏まえて、更に限定したということです。あえて「複製その他その内容の全部又は一部をそのまま記録した物及び書面」という限定をした趣旨からすると、それは落ちてくるということでしょう。

○本田委員 確かに、樋口委員の方から言われたような懸念というのは、捜査に携わる方から言えばあるわけですけれども、要約した文書そのものというのは、世間というか、見た人の持つ信用の度合いが違うのだろうという気はするんですね。要約したものは所詮要約した人が書いた文書にすぎない。要約した人の分析があるわけで、それに対し、コピー等の複製や、そのまま逐語的に記録したものというのは、それは、やはり、あいつがこう言ったのだということがはっきり分かってしまうわけで、弊害の程度が大きいと思います。確かに、捜査に携わる者の立場から言えば、不十分だという気もしますし、もうちょっと広くしてもいいかと思うのですけれども、そこは、どこかできちんと線を引かなければいけないということになると、現在の案でも、それなりの効果を持たせることができると思います。

○井上座長 完全にカバーしようとすると、口頭であろうと一切漏らしてはならないというふうにしないと、恐らくだめだと思うのですね。
 この点に関し、ほかに御意見はありますか。よろしいですか。それでは、先に進ませていただいて、8ページの下から始まる「2 訴訟指揮権に基づく命令の不遵守に対する制裁等」というところの「(1) 命令の不遵守に対する制裁」と、「(2) 裁判所による処置請求」という項目について、御意見があれば伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。

○本田委員 内容は、基本的な枠組みはこれでよろしいのですけれども、(2)のアの裁判所の処置請求のところの通知先は、新たにできる公的弁護の運営主体も加えておくべきではなかろうかという気がしています。今、制度はまだできてないわけですけど、将来的に、運営主体が何らかの、懲戒等の権限を持つということになれば、ここにも、通知をすべきことになると思います。ですから、弁護士会又は日本弁護士連合会のほかに運営主体と書くかどうかは別ですけれども、そういったものを、あるいは「等」と書くということで、それは含まれるということにしておけばよいのではないかと思います。

○皸羂儖 ここで書かれているのは、多分弁護士の身分に関するものを想定されていると思うんですね。弁護士の身分に関することですと、これは運営主体にそういう権限を与えるということは今のところは確認されてないと思うんですよね。したがって、そういう観点から言うと、この書きぶりはこのままではいいのではないかというふうに思います。

○井上座長 「適当の処置」というところをそういうふうに読むのか、もうちょっと幅広に、雇用している雇用主が適当の処置をとるということまで含むのかによって、それは違ってくるのだろうと思いますね。その辺は、ここに何を盛り込むのかということの検討と同時に、公的弁護の検討会で、公的弁護の運営主体というものを前提にし、常勤弁護士などの場合に、それに対してどういう懲戒なり、コントロールの仕方があり得るのかという点での議論がかなり煮詰まってはきてはいますが、どっちかに決めているわけではないので、それとの見合いで、こちらの方も修文していく必要が出てくるかもしれない。そういう問題かという気がします。
 そういうことでよろしいですか。ほかによろしいですか、この点は。

○四宮委員 簡単ですけれども、特にイの訴訟行為の関係では、これも繰り返しですけれども、訴追のために必要である、あるいは防御のために必要であると考えていても、それをすべて裁判官に理解していただくことがあらゆる場合に可能であるとは限らないので、もちろん裁判官がここを行使されるというのはいろいろ我慢された上のことが現実には多いのかもしれませんけれども、しかし、なかなかすべての場合に理解をしていただくということにならない場合もあるのだろうと思いますので、だから、その場合にも、私自身は、関係人の制裁、その過料による制裁には実効性に疑問があるという従来の意見と同じです。

○井上座長 それは実効性というよりは、適切かどうかという御意見じゃないですか。

○四宮委員 そうですね。むしろ。

○井上座長 実効性はあるかもしれないので、あり過ぎるから困るということなのではないですか。

○四宮委員 座長のおっしゃるとおりで、適切かどうかという点で言いますと疑問があるということですね。

○井上座長 それでは、どうすればいいのですか。

○四宮委員 それは、ですからそれぞれ、あまりにもひどい場合は何かまた別の訴訟指揮権を行使していただくことになるのかもしれませんが。

○井上座長 尋問又は陳述の制限ですよね。

○四宮委員 ええ。

○井上座長 それ以上尋問するのはやめてください。重複だとか、あまりにもひどすぎるので、やめてくださいと言った場合に、それを無視して尋問を続けたといった場合ですね。

○四宮委員 ええ。従来、申し上げたように、それは弁護士倫理で処置をしていくと。あるいは検察官の場合であれば、検察庁の処分に従った処置をするいう形で対応したらどうかということです。

○井上座長 しかし、現に尋問が続けられる場合、その場では止めようがない。止めようがないけれども、そういう事実があったら、それを弁護士会なら弁護士会、検察官なら検察庁の指揮・監督権を有する者に通知をして、事後的に、適宜の措置をとってもらう。そういうことによって一般的に抑止していく。こういうことですか。

○四宮委員 過料に処すとしても同じ状況は残るのではないですか。

○井上座長 その場面ではですね。

○四宮委員 と思いますけど。

○井上座長 過料を科しますよというふうに言っているだけでは効き目がないということですか。

○四宮委員 現在でも命令は出せるわけですので、状況は同じかなという気がします。

○本田委員 弁護士倫理で対応するという点については、前から何回もそういう状況ではないということは申し上げているのですけれども、今、過料にしてもそういう人はしようがないのではないですかと、過料の効き目がないとするならば、もうちょっと罰則を引き上げなければならない、ということになるのではないですか。

○井上座長 刑罰ということですか。

○本田委員 だから、ここまでやれば、普通弁護士さんも言うことを聞いてくれるでしょうと期待しているわけで、いや、それでも、止めませんとおっしゃるのなら、理屈としては、過料では済まないということになるのではないかということです。

○四宮委員 ただ、意見書も、法廷のより良き慣行とか、法曹三者の信頼関係で、充実した迅速な公判を、という趣旨を述べていますので、そういう方向はむしろ逆行ではないかという気がしますけれども。

○井上座長 そういう部分もあると同時に、訴訟指揮権の実効性を担保する方法についても考えろと言っている部分もあるので、どこをとらえて言うのるかによって方向が違ってくると思いますね。どうぞ、池田委員。

○池田委員 四宮委員の言っていることについてなんですが、こういう事態にならないことがもちろん一番望ましいことですし、訴訟関係人が裁判所の訴訟指揮に従っていただくのが一番いいわけですけど、刑訴法295条の命令を出すこと自体がかなり特異なときでないとできないことで、通常は我慢に我慢を重ねてやっているわけで、それでもなかなか聞いてもらえないときがあるということを考えると、今まで裁判所に対しても、何で訴訟指揮でもっとできなかったのかという批判もあったわけで、そこで強い訴訟指揮権を担保できるものがあるということは必要なのかなと思います。もちろんこのようなことをしなくて済むような事態になることが望ましいことは間違いありませんけれども。

○井上座長 ほかに、この点について、付加する御意見はありますか。よろしいですか。それでは次に進ませていただいて、9ページ以降の「第5 即決裁判手続」、この項目の全体について御意見を伺いたいと思います。これまでも時間をとって議論していただいたところですので、主として赤字の部分を中心に御意見をお伺いできればと思いますが、どこからでも結構ですので、御発言いただければと思います。いかがでしょうか。

○池田委員 1点だけ、上訴制限のことですが、前にもお話しましたように、なかなか、事実誤認を理由とするのか、量刑不当を理由とするのかということで切りにくいのではないかと思います。特に、対象事件が執行猶予になる事件だけだということになるならば、上訴制限はなくてもいいかなという気がしておりますが、それ以外の点では、座長案で結構かと思っております。

○井上座長 上訴制限の点については不要ではないかということですね。

○本田委員 この上訴制限というのは、きちんとこういう制度の中ではつくっておくべきだろうと考えています。最初から自白している事件で、事案が明白で、しかも証拠の範囲から見ても妥当なものについて、簡易迅速な手続を設けていくわけで、必要な捜査は当然尽くしてやるわけですけれども、いろんな細かい弁解などが出ることは想定してないわけですね。それを、後になって、いや、あそこが違った、ここが違ったというようなことを許すような制度にしておくと、この制度そのものがうまく動かないのではないかなという気がしております。量刑不当と事実誤認の切り分けができない場合があるのではないかという御懸念なんですけれども、事案複雑な事件では、犯情を認定するときに、罪体そのものは間違いないけれど、犯情の部分の事実誤認が量刑に影響するという場合もあるのかもしれませんが、この手続に乗せる事件は、最初から事実関係が簡明な事案ですよね。ですから、量刑不当は量刑不当だと、事実誤認は事実誤認だと、その切り分けがそんなに困難であるとは思えないのですけれど。

○皸羂儖 前も申し上げましたけれども、日本の裁判が長くなるというのは、一つは、検察官の過剰捜査、弁護人の過剰防御にあると思うんですね。両方とも富士川の平家のようになって、要らぬ心配ばっかりしているから、時間が掛かってしようがないということだと思うんです。先ほどの池田委員は、執行猶予になるのが明らかになる事件だからとおっしゃいましたけれども、検察官というのは、とにかく非常に慎重になって、少しでも自分の認定と違うような結果になるおそれがあるのであれば、しっかりやりましょうということになるわけで、ここは上訴制限をつけておかないと、富士川の平家のようになって、なかなかこの制度は使わないということになりかねないと思います。したがって、ここは、科刑制限をかけるとともに、上訴制限もかける。これはセットでやらないと、なかなか使い勝手のいい制度にはならないと思います。

○井上座長 ほかの方、いかがですか。よろしいですか。私の方で、さらに議論していただいた方がよいと考えました項目については、一通り御意見を伺うことができましたので、委員の方々から、それ以外の項目について、御意見があればお伺いしたいと思います。特にございませんか。
 それでは、刑事裁判の充実・迅速化については、一通り御意見をお伺いしたいということでよろしいでしょうか。次に移る前に、ちょっと早いのですけれども、ここでブレイクを入れさせていただきたいと思います。
                  (休 憩)

○井上座長 それでは、再開させていただきます。
 前回お配りした「考えられる検察審査会制度改正の概要について」という表題のペーパーについて御説明したいと思います。お手元にお配りしてあるペーパーのとおりですが、作成の経緯、全体の構成については、これまでの、裁判員制度と刑事裁判の充実・迅速化に関する二つのペーパーについて申し上げたのと基本的に同様ですので、省略させていただきます。
 内容についてですが、赤字の部分を中心に御説明申し上げますと、まず1ページの「(1)議決の種類」については、起訴相当の議決に法的拘束力を付与するということしております。これはたたき台どおりでして、検討会でも、特に御異論はなかったと承知しておりますので、そのとおりにいたしました。
 次の「(2)議決の要件」につきましては、たたき台とは構成が若干異なっておりますけれども、いわゆる二段階案を基本的には採ることとし、その上で、最初の起訴相当の議決から、法的拘束力のある起訴相当の議決に至る手続の流れに沿うような形で、法的拘束力のある議決の要件を示した次第です。
 たたき台では、二段階案のほかに一段階案というものが掲げられており、検討会の議論では、それぞれの案を支持する御意見があったところですが、二段階案を支持する御意見の方がやや多かったのではないかと理解しております。その際、御指摘があったとおり、二段階案というのは、それを採る意味としては、一つは、慎重な手続をとることによって、検察審査会の公訴提起の判断がより適正なものとなることが期待でき、被疑者・被告人の人権保障の観点からも相当であると考えられるということです。そういう点にも配慮して制度を考えるべきだというのが審議会意見の趣旨でありましたので、こういう案を採る方がその趣旨に適うのではないかと考えました。
 もう一つの理由は、検察審査会が起訴相当と判断したときも、本来公訴提起の任に当たる検察官に再考をさせ、なるべく通常の形で訴追を行わせるのが適切ではないかと思われるということです。
 具体的には、まずアで、検察審査会が、法的拘束力のない起訴相当の議決を行ったときは、検察官は、速やかに処分を再考しなければならないとしております。
 次いで、イ(ア)で、アによる再考において、検察官が、不起訴処分をしたとき、又は、法的拘束力を有しない起訴相当の議決後3か月以内に公訴を提起しなかったとき、そのいずれかのときには、審査申立人が別段の意思を表示をしたときを除き、検察審査会は、再度、当該事件について審査を行うこととしております。
 また、イ(イ)では、(ア)の3か月という期間は、検察官が、3か月を超えない範囲で延長を必要とする期間とその理由を検察審査会に通知したときは、その必要として明示された期間に限り延長されるものとする、という案をお示しししています。
 たたき台では、二段階案の中にも、二通りあって、検察審査会が二段階目の審査をする前提として、改めて審査申立てあるいは職権審査の議決を要するという案と、審査申立て等を経ることなく、二段階目の審査を開始するという案があったわけですが、御指摘があったように、改めて審査申立て等を要するとするのは、申立人の負担などを考えると適当ではないということから、基本的には、検察官が3か月以内に公訴を提起しなかった、あるいは検察官が不起訴処分を再度したときは、自動的に審査が開始されるという案にした次第です。
 ただし、これも御意見があったように、それを基本にしながらも、例えば審査申立人と被疑者との間で示談が成立したといったようなことから、審査申立人に再度の審査を求める意思がない場合にまで、必ず二段階目の審査を行うとするのも適切ではないということから、そのような場合は除くことにしました。
 また、たたき台の二段階案では、検察審査会が再度の審査を始めるまでの期間は、「一定期間」とされており、具体的に示されておりませんでしたが、検討会においては、原則は3か月とし、ただし、例えば鑑定等のためにそれ以上の期間が必要となる場合もあるので、検察官が通知をすることによって、更に3か月に限って延長されるものとすべきであるという御意見があったことを踏まえまして、期間についても具体的に明記した次第です。
 なお、たたき台にも記載されていたところでありますけれども、検察審査会が、二段階目の審査において、不起訴不当の議決をすることができるものとしますと、再度検察官が処分を見直すということになるわけで、公訴が提起されるかどうかが未確定の状態が更に継続することになり、特に被疑者の立場を考えますと、適当ではないと思われますので、二段階目の審査においては、不起訴不当の議決はできないということにいたしました。
 次のウでは、検察審査会による二段階目の審査で法的拘束力のある起訴相当の議決を行うためには、検察官に対し、検察審査会議に出席して、最初の起訴相当の議決にかかわらず公訴を提起しなかったということに関して意見を述べる機会を与えることを必要条件としております。これも検討会の御意見の大勢を踏まえたものであります。
 次に、2頁の「(3) いわゆる法的拘束力のある議決後の訴追及び公訴維持の在り方」におきましては、法的拘束力のある起訴相当の議決後、その議決書謄本の送付を受けた裁判所が、公訴提起及びその維持に当たる者を弁護士の中から指定し、その指定を受けた弁護士が議決に従い、当該事件について公訴の提起及びその維持をするため、裁判の確定に至るまで検察官の職務を行うものとするが、司法警察職員等に対する捜査の指揮は、検察官に嘱託して行わなければならないものとする、という案をお示ししております。これは、基本的には、たたき台ではB案として掲げられてあったものによったものです。
 たたき台では、このほかに、公訴の提起は検察審査会が裁判所に起訴状に相当する書面を直接送付することによるが、公訴の維持は指定弁護士によるというA案と、検察官が議決に従い公訴の提起及びその維持に当たるというC案も掲げられておりましたけれども、検討会の議論では、ここにお示ししたようなB案を相当とする御意見が多数であったと理解しております。
 検討会の議論でも御指摘がありましたが、C案については、不起訴処分を一貫して維持した検察官が公訴維持に当たるとするのは、公正らしさという点で問題があり、国民の納得が得られないおそれがあるように思われますので、採るべきではないと考えました。A案につきましても、検察審査会にそこまでの役割を担わせるのは検察官の不起訴処分の当否を審査するという検察審査会本来の性格になじむのかという問題や、略式命令によることが相当な事案につき略式請求手続をとることが困難になるという問題があり、これを採ることも適当ではないように思われます。そこで、そういった難点を伴わないB案によるのが基本的には妥当だと考えた次第です。
 ただ、若干細かな点ですが、たたき台のB案では、指定弁護士を指定する裁判所について、検察審査会の所在地を管轄する地方裁判所となっていたわけですが、その地方裁判所やその管轄区域内の裁判所には当該事件についての管轄権がない場合も考えられます。その場合には、管轄区域外の裁判所に公訴が提起され、そこで公判が行われることになるわけですのに、そのために活動する弁護士を、検察審査会の所在地を管轄するだけの地方裁判所が指定するというのは適当ではないのではないか。そういうことで、そこの部分を「事件につき管轄権を有する地方裁判所又は管轄権を有する裁判所の所在地を管轄する地方裁判所」というように変更したわけです。やや分かりにくいかもしれませんが、「又は」以下の「管轄権を有する裁判所の所在地を管轄する地方裁判所」というのは、例えば、事件が簡易裁判所の専属管轄に属する場合のことでありまして、そのような場合でも指定弁護士の指定は地方裁判所が行うというのが適切ではないかと考えたことによります。
 また、検討会におきましては、指定弁護士の捜査権限についても御議論があったところですが、指定弁護士は、「検察官の職務を行う」ものとしつつ、先ほど申しましたように、司法警察職員等に対する捜査の指揮は、検察官に嘱託して行うという形にしました。これは御存じのように、現行刑事訴訟法の付審判の制度における指定弁護士の権限に倣ったものであります。
 これも、検討会の議論で、複数の方々から御指摘がありましたが、「検察官の職務を行う」ものとするという規定ぶりにすることによって、指定弁護士は捜査に関しても検察官と基本的に同一の権限を有することになるわけです。同時に、付審判の制度において、捜査の指揮は検察官に嘱託して行うとされているのは、捜査の指揮が円滑に行われるようにするという趣旨によるものと理解されるわけですが、検察審査会の法的拘束力のある起訴相当の議決に基づいて公訴が提起される場合の指定弁護士による捜査の指揮につきましても、捜査の指揮が円滑に行われるようにするという点で、事情は何ら異ならないと考えられますので、この点も付審判の場合と同様とした次第であります。
 次に2頁の、「2 検察審査会の組織、権限、手続等の在り方」の「(1) リーガルアドバイザー(仮称)の委嘱」という点につきましては、まず、アで、検察審査会が必要と認めるときには、弁護士のうちから、リーガルアドバイザーを委嘱することができる。これが一つであります。もう一つは、議決の要件のところでお話しした二段階案を採ることを前提として、1(2)の再度の審査を行うときには、必ずリーガルアドバイザーを委嘱しなければならないものとしております。
 この点について、たたき台では、A案として、リーガルアドバイザーは、検察審査会が必要と認めるときに委嘱することができるという案が、、B案として、検察審査会が必要と認めるときに委嘱することができることに加えて、法的拘束力のある起訴相当の議決を行うに当たっては、リーガルアドバイザーの委嘱をしなければならないという案が、そしてC案として、不起訴処分の当否を審査する場合には、リーガルアドバイザーを委嘱をしなければならないという案が掲げられておりましたが、検討会の議論では、このうちB案を支持する御意見が多数であったように承知しております。
 そういうことで、基本的にはB案によりましたけれども、これも何人かの方から御指摘がありましたように、B案では、具体的にどの時点からリーガルアドバイザーが関与することになるのかが必ずしも明確でありませんでしたし、、二段階目の審査は、最終的に公訴提起に直結する決定がなされ得る局面でありますから、審査の当初からリーガルアドバイザーが関与し、その審査をより充実したものとするのが適切だと考えられますことから、二段階目の審査においては、当初から必ずリーガルアドバイザーの委嘱を必要とすることとした次第です。
 イは、リーガルアドバイザーの職務内容ですが、検察審査会長の指揮監督を受けて、法令・判例の説明や、問題点及び証拠の整理、事件に関する意見を述べること、議決書作成の補助等の職務を行うものとするとしております。
 これは、基本的には、たたき台と同趣旨でありますが、検討会における議論では、リーガルアドバイザーが検察審査員に対し、参考としての意見を述べることができるものとしても差し支えないのではないかという御意見が多かったことから、イ(ウ)として、当該事件の問題点に関する意見その他の当該事件に関する意見を述べることも、職務の一つとして掲げました。
 ただ、この点も御注意があったように、リーガルアドバイザーが、検察審査会の判断を不当に誘導することがあってはならないということはもちろんですので、そのような誘導を禁止する旨を、ただし書として明記したわけです。
 次に、3頁、「(2) 検察審査員の義務・解任」、「(3) 罰則」、「(4) 検察審査員の欠格事由等の見直し」につきましては、たたき台と同様に、裁判員制度における同様の項目についての検討を踏まえ、検討ないし見直すものとしております。両制度は、基本的に、無作為抽出を基本として選任された一般国民が司法に参加するという点で共通しており、(2)から(4)の項目のいずれについても、両制度の違いはもちろんあるわけですので、その違いを考慮しつつも、裁判員制度についての検討を踏まえて検討する必要があるということから、裁判員制度についても、なお、検討の途次にある現段階においては、たたき台と同様の記載としておくのが適当だと考えた次第であります。
 3頁の「(5) 付審判請求手続との調整」につきましては、そこに書きましたように、同一の事件について、付審判請求に係る審理と検察審査会の審査が並行して行われているという場合に、前者の手続で裁判所が付審判の決定をする、あるいは、後者の手続、つまり検察審査会の審査で、検察審査会が2度目の起訴相当の議決を行い、それに基づいて指定弁護士が公訴を提起したときは、それぞれ、他方に、その旨を通知するものとしております。これは、二重起訴が行われることを防ぐために、このような通知が必要であるという御意見があったものを踏まえたものです。
 3頁の下の方の「(6) 検察審査会の配置の見直し」におきましては、検察審査会法第1条第1項ただし書に、検察審査会の数の下限の定めが置かれているのですが、これを撤廃するという案をお示ししました。
 これは、検察審査会の議決に法的拘束力を与えるものとすることに
posted by: enzaix | 裁判員制度 | 00:00 | comments(0) | trackbacks(0) |-
司法制度改革-裁判員制度・刑事検討会(第29回) 議事録
裁判員制度・刑事検討会(第29回) 議事録

(司法制度改革推進本部事務局)


1 日時
平成15年11月11日(火)13:30〜17:40

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員) 池田修、井上正仁、大出良知、酒巻匡、四宮啓、皸羚行、土屋美明、樋口建史、平良木登規男、本田守弘(敬称略)
(事務局) 山崎潮事務局長、大野恒太郎事務局次長、古口章事務局次長、松川忠晴事務局次長、辻裕教参事官

4 議題
「刑事訴訟手続への新たな参加制度の導入」及び「刑事裁判の充実・迅速化」について

5 配布資料
資料1 考えられる検察審査会制度改正の概要について
資料2 「考えられる刑事裁判の充実・迅速化のための方策の概要について」の説明

6 議事

○井上座長 それでは所定の時刻ですので、第29回「裁判員制度・刑事検討会」を開会させていただきます。御多忙の折、御参集いただきましてありがとうございます。
 本日は前回に引き続き、まず「考えられる裁判員制度の概要について」という表題のペーパーに沿って議論をしていただいた後、前回お示しした「考えられる刑事裁判の充実・迅速化のための方策の概要について」という表題のペーパーの内容を御説明した上で、時間の許す限りですが、刑事裁判の充実・迅速化について議論をしていただくという手順で進めさせていただきたいと思います。
 なお、前回お約束しましたように、「考えられる検察審査会制度改正の概要について」という表題のペーパーも用意し、お手元に配布させていただいておりますけれども、これについての御説明は、刑事裁判の充実・迅速化についての議論を終えた後にさせていただきたいと思います。
 それでは早速、裁判員制度に関する議論に入りたいと思います。前回申し上げましたように、更に議論をしていただいた方がよいと思われる項目を、まず私の方から挙げさせていただいて、それらの項目について議論をしていただいた上で、それ以外の点で各委員において議論すべきだというふうにお考えになる事項についても御意見をいただくという形で議論を進めさせてきていただいているところです。
 もう御承知と思いますが、もう一度確認させていただきますと、私の方から更に議論をしていただいた方がよいと考えた項目としましては9点ありまして、1番目がペーパーの1ページ、「1 基本構造」の「(1) 合議体の構成」の「ア 裁判官の員数」、2番目が同じところの「イ 裁判員の員数」、3番目が2ページの「(3) 評決」、4番目が同じ2ページですが「(4) 対象事件」の「(ア) 原則」、5番目が3ページの「ウ 事件の性質による対象事件からの除外」、6番目が8ページ「2 裁判員及び補充裁判員の選任」のところの「(9) 質問手続」のイ(カ)というところの理由を示さない忌避の人数という項目、7番目が14ページの「8 裁判員の保護及び出頭確保等に関する措置」の「(1) 裁判員等の個人情報の保護」、8番目が同じ14ページの「(2)  裁判員等に対する接触の規制」、9番目が15ページ「(3) 裁判の公正を妨げる行為の禁止」、以上の9点でありました。 前回の検討会では、5点目の事件の性質による対象事件からの除外というところまで御議論をいただきましたので、本日は6点目から議論を続けさせていただきたいと思います。なお、お手元にありますように、本日御欠席の清原委員から前回の検討会で議論をした項目に関するものをも含め、書面で御意見をいただいておりますので、適宜御参照くださればと存じます。
 それでは議論に入りますけれども、6点目はペーパーの7ページから始まる「2 裁判員及び補充裁判員の選任」、「(9) 質問手続」、「イ 質問手続」というところの、(カ)の理由を示さない忌避の人数に関する項目というところです。

○四宮委員 議論の進め方についてですが、先ほど座長の方で、まずお示しになった9点の議論が済んだ後で、例えばここも議論をすべきではないかという点があれば、その後で取り上げるという理解でよろしいのでしょうか。

○井上座長 そうです。
 (カ)の理由を示さない忌避の人数については、御説明したように、とりあえず私の方で、裁判員の数を仮に4とした場合、このくらいの人数ということをお示ししているのですが、この具体的な数字についての考え方については全くこれまで議論をしていませんので、こういうものを手がかりにして、その考え方について御議論をしていただければと思います。

○皸羂儖 この数をどういうふうに考えるかによって、候補者の数がどの程度のボリュームになるかということになってくると思うんですね。
 私はかねてから申し上げているように、相対的に適格な者を選ぶという観点からいうと、候補者はなるべく多い方がいいというふうに考えております。そういう立場からすると、ここに示されているように裁判員の員数と同数、あるいはマイナス1程度という考え方というのは妥当だろうなというふうに思います。
 ただ、仮に裁判員の数が6になったときに、では6人となるのかというと、それではかなりボリュームが増え過ぎるかなという感じもします。理由があって忌避するという人が出てくるかもしれないわけですから、裁判員が4人であれば3ないし4という感じかなと思いますが、仮に裁判員が6になったら6あるいは5というのは多いかなという感じもします。

○井上座長 皸羂儖は、裁判員の員数については5人という御意見ではなかったのではないですか。

○皸羂儖 清原委員の提出されたペーパーに6人を軸にと書いてありますので、一応、それを忖度したということです。

○井上座長 つまり、仮に6人だとしたら、ということですね。裁判員の員数は、また蒸し返すと同じ議論になってしまうので、全部仮にということで議論を続けさせていただきたいと思いますが、ほかの方はいかがですか。

○池田委員 私自身はこの前言いましたように、3人でいいと言っていたわけですが、そのときの感じとしては理由なし忌避の行使数は2ないし3程度であり、その数より多いというのは当事者が恣意的な裁判員の選び方をすることを許すことになるのではないかという懸念もありますので、裁判員の数か、あるいはそれより少な目の数でいいのではないかと考えます。ですから、そういう意味では裁判員が4人だとした場合には、3ないし4ということになりますので、座長ペーパーの案は数としては相当なのではないかと思います。
 今、皸羂儖も言われたように、裁判員候補者の数は、両当事者が理由なし忌避を全部行使するとすると、その2倍までいって、そして更に辞退とか、あるいは理由付き忌避があるとすると、裁判員等の数の6倍ぐらいの人を裁判員候補者として呼んでおかないといけないということにはなるのかなという気がします。人を集めるのはかなり大変だなと思いますので、その意味では国民の協力というのが本当に大事になってくるなと思います。

○四宮委員 私は、裁判員の数はより多くという意見ではあります。具体的には、9人ぐらいでもいいのではないかというふうに述べてまいりましたが、だからといって裁判員の定員と理由を示さない忌避の数というのは、必ずしもイコールというかリンクさせる必要はないという意見です。
 座長の御説明文の中にも、理由を示さない忌避の制度趣旨が書かれていて、当事者による忌避や最後のスクリーニングであるとか、それから、公正だと当事者からも信頼してもらえる裁判所を構成するための方策ということですが、この趣旨に照らすと、他方で欠格ですとか、それから理由を示す忌避という制度もあるわけですから、裁判員の数が多いからといって、この理由を示さない忌避の数も多くする必要は私はないと思っています。
 以前に具体的な忌避の手続が終わった後の裁判員の選び方については、多くの方が最後に残った方の中からまた無作為に選ぶという方法をたしか支持しておられたと思いますけれども、そうだとすると、私は裁判員の数が私の主張のような規模だとしても、理由を示さない忌避権の行使ができる数は3人ないし4人という制度は十分にあり得るというふうに考えています。

○本田委員 この理由を示さない忌避の人数をどうするかという問題を考える場合、二つ考えなければならない点がありますけれども、一つは公平でできる限り質の高い裁判員を確保しようという要請であります。もう一つは、現実の事務負担を過大化させない、かつ、その裁判員の選出時には、やたらに戦術的とか戦略的にならないようにし、こういうことによって選出手続が長期化するという弊害を防ぐという要請であろうという点であります。そして、この両者の要請のバランスをどう考えるかということだろうと思います。
 それで、公平でできる限り質の高い裁判員の確保という観点からすると、選任される母体となる候補者の数を多くして、理由を示さない忌避の人数を多くするということで、当事者から見て相対的により公平な、よりよいと思われる裁判員候補者が残るということになるだろうし、後者の観点からすると、余り多くなると困るということになると思うんです。
 それで、そういうことをかれこれ考えると、座長試案の中で示されている、もし裁判員が4人ということになるのであれば、これと同数程度の理由なし忌避を認めても、事務負担が必ずしも過大になることもないし、そういう意味ではバランスの取れたものになるのではないかというふうに思います。
 裁判員の員数を4人として、理由なし忌避の数を、3人とすべきか、4人とすべきか、この辺りは若干判断が難しいところがあるんですけれども、合議体の人数と同数でなければならないということまで言うのかという気もいたしますので、そこは3人でも4人でも、その辺りのところで落ち着けばいいのかなという気がしております。
 もう一つ、今、四宮委員から裁判員を多くしても3、4人でもいいのではないかというお話があったんですけれども、それでも十分ではないかという結論はいいんですけれども、どうもその積極的な理由がよく分からなかったのですけれども。

○四宮委員 要するに、信頼してもらえる公正な裁判所を構成するための方策は、この理由を示さない忌避だけではないわけですね。既に私たちが検討してきたとおり、資格要件ですとか除斥ですとか欠格、それから理由を示した上での忌避というようなものもあるわけで、全体の仕組みの中で、この理由を示さない忌避という制度も位置づければいいということです。理由を示さない忌避だけで、公正な裁判所の構成を維持するということではないので、先ほど申し上げたような制度でも十分なのではないかという趣旨です。

○本田委員 よく分からないですけれども。まあ、いいです。

○井上座長 問題は、ほかの制度で、どれくらいの数が裁判員候補者から外れるかなのでしょうね。中でも一番難しいのは、辞退になってくるのかなという感じがします。
 理由あり忌避については、説明に書きましたけれども、この人は不公正な裁判をするおそれがあると認定するのは実際にはなかなか難しいだろう。そうしますと、自動的に排除される欠格だとかそういう制度にかかってくることになりますが、それらでどれだけスクリーニングできるのかにもよってくるのだろうと思います。

○平良木委員 私も、この座長試案でいいのではないかと思っております。本田委員が言われましたけれども、やはり裁判員の質の確保と公平な裁判の実現ということから公平な裁判員の確保ということが必要で、そのときに、沿革的な、あるいは比較法的な観点を考えると、大体一方の当事者により同じ数ぐらいのものを理由のない忌避をする、また、もう片方でもそうするということで、大体座長試案に示された数が適当ではないかと考えております。

○井上座長 先ほど、池田委員は、裁判員候補者として6倍くらいとおっしゃいましたが、本当にそんなに要るのでしょうか。理由なし忌避の数が裁判員の数と同数だとすると、最低限3倍は必要ですね。そして、補充裁判員ということを考えると、それよりは多くないといけない。それにほかの仕組みで、裁判所に来てもらってからスクリーニングする数がどのぐらいと見込まれるかということを考慮に入れたトータルの数ということになりますが、6倍なのかもしれないし、4倍くらいでよいのかもしれないのですけれども。

○池田委員 そうですね、辞退などをどの程度認めていくかによって違うとは思いますけれども。

○井上座長 辞退を広く認めるとすると、かなりの数の人に裁判所に来ていただかないといけないということに多分なるんでしょうね。
 ほかの方は、いかがですか。

○酒巻委員 座長試案で結構だと思います。
 四宮委員のさっきの御発言に関して一言申しますが、アメリカでもチャレンジ・フォー・コーズはなかなか使いにくいのです。あなたはこういう不公平な裁判をするおそれがあるので忌避しますと具体的理由を示すのは実際には難しいので、具体的な理由は明示できないけれどもしかしこの人には陪審員にはなっていただきたくない、という場合を何とかするために、この理由なし忌避の制度にはかなり機能してもらう必要があると思っております。

○井上座長 次が7点目から9点目、これは相互に関連するところがあるものですから、一緒に御議論いただければと思います。「8 裁判員の保護及び出頭確保等に関する措置」というところの(1)から(3)までの三つの項目、個人情報の保護というところと接触の規制というところ、公正を妨げる行為の禁止の三つです。いずれの項目からでも結構ですので御議論をいただければと思います。

○土屋委員 報道に関係する部分がありますので、9月に御報告した以降の新聞協会などの動きを御報告しておきたいと思います。
 新聞協会の人権・個人情報問題検討会という、ここにヒアリングに来た幹事団の組織ですけれども、そこが9月19日、最高裁に行きまして事務総長にお会いして、9月に表明した指針の内容を説明しました。その結果、最高裁の広報課を窓口として新聞協会との間で報道をめぐる具体的な申し合わせについて今後、協議していこうということになりました。また、同じメンバーが10月22日にも法務省の但木事務次官ともお会いして、同じように指針について説明をしています。法務省との間でも今後、話し合いを続けようということになっています。
 それから、日本弁護士連合会との間では11月18日、同じように意見交換の機会を持つということが決まっています。
 更に、2回目の懇談もスケジュールが入っていまして、法務省とは今月20日、最高裁とは12月3日、それぞれ具体的にどういう問題を取り上げていくのかというような、また総論的な話ですけれども、そこら辺りの意見交換をしようというふうになったと聞いています。
 それから、もう一つ、新聞協会の中の動きなんですけれども、そういう法曹三者との懇談の場に臨むメンバーについて、10月30日の会合で決まりました。今年の幹事社は、産経新聞と日経新聞なんですけれども、その2社のほかに、朝日、毎日、読売、NHKの4社が加わって6社で、いわゆる自主的ルールづくり、裁判所との申し合わせ事項の協議というようなところを詰めていこうというふうになっております。
 そのように、実際法曹三者と新聞協会の協議が始まっているということでありまして、座長のペーパーの後ろに、「自主的ルールについての状況を策定しつつあることを踏まえて、更に検討する」というふうにされていますけれども、これを裏付ける動きが新聞協会を中心に出ているということをまず御報告しておきます。
 私の意見をついでですので、ちょっと申し上げたいと思うんですが、今まで述べてきた意見とそれほど変わらないものですから、繰り返しにならないようにしたいと思うんですけれども、裁判員の個人情報の保護の問題ですけれども、これについて私は個人情報の保護というのは、極めて重要な問題だというふうに考えていまして、住所や氏名などが公表されると、予想外のいろんな圧力を受けたり、家族の安全が脅かされたり、そういった不安を覚える人がきっと多いだろうというふうに思います。
 そのような事態を防ぐために、我々のメディアの方としても協力をする用意があるということでありまして、新聞協会が今までの指針の中で述べているとおりなんですが、ただ、新聞協会は同時にすべてクローズにしない、完全に秘密にしておくような状態はつくらないでほしいという趣旨のニュアンスのことを言っております。つまり、個人情報の保護は必要であるとは考えるんですが、ただ完全に秘密にしておくこと、それが果たして公共の利益にかなうのかどうかという疑問を私は持ちます。
 例えば、性犯罪といった例を考えた場合に、男性ばかりの裁判官、裁判員で裁いたら、一体どういう傾向の判決が出るのかとか、逆に、痴漢事件で、女性だけで裁いたらどうなってしまうのかとか、例えば性別だけ取り上げても、いろんな研究対象にもなるでしょうし、我々の報道の対象にもなると思うんです。
 ですから、余りに個人情報の保護に傾いてしまって、そのことによってそういった一種の公共的な利益を図ることが損なわれるような事態は避けるべきであろうと思います。かえって社会的な利益に反するのではないかということもあり得るのではないかというふうに思うんです。
 住所だとか、氏名だとかという、個人の特定されるような情報を保護する必要性は高いでしょうけれども、年齢だとか、職業だとか、そういった個人の属性に関する事柄については違った扱いがされてもいいのではないか、そういう余地があるのではないか、というふうに考えます。
 それから、その次の接触規制の話ですけれども、これも新聞協会の中ではいろいろ意見が分かれているんですが、裁判の進行中に現職の裁判員や補充裁判員に接触してはならないのは当然だというふうに私は考えております。
 そういう現に進行中の裁判ということを考えると、報道機関の側にも原則的に接触を控えようということには、それほど異論はないのではないかというふうに思います。ただし、雑誌協会がこの間ヒアリングで述べたように、裁判員が被告人と一定の利害関係があるというようなことが後で判明したようなとき、そういったときは公平な裁判が行われない可能性があるのではないか。だから、そういう事実があればそれは報道していく必要があるであろうということを言っておりまして、正に例外的な、緊急避難的な問題なんですけれども、そういう可能性というのはメディアとしては放棄できない部分もあるのかなというふうに私は思います。ただ、それは進行中の裁判の場合に望ましいことではないというふうに思うことには変わりはありませんので、あくまで例外的な場合ということですけれども。
 ただ、この座長のペーパーで困ったなと思っているのは、かつて裁判員または補充裁判員であった者にも接触の禁止をかけてしまったことなんです。これでは、判決後に言わば話を聞いて、取材をして、いろいろな裁判に関する検証をしたり、あるいは論評をしたりというような作業ができにくくなってしまうのではないかと思うのです。その理由は繰り返しになりますので、余り述べません。
 ちょっと長くなって申し訳ありません。裁判の公正を妨げる行為の禁止の部分なんですが、ここは新聞協会などが全面削除を強く求めている部分であります。その理由というのは、ここでいう「事件に関する偏見を生ぜしめる行為」、あるいは「その他の裁判の公正を妨げるおそれのある行為」という規定が、あいまいであってかえって問題を生ずるのではないかということです。公正な裁判が行われなければいけないということは、だれもが異論はない、だれもが尊重しなければならないことでありますから、一般論の形で書かれる限りは異論は出ないだろうという気もしますけれども、一般論であるために返って内容が包括的であって、いろいろ支障が出てくる面もあろうということが懸念されるわけです。メディア側には、「偏見」とは一体何をいうのかあいまいだという意見が非常に強くあります。
 もしこの規定が、単なる一種の訓示規定のようなものとして置かれているにしても、この存在自体があると、それを理由にしたいろんな事前のメディア規制効果につながりかねないのではないかということを心配しているわけです。
 そして、もしこういうことが起きれば、それは表現の自由と正面からぶつかり合うような懸念が出てくるのではないかというふうに私は考えます。ですから、罰則がない訓示規定であっても、法的な制度として規定することには消極的にならざるを得ないということです。
 まして、座長が書いていただいたように、メディアは今、御報告したとおりの自主的ルールをつくりつつありますので、本来こういった法的な規定を置く代わりに、実質的にメディア側で対応すれば、それが受け皿として機能するのであれば、かなり解決される問題が私は多いだろうというふうに考えています。以前御説明したとおりのいろんな事情があって、自主的ルールというのは決していいかげんに勝手につくるルールでもないということです。ましてやそういうことで、法曹三者と協議した上でつくろうということになっておりますので、かなり実質的な効果のある内容になってくるであろうというふうに、私としては考えているわけです。
 ちょっと心配しているのは、今のところ新聞もテレビも報道関係も、この案を巡って、メディア規制だというような言い方を今のところしておりません。それは、やはりいろいろと公正な裁判を確保するために安全措置を講じる必要があるだろうということを考えているからでありまして、そういった言わば慎重な態度を取っているわけですけれども、一面でまた裁判員制度そのものに対する是非については決断を下していないと、それについては留保するということをヒアリングで述べているとおりであります。ですから、制度のつくり方によっては、これはメディアに対する強い規制効果を持つ法案だというふうに評価をして、裁判員制度そのものについて反対だというような論陣を張るところが出てこないとも限らない。私はそれを心配しております。無用な摩擦を起こさないように、是非この項目については、新聞協会が主張しているとおり削除をお願いしたいというふうに思います。

○井上座長 最後の点は、聞き方によっては非常に不穏当に聞こえます。つまり、裁判員に賛成してほしければこの規制を取り下げろ、というニュアンスにも聞こえたのですけれども、そこのところは事柄が逆ではないかという感じがするのです。報道の方々が裁判員制度に賛成されるかどうかは、御自由だと思うのですが、裁判員制度それ自体について検討されて、国民的・社会的見地から非常に重要な制度であるので賛成だ、あるいは、それ自体にこういう問題があるから反対だということであれば分かるのです。しかし、報道の規制の部分があるから制度自体にも反対だというのは、ちょっと筋が違うのではないかと思います。

○土屋委員 別にそういうつもりで申し上げていることは全くありません。そうではなくて、いろいろ制度設計について、この部分については反対だという意見の方というのはいらっしゃるわけですね。そこだけ取り上げて、だから全部反対だという議論になりかねない危険性というのが、現に感じられないではないので、そういうことを申し上げただけのことです。

○井上座長 分かりました。
 もう一点だけ確認したいのですけれども、一番最初に言われたことですが、法曹三者と協議が始められているということで、それはそれとして非常に望ましいことだと思いますけれど、新聞協会なら新聞協会自身の話として、ルールを検討なさっているという点については、いつごろ形になってくるのでしょうか。

○土屋委員 それは、恐らくどういう内容になるか、そして、それはいつごろであるかという両方の趣旨の御質問かと思います。私も別に新聞協会の代表ではありませんから、別にお答えできる立場ではないんですけれども、ただ一つの例を引きますと、ある民間テレビ局が自分の社内の自主的ルールというのを公表しておりませんけれどもつくっています。言わば集団的加熱取材といわれるような、いろんな事態が起きたときに、自分の社としてはどういうふうに対応するかということを書いてあるわけです。つまり被害者であるとか、関係者に迷惑をかけないように社会的に穏当と見られる取材方法を取ると、一言で言えばそういうことですけれども、そこには、こういうことはやってはいけない、ああいうことをやってはいけないということを書いてあります。ですけれども、それをまとめるまでに一つの社だけで1年掛かっているんです。
 恐らく新聞協会全体で話をしていくということになりましても、今までのやり方がすべてそうなんですが、積上方式なんです。各社の意見をまとめて、その全体の方向を合意でつくっていくというやり方になりますので、そう簡単にはできないというふうに思います。

○酒巻委員 私には新聞協会の自主的ルールというもの自体の位置づけについて、まだよく分かっていないところがあるのですが、報道機関の協会が自主的ルールをおつくりになるのに際して、国家権力である最高裁や法務省との間で協議されるというのは、いったいどういう文脈なのかがよく分からないので、それを教えていただきたいと思います。
 法曹三者や国家機関とお話し合いをしなくても、報道の自由という憲法価値に御奉仕される皆様が自主的にお作りなるものではないかと思うんですが、その辺がよく分からないので教えていただきたいということであります。

○土屋委員 自主的ルールだから自分たちで勝手につくればいいじゃないかという趣旨のもので本来あるであろう、ということはそのとおりだと思います。
 ただ、具体的に問題が生じないようにしたいというのが、報道側としても考えていることなのです。そのためには、この間の指針に出ていますとおり、一番最後のところに書いてありますけれども、各地の事情に応じて裁判所との協議機関を設けて、そことの間でルールを、原則みたいなものを決めていきましょうというようなことを言っています。
 ですから、いろんな御意見があろうかと思うんです。裁判所には裁判所の方として、こうするべきであるという意見はありましょうし、それから検察庁にも弁護士会にも、こんなことやってもらっては困るという意見もありましょうから、とりあえずその辺りの意見交換をした上で、それで自分たちで決めていこうということであります。

○酒巻委員 あとは繰り返しになりますが、土屋委員がおっしゃられた個別の問題について、私は基本的にすべて座長案に賛成であります。ということは、土屋委員のおっしゃったことにはほとんど反対ということになります。それについてまた意見を繰り返し述べることになりますけれども。

○井上座長 簡潔に述べていただけるのでしたら結構ですが。

○酒巻委員 では簡潔に述べたいと思います。一番のポイントは、報道関係の方は、事件が終わった後であれば、裁判員の守秘義務について変化が生ずるというお考えのようですけれども、守秘義務、評議の秘密等の趣旨からいって、そういう区別はできないのです。したがって、裁判が終了前であれ、終わった後であれ、守秘義務というものは続くものでなければ意味がないと考えています。
 守秘義務の趣旨は既に述べたとおり、評議が自由に行われ、適正公正な裁判が行われるということが、何よりも重要なことであり、評議の秘密が守られない状態が生ずるという可能性があれば、評議での自由な意見交換はできなくなり、ひいては公正な裁判という極めて重要な司法制度の根幹部分が崩壊することになる。それを防ぐためには、裁判の途中であれ、終わった後であれ、守秘義務をかけるというのは当然のことであると考えます。
 また一般的に裁判の公正を妨げる行為をしてはならないというのも、これは当然のことでありまして、当然のことを法律として規定するのも、これはまた当然のことだろうと思います。
 それから、接触の禁止につきましても、座長案は要するに守秘義務を破るような目的を持って接触をすることを禁止するという形に修文されておりますけれども、これもまた先ほど述べた趣旨から、これで妥当だろうと思っております。
 前にも申しましたとおり、私も自主的ルールによって裁判の公正が阻害されないということが最も望ましいことであり、そして裁判も国家権力の発動ですから、それを報道機関が監視し、適切に批判するということは憲法の保障した重要な価値であるからこそ、誤解のないように言いますと、できる限り自主的なコントロールをされることによって、国家権力による介入を回避するべく最大限の努力をしていただきたいというふうに思っているのでありまして、そのためにできる限り早く具体的なルールを定めていただきたいと思っている次第です。

○井上座長 ほかの方は、いかがですか。

○本田委員 個人情報の保護のところで、先ほど土屋委員の方から、例えば性犯罪について裁判員の性別の構成によってどうなるんだということを検証する必要があるということをおっしゃったんですけれども、判断に一定の傾向が見られないかもしれませんし、あるかもしれません。もしもあったときに、では制度としてこういう犯罪については女性だけの裁判員。こういうものについては、男性だけの裁判員、あるいは、男性と女性は何対何というような制度というのが、本当に構築できるのでしょうか。何か将来的に制度が改善できるようなものがあって、それに向けての検証とおっしゃるならよく分かるんですけれども、そこがどうもよく分からない。果たしてそういうことが可能なのか。同じことは裁判員だけではなくて、裁判官だって同じ話じゃないのかという気がします。ほかの部分についてはおっしゃらなかったんですが、そこだけちょっと疑問です。
 それから、裁判員の個人情報の保護というのは、裁判員がきちんとした裁判を行う上で当然必要なことであって、座長試案以上の情報を公開すると、裁判員に無用な負担をかけてしまうので、そのようなことをする必要は恐らくないんだろうと思います。職業や性別などのデータが、例えば統計的な数値として出てくるというのは別にいいと思うのですけれども、個々の事件についてそれをどこまで公開するかといった場合には、この座長試案に書かれた限りでの公開で十分なのではないかという気がしております。
 接触の禁止については、前からずっと申し上げているとおりなんですけれども、私は以前のたたき台の案でもよいというふうに思っています。ただ、この座長試案の方では、守秘義務の範囲で接触を禁止しようとしている。これはもう当然の話であって、裁判員等が守秘義務を負っている情報を聞き出す目的での接触、これは要するに守秘義務違反という犯罪を犯すことを慫慂する行為ですから、これを規制するのは当然だろうという気がしております。そういう意味では、この座長試案でもいいのかなと思いますが、もうちょっと規制の対象が広くてもいいのではないかという気がしております。
 裁判員であったものに対しては取材してもいいのではないかという御意見もあったんですけれども、やはり裁判が終わった後でも一定の範囲での守秘義務に妥当性があるわけで、その守秘義務は全くないとおっしゃるなら別だと思いますけれども、先ほどの理屈はどうもそこが通らないのではないかという気がしております。
 裁判の公正を妨げる行為の禁止ですけれども、イの方については、座長試案では報道関係で自主的ルールを策定され、それを踏まえ検討するものとされておりますが、報道機関の方で現にいろいろ努力されているということで、その努力は多としなければいけませんし、実効性のあるルールとなるかどうかということも当然検討する必要があるので、ここは是非実効性のあるルールをつくってもらいたいと思います。その上で、またこういったルールをつくる必要があるかどうかを検討しなければいけないということで、ここは座長試案に賛成したいと思います。ただ、その前にちょっと申し上げたいのは、「偏見」という言葉があいまいでよく分からないというような発言があったんですけれども、本当にそうなのでしょうか。法律にも「偏見」という言葉を使っている部分がありますし、報道関係も偏見という言葉を幾らでも使っているはずです。それはちゃんとその意味内容が分かっているからでしょうから、「偏見」という言葉だけあいまいだと言われても、なかなか理解できない部分があります。裁判の公正を妨げるおそれのある行為というのを行ってはいけないことは当たり前のことだと思いますし、それを書いたから表現の自由に抵触するとか、先ほどおっしゃったように、ここでいろんな摩擦が起きて裁判員制度がどうこうという話は、本末転倒ではないかという気がいたします。

○大出委員 今のお話の中で、この個人情報の保護のところの、イのところの、「その他のこれらの者を特定するに足る事実」ということですから、例えば年齢構成とか、あるいは男女比ということ自体は特に問題ないわけですね。個人個人が特定できるかどうかという問題ですから、先ほど土屋委員がおっしゃったこととの関係でいけば、今、本田委員のおっしゃったことが、それが問題だという趣旨になるのかどうか。ですから、年齢と男女ということでは、特定はおよそできないはずですから、そのこと自体は引っ掛かってこない問題だというふうに思いますけれども。そのことは確認されていたような気もするんですが、それはどういう趣旨でおっしゃったのかよく分からないのでお教えいただければと思います。もう一つ、メディアの関係の(3)のことなんですが、この点について私も当初いろいろと新聞協会の御意見を伺って、考える必要がある部分があるかなというふうにも申し上げましたし、ただ先ほどありましたように、新聞協会がいろいろとこの点について検討されているというお話を伺って、その限りではかなり素早い対応であったと、つまり従前新聞協会というなかなか大所帯で難しいっしゃるということは、いろいろと仄聞するところもあるわけで、そういう中で自主ルールをお決めになるという御方向で御議論があって、一定の方向でのペーパーをお出しになったということで、私としてはそういうことでの御努力がある、しかもそれがかなり迅速に行われたという印象を持ったものですから、それであれば訓示規定もないことの方が適切だろうというふうに思っているわけでして、基本的にその考え方は今も変わってないんです。ただ、先ほど土屋委員がおっしゃったように、これは例えであって、全体的にそうだということではもちろんないと思いますけれども、一つの社で1年間掛かったというのは、例としてはやはり今の時点ではもう少しお考えいただく必要があることだろうと思います。ですから、大変難しい作業をされているんだろうということは重々承知しますけれども、やはりことの問題性とか、意味ということを考えた場合には、やはり是非その辺はできるだけ速やかに、それは酒巻委員もおっしゃったことかもしれませんが、できるだけ速やかに自主ルールをお作りいただきたいと思います。
 私の認識では、これは何も裁判員制度が始まるからどうのこうのというだけではない課題でもあったと思うんです。既に十何年議論されてきた問題でもあるわけでして、そのことを踏まえれば、やはりこの先同じように時間が掛かるということでは、納得を得られない部分があるだろうと思いますので、是非そこは更に御努力をいただきたいというふうに思います。

○井上座長 最初の点は、アの方では書かれないのです。アでは、訴訟に関する書類である限りは、氏名以外は公開しないということになっているのです。

○大出委員 はい。ですけど、年齢構成についても全く出ませんか。ですから、書類以外で出すということがあり得ない。訴訟に関する書類でないところで出てくることはありえないということですか。

○井上座長 あり得ないというよりは、イの方は公にしてはならないということです。ですから、イは、積極的にどこまでの情報を出すかということにはなっていないわけで、アの方は、公開するのは氏名のところだけということです。
 私も、本田委員と同じような疑問を持ったのですけれども、例えば痴漢事件とか性犯罪を例に挙げられましたけれども、仮にもし、性犯罪の場合に、男性だけの構成員で裁くのは判断が偏るのではないかとか、あるいは、逆に女性だけだと偏るのではないかとか、そういうことが仮にあるとして、それが不適切だとすれば、そういう構成にしてはいけないというルールをつくるという話になるのでしょうが、そのような偏りがあるのかどうかを検証するには、特定の事件について裁判体がどういう構成で、どういう結果が出たということだけでは、何も証明にはならず、相当の数の事件を対象として、統計的処理をしないと検証できないわけで、もしそういう目的で統計的処理をするというのであれば、個別事件の裁判体の構成員について属性を明らかにするということとは別の話ではないかと思うのです。
 もう一つ、裁判進行中の接触のときに、裁判員が被告人などと利害関係があるかどうかということは、それ自体がいいかどうかは別として、裁判員が職務上知り得た秘密を知る目的というところからは外れてくるように思います。それと、もう一つ、以前の議論の中で指摘されたことですけれど、もしそういうことが事実としてあったならば、そのことを裁判所に伝えるなり、当事者に伝えるなりして、きょうすのが本来の筋ではないかと思うのですが、その辺をどうお考えなのか。挙げられている事例は、接触禁止に関する議論には適切ではないように思います。

○土屋委員 正に御指摘のとおりだと思います。私もちょっと例示が妥当だったかどうかということになると、ちょっと妥当でなかったかもしれないとは思ったりもしますけれども、ただ例えば性犯罪とか軽犯罪法違反、痴漢事件のようなものを例に挙げたというのは、そういうことを知ることによって、そのことによって現在行われている裁判をこういう方向に変えるべきだという提言につながってくる可能性があるという話なんだろうと思うんです。だから、どうすればいいとか、こうすればいいという、どんな議論が飛び出してくるか分かりませんけれども、そういうものとして個人情報の取り扱いというのは考えられる面があってもいいのではないかということをただ申し上げたかっただけだということです。
 もう一つ、今も御指摘を受けた部分で、お話しておきたいと思ったのは、私もまだ余りよく整理できてないんですが、守秘義務の観点からだけ考えるというのは、どうも妥当ではないのではないかと思っているんです。刑事裁判が公開されるというのは、憲法上の原則ですし、それは国民が現実に行われている裁判の内容を知り得る必要性があるからだというふうに私は考えているんです。そうすると、何のためにそういうことが規定されているのかということを考えていくと、現実の進行している裁判というものについては、そこでは重大な死刑判決も出るでしょうし、大変な結果をもたらすこともあるだろうから、裁判の公正さというのが、最優先に考えられるべきだろうというふうに思うんですけれども、でも裁判が終わってしまった後については、進行中と同じなのだろうかという気もするのです。確かに、守秘義務ということで考えれば、同じではないかという話になるかもしれません。ですけれども、それはまた違ったレベルの話として考えてもいいんではないかという気が私はちょっとしているんです。つまり、司法の在り方というのはどうあるべきかというような意味で、司法の現状を分析、研究して、あるいは報道していくというような作業をする。そういう面での社会、公共の利益を図る必要性、そういう面がもうちょっと裁判が終わった後は前に出てくるという部分があるのではないかというふうに私は感じております。つまり、何が社会の利益なのかということに関して、裁判が進行中と終わった後では違うかもしれないという気が私はしているんです。

○井上座長 土屋委員の御議論だと、今の職業裁判官が行ってことも、裁判が終わった後は公開すべきだということになるのですか。つまり、職業裁判官のみによる合議の在り方についても検証すべきだということになれば、同じことが当てはまるのではないでしょうか。

○土屋委員 私は感動した本があるのですが、元裁判官の書かれた、例えば財田川事件の本とか、そういうものを読むと、そのときの裁判が一体どういうものであったのかということが分かりますね。
 元裁判官、あるいは訴訟の関係者の方が一定の時期に、そういう内容を明らかにして、そのことを社会が広く認識することによって、もたらされる別の利益があると私は思うのです。裁判官と裁判員は同じではないかと考えて、裁判官には許されないだろうから、裁判員も同じように許されないだろうと考えて、果たしていいのだろうかと思うんです。つまり、職業倫理として守秘義務が重要な位置を占める裁判官と、特定の事件だけに限って参加してくる裁判員というのが、全く同じなのであろうかということを考えてしまうわけです。

○井上座長 土屋委員の御議論は、理由づけがちょっとずれていっているような気がします。最初は、裁判の公開ということから始まって、裁判の公開のためには評議の過程も公開すべきだという御議論だったと思うのです。どうやって裁判が形成されるかは、進行中の場合は裁判に影響を与えるからだめかもしれないけれども、後なら検証できるはずで、そうすべきだということをおっしゃったのですけれども、最後の方では、職業倫理として守秘義務を負わされている人と、一回だけ裁判に関与する人とでは違うだろうという議論になっていて、議論がずれてしまっていると思うのです。
 一番最初の前提として、先ほど酒巻委員が指摘されたことにはどうお答えになるのか、ちょっとよく分からないのです。つまり、裁判の後であろうと、評議の中でだれがどう言って、どうなったといったことが明らかにされると、そこで自由闊達に意見交換ができなくなるという問題は残ると思うのです。
 それと、土屋委員がおっしゃっているような要請とのバランスをどうやって取るのかということだと思うのですけれども。

○土屋委員 私はあえて繰り返さなかったんですが、座長は評議の経過ということを言われましたけれども、経過だって守秘義務の範囲に入ると思っているんです。

○井上座長 それは当然前提となっているのですけれども、終わった後は守秘義務の対象にならないということになれば、評議の経過は明らかにされるわけでしょう。

○土屋委員 守秘義務としてずっと守られなければならない部分というのはあるだろうと思うんですけれども、それは言わば裁判の中核を成すような部分ですね。

○井上座長 そうしますと、裁判が終わった後に守秘義務の範囲から外れてくるのは、何なのですか。

○土屋委員 例えば私は自分の意見は述べてはいいではないだろうかということを、前にも申し上げていますけれども、それは守秘義務とは関連ないであろうというふうに言われるかもしれません。しかし、合議の中で形成されたのが個人の意見であるならば、それは守秘義務と関係あるではないかという指摘ももちろんあるわけです。そういう意味で守秘義務と関連性があると言われる可能性があるだろうと思うんです。
 ただ、私はそういう自分の意見を言うというのはいいのではないかとか、幾つか申し上げいるんですが、そういう部分というのは言わば守秘義務のどうしても守っていかなければならないコアの部分からは、ちょっと違う扱いを受ける類型のものなのではないかというふうに考えております。

○井上座長 在職中ではなく、過去に裁判員であったという人について、守秘義務の範囲から外れてくるものとして、主に念頭に置いておられるのは、その人自身の意見ということですか。

○土屋委員 主に意見ですね。

○井上座長 分かりました。

○本田委員 まず、今の最後の点、自分の意見を言ってもいいではないかということをおっしゃったわけですけれども、評議の場面というのは、お互いが裁判員も裁判官も自分の意見を述べて議論しながら裁判体としての一つの結論が出ているわけです。
 それで、自分の個人の意見は言っていいと、しかし評議というのは中核みたいな部分で明らかにするのはだめだとおっしゃるけれども、そうであるならば、裁判員全員が、評議について、こうだった、ああだったと言ってしまえば、それは評議の内容が半分以上分かってしまうんですね。そこをどうやって区別されるのか。抽象的におっしゃるんでよく分からないんですけれども。
 もう一つは、意見とかいろんなことを言って、裁判官については従前どおり守秘義務がかかるんだとおっしゃるんですけれども、では裁判員であった人が、裁判官が守秘義務を負っている範囲のことについて、必ずしも正確でないことを外に明らかにした場合、それに対して裁判官は一切反論できないですね。裁判官には守秘義務がかかりますから。そうすると、評議に関して不正確な情報が出ていってしまう、それは本当は違うんだということだってあるでしょう。そのようなことがあると、これも前から言っておりますけれども、極めて裁判が不安定になってしまうという問題が起きてしまう。
 それから、いろいろ司法の在り方とかいうことを抽象的におっしゃるので、よく分からなかったんですけれども、では特定の事件について、証拠の評価をどうするかということを議論していった評議の過程を明らかにすることによって、どういう司法の在り方の議論とつながっていくのか、そこが抽象的過ぎていま一つ理解できない、分からないところがあるんです。もうちょっと具体的に、自分の意見を明らかにすることを許すと、こういうところでこうなって、そうすると司法の在り方は、今はこうですけれども、こういうふうになります、というようなことを、もうちょっとイメージをつかめるように説明していただけないと分からないんですけれども。その辺りの議論が抽象的過ぎて、どうもよく分からないという気がいたします。

○四宮委員 議論の進め方なんですけれども、8の「裁判員の保護及び出頭確保等に関する措置」ということで、3点議論しているんですけれども、議論を伺っていると、例えば、個人情報の保護とか、接触の禁止ということから、もちろん関連はするんだけれども、更に守秘義務の範囲という問題に相当議論が入っているのですが、それは前のところの裁判員の権利及び義務のところであったテーマだと思うのです。それもここで一緒に議論するのでしょうか。
 それとも、私が考えていたのは、8のところは一応こういう形で議論して、もし守秘義務の範囲について議論すべきだと考える委員がいれば、私はそう思っているんですけれども、それはそれで座長の示された9ポイントについての議論を終わった後で議論するという形なのか。
 今、ちょっと混乱しているように伺ったんですけれども。

○井上座長 幾つかのことを同時並行的におっしゃって、そして、その幾つかのことについて同時並行的に反論がなされたりしているものですから、議論が混乱しているようなところがあるのですけれども、今の最後のところに絞って言えば、私が1案として示させていただいた接触の禁止のところは、守秘義務を課された裁判員を手厚く保護しようという趣旨から、こういう規制を設けたということですので、それは、結局、守秘義務の内容そのものと裏腹の関係になるわけです。
 ですから、どうしても守秘義務の議論になってしまうのですけれども、そこに踏み込んで議論していただいてももちろん結構だと思います。

○四宮委員 理屈で言うと、任務が終わった後の人は守秘義務が一切なくなるという考え方の人がいれば別ですけれども、最後まで守秘義務を負う範囲はあるということになれば、範囲の問題は別にして、その義務を負っている人に対して接触を規制すべきなのかどうかという議論はできるのではないかと思っていたのです。そうではなくて、範囲の問題についての議論がずっと行われていったものですから。

○井上座長 守秘義務の範囲が広いときには、接触の規制についてもいろいろ御異論があり得ると思うのです。

○皸羂儖 土屋委員の先ほどの御意見ですが、まずプロの裁判官と裁判員とでは守秘義務の範囲について違っていいではないかというふうにおっしゃいましたけれども、そういう考え方は基本的にこの裁判員制度の構造に反すると思います。
 対等であるというのが原則なんですから、同じ義務を負担しているからこそ対等だと言えることであって、義務を半分しか負担しない、あるいは、3分の1しか負担しないで対等だとか言っても、それは説得力を持たないと思います。
 ですから、私は裁判員が裁判官と対等であるというふうにするためには、権利も義務も同じにしなければいけないと思います。つまり、裁判官はこうだけれども、裁判員はこうだと、一回限りしか一緒にやらないから裁判官と違っていいのだという議論があってはいけないと私は思います。そのような議論は、裁判員制度の根幹に私は反すると思います。
 それから、もう一つ、土屋委員の先ほど来の御意見は、裁判員の保護ということに関する視点を欠いていると言わざるを得ません。この8は、明らかに裁判員を保護するためのものであって、当然裁判員を保護することによって公正な裁判を実現しようというふうにつながっていくわけですけれども、第一義的には裁判員を保護しなければいけないという観点があるわけです。ところが、土屋委員の先ほど来の御意見は、すべて取材する側の論理に貫かれているという気がします。取材される側の論理がどこにもない。要するに、いったん裁判員になったら、どんどん、ああだこうだとマスコミから言われるとすると、それが嫌で裁判員になりたくないという人がいっぱい出てくるわけです。また、裁判員になってしまったらいろいろ言われるかもしれない、聞かれるかもしれないと思えば、それが裁判員になった方の議論にも影響しないという保証もない。前回申し上げましたけれども、日本の裁判員裁判制度というのは、裁判員の保護ということについては、非常に手薄になっているわけですね。ですから、その手薄になっている中の数少ない保護措置がこの8に書いてあるわけですから、それを考えるときにはもう少し裁判員を保護するという観点から議論がされるべきだと思います。前回終わってからの新聞報道を見ても、裁判員の立場に立ってものを考えてないではないかという論評があったと思いますが、そういう観点からいっても裁判員の保護ということをもう少し重視した議論がなされるべきだというふうに思います。
 そういう観点から考えると、この座長試案で書かれている、例えば、8の(1)のアとイ、これは至極当然だというふうに思います。年齢構成ぐらい分かってもいいではないかというふうにおっしゃいますが、それはいちいち個別の事件で報道しなくてはいけないほどのものか、裁判員の保護という利益と比べてそれだけ重みのあるものか、と考えると、必ずしもそうとは言えないだろうというふうに思います。
 それから、(2)の秘密を知る目的で接触してはならないということですが、これは前々のたたき台に比べると、ある意味では範囲が限定され、ある意味では広がっているという部分があると思いますが、少なくとも守秘義務があるということを前提にして考えれば、その秘密を破る目的で接触をすることは当然禁止されるべきだと思います。これは、裁判の公正という観点からも当然言えることですが、裁判員を保護するという観点からも、当然これは設けられなければいけない制度だというふうに思います。確かに、何をもって秘密とするかということについて、争いが起きるという懸念はありますが、そういう懸念はほかの守秘義務に関する規定にもあるわけで、殊更この規定だけにある問題ではないので、それはある意味ではやむを得ないというふうに思います。

○四宮委員 今、皸羂儖から土屋委員に対する意見がありましたけれども、土屋委員は、私が伺っていた限りでは、取材する側だけではなくて、つまり、裁判員保護の視点が全くないということではなくて、その保護の視点を法律で規制するのがいいのかどうかという議論をしておられたのだと思います。ですから、保護の視点がないということではなくて、それはむしろ紹介のあった自主的なルールによるのがいいのではないかという御意見だったと思います。
 私も、それに賛成なんです。確かに、例えば裁判員になったときに、わっとメディアが来て、いわゆるメディアスクラム状態になると困るから何とかしてほしいという声はあり得るわけで、それからどう保護するかということなので、それを法律で規制するというのは一つのやり方かもしれませんけれども、私はそれよりは先ほどのメディアのいろいろな自主的な取り組み、特に裁判中の裁判員に対する取材と、裁判が終わった後の裁判員に対する取材、それぞれについて必要性を十分に考えて、今、検討しているということなので、私はそれによってコントロールしていくのが正しいと思います。
 もう一つ、皸羂儖のおっしゃった、裁判官と裁判員の対等の話なんですけれども、もちろん対等というのは裁判における権限の行使が対等ということなんだろうと思うのです。いろんなものが全部同じになっているかというと、例えば裁判官には法律上は接触規制というのはないわけです。あるいは、例えば調停委員だって守秘義務を負っているけれども、それに対する接触規制は法律上はない。罰則の点も、守秘義務、秘密を漏らした場合の罰則については、裁判官には特に罰則はないわけです。
 そういうことを考えると、それはそれぞれの立法趣旨に従った考え方で決めていけばいいのではないかと思います。
 また、後で守秘義務の範囲について意見を申し上げたいと思っておりますけれども、そういった点から考えると、8については、私も個人情報の保護の理念は大変重要なものであろうと思いますけれども、その趣旨は基本的にプライバシーの保護ということであろうと思いますので、それが侵害されない情報は基本的にはオープンにしていくべきではないかと思います。とりわけ、裁判員は公権力の行使にかかわるわけですので、個人情報保護の趣旨に反しない限り、例えば「だれか」がどういう意味があるのかと、どんな価値があるのかというふうにお考えになるという御意見もありましたけれども、それは前から申し上げているように情報の受け手が判断すべきことではないかと思います。
 それから、接触の規制については、やはり守秘義務ということで考えていけばいいのではないかというふうに思いますので、これは前にも申し上げましたけれども、裁判が終わった後についての接触の禁止の規定は置かない方がいいというふうに思います。報道の規制の関係ですけれども、これは犯罪報道には、もちろん今の犯罪報道を全部肯定するつもりは全くありませんし、よりよい報道のために議論していってほしいと思いますけれども、報道の意義というものは非常に大きなものがあるので、この規定にも引き続き反対です。

○井上座長 一番最初に言われたことがよく分からないのですが、職務上知り得た秘密を知る目的で接触をするということも、自主的ルールによる規制によるべきだということですか。

○四宮委員 メディアはですね。

○井上座長 なぜですか。

○四宮委員 私は、つまりこれは置かなくていいと。それは人の秘密を職務上知る立場にいる人の制度はたくさんあるわけですけれども。

○井上座長 説明文にも書きましたように、職業に伴って守秘義務を負わされている人は、それなりの覚悟でその職業に就いているはずでしょうが、たまたま抽選で選ばれて、たまたま一回ある事件の裁判を担当したということで守秘義務を課された場合に、守秘義務があるからあなた自身で義務を守りなさいということで十分か、それでその人の保護になっているかということなのです。守秘義務を破らせるという目的で接触することを禁止する規定を設けてはいけないという理由が、どうもよく分からないのですよ。それは、いずれにしてもやってはいけないことではないのですか。

○四宮委員 望ましくないことですね。

○井上座長 望ましくないというだけではなくて、やってはいけないことではないですか。守秘義務を破らせようとするのですから。それなのに、規制する規定を設けてはいけないという理由がどこにあるのか、よく分からないですね。

○皸羂儖 私が裁判員の保護に欠けると言っているのは、要するに、接触の規制をしなければ、それは、攻撃するなら勝手に攻撃しなさいよと、裁判員に対して、攻撃させるから、あなたは自分は自力で防御しなさいと言っているのと等しいわけですね。そういうことが裁判員の保護に欠けるんではないか、ということを言っているわけです。

○本田委員 裁判員であった者に対する接触禁止の規定は置かなくてもいいという四宮委員の話だったんですけれども、そうすると、だれでも裁判員であった者に対して接触していいのだ、知り得た秘密を知る目的で会ってもいいのだということになるわけですか。例えば、暴力団などの組織犯罪であって、それについての判決が出たとして、そこの構成員が裁判が終わった後、裁判員のところに訪ねていって、接触を図って、「お前評議でどういうことを言ったんだ」と聞いてもいいということをお認めになるんですか。メディアだけを主体として念頭に置いてずっと議論されていますけれども、試案では何人も、だれもやってはいけないと書いてあるわけで、もしメディアを除外するなら、メディアの定義をどうされるのでしょうか。
 守秘義務を破らせることを目的として接触することはもともとやってはいけないことで、私はそれを規制しないというのはおかしいと思うんです。先ほど座長からも話があったように、もともと守秘義務というのは必要なもので、守秘義務を破ることを慫慂するような行為が許されるはずがない。ましてや、今、みなさんメディアだけを頭に置いていますけれども、そういった犯罪組織の構成員が裁判の終わった後に裁判員だった者の所へ行っていいということになれば、みんな恐れてしまいますので、そもそも裁判体が構成できるかどうか問題でしょうし、仮に構成できたとしても、そこで公正な裁判ができるのかという疑問があります。そんないいかげんな制度でいいのか、という気がするんですけれども。

○酒巻委員 本田委員と同意見です。この部分は報道機関の自主規制で決めるような話ではないと思っております。規制の基本部分が守秘義務の対象となっている情報を開示させることでありますから、それは「何人も」と書いてあるとおりで、当然定めなければならないのではないかと思います。その理由はみなさんのおっしゃったとおりです。

○池田委員 私も、8は座長試案のとおりでいいと思いますし、特に接触の規制については、修文もされて、ここでの議論を踏まえたものになっていて、結構なことだと思います。
 一点だけ、先ほど土屋委員の方から裁判の公開との関係で、裁判の経緯といいますか、評議には入らないもので、感想なり、自分の意見なりというものを公にすることがある程度認められてもいいのではないか、公表すること、あるいはその公表を目的として接触することがいいのではないかということを言われたわけですけれども、裁判の公開というのは、私どもが考えているのはもちろん手続の公開については、公開の法廷で、どのような証拠で、どのように処罰されるべきか、されざるべきかという審理が行われていることで実現されています。
 そして、審理後の判断については、裁判という結論を示して、そしてこの検討会でもずっと議論されていたように、結論に至った理由を書くということになっています。そして、その理由を書くということが最も公開性に応じているものなのです。要するに、裁判がなぜそういう結論になったのかという理由を示すというのは、その裁判がどうしてそのような結論になったのかということを、第三者にも、もちろん当事者にも評価してもらうためのものだと思っています。裁判は結論とその理由付けというのが大事であって、その結論と理由に至るまでの過程にはいろんな過程があるわけで、いろいろな過程を経たからこそいい結論が出るともいえるわけですから、いろいろ評議が自由に行われなければいけないということは、前にもお話したとおりです。しかし、そういう過程を公開することが重要なのではなくて、重要なのは、やはり、判決で示される判断の最終的な結論とその理由を示し、それが批判に耐えられるものであるかどうかということなのです。ですから、途中の過程で、何を言っていたかということは、大事ではないわけです。例えば、裁判官が、「私は一生懸命やりました」とか、「本当にもう寝食忘れて寝ずにやった」と言ったとしても、結論とその理由が間違っていたらしようがないんです。裁判というのは、結論とその理由の正当性だけが重要で、一生懸命やった過程があっても、それらが間違っていればだめなのです。裁判とは別のところで、例えば「私は実は判決で示されたようには思っていなかった」とか、あるいは「判決で示したことは、実はこういう趣旨だった」とか言っても、当事者はそれを根拠に判決の正当性を争えないわけです。やはり正当な手続で争えるのは、その裁判という結果に表わされたものであるのです。ですから、裁判で示されたものが一番大事なのであって、結論とその理由が十分明らかにされていれば、公開性というのは十分に担保できているのではないかと思うのです。ですから、それ以外のことを明らかにしないと公開性が不十分だというのは、理解できないのです。

○平良木委員 私もこの座長試案でいいだろうと思っております。これは前にも申し述べたことですけれども、要するに、裁判員が自由に発言できる、言いやすい環境をつくってあげるということが必要で、そのためには、裁判員が評議での発言を理由に裁判後批判されたりするというような無用な負担をかけてはいけないでしょうし、それから裁判員のプライバシーもできるだけ守ってやらなければいけないだろうと思います。そう考えると、8の1、2というのは当然のことだし、その後に出てくることも、訂正されたことは、要する報道機関の自主的ルールとの兼ね合いで見ていこうということであるわけですから、これも私はこれでいいだろうという感じがしております。

○四宮委員 本田委員がお挙げになったケースは、裁判員等威迫罪が裁判員の任務を終わった者に対する威迫についても適用があるので、それに当たるのではないですか。

○本田委員 威迫罪で賄えるものは賄えますよ。威迫というところまで来れば、確かに裁判員等威迫罪が適用されるでしょう。そこまでではなくて、教えてくれと言ってくることが許されるということになれば、みんな怖がって裁判員にならないでしょう。接触を規制しないと、そういう事態が発生しませんかと、そういうことをまた許していいんですかと言っているのです。

○井上座長 大体皆さん、それぞれ御持論を展開なさったのかなという感じがします。
 先もありますので、このくらいでよろしいでしょうか。私の方で特に更に議論していただいた方がよいと考えた項目は以上ですが、それ以外の点について、御意見があればお伺いしたいと思います。

○平良木委員 座長試案の11ページの証拠調べのところです。最近よく裁判員制度はうまくいくのでしょうかという質問を受けることがあるのですけれども、これはやらなければいけないだろうと答えることにしています。そう言ったときに成功するかどうかというのは、ここにも書かれておりますけれども、裁判員がどのようにしたら十二分に心証をとることができるかということであって、逆に言うと裁判員に分かりやすい証拠調べを行わなければならないということにかかっていると思います。
 ここに書かれているのは、そういう観点から出ていることだと思いますので、これはできるだけ法案化してもらいたいということを希望しておきます。かなりそれが難しいものも中にはありますので、検討は十分必要だろうと思いますけれども、そういう要望をまず述べておきたいと思います。
 それから、もう一つは、裁判員の負担、あるいはその心証のとりやすさということを考えると、集中審理あるいは連続的開廷ということが必要になってくる。これも恐らく、ここでは想定されていることだろうと思いますけれども、そのためには現在の運用を変えていかなければいけないものもあるだろうと思います。もし、そうだとすると、その試みをできれば、今の段階から始めていただきたい。特に申し上げますと、公判調書の作成の問題も出てくるだろうと思います。それをどういうように変えるかということについて、例えば公判手続を録音するとか、録画するという話も出てきておりますけれども、そういうことをも含めて検討してもらいたいということであります。そして、検討して、できればいろいろ問題点を洗い出して、そしてそれに対する対策を考えてもらいたいということでありますけれども、その関連で裁判所の公判調書の在り方も考えていくということが必要かなという気がしております。
 以上のような検討などの結果、場合によっては刑訴規則の改正や、あるいはそのほかの方策ということが改めて問題になるかもしれませんが、そういう試みをすることを、特にこの場に関係機関の方もいらっしゃいますので、要望しておきたいと思います。

○井上座長 最後のところがよく分からなかったのですが、公判調書について刑訴法とか刑訴規則の改正に結び付くような検討というのは、どういうことなのでしょうか。公判調書の書き方とかつくり方ということですか。

○平良木委員 そういうことも出てくるだろうと思いますけれども、例えば以前にも話題に出てきましたけれども、連日開廷の場合に公判調書をどうやって出すんだという問題等が出てくるので、そういう問題も含めて検討してもらいたいという趣旨であります。

○井上座長 現行の刑訴法でも、原則としては継続して連日開廷するということを前提にして、公判調書のつくり方とか、出し方について規定しているのではないですか。

○平良木委員 そうですけれども、連日開廷の場合、実際には、例えば証人尋問をやったという場合には、その証人尋問調書の作成は翌日の期日までには間に合わないということになるかもしれません。

○井上座長 それは、現行法の下でも許されているのではないですか。

○平良木委員 許されているといいますか、建前から言うと、公判期日が変われば、その前に公判調書を全部整理しておかなければいけないといことになっている。

○井上座長 必ずしもそうではないのではないですか。次回の公判期日までに整理が間に合わない場合は、要旨を告知するということになっているわけですから、現行法でも、それが望ましいかどうかは別として、間に合わないこともあり得るという前提になっているわけですね。
 ですから、御義論が制度や法令の改正にどのようにつながっていくのかというところが、ちょっと分かりにくかったので、御趣旨を確認するということで質問させていただいたのです。

○平良木委員 分かりました。その点も含めて検討していただきたいということであります。

○酒巻委員 私は、平良木委員のおっしゃることがよく分からないのですが、問題にされているのは、例えば刑訴法50条の規定の手直しが必要ではないかということですか。

○平良木委員 恐らくいろんな問題が出てくる中で、それも出てくるかもしれないということです。

○酒巻委員 分かりました。

○平良木委員 まず運用上の工夫してもらいたいということで、もし必要があれば、刑訴法の改正が出てくるし、規則の改正も出てくるし、あるいは運用を改めることで済む場合も出てくるだろうということです。

○井上座長 御趣旨としては、連日的開廷ということを前提に、十分な審理ができるように、公判調書等についてもつくり方だとか在り方について検討していくべきだということですね。そして、運用で賄えないようなところが出てくれば、法令の手当をすべきだということでしょう。

○平良木委員 はい、そういうことです。

○井上座長 分かりました。ほかに御意見はありますか。

○四宮委員 12ページの上から四つ目の、供述調書等の作成状況の立証ついてですけれども、具体的な立証方法については、裁判員制度の発足までに、取調べ状況のビデオによる録画も含めて十分に検討するということを、是非、重ねて要望しておきたいと思います。

○井上座長 前にもそういうふうな御希望を伺ったと思いますが、今の点はよろしいですか。

○本田委員 その点については、以前にきちんとお答えしたはずでございまして、なぜまたおっしゃられるのか、ちょっと趣旨が分からなかったのですけれども。

○四宮委員 本田委員が検討対象としては外さないとおっしゃっていただいたので。

○井上座長 決して本田委員が言われたことを信用していないということではないですね。

○四宮委員 信用しております。

○井上座長 四宮委員、他に議論したいと思われている点はどのくらいあるのでしょうか。そう長くならないように、一つ一つ簡潔にお話しいただけたらと思うのですが。

○四宮委員 では、守秘義務の関係にしたいと思いますが、9ページの(2)のオです。それと、これは罰則とも関係するのですけれども、私は前回からずっと、この守秘義務の範囲は限定すべきで、裁判員に対しては、言ってはいけないことを明確に絞っていくべきだというふうに申し上げてまいりました。
 いろいろ今回の座長の説明を拝見すると、守秘義務の保護法益というのは、裁判の信頼性の保護と、評議における自由な意見表明と、プライバシーとか秘密の保護ということを挙げておられて、これは全くそのとおりだと思います。問題は、それぞれを確保していくために、どの範囲で義務を課すかということだと思うのです。評議における自由な意見表明の確保のためということだとすると、私は、誰が何を言ったかということを明らかにすることを禁止すればいいのではないかと思います。
 それから、プライバシーとか秘密の保護の観点からは、職務上知った他人の秘密に守秘義務をかけるということが必要だし、それで足りるのではないかと思います。
 そうだとすると、ほかの点について、守秘義務を課す必要があるのだろうかということなんです。特にこの案でいきますと、各裁判官及び各裁判員の意見、これには守秘義務は当然かかるべきであるし、職務上知り得た秘密、これはほかの法制よりもちょっと広いような感じを受けていますけれども、職務上知り得た、特に他人の秘密には守秘義務をかけるべきだと思うのです。しかし、それ以外のものについては、どうなのかということなんです。 一つは、「多少の数」ですけれども、これは裁判所法にも、検察審査会法にも、それから日本の陪審法にも規定が確かにあるわけですけれども、これは本当に公表されてはいけないのだろうかという気がしています。私は、前回はこれも守秘義務の範囲に入るというふうに申し上げたんですけれども、本当にそうなのかなというふうに思っています。つまり多数決制というのを、日本の裁判は取っているということを明言して、言わば国民に伝えているわけですから、多数決であったということを、つまり結論だけですけれども、本当に伝えないということが必要なんだろうかということで、これについては疑問を持っております。
 2番目に、評議の経過なんですけれども、もちろん経過の中にもいろんなことがあって、先ほど申し上げたような、だれが何と言いましたとかいうことは言ってはいけないし、その中で出てきた他人の秘密を言ってはいけないということは、そのとおりだと思います。ただ、例えば、裁判官が十分意見を言わせてくれたとかいうこと、あるいは逆に十分に意見を言わせてくれなかったこととか、例えば、最初有罪の意見が多かったけれども、評議をして判決にあるように、目撃証言に疑問が出てきて、その疑問を共有していって無罪の意見が多くなりましたというようなこととか、あるいは、最初に検察官の求刑は軽過ぎると思ったけれども、みんなと評議をして、証拠を検討したり、ほかのケースなども参照した結果、判決にあるような刑になりましたというようことは、私はそれらが明らかにされることによって裁判の公正性が害されるとは思いませんし、むしろ我々の仲間である国民が、裁判官と一緒に十分な評議をしてその結論に到達したんだということを国民に、社会に伝えるという意味もあると思うのです。
 そうすると、守秘義務の範囲としては、各裁判官、各裁判員の意見ということと、職務上知り得た他人の秘密ということに限定したらどうかと考えております。

○本田委員 自分の意見、評決の多少の数も明らかにしていいということを前提にして考えると、一応座長試案に従って7人の構成で裁判を行ったとして、評決は6対1で有罪という結論になったが、私は反対でした、私は無罪の意見でしたと言ったら、あとの6名は有罪の意見だということがそこで全部分かってしまうではないですか。それでいいのでしょうか。ほかの人の意見は分かってしまうわけでしょう。その人たちの中には言ってもらいたくない人だっているわけでしょう。

○四宮委員 各自の意見を言ってもらいたくないということですか。

○本田委員 そうです。有罪の意見を言ったかどうか、私は言いたくないと言っている人の立場はどうなるんですか。

○四宮委員 ですから、それは、評議というか、裁判の信頼性といいますか、そういったものを一体どのように確保するのかということだと思うんです。

○本田委員 いやいや、私が言っているのは、そういうことではなくて、私の意見は言ってもらいたくないと、私の意見は表に出したくないんだと言っている人の意見が分かってしまうでしょうと言っているんです。この人の立場はどうしてくれるんですかとお聞きしているんです。

○井上座長 評議は6対1だと言った上で、私はその1ですと言ってしまえば、あとの人はみんな6の方の意見だということが明らかになってしまうので、結局は他人の意見を明らかにしているのと同じではないかという御趣旨ですね。
 それともう一つ四宮委員の御意見でよく分からないのは、評議の経過というのは、整理された形で判決理由に反映されるはずで、それでは、なぜ足りないのですか。

○四宮委員 ただ、判決理由には、例えばさっき申し上げたように、当初は有罪の意見が多かったけれども、その後こうなったということは書かれないわけですね。

○井上座長 それは、どうして必要なのでしょうか。

○四宮委員 それは、さっき申し上げましたように、普通の人が聞いて、こんなふうに評議が進んだんだと分かるということです。

○井上座長 有罪かどうかを最初から評決を取っていればともかく、評議の中では、いろんな議論をして、自由な思い付きの意見もたくさん出て、それぞれの構成員の意見は変わっていくと思
posted by: enzaix | 裁判員制度 | 00:00 | comments(0) | trackbacks(0) |-
司法制度改革-裁判員制度・刑事検討会(第28回) 議事録
裁判員制度・刑事検討会(第28回) 議事録

(司法制度改革推進本部事務局)


1 日時
平成15年10月28日(木)13:30〜18:05

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員) 池田修、井上正仁、大出良知、清原慶子、酒巻匡、四宮啓、皸羚行、土屋美明、樋口建史、平良木登規男、本田守弘(敬称略)
(事務局) 山崎潮事務局長、大野恒太郎事務局次長、古口章事務局次長、松川忠晴事務局次長、辻裕教参事官

4 議題
「刑事訴訟手続への新たな参加制度の導入」について

5 配布資料
資料1 考えられる裁判員制度の概要について
資料2 考えられる刑事裁判の充実・迅速化のための方策の概要について
資料3 「考えられる裁判員制度の概要について」の説明
資料4 刑事裁判の充実・迅速化についての意見募集の結果概要

6 議事

○井上座長 所定の時刻ですので、第28回裁判員制度・刑事検討会を開会させていただきます。
 本日も御多忙の折、お集まりいただきましてありがとうございます。
 第27回の検討会の後、予定していた日程が2回中止になっておりますが、本日は予定どおり開催することができました。
 まず、本日の進行及び今後の進め方などにつきまして、事務局から説明があるということですので、お願いします。

○辻参事官 まず最初に、予定しておりました検討会が、事務局の都合によりまして、しかも、直前に中止させていただくということになりまして大変御迷惑をおかけしたことと存じますので、その点をお詫び申し上げたいと思います。
 次に、今日を含めました今後の検討会の進め方につきまして、事務局として従来御説明してきた方針、この検討会の場で御協議いただいて御了解いただいた進め方を変更することになりましたので、そのことについて改めて御説明したいと思います。この点につきましては、この場に御参集の各委員の皆様には既に個別に御説明し、御了解をいただいているところでございますが、この場で改めて御説明したいと思います。
 9月の検討会におきまして、たたき台を素材としたおさらい的な議論が行われたわけでありますが、事務局におきましては、そのような議論を受けまして、次のステップ、作業の段階といたしまして、新しい制度の骨格を明らかにする案、仮に骨格案と申しますが、それを作成する作業を進めてまいりました。従来は、その骨格案をお示しして、更に検討会の場でも議論をいただくことになっていたわけであります。
 そのために、事務局といたしましては、検討会における議論の状況を踏まえることはもちろん、その他、各方面における検討の状況や様々な御意見をも参考にしながら検討をしてきたところでありますが、現時点においては、こうした様々な方面の議論の状況を踏まえて、なお検討が必要であり、事務局としまして、制度の骨格をお示しするというのは若干時期尚早であると判断するに至りましたため、当面、骨格案をお示しすることは見送らせていただくこととした方がよいのではないかと考えました。
 これまで申し上げてきた予定、この場でも御了解いただいてきた予定を変更することになったわけでございますので、その点はお詫び申し上げるともに、今回の予定の変更は、より良い制度設計を、幅広い御意見を参考にして行うためのものであることを御理解いただけますようお願い申し上げたいと思います。
 そこで、事務局におきましては、このような判断をするに至りましたことから、今後の検討会の進め方について、井上座長に御相談させていただいたわけでありますが、従前のたたき台につきましては、これを素材とした議論が相当程度積み重ねられてきておりまして、今後、更に議論を進め、深めていただくためには、何らかの新たな素材が必要ではないかと考えられましたことから、座長におかれまして、検討会におけるこれまでの議論を踏まえて、考えられる制度の概要の一例というものを作成していただけることとなったわけであります。この検討会におきましては、次の議論の段階として、これを素材として更に議論を深めていただくということではどうかということになったものです。
 そのように座長においてお示しいただくことになった案と申しますのは、これまで検討会において積み重ねられてきた議論の、ある意味一つの到達点を示すとともに、検討会はもとより、そのほかの、事務局あるいは各方面での今後の議論を更に深めることに資する材料を提供するという観点から、座長におかれまして、検討会でのこれまでの議論や、その素材となったたたき台を踏まえ、現段階において考えられる制度の概要の一例を作成いただいたものと承知しております。もちろん、座長に作成していただくものでありますから、今申し上げましたような経緯からも、事務局が作成する骨格案とは、基本的に性格の異なるものであるということです。
 事務局といたしましては、今後、骨格案を作成するに当たり、当然、座長に作成していただいた、考えられる制度の概要の一例の内容を参考にさせていただくわけでありますし、それを素材とした検討会その他の場における議論、意見をも参考にさせていただくことになるわけでありますが、座長の作成していただいたものの内容が直ちに事務局作成の骨格案になるというものではないということであります。
 事務局といたしましては、非常に御多忙な座長に多大な御配慮と御尽力をいただきまして、厚く感謝申し上げたいと思います。
 そして、検討会を含む各方面における検討の状況等を十分に踏まえつつ、平成16年通常国会に所要の法案を提出することができるよう、骨格案作成の作業を引き続き進めたいと考えているところでありますので、委員各位の御理解をいただければと存じます。以上でございます。

○井上座長 ありがとうございました。私からも、若干補足して御説明したいと思います。今も触れられましたが、さきの検討会で御了解いただいたように、事務局においては、9月の検討会でたたき台を素材とした第2ラウンド目の議論が一応終了したことを受けまして、次のステップとして骨格案といったものを作成するということで、その作業を進めてこられたものと承知しております。ただ、今般、現時点において骨格案を出すことは時期尚早であると考えられるので、なお、しばらく見合わせると判断されたということであります。
 そういう予定の変更を受けて、検討会の座長として、検討会を今後どういうふうに進めていけばよいかということについて、事務局の方とも御相談した結果、これまでのたたき台については、これを基にした議論を既に相当程度積み重ねてきたところでありますので、今後この議論を更に前に進めていくためには、何らかの新たな素材が必要であろうと思われることから、これまで検討会において積み重ねてきた議論を踏まえつつ、座長としての立場で、現段階において考えられる裁判員制度の概要の一例というものを作成し、検討会でこれを素材として更に議論を深めていただいてはどうかというふうに考えるに至ったわけでございます。
 こういう予定の変更と、座長としての対応措置の決定につきましては、本来、検討会を開いて、皆さんに御協議いただくべきところでありましたけれども、そのためだけに、それぞれお忙しい方々にお集まりいただくのもどうかと考えまして、持ち回りの形で皆さんの御意見をお聞きしたところ、委員の皆さんも、こういう予定の変更を了承されるとともに、座長として、今申したような対応をすることについて御賛同くださいましたので、急いで、それぞれ本日、お手元に資料1、2としてお配りしてあります、「考えられる裁判員制度の概要について」というペーパーと、「考えられる刑事裁判の充実・迅速化のための方策の概要について」というペーパーの二つを用意させていただいた次第です。
 これに加えまして、検察審査会制度についても議論してきたわけですので、同じ趣旨のペーパーを用意させていただくつもりでありましたけれども、大学での本業を抱えながらの作業でありましたので、本日までに間に合いませんでした。次回の会合までには作成し、お示しできればと考えております。
 これらのペーパーの位置付けについて、誤解のないように付言させていただきますと、これらのペーパーは、私自身の考えや選択というものも加わっているという意味で、検討会におけるこれまでの議論の結果を単に整理したというだけのものではありません。しかし、また同時に、検討会でのこれまでの議論やたたき台をあくまで踏まえているという意味で、私個人がもともとこう考えていたという、そういう私本来の考えそのものというわけでもない、ということを御了解いただければと思います。
 また、先ほども触れられましたが、これは、検討会としての案というものでないことはもちろんであり、事務局のたたき台と同じように、あくまで検討会における今後の議論の素材としていただくために作成したものにすぎません。検討会として何らかの提言を取りまとめることを予定しているわけではありませんし、これらのペーパーを基に検討会案のようなものを作成することは全く考えていないということも、皆さん御了解いただけると思います。
 こういう方針をとるに至ったことについては、皆さん既に御了解いただいていると承知しておりますが、改めまして、事情を御賢察の上、御確認いただければと思います。
 ここまでの点で何か御質問等ございますか。よろしいですか。それでは、先ほど来、御説明した方向で議論を進めたいと思います。
 本日の進行なのですけれども、私から最初に「考えられる裁判員制度の概要について」という表題のペーパーの内容を御説明し、その後、皆さんで御議論いただければと思います。
 2番目の「充実・迅速化」のペーパーにつきましては、今日、それまで御説明しますと、説明だけで全部終わってしまうかもしれませんので、検察審査会制度に関するペーパーと合わせて、次回に御説明することにさせていただければと思います。
 それでは、「考えられる裁判員制度の概要について」というペーパーについて御説明したいと思いますが、御説明がかなり長くなると思いますので、お手元に、資料3として、説明文を配布させていただいております。充実・迅速の要点の一つである口頭主義には反するかもしれませんけれども、より良く理解していただくために、用意させていただきました。適宜、「概要について」というペーパーと説明文を見比べていただきながら、お聞きくださればと存じます。
 説明文の「第1 作成の経緯」というところは、既に御説明したところですので省略しまして、「第2 全体の構成について」というところから始めることにいたします。
 このペーパーの全体の構成ですが、基本的に、御覧になればお分かりのように、事務局が作成されたたたき台の構成に従っています。検討会における、特に第2巡目の議論は、このたたき台を素材として、その項目に沿って行われてきましたので、今回のこのペーパーも、それをベースにして作成した次第です。
 このペーパーでは、たたき台の内容を変更したり、あるいは、たたき台ではA、B、Cといったような選択肢の形で示されていた点について一つに絞ったり、二つの選択肢を一つにまとめたところもありまして、そういうところは、分かりやすいように赤字で記載しております。
 お示しした案の内容をすべて網羅的に御説明することは時間的に不可能ですし、お配りしてある説明文をすべて読み上げることも時間的にかなり困難ですので、赤字で記載した部分を中心にして、主要な点に重点を置いて、多少はしょりながら説明させていただくことにしたいと思います。
 まず、最初の頁の「1 基本構造」の(1)の部分は、たたき台とは若干項目立てを変えておりまして、(1)を「合議体の構成」という項目にして、その下に、「ア 裁判官の員数」、「イ 裁判員の員数」という小項目を立てております。これは、検討会での議論の仕方に合わせた構成としたものです。
 まず、「ア 裁判官の員数」につきましては、「裁判官の員数は、3人とするものとする。」としております。この点につきましては、検討会においてかなり時間をかけて議論していただきましたが、裁判官は3人とすべきであるという御意見が大勢であったといえます。
 これに対して、裁判官は一人ないし二人とすべきであるとする御意見もあったことは御承知のとおりでありますが、その理由として、一つには、新たに裁判員が加わる制度を採用するのであるから、裁判官だけで裁判を行っている現行法の員数を所与の前提とせず、新しい発想で制度設計をすべきであるということが挙げられておりました。
 新たな制度なのだから既存の制度を所与の前提とすべきでないというのは、その限りでは成り立つ考え方のようにも思えますが、しかし、だからといって直ちに裁判官は3人ではなく一人又は二人で足りる、あるいは、一人又は二人とすべきである、という結論は、当然には導けないのでありまして、その点について、少なくともこれまでの議論をお伺いした限りでは、そのような結論を導けるだけの積極的かつ実質的な理由が十分示されたかは疑問のように思われます。
 確かに、裁判員制度は、国民が自律的・主体的に裁判に参加する制度であり、そこで裁判官に求められているのは、プロとしての知識・経験を提供し、裁判員を補助することであるから、経験10年以上の裁判官であれば、一人でもその役割を十分に果たすことが可能であるという御意見はありました。この御意見は、裁判員が中心となって判断をし、裁判官はサポート役としてこれを支えるという制度イメージに立っているように思われますけれども、しかし、審議会意見書は、御承知のように、「裁判官と裁判員が責任を分担しつつ、法律専門家である裁判官と非法律家である裁判員とが相互のコミュニケーションを通じてそれぞれの知識・経験を共有し、その成果を裁判内容に反映すること」、「裁判官と裁判員との相互のコミュニケーションによる知識・経験の共有というプロセス」に裁判員制度の意義があると指摘しております。このように、審議会意見は、「裁判官と裁判員との相互の」、つまり一方向ではなく、双方向のコミュニケーション、「知識・経験の共有」ということを強調しているのでありまして、そこでは、裁判官と裁判員のどちらか一方が中心あるいは主役というのではなく、裁判官と裁判員のいずれもが主役であり、それぞれ異なるバックグランドを持ちながらも、対等な立場で、かつ相互にコミュニケーションを取ることにより、それぞれの異なった知識・経験を有効に組み合わせて共有しながら、協働して裁判を行うという制度が構想されているものと考えられます。
 しかも、いかに新たな裁判員制度を導入するといいましても、それは全体としての裁判制度の一部を構成するものになるわけですから、裁判制度全体としての整合性が取れたものとする必要があるわけです。その観点からしますと、後で述べますように、最も重大な範疇の罪の事件を裁判員制度の対象としつつ、法定合議事件の一定部分は現行どおり裁判官のみの合議体で裁判するということを前提とする場合、最も重大な範疇の罪の事件を担当する裁判体の裁判官を一人又は二人とするのは、それよりは軽い罪の事件が裁判官3人で構成される裁判体によって裁かれることとバランスを失することになり、適当でないと思われます。検討会の議論でも、何人かの方々から同様の御指摘があったところであります。
 現行の制度で、最も法定刑の重い範疇の罪が必ず3人の裁判官の合議体で裁判しなければならないという、いわゆる法定合議事件とされているのは、そのような事件の場合には、事実問題についても法律問題についても、裁判所による判断が死刑や無期ないし長期の自由刑という重大な刑罰に結びつき得ますので、3人の裁判官の専門的知識・経験を持ち寄ることにより、より適正な判断がなされることを確保しようとしたものと考えられます。
 それらの最も法定刑の重い範疇の罪の多く、その中でも死刑・無期刑など特に重い刑に当たる罪が新たに裁判員の加わる裁判体によって裁かれることになっても、そういう事件においても、少なくとも法律判断や訴訟手続上の判断、更には、憲法判断が必要とされる場合には憲法判断を、裁判官が行うことに変わりはないのに、その裁判官の数が現在より少なくてよい、あるいは少なくすべきであるというのは、理に悖るのではないかと思われます。そういう結論を仮に導けるとしても、それを正当化できるだけのよほど確固とした理由がなければならないはずですが、検討会におけるこれまでの議論では、そのような理由が示されたとは私には思えないわけです。
 その上、これまでの検討会でも御指摘のありましたが、後に評決要件のところで出てきますように、裁判官の1名以上及び裁判員の1名以上が賛成することを評決のための必要条件とすることになっているわけですが、そのことを前提にした場合、裁判官をもし一人としますと、その一人の裁判官のみの意見で結論を左右することが可能になってしまい、せっかく裁判員が加わって裁判する意味、あるいは更に、重大な事件であるので合議体で裁判することにしている意味すら、薄れさせることにもなるのではないかと思われるわけです。
 また、裁判官を二人とした場合には、裁判官の判断事項について裁判官二人の意見が分かれたときの解決に窮することになる点、これも御指摘がありましたが、そのことも見逃せない点であります。この点については、そのような場合、裁判長の判断による、あるいは、被告人に有利な結論を採る、ということにすればよいという御意見もありました。しかし、このうち、裁判長の判断によるとすることに対しては、裁判官は合議体の一員である場合も、それぞれが独立し、対等の立場で、法と自己の良心に従って意見を述べ合い、それを通じて合議体としての意思を形成することが想定されているのに、ある地位にいる者の意見が結局は常に優先されるといった制度を採るのは、そのような基本的想定に反し、裁判官の独立に重大な悪影響を及ぼすという御指摘があったところです。また、被告人に有利な結論を採るということに対しても、法令解釈や訴訟手続上の判断には、いずれの結論が被告人に有利なものであるか決し難い場合があるという御指摘などがありました。私としても、これらの御指摘には十分な理由があり、それら二通りの解決方法はいずれ妥当でないと考えた次第です。
 次に、裁判員の員数の方に移りますと、こちらは、そこにお示ししているように、「裁判員の員数は、4人とするものとする。ただし、検討会における議論を踏まえると、5人ないし6人とすることも考えられるので、なお検討を要する。」としました。
 この点についても、これまでの検討会で非常に活発な議論が行われ、様々な御意見が述べられたところであります。それらの御意見の結論部分を整理しますと、大きく三つのグループに整理できるだろうと思われます。一つ目は、裁判官3人に対し同数程度、あるいは3ないし4人の裁判員という御意見、二つ目は、裁判員は5ないし6人という御意見、そして三つ目は、裁判員は9ないし12人という御意見であります。これらの中では、最初の同数程度、あるいは3ないし4人という御意見が相対的多数であったと言えると思います。
 各委員の御意見の理由は多岐にわたりますが、私としては、検討会の議論でも何人かの方々から御指摘のあったとおり、合議体の構成員による評議の実効性を確保するという観点からも、また一人一人の裁判員が責任感と集中力をもって裁判に主体的・実質的に関与することを確保するという観点からも、合議体全体の人数をあまり多数とすることは適当でないと考えます。
 特に、審議会意見が求めているように、評議によって産み出される判決においては、単に結論だけでなく、その結論に至る実質的な理由が示されなければなりません。そのためには、評議においては、判決の理由についても突っ込んだ意見のやり取りをし、できる限り全員の合意を得る、あるいは、少なくとも、多数の意見が一致するまでの詰めを行う、ということが必要であるわけで、そのような実質を伴う評議を行うことができる人数には自ずから限界があると思われるわけです。
 この点で、裁判員制度の場合の判決書は、現在のような詳密なものでなくてもよいし、また実際上そうはなり得ないという御意見もありました。しかし、裁判員制度の下でも、判決理由の書き方や詳細さの程度に違いが生ずることはあっても、判決の結論に至る事実認定や推論の道筋が実質的に示されていることは必須であり、審議会意見書が「裁判員が関与する場合でも、判決書の内容は、裁判官のみによる裁判の場合と基本的に同様のものと」すべきであるとしているのは、正にそのような趣旨だといえます。
 いま一つ忘れられがちな点を付け加えておきたいと思います。後述のように、裁判員の加わった裁判体による有罪・無罪の判決に対しても事実誤認や量刑不当を理由とする控訴を認め、裁判官のみで構成される控訴審裁判所がこれを審査して、その判決に誤りがあると認めたときはこれを破棄することができることとするとして、そのような制度が正当化される論拠はどこにあるかということであります。検討会で議論した限りでは、控訴審裁判所が行うのは、第一審と同じような裁判を新たにやり直すことではなく、あくまで第一審裁判所の判決を前提として、その内容に誤りがないかどうかを記録に照らして事後的に点検するという事後審査であるから、性質上、それを行うのに適しているのは裁判官のみの合議体だといえるし、そのような合議体に事後的な点検を行わせることは、裁判員の加わった裁判体の判断をないがしろにするものではない、という点に正当化の根拠を求めるほかないように、少なくともここでの議論を前提にする限りは、そのように私には思われるわけです。そして、そのような事後的な審査を可能にするためには、どういうことがなければいけないのかということを考えてみますと、第一審裁判所の判決において、基本的な事実関係や争点について、どのような証拠をどう評価して、どのような事実があった、あるいはなかったと推認したのか、そして、そのようにして認定された数々の事実からどのような推論を経て最終的な結論を導いたのか、といった事実認定ないし推論の道筋が明示されていることが必要だと考えられます。そうであってはじめて、記録と照らして、その道筋に誤りがあったかどうかを点検することができるのであります。そうではなく、控訴審裁判所がもっぱら記録だけを頼りに審判する場合には、控訴裁判所としてどういうことができるかといいますと、その記録を調べて独自の心証を形成し、その心証に照らして第一審裁判所の判決の結論が合致していれば、原判決を維持する。しかし合致していなければ破棄するという以外にやりようがなく、結局、実質的には、全く新たな裁判を、しかも、基本的には記録のみに基づいてやり直しているのと同じことになってしまって、正当化の根拠と符合しないというか、それが失われてしまうと思われるわけです。
 両当事者から見ましても、どういう理由で判決の結論が導かれたのか、自分たちの主張についてどのように判断されたのかが明示されていた方が、納得し易いわけですし、納得できなくて控訴を申し立てようとする場合にも、そのような事実認定ないし推論の道筋が明示されていなければ、控訴の理由となる問題点を具体的に摘示することは難しくなると考えられます。
 この評議の実効性という点については、例えば、12人で構成される英米の陪審やフランスの参審などでも、評議による議論は活発になされているという声も聞くわけですが、しかし、いずれにおいても、説明文に書きましたようなことから、評議における議論自体は活発になされるとしても、今申したほど精度の高い詰めまで行う必要はなく、実際にも、そこまでの詰めは行っていないし、また、行うのは極めて困難であるように思われます。そこでは、判決書にも有罪・無罪の判定や量刑についての実質的な理由は一切示されません。
 もちろん、さきに述べたような判決の結論に至る事実認定ないし推論の道筋、判決の実質的な理由について、詰めた評議を行い、合意を得ることが可能な人数は具体的にどれくらいと考えるかは、人によってある程度異なり得るだろうと思います。
 他方、アドホックに加わる非専門家である裁判員が、法律専門家である裁判官との関係で、主体性を発揮し、実質的に裁判に関与することができるためには、裁判員の数は裁判官の数の2倍あるいは3倍以上でなければならないという御意見もあるわけですが、この数字も、確たる根拠を有するものでは必ずしもなく、むしろ、多分に象徴的あるいはスローガン的な意味合いで用いられているところがあるように私には思われます。そして、その前提として、裁判員と裁判官とはグループとして対立・対抗する関係に立つ、特に、裁判官が自分達の意見を押しつけようとするのに対して、裁判員は数で対抗するしかないといった捉え方や、あるいは、裁判員が中心ないし主役であり、裁判官はそれを補助する役割にとどまるという捉え方をもしされているのだとしますと、先ほど述べたような審議会意見が提案する裁判員制度の基本構想とは異なる発想によるものだといわなければならないように思います。
 そうではなく、その御意見の趣旨が、素人であり、初めて裁判員となった人が、プロの裁判官達の前で臆せずものを言うことができるようにするためには、同じような立場の人がある程度の人数いた方がよいということであるならば、それはそれで理由のないことではないように思われます。ただ、その場合も、どれくらいの人数が必要であるかは一概には言えず、これまでに挙げられた数字も、多分に感覚的なものでしかないように思われるわけです。
 以上述べたような考慮から、合議体全体の人数をあまり多数にはしないが、同時に、裁判員が意見を言いやすくするという意味で、裁判員の方が裁判官よりも若干多い構成とするのが適当ではないかと考え、裁判官3人に対し裁判員4人とする案をお示しした次第であります。
 ただ、検討会でのこれまでの議論で裁判員の数を9人以上とする御意見であった方は、自分の説が採用されない場合は、恐らく裁判員5人ないし6人という意見を支持する方にまわられるであろう。その場合には、5ないし6人という御意見も相当の数となるわけであります。そういうことから、合議体構成員全体の数が8とか9になるのは、先ほど述べたような意味での評議の実効性の確保という観点からは、やや多過ぎではないかという感じもしないではありませんけれども、全く考えられないというものでもないと思われましたので、「ただし、検討会における議論を踏まえると、5人ないし6人とすることも考えられるので、なお検討を要する。」という留保を置いた次第です。
 以上が、合議体の構成についての御説明ですが、この部分は、特に様々な御意見のあるところでありますので、この私の例というのも一つの素材として、更に御議論いただければというふうに考えています。
 次に、2頁になりますが、真ん中の方の「(3) 評決」の項に移ります。アとして「裁判は、裁判官と裁判員の合議体の員数の過半数であって、裁判官の1名以上及び裁判員の1名以上が賛成する意見によらなければならないものとする。」といたしました。これは、御承知のようにたたき台にA案として掲げられていたものであります。
 この点では合議体の3分の2以上の特別多数決とすべきとの御意見もあったわけですが、むしろ、このA案を相当とする御意見が大勢であったといえます。
 内容的に考えましても、検討会の議論でも御指摘のあったところですが、現行の裁判所法では、御存じのように、評決について過半数の多数決によるという制度が採用されておりまして、この点は、裁判員制度の導入後も裁判官のみによる裁判については維持されることになります。そうであるのに、裁判員制度の下における評決についてのみ、これと異なる評決要件を定める合理的な根拠を見出すのは困難だと思われます。それどころか、裁判員が加わったがために評決要件を加重するというのは、裁判員が加わって行われる判断に不安があるからより厳格にしたという意味合いすら持ちかねず、適当ではないと思われます。これも検討会で御指摘のあったところです。そのような理由から、たたき台のA案を採ることにしたものであります。
 これに対して、合議体の3分の2以上の特別多数決とすべきであるという立場からは、現在の3人合議制の下では、過半数による評決をしても、少数説は一人にとどまる。しかし裁判員制度においては、合議体の構成員が増えるわけですので、過半数による評決では、例えば、被告人を有罪とする多数説に対し無罪とする少数説も半数近くにのぼることがあり得るわけなので、そういう場合でも、被告人の有罪が合理的な疑いを超えて証明されたといえるのか疑問である、という趣旨の御指摘がありました。しかし、現行法におきましても、御承知のように、最高裁や高等裁判所の特別管轄事件では5人の合議制あるいは15人の合議制が取られておりますけれども、それらの場合にも過半数が評決要件とされているのでありまして、裁判員制度においてのみ別に扱う理由はやはりないのではないかと考えました。
 次に、「(4)対象事件」の「ア 対象事件」というところで、まず「(ア)原則」として、「死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪(内乱罪を除く)に係る事件」と「法定合議事件であって、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪のもの」、この二つを裁判員制度の対象事件とすることとしております。
 御承知のように、たたき台では、A、B、Cという三つの案が掲げられていたわけですが、そのうちB案とC案とを合わせたものであります。
 検討会においては、法定合議事件とするというA案を支持する御意見、あるいは「法定合議事件であって故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪」とするというC案、このいずれかを支持する御意見もありましたが、B+C案という説が多数説であったといえます。
 内容的に見ましても、法定合議事件の中には、文書犯罪等、実質的に見て、裁判員が入って裁判してもらうほどの意味はないものもあるという御指摘があったところでありますし、B案にC案を加えれば、審議会意見が裁判員制度の対象事件とすべきであるとしております「国民の関心が高く、社会的にも影響の大きい」事件はほぼ含まれることになるだろうと思われましたので、このような案とした次第であります。
 次が3頁の方に行きまして、中ほどの「ウ 事件の性質による対象事件からの除外」というところですが、これは検討会のこれまでの議論でも、このような除外の制度を設けるべきだという御意見が多数であったように思われます。
 実質的に見ましても、裁判員となる国民に過度の負担を負わせないようにするとともに、裁判の公正さを確保するためには、恐らく実際にはごくごく例外的な場合であることには間違いないと思いますが、そういう例外的な場合に、一定の事件を裁判員制度の対象から除外することはやむを得ないと思われますので、そのような除外の制度を設けるということにいたしたわけであります。
 ただし、たたき台の案で示されていた具体的な要件につきましては、より明確なものとすべきであるという御指摘が複数の委員からありましたので、それを踏まえまして、除外の要件は、そこに書きましたような形に改めることを考えてみました。たたき台の案との具体的な違いは3点ありまして、1点目は、例示としてあげられていました「民心」という、あまり評判がよくなかった文言を削除したこと、2点目は、同じく例示としてあげられていました、裁判員等を「畏怖させてその生活の平穏を侵害する行為がなされる」という部分を、裁判員等の「生活の平穏を著しく侵害する行為がなされる」というふうに改めたこと、そして、3点目は、「公正な判断ができきないおそれがあると認めるとき」とされていたところを、「裁判員に公正な判断を期待することができない状況があると認めるとき」というふうに変えたことであります。
 いずれも、裁判員制度の対象から除外する範囲を限定するとともに、その要件をより客観的で明確なものにするという趣旨によるものであります。
 一応こういう修文を試みてみたわけでありますけれども、これで先ほどのような委員の御指摘に十分答えるものとなっているかどうか、他の可能性もあるのではないか、そういう点も含めて更に検討が必要と思われますので、全体をカギ括弧で括ってその旨を付記した次第です。
 次が、3頁の下の方ですが、「2 裁判員及び補充裁判員の選任」の「(1)裁判員の要件」についてというところでは、「裁判所の管轄区域内の衆議院議員の選挙権を有する者であって、年齢25年以上のものとする。」という案をお示ししております。
 この点については、たたき台では、年齢の下限を20歳とするA案、25歳とするB案、そして30歳とするC案の三つの案が示されていたわけでありますが、今回の案はそのうちのB案を採ったものであります。
 検討会の議論では、A案を支持する御意見もありましたけれども、B案又はC案のどちらかという御意見を含めますと、B案に賛成する御意見がおおむね大勢を占めたと思われます。
 審議会意見書がいうように、裁判員制度の趣旨が「裁判内容に国民の健全な社会常識がより反映されるようにする」ということにあることからしましても、社会に出てある程度経験を積んだ人を裁判員とするのが適切ではないかと思われましたので、こういう案とした次第であります。
 次に、3頁の下からカギ括弧に入るのですが、本体の方は4頁の方で、「(2)欠格事由」のアの(ア)です。ここでは、赤字にしていないことからお分かりのように、たたき台どおりの案としております。
 検討会の議論では、この要件に代えて、「日本語を理解しない者」ということを欠格事由とすべきであるとの御意見もあったわけですが、その御趣旨は、中学校卒といった学歴の有無にかかわらず、裁判員として必要とされる学識・能力を有するということで足りるのではないかということであったように思います。しかし、この点はたたき台の案でも、「中学校卒業者に限る」とはしていず、「中学校卒業と同等以上の学識を有する者」であれば、資格を有するということにしていましたので、「学歴」という表現から受ける印象を別にすれば、結局、求められている内容はほぼ同じになるのではないかと思われます。しかも、判断基準としては、中学校卒業といったある程度客観的な基準を立てておいた方が望ましいのではないかと考えられることから、たたき台の案を維持することといたしたわけであります。
 次が、同じ項目の(ウ)ですが、ここは赤字で書いております。たたき台では、「心身の故障のため裁判員の職務の遂行に支障がある者」という欠格事由を設けるという案と、そういうものは設けないという案との選択肢が示されていたわけですが、ここでは、設けるという、たたき台ではA案として示されていた案を採っております。
 この点も、検討会においては、B案に賛成の御意見もあったわけですが、大勢はA案を支持する御意見であったように思われます。
 しかも、内容的に見て、B案を支持された方も、心身の故障のために裁判員の職務の遂行に支障がある場合があるということは認められていたわけでして、そうであるとすれば、職務の遂行に支障があると認められるのに職務を行うことができるというのは矛盾ですので、制度として合理性を欠くことになるように思われます。そういうことから、A案を採ることとしたというわけであります。
 次は、「(3)就職禁止事由」ですが、ここは、御覧のように赤字は全くなく、たたき台の案をそのまま維持しております。
 検討会の議論では、たたき台の案では就職禁止事由は広過ぎるのではないかという御意見や、職業による就職禁止の制度は設けるべきでなく、辞退事由とすることによって対応すべきであるという御意見もありました。ただ、その際にも申し上げたと思いますが、たたき台の案では具体的な職業が列挙されているわけですけれども、ここに掲げられた個々の職業につきましては、今後、条文化する段階で、法制的な観点等からも再度検討がなされると思われることから、検討会では、たたき台に掲げられた一つ一つの職業について、これを就職禁止事由とすべきかどうかという議論をするのではなく、むしろ、その案の基本にある考え方、つまり、三権分立の観点から司法権の行使にかかわることが望ましくないと思われる職業、及び非法律専門家である国民が参加することによって社会の健全な常識を裁判内容に反映させるという裁判員制度の趣旨から裁判員になることが望ましくないと思われる職業、こういう二つのカテゴリーを就職禁止事由とするという基本的な考え方の当否というところに焦点を当てて議論をしていただいたというふうに理解しております。
 今回の案も、個々の職業について逐一検討した上のものではなくて、その点については、今お話したように、今後、条文化の作業において更に法制的な面等を含めて検討がなされるということを前提としまして、むしろ基本的な考え方、方向性を示したものと受け取っていただければと思います。そのような観点からしますと、検討会の議論では、たたき台の基本的な考え方そのものについては、それでいいのではないかという意見が多数を占めたように思われます。私なりに考えましても、その二つの観点から就職禁止事由を設けるという基本的な考え方には理由があると思われましたので、現段階の案としては、たたき台の案をそのまま採ることにしたものであります。
 次は、「(8)裁判員候補者の召喚」ですが、これは後ろの方の6頁のところから始まっていますけれども、御説明申し上げるのはむしろ7頁の方です。 (ア)については省略しまして、赤で書いた(ウ)について御説明申し上げます。これは、基本的には、たたき台のB案によったものですが、B案的な方向でいくことについてはそれほど特段の御異論がなかったと思います。ただ、内容について若干手直しを行いました。つまり、たたき台の案では、質問票に対する回答内容だけが守秘義務の対象とされていたわけですが、それと同様に、事前に開示される裁判員候補者の氏名についても、正当な理由なく漏らしてはならないものとすべきだろうと思われましたので、それを加えた次第です。
 次は、「(9)質問手続」の「イ 質問手続」の(オ)です。これは、ペーパーの8頁になりますが、赤線で「理由付き忌避」という文言を消して、「(ウ) の申立て」という形にしております。これは、二つ前の(ウ)のところを御覧になればお分かりになると思いますが、両当事者からは、理由付き忌避の申立てのほかにも、欠格事由や就職禁止事由、あるいは除斥事由が存在するという申立てがなされることがあり得るわけで、それを却下するということがありますので、その場合にも、同様に不服申立てを認めるのが適当だろうと考え、不服申立ての対象を広げるという意味で、(ウ)の申立てを却下するというふうに修正をしてみたわけであります。
 次に(カ)ですが、これはいわゆる「理由なし忌避」ができる数ですけれども、たたき台では、裁判員の数自体が未定であったために、それがはっきりしませんと、理由なし忌避ができる数についても議論しにくいということで、空白のままにされていたわけです。これまでの検討会でも、議論はしていただかなかったのですが、法案化に当たっては、当然その数を定めなければなりませんので、これからの段階においては、理由なし忌避の数について、どういう考え方からその数を決めていけばいいのか、御意見をいただいておいた方がよいと考えました。その議論の素材とする趣旨で、仮に先ほどお示ししたように、裁判員を4人とすることを前提にした場合に、このくらいの数とすることが考えられるのではないかということで、お示ししたものです。
 何故3人ないし4人かということですが、審議会意見書では、「選挙人名簿から無作為抽出した者を母体とし、適切な仕組みによって最終的には公平な裁判所による公正な裁判を確保できるような仕組みにすべきである」、そういう選任のシステムをつくるべきであるとされており、その「適切な仕組み」としては、たたき台においても、検討会のこれまでの議論においても、欠格・除斥といった制度に加えまして、当事者による忌避というものが最後のスクリーニングの方法になることが想定されていたわけです。ところが、理由付きの忌避というものは、「不公平な裁判をするおそれがある」ということで忌避をするわけですが、個々の裁判員候補者について、具体的な根拠に基づいて、この人は「不公平な裁判をするおそれがある」とまで言える場合というのは、実際上かなり限られるように思われます。しかし、当事者としては、その点につき、はっきり疎明のようなことはできないのだけれども、不安を持っているという場合に、それを取り除き、公正であると当事者からも信頼してもらえる裁判所を構成できるようにするために、一定の範囲で、当事者が理由を示さずに忌避することを認めようというのが、理由なし忌避制度の趣旨でありますので、当事者がそれを行使できる数があまり少ないと実がないことになってしまいます。しかし、他方、あまり多くなりますと、当事者双方ともその数を行使できるわけですので、除斥等で排除されるという可能性も考えますと、裁判員選任のために召喚すべき裁判員候補者の数が非常に多くなって、実際上の取扱いが困難になると考えられます上、アメリカなどで指摘されますように、当事者によってこの忌避が訴訟戦略的に使われるという弊害を招くおそれもないとはいえません。こういう両面の考慮から、あくまで裁判員の数を4人とすることを前提とした場合にということですが、一つの目安として、当事者いずれについても、理由なし忌避の数は裁判員の員数よりやや少ないか同数程度の3ないし4としてはどうかというのが、今回お示しした案の考え方です。これは一つの素材にすぎませんので、これを手がかりに、基本的な考え方について、ぜひ議論していただければと存じます。
 次に、「3 裁判員等の義務及び解任」のうち、9頁の「(2)裁判員及び補充裁判員の義務」のオです。ここも赤字がありませんように、たたき台どおりの案をお示ししております。
 このたたき台の案については、検討会の議論でも、これを支持する御意見が多数であったと思われます。もっとも、それを前提としながらも、守秘義務の対象となる「評議の経過」というものの範囲を明確にすべきであるという御意見もありました。しかし、その際にも御指摘があったと思いますが、「評議の経過」という用語は、現在の裁判所法でも使用されておりまして、それ自体は明確な内容を持った用語であると思われますので、その点については、特に変更を加えませんでした。
 また、委員の中には、守秘義務の期間を限定するとともに、守秘義務の範囲を、裁判官と裁判員の個別意見の内容、評決結果及び合議体で秘密とする旨の合意をした事項に限定すべきであるとの御意見や、自己の意見を公表することは許すべきであるとの御意見をお持ちの方もおられました。しかし、検討会での議論でも御指摘のあったように、この守秘義務は、裁判の信頼性や、評議において合議体の構成員が安心して自由に意見交換をすることができることを確保するとともに、事件関係者のプライバシーや秘密を保護するために設けられるわけですので、仮に期間の経過によりそのような必要がなくなることがあるとしましても、それほど短い期間ではあり得ないと思われますし、また、それがどれくらいの期間であるかは、一概に、あるいは一律にいうことは困難であると思われます。また、他人のプライバシーや秘密にわたることについて、当のプライバシーの主体でない者が秘密とする範囲を決めるというのはおかしなことだと思われます。さらに、自分の意見であっても、それは当該事件の審理や証拠から得られた情報に基づき、あるいは、合議体の他の構成員との意見交換を通じて形成されたものであり、しかも、評議の過程で述べられたものでありますから、それを対外的に公表することを許すのは、評議の秘密の制度趣旨に反するように思われます。実際、多くの元裁判員がそれぞれ自分の意見を公表すれば、評議の内容はおのずから明らかになってしまいますし、また元裁判員が評議の過程で述べた意見とは異なることをそれが自分の意見であったとして公表したようなときには、誤解や紛糾を生じさせ、裁判の信頼性を損ねることにもなりかねないと思われます。そのようなことから、今回の案とすることにした次第であります。
 次が、10頁の「4 公判手続等」の「(3)弁論の分離・併合」というところです。この点について、たたき台では、「迅速で、裁判員に分かりやすい審理の実現という観点から、弁論の分離・併合の在り方について検討し、必要な措置を講ずるものとする。」とされておりまして、これに基づいて検討会において議論が行われました。委員の間からは、刑の調整規定を設けるべきであるといった御指摘があり、いくつかのアイディアも出されたわけですが、御承知のように、これはなかなか難問でありまして、解決の仕方によっては刑罰制度の在り方や裁判員制度対象事件以外の刑事事件の処理にも波及し得る問題でありますので、軽々には決められないところがあり、その可否や内容など、今後更に検討することが必要であると考えられます。そこで、現段階では、「刑の調整のための制度について、更に検討するものとする」と、こういう表現に留めた次第です。
 次は、11頁のところから始まる「(7)証拠調べ手続等」の「イ 証拠調べ等」です。もう一枚めくっていただきまして、上から五つ目の○印の赤字部分を修正しました。「第1回公判期日前の裁判官による証人尋問」というところですが、たたき台では、「第1回公判期日前の裁判官による証人尋問の活用を拡充すること」とされていたのみで、具体的にこういうふうにすべきだという言及はありませんでしたが、検討会では、今回案としてお示ししたような方向の御意見が何人かの方々から述べられたところです。それを踏まえ、刑事訴訟法227条1項中の「圧迫を受け」という要件を削除することによって使いやすくするという案とした次第です。
 次が、同じ12頁の「(8)判決書等」の「イ 裁判員の署名押印、身分の終了時期」というところです。ここでは、たたき台でC案として掲げられていた「判決書きには裁判官のみが署名押印するものとする。裁判員の身分・任務は判決宣告時に終了するものとする。」という案を採ることにしました。
 たたき台では、このほかに、「裁判員も判決書に署名押印することとし、署名押印時に裁判員としての身分・任務は終了するものとする」というA案と、「署名押印はすることとするが、身分・任務は判決宣告時に終了するものとする」というB案があり、A案を支持する意見や、A案又はB案という御意見もあったわけですが、最終的には、今回取り上げましたC案を支持する御意見が大勢であったように思われます。
 実質的には、裁判員が判決の形成に関与し、かつその宣告に立ち会うことによって、裁判員としての責任は実質的に果たしたといえる上、判決書等には、合議体の構成員として裁判員の名前も表示されることになると考えられますから、判決書に署名をしないからといって裁判員が無責任になるとは考えにくいと思われます。それに、これも御指摘のあったように、実際上、判決の宣告後、判決書を作成するにはある程度の時間を要することが少なくないであろうと思われますので、判決書が完成した後、それに署名してもらうためだけに裁判員の方々に再度裁判所に出頭してもらう負担を強いるのは過剰ではないかと考えられましたので、このC案といたしたわけであります。
 次は、「5 控訴審」で、ここではたたき台のA案を基本的に採って、「現行法どおりとする。」という案を示しております。
 たたき台では、このほかに、控訴審では裁判官のみで審判するということを前提にしつつ、控訴審は「訴訟手続の法令違反、法令適用の誤り等についてのみ自判できる」というB案、「量刑不当についても自判を認めるが、事実誤認についてのみ自判を認めない」というB´案、「事実認定及び量刑不当に関する破棄理由を加重する」というC案、更には、「控訴審においても、裁判員が審理及び裁判に関与する」ことにして、控訴審はいわゆる「覆審構造」とするというD案も掲げられておりました。
 検討会の議論におきましては、最終的にD案を採る御意見はなかったといえます。C案を採る御意見や、B´案を採る御意見もありましたが、結論としてはA案を支持する御意見が比較的多数であったように思います。もちろん、A案を採る方も、実際の運用では、第一審の判断がより尊重されることになるという含みの下にA案を採るという御意見だったと思います。しかし、B´案を支持する御意見もかなり有力であったといえます。
 検討会の場でも指摘させていただいたことですが、この問題は、結局のところ、職業裁判官のみで構成される控訴審裁判所が、裁判員の加わった第一審裁判所の判決の当否を審査し、これを破棄するということ自体を認めるべきかどうか、認めるとして、そのことがどのような理由で正当化できるのかということに、結局は帰着するように思われます。その点では、今申しましたように、D案という案を最終的に最後まで採られるという御意見はなかった。ということは、どなたもそういう職業裁判官のみにより構成される控訴審裁判所による審査や破棄を認めるという立場に立たれるわけですので、そうである以上、現行法の規定によって例外的に控訴審で自判できるとされている場合にまで、それを禁じなければならない合理的な理由は見出しにくいのではないかと思われるわけです。
 理論的にも、先に裁判員の員数についての御説明の中でも触れましたが、控訴審は、全く新たに証拠を調べて独自に心証を形成するというものではなく、あくまで第一審裁判所の判決を前提として、その内容に誤りがないかどうかを記録に照らして事後的に点検するという事後審査を行うだけであるというふうに位置付ければ、そういう裁判官のみで構成される控訴審裁判所による審査や破棄を正当化できるのではないかというのが、多くの委員が暗黙の前提とするところであったように私には思われるわけです。そして、もしそうであるとすれば、法制度としては、正に控訴審を事後審とする現行法の枠組みを裁判員制度との関係でも基本的に維持することでよく、したがってまた、第一審判決を破棄する場合にも、第一審に事件を差し戻すのが原則であるということはもちろんとして、控訴審裁判所が事後審としての審査のために行った記録の取調べにより、直ちに新たな判決を言い渡せる状況に立ち至っているというときには、現行法どおり、例外的に自判することができるとしてもよいように思われるわけです。
 そういうことから、制度としてはA案でよいとしましたけれども、あくまで裁判員の加わってなされた裁判を尊重するという意味から、事後審であるという控訴審本来の趣旨を運用上より徹底することが望ましいと考えまして、括弧書きでその旨の確認を行った次第であります。
 続いて、同じ頁の下の方から始まる「6 差戻し審」ですが、ここでは、たたき台のA案を採っております。
 たたき台では、このA案のほか、「新たな裁判員を選任して審理及び裁判を行うものとし、差戻し審は、覆審構造とする。」というB案も掲げられていたわけですが、検討会での各委員の御意見は、結局、A案とすることでほぼ一致しておりましたので、それに従った次第です。
 次に、13頁の「7 罰則」の「(2)裁判員等の秘密漏洩罪」の項目ですが、ここでは、赤が入っていませんように、たたき台どおりの案にしております。
 検討会の御議論では、秘密漏洩罪を設けること自体について御異論はありませんでした。ただ、後段の「合議体の裁判官及び他の裁判員以外の者に対し、その担当事件の事実の認定、刑の量定等に関する意見を述べ」る行為については、過去に裁判員等であった者まで罰則の対象とするのは相当でないとの御意見、あるいは法定刑として懲役刑まで設けるのは過当であるという御意見が述べられたところであります。
 このうち前者については、検討会の議論でも御指摘があったところですが、判決を言い渡した裁判体の構成員であった者が、後になって、各々てんでに、あれは間違っていたとか、こうすべきであったといった意見を表明するようなことになりますと、裁判の信頼性は大きく損なわれることになり、ひいては裁判制度の存立そのものにも影響を及ぼしかねないように思われます。また、その意見というものは、単なる傍観者の外から見た意見というものではなく、裁判員としての任務が終了後に変化があったとしても、当該事件の審理や証拠から得られた情報を基に、あるいは、裁判体の他の構成員との意見交換などをも通じて形成された元々の自分の意見をあくまで前提にしたものでありますので、それを表明する場合には、自ずと裁判員在任中に知った事件の内容や評議において自分が述べた意見にも触れることになり、あるいは、それらを推認させる内容となることが多いと考えられます。その意味で、評議の秘密保持にも影響がないとはいえません。そのようなことから、たたき台の案を相当とする御意見に従うこととしたわけであります。
 また、法定刑については、職務上知り得た秘密の漏洩を処罰する他の立法例において懲役刑が法定されていることとの整合を図る必要もあり、その観点からは、選択刑として懲役刑を設けることはあり得ることだと考えられますので、たたき台どおりの案とした次第です。
 次は、14頁の次、「8 裁判員の保護及び出頭確保等に関する措置」です。
 まず、「(1)裁判員等の個人情報の保護」という項目では、たたき台どおりの案を示しております。
 この点に関し、検討会の議論では、裁判員の個人情報を保護すべきであるという点についての御異論は特にありませんでしたが、保護の範囲について、「職業、性別、年齢等の一般的な情報は公開してよいのではないか」、「学術研究目的などの例外的な場合には公開する余地を残すべきではないか」といった御意見も述べられたところであります。しかし、その際も他の委員から御指摘のあったところですけれども、例えば一定期間あるいは一定地域ごとの裁判員の属性に関する統計資料というものであればともかく、個別事件の個々の裁判員の属性に関する情報を公開することにどれほどの意味があるのか、いま一つ理解できなかったこともありまして、個人情報の保護を優先すべきだと考え、たたき台の案どおりの案とすることにいたした次第です。
 同じ頁の「(2)裁判員等に対する接触の規制」のところですが、これは赤字で書きましたように、アの後段部分、裁判員等であった者に対する接触規制について、そのような修正をしてみました。
 この点について、検討会の議論では、裁判員等であった者に対する事後の接触の規制は行うべきではないという御意見も述べられておりますけれども、たたき台のように、接触の規制を設けるべきだという御意見が多数であったことから、基本的には、それに従ったわけです。ただし、その内容については、検討会の議論でも、裁判員等であった者に対する接触の規制の趣旨をより明確にする必要があるという御指摘がありましたので、それを踏まえまして、「裁判員又は補充裁判員が職務上知り得た秘密を知る目的で」の接触を規制するのだというふうに修正を施したわけであります。
 これも検討会で御指摘のあったところですが、職業上守秘義務を課される者の場合とは異なりまして、たまたま裁判員に選ばれて、いっとき裁判に関与しただけで守秘義務が課されるわけですから、そういう立場の人に必要以上の負担を負わせることがないようにするため、他の者がこれに働きかけて守秘義務を破らせ、秘密に属する事項を明かさせようとすることを封じるのが適切だと考えた次第です。
 最後ですが、15頁の「(3)裁判の公正を妨げる行為の禁止」のイの部分です。
 たたき台では、「報道機関は、アの義務を踏まえ、事件に関する報道を行うに当たっては、裁判員、補充裁判員又は裁判員候補者に事件に関する偏見を生ぜしめないように配慮しなければならないものとする。」という案が示されていたわけですが、その点について、「報道機関において自主的なルールを策定しつつあることを踏まえ、更に検討するものとする。」という案といたしました。
 検討会の議論では、たたき台にあったような定めを置くのが相当であるとの御意見、報道機関の自主規制に委ねるのが相当であるとの御意見、報道機関による自主規制の策定状況を見た上で規定を設けるかどうかを決めるべきであるという御意見が述べられたところでありますが、この問題は、言うまでもなく、報道の自由や国民の知る権利の保障に直接かかわる微妙かつ重要な問題でありますし、9月の検討会の場でも、報道機関による自主ルールの策定が進められている状況が報告されているところでありますので、その状況をも踏まえながら、更に慎重かつ十分な検討を行った上で結論を出すのが適切であると考え、このような案といたした次第です。
 以上、長くなりましたけれども、御説明させていただきました。
 それで、これから御質問や御意見をいただくことになるのですが、ちょっと休ませていただいて、3時から再開ということでよろしいでしょうか。

(休 憩)

○井上座長 それでは再開させていただきます。今回お示ししたペーパーの主要な点について御説明したところでありますので、これを素材にして、皆さんの間で御議論いただければと思います。その前に、ペーパーの全体の形、あるいは書いてあることの意味が不明だといったことがあれば、御質問を承りたいと思います。もちろん、議論の中に入って、そこで意見と一緒に言っていただいても結構ですが、何かありますでしょうか。
 よろしければ、中身に入ってからということにさせていただきたいと思います。これまでの議論が当然前提になっており、すべての論点について、また同じような議論を繰り返してもしようがありませんから、ポイントを絞って議論していただければと思います。
 とりあえず、次のような形にさせていただけたらと思うのですが、更に議論をしていただいた方がよいと思われる項目を私の方でまず挙げて、それについて議論していただいた上で、更に委員の皆さんが、この点も議論すべきではないかということがあれば、それを挙げていただいて議論する、そういう形で進めさせていただいてはいかがかと思うのですが、よろしいですか。
 そういう趣旨で、更に議論をしていただいた方がよいと思われる項目は九つあります。
 第一は、「1 基本構造」「(1)合議体の構成」の「裁判官の員数」、2番目が「裁判員の員数」、3番目が「(3)評決」、4番目が「(4)対象事件」のところの「(ア)原則」、5番目が「ウ 事件の性質による対象事件からの除外」、6番目が、「2 裁判員及び補充裁判員の選任」の「(9)質問手続」のところの(カ)の理由を示さない忌避の人数、そして、7番目から9番目が、「8 裁判員の保護及び出頭確保等に関する措置」の(1)、(2)、(3)という各項目であります。
 順に御意見を伺えればと思うのですが、まず、「裁判官の員数」という点からです。この点は、9月にかなり時間をかけて議論した点ではありますけれども、更に御意見があれば、どなたからでもお伺いしたいと思います。もし、言い出しにくいようでしたら、私からちょっと質問をさせていただいてよろしいですか。私は、先ほどの説明の中で申し上げたのですけれども、裁判官は3人ということにしているのですが、一人あるいは二人とすべきだという御意見の方もおられたわけですね。そして、その理由として、新しい制度だから既存の制度にとらわれる必要はないのではないか、ということをおっしゃったのですが、それ以上に積極的に、裁判官は一人あるいは二人で足りる、あるいは一人又は二人でなければならない、そうすべきであるという積極的な理由を必ずしも示していただいてはいない。少なくとも、私を動かす程度の理由はまだ示していただいていないのではないかと思います。その点について、御意見を述べていただければ、更に突っ込んだ議論ができるのではないかと思われるのですが、いかがでしょうか。強要するわけではありませんが、裁判官は一人あるいは二人と言われた方から何か出していただければ、議論のきっかけになると思いますので。どうぞ。

○土屋委員 それでは、意見を述べさせていただきます。
 私は、二人もあり得るのではないかという立場で、今まで意見を述べていたので、井上座長が今言われたみたいな、積極的に二人を導入すべきであるという意見とはちょっと違うのですけれども、ただ、二人がなぜあり得るのかという議論がもうちょっと深まる必要があるのではないかと私は感じるのですね。そういう立場からの意見です。
 私も前回、若干説明したのですが、座長をどうも説得できなかったようで、納得が得られなかったということですので、繰り返しにならないようにお話ししますと、二人の合議体の構成というのは、現行の3人の裁判官の法廷というのと基本的に違うのではないかと私は考えているということです。一人の裁判官の法廷というのは、恐らく陪審に近い、そういう法廷になるでしょうし、3人の裁判官がいらっしゃれば現行制度に則った、それを改善する形の法廷に恐らくなるのだろうと思うのですけれども、二人の裁判官というのは、そのどちらでもないものだと私は考えていまして、言わば独自の理屈付け、理念が必要な制度なのだろうと思うのですね。そして、その理念が成り立たないのかというと、どうも私は成り立つのではないかと感じているところがあるわけです。それで二人制もあり得るのではないかという意見を申し上げているということです。
 それは、つまり3人の裁判官の制度と一人の裁判官の制度の中間的な制度であるという位置付けではないということです。つまり、3と1を足して割って、妥協案として2を採るという考え方ではなくて、2というのはもっと積極的な意味合いがある制度としてつくれるのではないかと感じているということです。私の考えでは、裁判員制度の下で裁判官が果たすべき役割というのは、主に二つあると思っていまして、一つは、裁判の進行に関する一種の交通整理といいましょうか、訴訟指揮といいましょうか、そういった役割であろうと。それから、もう一つは、判決書の作成という重要な役割があるだろうと思うのですが、その二つが中心であると考えれば、その二つの作業をお二人の裁判官で分担するというのは十分合理性があるのではないかと思うのですね。
 もちろん、いろいろ法律判断について、現行制度で裁判員制度以外の事件も3人の裁判官で行うこととのバランスがとれないのではないかと、座長のペーパーにありましたけれども、そのあたりはどうも数の問題ではないのだろうと私は思うんです。裁判官の法律家としての意見の質の高さみたいなものがどれだけ出てくる必要があるのかということにかかわるのだろうと思っています。例えば、3人の裁判官が二人に減ってしまうと判断が甘くなる、重大な事件であるにもかかわらず軽々な判断が下される、そういうことに果たしてなるのであろうか。私は必ずしも論理的にそうはならないのではないかと思うのですね。
 逆に言いますと、法定合議事件の対象事件で裁判員制度の対象事件から外れるような事件は、3人の裁判官で行うという制度が残るとするならば、それより重い裁判員制度の裁判は、裁判官4人でやるとか5人でやるとか、それだけの人数を増やさなければ合理性がないのではないかという話に逆にいうとなるかもしれないと思っております。そういうことでなくて、法律家としてのきちんとした判断の質を確保するのに、一体何人が適当なのだろうかと考えると、3人でなくても二人であってもいいのではないかと思ったりもするわけです。私、実務のことなど分かりませんから、単なる感想なのですけれども、そのあたりの掘り下げをもっと専門家の方にしていただきたいと思うところです。
 そこで、そのあたりの、二人を想定したら一体どういう難点があるのか。私は二人でも十分訴訟が進行する条件は確保できると思うのですけれども、果たしてそういうふうに考えるのが妥当かどうか、そのあたりについてもうちょっと御意見を伺いたいと思います。

○井上座長 今言われた点ですが、理念的に独自性があると言われた「理念」というのは何ですか。

○土屋委員 裁判官と裁判員が協働して、国民の参加の下で、その経験・知識を活かして妥当な判断に至るというのが裁判員制度の意義だと思いますので、法律家だけの人数が何人かということによって、果たして左右されるのだろうかということを感じるということです。

○井上座長 その「協働して」ということは誰もが前提にしていると思うのですが、今の単独でもなく合議でもない独自の理念と言われましたよね。しかし、その内容については、はっきり示されていないのではないでしょうか。

○土屋委員 ですから、そこが議論されてないのだろうと私は思うものですから。

○井上座長 そういう意見の方から示していただいていないから、議論されていないのではないですか。もう少し積極的に内容を示していただかないと議論ができないように思いますので、水を向けたのですが。ほかの方もいかがですか。

○四宮委員 今、土屋委員がおっしゃったのを私なりに理解すると、理念があるとすればですけれども、私が前に申し上げていた一人ないし二人説というのとは、また別のお考えとは思いますが、新しい裁判員が入った裁判体における裁判官の役割というのを、さっき二つおっしゃいましたけど、そこからプロの数を考えていくというお考えなのではないかと、私は今、受け取っておりました。
 私は、もうここでいろんなことを繰り返すつもりはありませんが、一つは意見書の考え方から新しい裁判体の構成を考えるべきではなかろうか、裁判官の数もその意見書の趣旨から考えていったらどうだろうかということを申し上げてまいりました。今日は、座長のこのペーパーの中に、その点の御批判をいただいているわけですけれども、ただ、座長のペーパーの4ページの上の方には、意見書の趣旨を御記載になっておりまして、それが私の意見書の理解に対する御批判になっているのだと思います。
 ただ、ここから裁判官が3人ということが当然出てくるのかということは、私は伺っていて一つ疑問に思っておりました。ですから、意見書の理解がまた違うわけですが、座長の御理解からしても、当然に3人ということは出てこないのではないかと思った次第です。結局、3人が必要だという御意見は、その後のバランスを失するのではないかということ、より適正な判断を確保しようとされているということ、それから、二人の場合に意見がまとまらないのではないか、というようなことなのではないかと思ったわけです。
 私は、そのバランスの考え方というのは、これももともとの意見書が裁判員制度をどう考えているかということと関係するのかもしれませんが、今の裁判官だけで行っている合議体、3人の裁判官だけの合議体と比べることが果たして相当なのかどうか。そもそも裁判官だけの合議体とは別の合議体をつくろうとしているわけですので、そこで3人かどうかということを比べるのはどうなのだろうかなという気がしております。
 私が一人ないし二人と申し上げてきたのは、もともと意見書が、この制度では裁判官の役割としてはプロとしての知識・経験を裁判員に提供するという考え方でしたので、もともとはベテラン一人でいいのではないかと考えておりましたし、しかし、今、土屋委員がおっしゃったようなことも加味して、役割というものは非常に大変であるということであれば、いろいろそれを分担し合うということも可能であろうと思ったわけです。ですから、私の一人ないし二人説というのは、3人から減らしたということではなくて、新しく考えだしたという形であります。
 バランス論も、これは一審の役割を意識すべきではないかと思っております。一審の大きな使命は、事実認定をきちんとして、適正な量刑を言い渡すということであります。だからこそ、刑が重い、つまり重大な結果を生ずる事件については、今の裁判官だけが裁判する裁判では数を増やすことによって、その適正さを維持しようとしていたのだと思うんですね。また、事実認定というのは、一審で出た証拠だけで判断しなければならないということから、その証拠の適正な評価というものには多数の目が入った方がいいだろうということだと思うのです。量刑もまたしかりだと思います。
 今度の裁判員制度は、そこに国民が複数入っていくということですので、それは今までのように、裁判官を3人でやっていくという必要もなくなってくるのではないかというふうに思います。
 他方で、法律問題というのは、これも繰り返しになってしまいますけれども、もちろん重大な法律問題というのはあるわけですけれども、それは法定刑が重いから重大な法律問題を招来するということではないわけで、それは現に一審では単独制が原則とされて、そこでは一人の裁判官が憲法判断もするということになっているわけですので、必ずしもそれはリンクをしないし、法律問題というのは、多数が集まることによってより適正な結論が導けるかという、それはまた質の違う問題だと思います。というのは、事実問題と違って、判断資料は制限がないわけですから、いろいろなもの、資料を調べて、もし二人制の場合であれば、プロ同士で徹底的に議論して、そして適正な法律判断に到達していくことが期待できるわけで、また法律問題は更に上訴審の審査の対象に必ずなるわけですので、その意味でも3人は必要ないのではないかということであります。
 あまり長くなってしまうので、このあたりで。

○井上座長 皆さんに御意見いただきたいのですけれども、意見書の趣旨に言及しているところから裁判官3人ということが当然には導かれないのではないかという御指摘なのですが、その部分は、むしろ、四宮委員などのとらえ方、つまり、裁判員が中心であって、裁判官がそれをサポートするというイメージは、意見書が考えているところではないということを言ったものです。そのことは、これまでも、たびたび申し上げてきたことです。それは、今回引用しているところからも明らかですし、意見書に至る議論をきちんとフォローしていただければ、そういう制度イメージではできていないことが分かると思うのです。
 四宮委員は、もともと陪審論で、そのイメージが強いので、そういうお考えになっているのかもしれないのですけれども、意見書は明らかに、裁判官と裁判員とが異なるバックグラウンドを持ちながら一つの裁判体を構成し、そういうものをぶつけ合い、あるいは相互に共有して裁判を行うという制度イメージでできている。そこが違うのではないかということを言ったわけで、そのことから当然に裁判官は3人ということになるとは申し上げていません。
 恐らく、四宮委員としては意見書の趣旨をそういうふうには理解しておられないために、裁判官は二人、あるいは一人でいいと言われるのも、結局、「新しく発想すれば」ということを繰り返し言っておられますが、実質としては、裁判官はサポート役なのだということなのではないですか。しかし、そういう位置付けは、やはり意見書の考え方と違うのではないか。そのことを御指摘したわけです。
 それに、バランス論は、既存のものとのバランスを論じることではなく、今度裁判員制度が導入されたときに、全体が変わることは間違いないのですが、その中に職業裁判官3人の合議制というものも残り、それも全体としての裁判制度の重要な一部をなすわけで、それとのバランスということを考えないでいいのか、全体として整合するのか、ということを言ったのです。
 その点につき、第一審裁判所の機能を事実認定と量刑だけに絞って考えるから、そこのところが違うのでよいという御説明なのですけれども、そうではないことは指摘させていただいたはずです。法定合議事件にしているのは、事案が複雑だとか法律問題が複雑だからということではない。それは事案によって違うので、軽い事件でも複雑なものはある。そうではなく、結果として非常に重い刑につながり得るので、法律判断も事実判断もより慎重に適正に行うようにするというのが法定合議とした趣旨であり、現行法の考え方では、3人の合議制でやることにより、一層の慎重さ、適正さが確保できる、そういう考え方ででき上がっているわけです。そういうことを前提にした場合、裁判官はそんなに要らないということになるのかどうかですね。一番最後に言われたことは、結局、そういうことになるのではないかと思うのです。法律問題というのは、3人も集まってやる必要はないといわれたけれど、本当にそうなんでしょうかということを、説明の中では申し上げたはずです。
 そういうことを踏まえて、新たな制度では裁判官は二人でいいのだ、あるいは二人とすべきだ、あるいは一人だということについて十分実質的な理由が示されたのか、疑問なのです。今の御発言を伺っても、まだ私には分かりません。

○平良木委員 まず、お詫び申し上げなければいけないのですけれども、前に土屋委員から、ドイツの地方裁判所の合議法廷、これを二人でやっているという話があって、私はそうでなくて3人だということを申し上げたのですが、その後、確認しましたところ、やっぱり現在でも二人で行っているということのようです。これは、2000年の12月までということで、最初時限的な立法だったのですが、2002年まで延ばされて、それが2004年まで更に延ばされたというのが真相なんです。

○井上座長 東ドイツを合併したので、裁判官の員数が足りなくなったことに伴う非常措置ですね。

○平良木委員 そうです。あくまでも今そういうことをやられておりますけれども、座長が言われたように、臨時的な措置ということで、3人でもできるというような形を一応とっているということであります。そうではありますけれども、今の話にありましたように、あくまでも臨時措置であって、3人に戻すということが、当然の前提として議論されているということです。
 そのことと関連して、裁判員制度について、裁判官は二人の方がいいのか、あるいは3人の方がいいのかということになりますと、やはりかなり違いがあって、先ほどから出ておりますように、法律判断というものは裁判官のみで判断して過半数で決まるということと、それからもう一つは、裁判員の除外された合議事件があって、これは3人でやらざるを得ない。こういうことを考えると、やはり裁判官というのは3人という、座長の案が私は適切であるというように思います。

○池田委員 土屋委員の話と四宮委員の話を聞いて、私がちょっと違うなと思ったのは、裁判官の役割として二つ言われましたけれども、やはりそれ以外に、今、座長が言われた法律判断というのはかなり大きなウエートを占めるのだということです。司法に求められているのは、法律で決まっていく世の中、それを期待されているわけですけれども、その法律判断というのは、事件によって重いもの、軽いもの、大きなもの、小さいものと、いろいろありますけれども、法律判断というのは非常に大事なわけで、その法律判断があるからこそ、それを前提として、事実認定、量刑の当てはめというのも生きてくるわけで、そこの土台が揺らいでは困るわけです。特に、日本は一審から違憲立法審査権というのがあって、憲法裁判所というものをつくっている国もありますけれども、そうでなくて、今の一般の裁判所で法令の憲法適合性についての判断もします。そういう重要な判断もあるわけです。
 それから、訴訟の進行であっても、単に進行役として右か左かやっているだけではなくて、その訴訟手続上の判断、例えば違法収集証拠の問題など、事案によっては
posted by: enzaix | 裁判員制度 | 00:00 | comments(0) | trackbacks(0) |-
トップは高知。【裁判員制度】選任確率は5593人に1人。高知白バイ事件
lm737さんの言うとおりでした。

MSN産経
【裁判員制度】選任確率は5593人に1人 トップは高知 東京は?
2009.4.10 23:32

このニュースのトピックス:殺人事件

 最高裁は10日、殺人や強盗致傷など、裁判員裁判の対象となる事件が昨年、全国で2324件起訴され、前年と比べて321件少なかったと発表した。有権者数(平成20年9月2日現在)をもとに、1事件あたり、裁判員6人と補充裁判員2人が選ばれると仮定して試算した場合、全国平均で5593人に1人が裁判員・補充裁判員に選ばれることになる。前年の対象事件数に基づく試算では4911人に1人で、選任される確率は下がった。

 都道府県別で選任される確率がもっとも高かったのは、高知県で3119人に1人。低かったのは山形県で17426人に1人だった。東京都は5092人に1人、大阪府は3545人に1人だった。

 地裁別で裁判員裁判の対象事件数が最も多かったのは、大阪地裁本庁(堺支部を除く)で218件、次に東京地裁本庁(八王子支部除く)の213件。逆に、最も少なかったのは山形地裁と富山地裁の7件だった。

 最高裁によると対象事件は平成16年には合計3800件だったが、その後は毎年減少。とりわけ16年に1146件あった強盗致傷は昨年、ざっと半数の590件に減った。

 また、昨年の裁判員制度対象事件の裁判のうち、公判前整理手続きが実施された1788件の公判の平均開廷回数は3・5回だった。3回以内だったものが66・9%を占め、4〜6回が24・9%で、11回以上開廷されたのは2・4%だった。被告が起訴事実を認めたケースでの平均公判回数は2・6回、否認した場合は4・7回。

 最高裁ではこれまで裁判員裁判の7割が3日以内、2割が5日以内に終わると説明している。
posted by: enzaix | 裁判員制度 | 02:00 | comments(0) | trackbacks(0) |-
司法制度改革-裁判員制度・刑事検討会(第27回) 議事録
裁判員制度・刑事検討会(第27回) 議事録

(司法制度改革推進本部事務局)


1 日時
平成15年9月25日(木)13:30〜18:00

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員) 池田修、井上正仁、大出良知、酒巻匡、四宮啓、皸羚行、土屋美明、樋口建史、平良木登規男、本田守弘(敬称略)
(事務局) 古口章事務局次長、松川忠晴事務局次長、辻裕教参事官

4 議題
「刑事裁判の充実・迅速化」「公訴提起の在り方」について

5 議事

○井上座長 それでは、所定の時刻ですので、第27回の裁判員制度・刑事検討会を開会させていただきます。
 前回に引き続いての連日的な会議になりますが、よろしくお願いします。
 早速、中身の議論に入っていくことにしたいと思います。本日は、たたき台「刑事裁判の充実・迅速化について(その2)」に沿って議論をしていくことにしております。まず、第2の「1 連日的開廷の原則の法定」というところからになりますが、この点につきましては、これまでの議論で余り御異論のなかったところだと思いますけれども、いかがでしょうか。

○四宮委員 これは、法定化することに賛成です。前回の繰り返しになりますけれども、意見書も、連日的開廷を法定化することに加えて、これを可能にする関連諸制度の整備ということを言っておりますので、繰り返しになって恐縮ですけれども、十分な証拠開示を前提とした争点整理、保釈の運用の改善、夜間の接見や休日接見も含めた接見制度の拡充、あるいは、機械入力によるリアルタイム速記など、公判記録の即時交付といった関連諸制度を併せて整備する必要があると思います。

○井上座長 これまでの検討会でも、そのような御意見があったところで、多少の議論をしましたけれども、何かその点について御意見があれば。どうぞ。

○池田委員 私も、ここは前回、法定することは望ましい、ただ、裁判員事件と非裁判員事件で若干運用が違ってくるだろうから、非裁判員事件が、今よりは連日的に開廷ができるにしても、あまり進展しないとすると、裁判員事件についての連日的開廷原則の規定が、非裁判員事件と同じようなもので足りるのかということが疑問になるのではないかということを申し上げました。今回もその気持ちは変わらないので、後は、法文としてどううまく書けるかということだろうと思いますけれども、例えば、今の刑事訴訟規則の、「できる限り、連日開廷し、継続して審理を行わなければならない」ということは、これは全件に適用されるとして、裁判員事件においては、特に連日的開廷を原則とするというような、何かそういうようなことが法文として書けるのかどうかというのを御検討いただきたいと思います。

○井上座長 特に連日的開廷を原則とするという規定を裁判員制度対象事件以外の事件の場合には適用しないとなると、裁判員制度対象事件以外の事件では、連日的開廷の原則が、逆に後退したようなことになりますから、今おっしゃったように、連日的開廷を原則とするという規定がすべての事件に適用されることを前提としつつ、裁判員制度対象事件については、どこまで法文にさらに積極的に書き込めるか、そういう御趣旨ですね。

○池田委員 はい。

○井上座長 ほかに御意見は。それでは、ここはこのくらいでよろしいですか。四宮委員の御意見については、その多くはほかのところでも検討したことですし、ある部分は実際上対応可能かどうかということも含めて、現実的に検討しなければならないということだと思いますので、御意見として承っておくことにしたいと思います。
 次は「第3 訴訟指揮の実効性確保」ということですが、そのうちの「1 国選弁護人の選任」です。この点については御意見いかがでしょうか。

○酒巻委員 たたき台の文言、法文がこのままかどうかは別にして、この趣旨に全面的に賛成です。必要的弁護事件は、弁護人がいないと開廷できないわけですけれども、弁護人の中には、そうした必要的弁護の制度を不適切な形で濫用する、例えば、公判期日の引き延ばしの道具に使う、期日指定等について自らの主張を通すために、不出頭をほのめかすなど、いろいろと期日指定等について、もめごとを生ずる方がいないわけではないと承知しております。もちろん、すべての事件でそうであるというわけではなく、そういう人がいた、事案があったということです。
 そこで、そのような不適切な事態に対処するためには、弁護人が公判期日に現に出頭していないというだけではなくて、出頭しないおそれがあるという場合も、別途国選弁護人を職権で附することができるという制度にしておくことが、そのような、必要的弁護制度の不適正な、濫用的な使用という事態を防止することにもなり、予定された公判期日の空転を避けることができると思いますので、このたたき台が望ましいと思います。不適切な活動をした弁護人の事例があったことは事実でありまして、それには、やはり対処しないといけないと思います。

○四宮委員 前回、刑事訴訟法289条2項の「弁護人が出頭しないとき」というのは、「正当な理由なく弁護人が出頭しないとき」という解釈で行われているようだけれども、そうであれば、「正当な理由なく」という文言を入れたらどうかという話をしました。それに対しては、正当な理由があって出頭しないときでも、被告人の異議がなければ国選弁護人を附することができるという解釈もあり得るというお話もあったのですけれども、現在解釈されている二つのこと、つまり出頭しないときというのは「正当な理由なく」という場合であること、それから、被告人に異議がなければ弁護人を附することができる場合があるということ、そういったものをこの中に盛り込んだらいかがかと、現在そのように解釈されているというのであれば、そのように思いますが。

○井上座長 それは、刑事訴訟法289条2項自体を改めるべきであるという趣旨ですか。

○四宮委員 その解釈の部分を、より条文上明らかにされてはいかがかという提案です。

○本田委員 趣旨が分からなかったんですが、「正当な理由なく」というのを法文に入れるという話なんですか。

○四宮委員 そうです。

○本田委員 例えば、弁護人が急に病気になって長期間の入院を要するような場合、これは恐らく不当な理由で出頭しないというわけではないでしょうけれども、裁判員裁判を考えた場合に、既に裁判員の選任手続が終わって、公判期日が全部決まって、例えば3日なら3日、4日なら4日の審理計画が全部決まっておりますというときに、弁護人がその4日間全く出頭できないというような場合に、弁護人の病気が快復するまで待つために、いったん指定した期日を全部取り消してしまう、ということで、果たして裁判員裁判の制度がうまくいくのか疑問に思います。そういう場合には、国選弁護人あるいは公的弁護人の選任制度によってきちんと対処できるようにしないと、そういった場合も想定した制度を設計しておかないと、全体の制度がうまくいかないのではないかという気がします。そういう意味では、一般的には、弁護人を選任しなくても済むような場合はいいのですけど、そうでない場合を想定しておく必要もあるので、あえて「正当な理由」という文言を入れる必要はないでしょう。

○皸羂儖 私も結論的には本田委員がおっしゃったとおりで、「正当な理由なく」というのを入れる必要はないと思っています。正当な理由があろうがなかろうが、裁判員裁判の場合には、こういう措置を講ずる必要が出てくる場合があろうかと思うんですね。ただ、仮にこれを実際問題として考えてみると、ある公判期日に弁護人が出頭しなかったということで国選弁護人を付けたとして、予定どおりにその次の日の公判期日を開けるかというと、実務的には、それはなかなかそれは難しいのだろうなと思います。いきなり何にも知らない弁護人が付いたからといって、わずか半日で記録を読み込んで証人尋問をやりなさいというのは多分無理なので、ここは、仮に制度があったとしても、そういう事態が生じた場合には、審理期間の延伸というのは避けられないかなという感じはします。

○池田委員 私もたたき台でいいのではないかと思っているのですが、今の皸羂儖のお話にもあったとおり、国選弁護人の選任が公判期日の直前では、弁護人として十分な準備活動ができないままで新しい人にやれということになり酷だと思いますけれど、少し前から不出頭のおそれが明らかになっているというときもあり得るので、そういうときにはきちんと対処できる必要があるのではないかと思います。そういう意味では、こういうものを規定する方が望ましいのではないかと思います。

○大出委員 今、皸羂儖が指摘された弁護活動の準備への支障の問題については、運用に対処をゆだねればいいという趣旨ですか。それとも、何か具体的に規定を入れるというようなことが必要だということですか。

○皸羂儖 そういうことを言っているわけではなくて、実際にやってもなかなかうまくはいかないかもしれませんねということです。池田委員がおっしゃったように、前からそういうことが予測できていて、かなり前から一種の補充裁判員みたいな形で弁護人がついているのであれば、それは翌日代わって証人尋問できますけど、そうでもない限り、なかなか難しいかなと思っているということです。

○大出委員 それは、運用で、公判期日を延伸させるというようなことを考えるしか手がないということですか。そこは規定は要らないということですか。

○皸羂儖 規定のしようがないでしょう。

○井上座長 実際の対応の問題でしょう。国選弁護人を付けるか、付けないかという問題というよりは。

○池田委員 今と同じことでしょう。現行の刑事訴訟法289条2項についても同じことが起こりますので。

○井上座長 準備なしにやれといっても、できないわけでしょうから。

○辻参事官 先ほど御議論があった点についてですが、特に私選弁護人の場合は、正当な理由があって弁護人が出頭できないというときに、国選弁護人を選任できるかどうかということについては、被告人が自ら依頼した弁護人の弁護を受ける利益との関係について検討が必要ではないかという感がいたします。

○本田委員 確かに、被告人の意思を全く無視してできるかというのが一つ問題だろうとは思いますけれども、被告人としても、国選弁護人を選任することに異議がないということになれば、それでいいでしょう。だから、規定の仕方としては、別に「正当な理由がなく」という文言を入れる必要はないだろうと思います。

○井上座長 このくらいでよろしいですか。
 それでは、次の2の「(1) 命令の不遵守に対する制裁」というところですけれども、これまでの議論では、ア、イいずれについてもたたき台を相当とする御意見があったと思いますが、そのほか、過料等の制裁を設けるのは相当でないという御意見も述べられたところです。この点について、さらに御意見があればお伺いしたいと思いますけれども、いかがですか。

○四宮委員 私、前回も申し上げましたが、この趣旨そのもの、法律家として裁判所の命令に従うということは、法律家の倫理として当然のことであろうと思います。ただ、出頭の問題で言えば、これは前回の繰り返しの部分があって恐縮でございますけれども、準備手続の導入とか裁判員制度が導入されるということから、審理の在り方をめぐる紛議というものは、現在も私が承知している限りではほとんどないと思いますけれども、今後は一層回避できるだろうということが一つあります。
 それから、尋問、陳述制限命令違反のイの方ですけれども、これは、当事者法曹の活動とも密接にかかわるわけで、特に当事者主義をとっている我が国の訴訟形態の下では、例えば、検察官が訴追側の法律家として、弁護士が防御側の法律家として、熱心で精力的な活動を行うことはむしろ意見書も期待しているところなのだろうと思います。特に、関連性とか重複というのは、法廷における訴訟活動の目的や技術とも関連する部分がありますし、必ずしもそういったものが直ちに裁判官に御理解いただけるということはない場合もあるのではないか、もちろん裁判官の理解を得つつ努力するのが法律家としての使命だと思いますけれども、理解が得られなかった場合には、だから制裁ということではないのではないかと思っております。
 私の結論は前回と同じでございますけれども、ア、イともに制裁規定というものは設けずに、検察官、弁護士の法曹倫理というものにゆだねていただきたいという意見でございます。

○酒巻委員 私は、前回同様、命令の不遵守に対する制裁は、不出頭の場合、陳述又は尋問制限違反の場合のいずれについてもたたき台のとおり、このような制裁は必要であると考えています。最初に四宮委員がおっしゃった点は私も全く共感するところで、本来訴訟というのは、当事者あるいは訴訟関係人が裁判所の適切な訴訟指揮の下で活動するのが当然のことで、これは法律家の倫理であるというのはそのとおりだと思いますが、まず、弁護士さんがそう思っても、被告人が言うことを聞かないという場合については、これは法曹倫理の問題ではないので、それをコントロールする必要はあると考えます。
 それから、四宮委員は、当事者主義のことをおっしゃいましたけれども、訴訟進行方法の基本原理である当事者主義とそれが真に適切に実現するための裁判長ないし裁判所の訴訟指揮は、全く矛盾するものではなくて、私の知る限り、比較法的にも、当事者主義の原産地であるイギリスにしろアメリカにしろ、そこで当事者として活動する法律家は、正に当事者主義が活発に、適切に機能するために、裁判長の合理的な訴訟指揮には素直に従うのが当然の前提になっているわけです。訴訟指揮というのは、裁判所の職権によって当事者の活動を押さえつけるものではなく、正にそれをより良く花開かせるための大変重要なものであります。
 本当は、当事者法曹がそう自覚して、制裁がないのが一番なわけですけれども、先ほど言ったように被告人の問題があるのと、それから、最後の最後に、そういう当然の前提に従わない訴訟関係者がいた場合に対処できるということを法文上明らかにすることによって、最後のかなめを置いておくことは必要ではないかと考えます。私の気持ち・趣意は四宮委員と変わらないのですが、制度としてはこういう規定が必要であると思います。

○井上座長 それぞれが自覚して活動していれば、この制裁は発動されないわけですね。四宮委員が最後に言われたのは、イの制裁の前提となる、刑事訴訟法295条のような命令が濫発されるのが心配ということなのでしょうか。

○酒巻委員 不相当な訴訟指揮等に対しては、現行制度の下でも、不服を申し立てる道があるわけでありまして、法律家であれば、そこを使うということが当然であり、それで全体のバランスがとれるのではないかと考える次第です。

○井上座長 当事者主義とはあまり関係がないように思いますね。アメリカなどでも、訴訟指揮に従わない人がいた場合は、御存じのように、法廷侮辱の制裁を科されますから、かなりの強権発動となり、場合によっては身柄拘束までされることがあるわけですね。それに比べれば、このたたき台の案などは、まだ穏やかなもののような感じがするのですけれども。こういうものを置くこと自体が象徴的な意味を持つのでけしからんと、そういうお考えも分からないではないですけれど。

○四宮委員 当事者主義だから、この制裁規定が矛盾すると申し上げているのではなくて、当事者主義の下であるから、両当事者法曹が相当熱心に精力的にやる場合が出てくるだろうと。それはそれぞれの目的と技術に基づいてやっていくだろうという趣旨で、それが裁判所に御理解いただけない場合もあるかもしれないという趣旨で申し上げたので、当事者主義とこういう制度が矛盾するという趣旨ではございません。

○本田委員 私は、たたき台の案のとおり、一定の制裁規定は必要だと考えます。当事者が熱心に精力的に法廷活動をやること自体には何の異論もありませんけれども、裁判長の理解が得られないという場合ではなく、誰が見てもおかしな尋問ということが現にあるわけです。どう考えても不必要な尋問が行われているわけです。それを裁判長が制限しても、それに従わないというような場合が現にあるわけで、これは、第2ラウンドの議論でも同じようなことを申し上げましたので繰り返しませんけれども、そういう場合に対処できる、きちんとした制裁規定を置くことによって、そういった活動も抑制される面も出てくるのではないか。現実にこういう制裁が発動されないのが一番いいわけですけれども、万が一の場合の担保としては、こういうものをちゃんとつくっておく必要があると思います。

○井上座長 ほかに御意見は。よろしいですか。
 次は「(2) 裁判所による処置請求」ということですが、この点でも、これまでの議論では、たたき台の考え方で相当だという御意見のほか、(1)で過料等の制裁は設けるべきではないという御意見を前提として、(2)の処置請求の制度を設けるのも相当ではないという御意見があったところです。この点についてはいかがでしょうか。

○四宮委員 1点だけ改めて確認をしたいのですけれども、たしか前回も事務局の方で御回答があったと思いますが、もう一度だけ確認したいのは、イの方で「速やかに適当と認める処置を採り」というところのくだりですけれども、私の記憶では、事務局の御説明として、そもそも懲戒するかどうかも含めて監督権者が判断することであるという御認識が示されたと記憶しておりますが、それでよろしかったでしょうか。

○辻参事官 適当と認める処置ということでございますので、何が適当と認めるかは処置をする側で御判断いただきたいということだと、たたき台の趣旨としては考えております。

○四宮委員 ありがとうございました。

○皸羂儖 私はこの前の(1)も原案どおりでいいと思っているのですが、先ほど座長がおっしゃったように、これはかなり象徴的な規定で、果たしてこれで効き目があるのだろうかと思ってもいるわけです。ですから、そういう前提に立って考えると、併せて(2)の処置請求がないと、抑止力としてあまり機能しないのではないかと思います。そういう意味では、このたたき台のとおりで結構だと思います。

○土屋委員 ちょっと意見を言いにくい部分がありまして、どうしようかと迷っておりました。実は、命令の不遵守に対する(1)の部分について、私は基本的には過料程度の制裁はしようがないかなと思っております。やはりルール違反に対しては、その程度のものはしようがないかなと思うのですが、実際にこの処置請求というところになると、もうちょっと抵抗感が働きます。「請求しなければならない」という形で裁判所が必ず請求しなければいけないとなっているのですが、弁護士会の綱紀懲戒制度というのがここのところ相当熱心に議論されておりまして、私もその議論を傍聴したりもしているのですけれども、本当に熱心に自分たちの懲戒制度はどうあるべきかということを議論していらっしゃいます。ですから、基本的には弁護士会の綱紀懲戒制度による自主的対応がちゃんと機能するようにする必要があるのだろうと思うんです。実際、現在の制度では足りないとは思っていますが、法改正も行われましたし、そういった事情をもうちょっと見ないと、現実的にどう動いていくのかよく分からない部分がまだあると思います。ただ、ここで「請求しなければならない」として、必ず適当な処置を採れというふうにしていくと、ちょっとこれはきついかなという感じを私持っておりまして、そういう請求ができるというぐらいな穏やかな感じの方が、弁護士会の協力を得られやすいのかなというふうに感じたりしています。
 それで、ちょっと発言しようか、どうしようかと思っておりました。

○井上座長 現行の刑事訴訟規則でも処置請求をすることはできるのでしょう。

○酒巻委員 現在の刑訴規則にも、たたき台と同趣旨の規定があり、裁判所が特に必要と認めるときは請求できるということになっています。ですから、土屋委員の御意見は、現在の規則のままのマイルドな規定がよろしいだろうということになるのだと思います。
 私の意見は、今の規定をもう一歩進めるというたたき台の方がよいのではないかということであり、先ほどの皸羂儖の意見と私の意見は同じです。

○平良木委員 (1)で命令の不遵守に対する制裁が出てきたので、それに対応するような形に、処置請求についても手直しをしたというように理解すればいいのではないかと思うんです。

○本田委員 ここに「特に必要と認める場合」というものを入れる必要はないのだろうと思います。そうした要件を加えると、裁判所の方で、「特に必要と認める」という基準をどうするかという問題もいろいろ出てくると思います。むしろ、裁判所から請求をしてもらって、後は監督権者の方の適切な処置にゆだねるということでいいのではないかと思います。

○井上座長 ほかに。よろしいですか。
 それでは、次に進ませていただいて、第4ですけれども、「直接主義・口頭主義の実質化」につきましては、御承知のとおり、先日の裁判員制度に関するおさらいの議論の際に、たたき台に沿って、この点をも踏まえて公判手続等に関する議論を行ったところです。したがいまして、ここでは、裁判員制度対象事件以外の事件における直接主義・口頭主義の実質化について、裁判員制度対象事件における議論とは異なる考慮をすべきところがあるかどうか、あるとすれば、それは何か、という角度から御議論をいただければと思います。これまでの議論では、基本的には同じではないかという御議論だったと思いますけれども、何かさらに付け加えることがございましたらおっしゃっていただければと思います。よろしいですか。基本的には裁判員制度のところで議論したことを踏まえて、ということになるのだと思います。
 それでは、次の「第5 即決裁判手続」に入りたいと思います。事務局から前回説明がありましたように、たたき台が修正されておりますので、それを踏まえて、前回の説明についての質問でも結構ですが、御意見をお伺いしたいと思います。項目に沿って、まず「1 即決裁判手続の申立て」についてはいかがでしょうか。

○酒巻委員 一つお尋ねしたいことがございます。修正のあった新しいたたき台では、即決裁判手続に異議がないかどうかを決めなければいけない被告人の権利については、被疑者の段階から公的弁護人の請求権を認め、かつ、公判も必要的弁護にし、さらに量刑も執行猶予の限度という制約が設けられて、被告人の権利保護が手厚くなっているわけです。ところで、即決裁判手続の申立ての要件として、被疑者に弁護人がいるときには、被疑者だけでなくて弁護人にも異議がないかどうか確かめるとされています。これはもとからあった部分ですけれども、新たなたたき台ですと、請求すれば、被疑者の段階でも弁護人が選任される機会が出てくるわけです。そして、弁護人としては、被疑者から、即決裁判手続でよいということや、犯罪事実を認めるという話を聞くことはできるでしょうが、しかし、この被疑者の段階では、まだ事件に関する証拠等は開示されていない。そういう段階で、弁護人が、いわゆるプロとして、即決裁判手続によることに異議がないということを判断できるのかどうかということを、私としては、知りたいわけです。
 プロですから、私も、ある問題について何か考えて、これで行けるのではないかと思っても、いろいろと文献を調べて、いろんなものを読んで、それでやっと踏ん切りがつくということがあるわけで、それと同じように、弁護士さんも、プロであればあるほど、被疑者の話を聞いただけで、この即決裁判手続によることに異議がないと言えるのかどうか、ということです。特に、今のたたき台の内容ですと、弁護人が異議がないと言わないと、検察官は即決裁判手続の申立てをすること自体ができないことにになっているので、その辺りはどうなんだろうか、というのを、弁護士である皸羂儖や、四宮委員にお聞きしたいなと思います。

○井上座長 お二人おられるので、どちらの方でも。嫌ならおっしゃらなくても結構ですが(笑)。

○皸羂儖 すかっと判断できるものもあるし、すかっと判断できないものもある。すかっと判断できるものについては「異議はありませんよ。」と言えばいいわけだし、判断できないものについては、「即決裁判手続では無理ですね」と言えばいいだけのことですね。ただ、たたき台では、この制度を全体として見ると、罰金以下の刑を除き執行猶予しかできないとなっていますね。ですから、実際この手続にのってくる事件は、ある程度類型化されている事件であるとか、大体結果が想定されるような範囲のものなんですね。筋が複雑で、証拠を見てしっかり検討しないと、この手続にのせていいかどうか判断がつかないというものは、そうないと思うんですね。例えば、この手の事件であれば、一般的に、証拠関係はこれとこれであり、こういう類型の争点がいくつか想定され、その争点について、Aという証拠があったら、これはお手上げだね、というように、そういう類型的な判断をすることができる事件が多いと思うんですね。ですから、それを前提にして、かつ被疑者に聞いて、被疑者はこれは絶対間違いありませんよと言う。また、類型的に争点が想定できますから、この点はどうだと聞くと、この点はこうですね、と被疑者はしっかり答えてくる。それなら、その争点はクリアされているな、と分かると思うのです。
 また、即決裁判手続にのるような事件の場合には、検察官と弁護人が面談をして、証拠関係はどうなっているんですかということを多分聞くと思うんですね、事実上。検察官としては、それは答える義務はないのですが、検察官としても、こういう手続にのせようと思っていれば、当然許される範囲内で証拠関係はこうですねということは説明すると思うんですね。それを聞けば、普通であれば、これは大丈夫だという判断はできますし、そこまでやっても大丈夫だと判断できない事件は、そもそも、この手続になじまないということですから、それは異議を述べることになりますね、というふうに言うだけです。
 ですから、そういう意味では、酒巻委員がおっしゃった懸念というのは、実務家としてみるとそんなに心配してないということですね。

○井上座長 ありがとうございました。四宮委員、何かありますか。

○四宮委員 ちょっとつけ加えますと、たたき台の案では、検察官が相当と思料する事件がこの手続に乗るということですね。今、皸羂儖からお話があったように、おのずからその性質は決まってくるだろうと。すかっとする事件と、すかっとしない事件とあるということですけれども、すかっとしないけれども、ちょっと何か資料を見ればすかっとするというのもあると思うんですね。例えば覚せい剤の1回使用、自己使用だけのケースというのは、恐らくこの手続になじむケースの一つだと私は思いますけれども、逮捕されるときには簡易な鑑定をしているわけですね。そういうものは検察官の手元にあると。それから、例えば出入国管理法違反、いわゆるオーバーステイなども、入国記録とビザの問題は恐らく手元に資料としてある。
 そういったものは、まだ被疑者段階ですけれども、この手続で弁護士がついたときに、ちょっと見せてもらえれば、高井委員の言葉で言うすかっとするということになるわけで、弁護人が異議がないかどうかを判断することを実効的にする仕組みではないかと思うんです。それが、仕組みとして、そういうものをつくるのかどうか、また一つ議論になるのだろうと思いますけれども、そういったものまで、もし見せてもらえるということになれば、より一層この手続は使い勝手が良くなると思います。

○井上座長 見ないと判断はつかないということですか。例えばオーバーステイの場合に、本人が、事実はそのとおりであり、即決裁判手続で処理してもらっていいと言っているときでも、弁護人としては、いや、それらの資料を見て確認しないと答えが出せないということですか。

○四宮委員 ということもあるだろうと。

○井上座長 覚せい剤の自己使用などについても同じだということですか。

○四宮委員 ええ。

○井上座長 それは、例えばどういう場合でしょう。例えば覚せい剤の自己使用で、本人も認めているとして、判断がつく場合とつかない場合の仕分けがよく分からないものですから。

○四宮委員 多くの場合は判断がつくと思いますけれども、ただ、今申し上げたような限度で何か弊害があるのだとすれば別ですけれども、こういう仕組みを動かしていくためには、むしろ私はプラスに働くのではないかと思っておりますけれども。

○井上座長 という御意見ですが、どうぞ。

○本田委員 証拠を見ないと判断できないという場合が事案によってないわけではないでしょうけれども、まず、そういった事件を、検察官がこの即決裁判手続にのせるのが相当だとして請求するということはまずないだろうと思います。要するに、たたき台に書いてあるとおりに、事案の性質、公判において取調べを必要とする証拠の内容・量、被疑者が被疑事実を認めていること、こういう要件が全部満たされた上でやるわけですから、そこはあまり心配されるようなことはないのかなという気がします。それでもどうしてもだめだということになれば、それはこの手続によることができない事案なのでしょうけれども、異議があると述べるところまでは行かなくとも、例えば、証拠開示を受ける前の段階では、弁護人としては、意見を留保したいというような場面が想定されるかもしれないですね。起訴後に、証拠開示を受け、その証拠を見て、異議があると言えば、即決裁判手続から外れることになると思いますけれども、証拠開示のない起訴前の段階で、弁護人が意見を留保した場合にも、検察官が即決裁判手続を申し立てることができず、その事件を手続にのせることができない、ということになると、被疑者は事実関係を認めていて、この即決裁判手続でやってもらいたいと言っており、事案自体も即決裁判手続にふさわしい事案の場合であっても、即決裁判手続によることができなくなる。ですから、被疑者の弁護人が積極的に異議があるとまでは言わずに意見を留保するにすぎないという場合には、即決裁判手続の申立てはできることにして、いったん事件を手続にのせ、証拠開示をした上でだめなら、そのときに通常の手続に移るというようなことも十分考えられるのではないかと思います。

○皸羂儖 四宮委員の御意見も分からないではないのですが、証拠を見せるということを、運用でやるのでなくて制度化してしまうと、これは検察官としては非常に使い勝手が悪くなって、弁護人はいいかもしれないけれど、検察官の方で慎重になってしまって、結局この制度が活かされなくなると思いますね。ですから、そこは、検察官がその場の運用では、事実上証拠を見せたり説明したりするのは構わないと思いますけど、起訴前の証拠開示を制度としてしまうとなると、かえってこれは難しいという感じはしますね。

○井上座長 ほかの方はいかがですか。

○酒巻委員 私の質問は、証拠については公訴提起後に公式な証拠開示があるという前提であり、証拠を見ていない公訴提起前の段階で、弁護人として、異議の有無を判断できますかという質問だったわけであります。恐らく検察官の方でも適切な事件を選ばれて、即決裁判手続を申し立てられるわけですが、被疑者の弁護人が、何らかの事情でどうしても証拠を見なければ異議がないかどうかはっきり言えないという場合があるかもしれませんから、今、本田委員がおっしゃったように、異議を留保した場合でも、手続は先に進めることができるようにして、起訴後に、公式に証拠開示を受けたときに異議があればある、なければ、そのまま先へ進めていく、そういう制度設計にするのが最も適切ではないかという意見を今持ちましたので申し上げます。

○井上座長 もちろん、はっきり異議があれば、異議があると言って手続にのせないということもできるということですね。

○酒巻委員 当然そうでしょう。意見を留保するだけで手続がとまってしまうのは、どうも、もったいないという感覚であります。

○池田委員 証拠を見なくても異議がないと言える事件もあるだろうということですし、また、見てから異議を述べる機会もあるので、弁護人が意見を留保したときでも申立てはできるという仕組み自体はいいのではないかと思います。
 もう一点、論点が変わりますけど、よろしいですか。

○井上座長 どうぞ。

○池田委員 上訴制限のことも関連するので、今回の新しいたたき台は、弁護人を選ぶ権利、弁護人を依頼する権利を保障しようという趣旨だと思いますし、そこは十分理解できるのですが、そうすると、被疑者段階での公的弁護の範囲が、ここでは広がるということになるわけですね。今日の新聞報道によると、日弁連も、被疑者段階の公的弁護について、最初は大きな事件だけで始め、段階的に広げていこうという案を固められたやに書いてありましたが、即決裁判手続では、小さな事件でもやっていくということになりますが、対応能力は大丈夫なんでしょうか。

○井上座長 それはどなたにお聞きすればよいのですか。別の検討会の話題かなという感じもしないでもないのですが、どなたかお答えになりますか。

○四宮委員 私の知る限りですけれども、今、当番弁護士の件数は、年間5万件を突破しております。一体どのくらいの件数の公的弁護人選任の請求があるかどうか、全く予想はつきませんけれども、現在当番弁護士に全国でそれだけ対応しているということを踏まえて、私は十分対応できると思います。また、弁護士会として正式に何か報告せよということであれば、持ち帰ってそのように申しますけれども。

○井上座長 別の検討会のところで話題にしていただいても結構だと思いますが、少なくとも、公判請求された後の段階になれば、今の国選弁護と同じことですよね。国選弁護については、ほぼ対応できているのではないですか。

○池田委員 今より広がることはないんでしょうか。少し感じているのは、即決裁判手続で罰金刑を宣告することも可能ですから、現行制度では、略式手続で処理されていたような事件についてまで、即決裁判手続の方が利用しやすい、あるいは、こちらの方が体刑まで求められる、ということで、即決裁判手続の方へ移行してきて、現在の国選弁護の事件数よりも増えてくる可能性がないとは言えないのではないかという気もするのですが、それはないですか。

○井上座長 どうですか。

○本田委員 略式手続の対象事件と確かに重なるんですが、略式手続では50万円までの罰金刑しかできないわけですね。50万円以下の罰金刑となる事件は、略式手続でやっていけばいいわけで、それ以上の罰金刑になると、こちらの即決裁判手続でやることになるでしょう。しかし、現在、略式手続でやっているような事件をわざわざ即決裁判手続の方に持ってきてやらなければいけないという必要性は、実際の運用上、ほとんどないと思います。

○井上座長 理論的な可能性としてはあるかもしれないですけど、実際上はほとんどないのではないかという御意見ですが。

○本田委員 略式手続の場合は、公判を開くことなく、記録をそのまま裁判所に上げて、すぐ決定してもらうわけで、手続的には略式手続の方が簡略ですね。

○井上座長 ほかによろしいですか。

○四宮委員 今、1と2は区別していらっしゃらないわけですか。

○井上座長 1の議論だったのですけれど、2に自然に入ってしまったものですから、2についても、何か御意見があればお伺いしたいと思います。

○四宮委員 質問というか、確認ですが、2の(2)の要件なんですけれども「検察官の意見を聴いた上で、相当と認められるとき」とあります。これは、なぜこういう要件を設けたかという理由、つまり具体的にはどんな場合を想定しているのかということも含めて伺えればと思うんですが。

○辻参事官 「検察官の意見」というのは、手続的にどう組むかということにもかかわるのですけれども、要するに、検察官として実際にこの即決裁判手続によるつもりであるのかどうかというところの確認というか、意見というか、基本的にはそういうものを想定しているということであります。
 (1)の方に記載しておりますように、この即決裁判手続によるかどうかを判断する場合に弁護人の助言を求めるという趣旨で、2の制度をもうけようということですので、そういうことがあるかどうか分かりませんけれども、およそ検察官として、即決裁判手続によることを考えていない事件の被疑者から請求があるとすると、それは、ここの仕組みにはのってこない請求になりますので、そこのところは検察官の意見の確認といいますか、聴取が必要であろうと思っているということであります。

○四宮委員 趣旨は分かったのですが、実際に規定がどうなるか、全く別の話なのでしょうけれども、この手続を使うかどうかについての確認はもちろん必要だと思いますが、弁護人を選任するかどうかについての検察官の意見が要件になっているとなるとちょっと問題ではないかと思ったのです。これはある面では、見方によっては、被疑者にとっては、通常公判を受ける権利を放棄するという手続的には重大な決定、判断のための援助を求めるということですので、私としては、もちろんこの手続を検察官が使うということは大前提ですけれども、被疑者から請求があれば選任されるとすべきではないかと思います。

○井上座長 検察官に、弁護人が要らないのではないかというような意見を聴くという、そういう趣旨ではないのでしょう。

○辻参事官 そういう趣旨ではありません。

○井上座長 制度のつくり方として、検察官の方から即決裁判手続で行きたいという申入れみたいなものが最初にあれば、そういう誤解はないので、そこは制度設計というか組み方の問題ですね。いずれにしても、検察官から弁護人は不要だと言われたので、裁判所も、そうか、それなら、弁護人は付けない、ということにはならないのではないですか。

○酒巻委員 私も、先ほどもちょっと触れましたが、新しく設けられた公的弁護人選任請求権の付与というのは賛成でありまして、特に、今、辻参事官からも説明のあった、(2)の趣旨もよく分かりましたので、これは望ましい規定だと思います。特に、被告人は普通は法律の素人でありますから、自分はやったのは間違いないと言っていて、そのとおりであっても、やはりいろいろと不安があって、そのときにプロの弁護士さんに相談するのがお金がなくてできないというのは大変不当なことだろうと思いますので、安心して判断ができるために、求めれば、弁護士さんの援助が受けられるというふうにしておくことは大変良いことであろうと思っております。

○井上座長 ほかに、よろしければ。どうぞ。

○四宮委員 ここは、非常に重要な制度を導入してもらったと思っています。今、酒巻委員がおっしゃったように、大事なのは、被疑者の真摯なといいますか、任意で瑕疵のないといいますか、そういった同意をどう確保するかということなのだろうと思うんですね。さっき池田委員から弁護士の対応能力についての御指摘もありましたけれども、本来は、これは別の検討会の方の議題かもしれませんけれども、公的弁護制度の運用等もかんがみながら、被疑者段階ではなるべくこういった権利保護、手続的な保護というものが拡大していくことを希望しております。

○井上座長 特にさらに御意見がなければ、次に進みたいと思いますけれども、よろしいですか。
 次は、「3 即決裁判手続の決定」ですけれども、6つの項目がありますが、このうち、(5)が新たに追加された部分です。それも含めまして、全体につきまして御意見を伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。

○酒巻委員 新たに付け加えられた、いわゆる特別の必要的弁護事件にするという点を含めて、全体について、たたき台に賛成です。これも、第一審の即決裁判手続における被告人の権利を十分に保護するためには、必ず法律家である弁護人がいるということは大変望ましいし適切なことだと思いますので、このように必要的弁護にするというのは大変結構だと思います。

○井上座長 ほかにいかがですか、どうぞ。

○四宮委員 また確認ですが、新しい(6)のアですけれども、さっき議論されたことで確認されているように思うのですが、被疑者段階で異議がないと言っていた被疑者、弁護人も、裁判所に移ってから冒頭手続において異議を述べることも可能であるという制度設計と理解してよろしいわけですね。

○井上座長 有罪である旨の陳述をしないという形で、ということですか。

○四宮委員 公判期日に先立ち異議を述べるというのが、どういう場面を想定されているのかちょっと分かりませんが、冒頭手続前に、例えば書面を提出するということがあり得るのか、公判期日前に。

○井上座長 最初、異議のないという書面を出していたのだけれども、後で思い直して、公判期日が開かれる前に異議を新たに申し立ててきたとき、ということでしょうか。

○辻参事官 たたき台の趣旨といたしましては、捜査段階と申しますか、この手続の申立ての段階において異議がないという書面を出していたとしても、その後、公判段階に移って、例えば証拠開示を受けてみたらちょっと問題があるということで、あるいは、そういう理由がなくてもいいと思いますけれども、即決裁判手続によることについて異議があるということであれば、異議を述べることができるという趣旨で考えております。

○四宮委員 ありがとうございました。

○井上座長 ほかに、いかがですか。

○酒巻委員 前もちょっと気になって、机上の空論だとは思い恐縮ですが、今、四宮委員が問題にされたのは公判が始まる前に異議があるという場合ですね。しかし、公判が始まり、即決裁判手続の決定もあったけれども、審理の途中で、やっぱり嫌だということになる場合は、論理的にはあるわけですね。即決裁判手続は、簡易公判手続をモデルにしていると思うのですが、前にも申し上げたとおり、簡易公判手続の決定があって、手続を始めた後、異議を述べる、あるいは、有罪の陳述を撤回するということは、簡易公判手続の場合には想定されていて、同じようなことが、即決裁判手続でも、あり得る。
 そして、簡易公判手続での有罪陳述の撤回等の場合については、いろんな学説がありますが、有罪の陳述というのが手続の前提であり、それが途中で消えた場合は基礎がなくなったのだから、この手続によることはできないと解されています。即決裁判手続についても、理論的には、これと同じように考え、即決裁判手続の決定があって、審理が始まった後に、被告人らが、有罪の陳述を撤回し、あるいは、異議があるということになったときには、必ず即決裁判手続の決定を取り消すということにすべきなのではないかと私は考えている次第です。実際上は、そういう事態はほぼないとは思いますが、もしあった場合には、そのように決定を取り消さないと適当ではないと思います。

○井上座長 原則として、即日判決ということになるけれども、短い時間とはいえ、審理をしている間に、やっぱりやっていない、有罪ではないんだ、と言い出したという場合ですね。

○酒巻委員 ええ。

○井上座長 ないとは言えないですね。

○酒巻委員 ええ。ないとは言えないので、必要的に、即決裁判手続の決定を取り消さないといけないのではないかということです。

○平良木委員 それは、現行の刑訴法291条の3ですか、それと同じような規定をもうければよいのではないですか。

○酒巻委員 ただ、有罪陳述の撤回等があった場合に、刑訴法291条の3の「できない」によるのか、「相当でない」によるのか、という点の解釈については争いがございまして、「相当でない」によるとすると、有罪陳述の撤回等があったときでも、場合によっては、簡易公判手続をそのまま続けてもいいという議論もありますので。

○平良木委員 恐らく実際は全部取り消しているのだと思うんですね。

○井上座長 それが条文上明らかでないということですか。

○酒巻委員 解釈が分かれると言いましたように、明確になっていないので、有罪陳述の撤回などがあったときには、決定が必ず取り消されるようにすべきだということです。すいません、細かい、技術的なことで。

○井上座長 いずれにしろ、条文としてどういう書き方をするにしても、そういう場合には、即決裁判手続の決定を必ず取り消すべきだと、こういう御意見ですね。

○酒巻委員 はい。

○樋口委員 第2ラウンドで申し上げたのですけれども、(6)のアに関連してなのですが、同時に、最後に出てくる上訴制限のところとも関連するのですが、この制度の悪用を企てる者があったとして、その悪用を封ずるためにも必要ではないかということなのですが、(6)のアのケースで、有罪である旨の陳述をしなかった場合には、公訴を棄却するといった仕組みをもうけることによって、もう一度捜査に戻す必要があるのではないかと思います。そもそもこの制度の入り口として、1の(1)で、検察官は、「捜査の結果」とあるわけですが、その捜査の結果が何を意味するかにもよるわけですね。
 ただ、この制度では、比較的単純で、軽微なものを扱うことになるでしょうし、自認事件ですから、自認があって、あと確かな補強証拠がいくつかあれば、「捜査の結果」、つまり捜査を行ったということに多分なるのだろうと思うんですね。ただ、その自認が崩れた場合、有罪の陳述をしなかった場合には、これは捜査を尽くしてなかったということでは全くなくて、証拠の組立てが違ってくることになるのだと思うんです。
 自認が崩れた場合、例えば、財産犯をこういった対象犯罪に据えた場合には、たちまち処分先の捜査も必要となりますし、それから動機の裏をとっておかなければいけませんし、粗暴犯ですと、当日飲酒の状況がどうだったとか、あらゆる否認事件には必要な裏付け捜査が出てくるわけですね。ですから、捜査段階では自認していたのに、公判で有罪陳述をしなかった場合、これがいったん公訴棄却なりで捜査に戻されませんと、必要な裏付け捜査が尽くされないままで公判だということになりますね。ですから即決裁判が行われる手前でやめたといった場合の穴をふさぐ措置が、制度上必要なのではないかと思います。即決裁判が終わってからの穴をふさぐのは上訴制限でいいと思うんですね。穴は二つともふさぐ必要があるのではないかというのが意見でございます。

○井上座長 その点はいかがですか。

○皸羂儖 私も本質的には、今の意見と全く同感なんですね。これは前回、科刑制限がないと、とても弁護人としても使い道がないですよということを申し上げて、科刑制限を入れていただいたわけで、そういう点では非常に評価しているわけなんですが、しかし、いずれにしても、これが公判の合理化を目指した制度にとどまっているということは言えると思うんですね。ただ、今回のたたき台でも、ここに書かれているような制度になると、その反射効として、今までのようなち密な捜査ではなく、自白事件として必要な捜査を遂げた段階で起訴してくるというような、そういう事件が多くなる。そういう事件をこの手続にのせてくるという形で、反射的に捜査が合理化されるという効果はあると思うんですが、あくまでもそれは反射効であって、きちんとした捜査の合理化というところを目指した制度にするためには、今、樋口委員がおっしゃっているように、いったん捜査にもう一回戻すという道を開いておかないと捜査の合理化にはつながらないだろうというふうに思っているんですね。
 ただ、いずれにしても、現時点ではここまでしかできないということであれば、それはそれでやむを得ないわけですから、今後も捜査の合理化をするための制度をさらに考えていただきたいと思います。いずれにしても、こういうことを申し上げるのは、捜査の手抜きをするということではなくて、目の前の被疑者は認めているので、認めていることを前提にすれば、今あるこの証拠でも100パーセント大丈夫なんだけれども、もしかしたら公判廷で否認するかもしれない。それで、否認したときのために備え、例えば、想定されるAというの型の否認をした場合に備えてこちらの捜査をする、それとは別に想定されるBという型の否認をした場合に備えて、また、あちらの捜査もする、というように、今の日本の捜査は、十重二十重に捜査をして起訴しているから、勾留も長くなっているし、証拠の分量も多くなっているということなんですね。
 ですから、これを捜査の手抜きというが適当でないのはもちろん、合理化という言葉も、本当は実体をあらわしているわけではなくて、自白事件で将来も自白が維持されるのであれば、必要かつ十分な捜査は既に遂げているわけですよね。だから、そういうふうに公判段階でも自白が維持されるということが分かっている事件については、本来不必要な捜査を回避することのできる制度が必要ではないかということを前回申し上げているわけで、そういう意味では、半歩は前進したけれども、一歩前進したとまでは言えないわけですね、この改善案も。ですから、是非将来的には、捜査の、自認事件は自認事件として必要かつ十分な捜査で起訴ができるというような手続にすることを考えていただきたいと思います。

○池田委員 捜査段階での合理化が必要なことは私も全くそのとおりだと思いますが、この制度で、途中で打ち切って、もう一度その捜査に戻るというのは非常に難しい問題がいろいろと起こってくる。捜査をどういう手続で終わらせるのか、そして、その後、再度身柄拘束が可能になるのかとかいろんな問題が起こってくると思いますので、それは非常に難しいのではないかと思います。
 また、即決裁判手続にのってくる事件は、前回の話も前提とすると、かなり、類型的に、量刑の幅がそれほどない事件であり、また、有罪・無罪ということについても、被疑者が認めていることもあるにしても、証拠物があったり、現行犯逮捕されていたりしていて問題のないような事件がのってくるのではないか、仮に、公判で言い分を変えたからといって、それほど影響を受けないような事件がのってくるのではないか、と思うわけで、そうだとすると、こういう制度で、そういう類型の事件もかなりあることも間違いないので、それについて、公判が中心となる効率化にしてみても、皸羂儖も言われたように、捜査もそれを前提としたものになってくるわけで、そこに合理化ができるという点はあるわけですので、それなりの効果はあるのではないかと思います。

○樋口委員 対象犯罪をどうするかというところが大きいと思うのですが、入管法のオーバーステイとか、薬物の使用とか、それは当然対象犯罪に入るのだろうなと思うのですね。ただ、即決裁判手続の制度を新たに導入することの意義を考えると、やはり窃盗も手口がいくつもありますけれども、窃盗がとらえられないとあまり価値がないのではないかとも思われます。
 それから、偶発的なけんかに伴う暴行・傷害、これも件数的に非常に多いわけですが、手口で言えば、窃盗では万引きであり、こういった単純な暴行・傷害であり、それから財産犯では、窃盗以外にも器物損壊も財産犯だと思いますが、それとか寸借詐欺とか無賃乗車とか、結構使えるものがあるのだろうと思うのです。
 そういうものを考えると、自認事件かそうじゃないかによって、やはり財産犯であれば、先ほど申しましたけれども、被疑者の経済状況とか被害金品等の処分先とか使途先等々の捜査も必要になってきますし、それから、粗暴犯であれば、日ごろの被疑者の性格の捜査であるとか、犯行時の状況、飲酒の有無と、多岐にわたる捜査が必要になるわけですね。そのあたり、自認かどうかで、そういった捜査事項の構成が変わってくるということだと思います。

○大出委員 質問なのですが、樋口委員に伺えればと思います。私は、捜査に戻すというのは、直ちに賛成するということではないのですが、一応こういう話になったので確認なのですが、つまり捜査の合理化というようなことにこの手続が資するということになれば、それはそれにこしたことはないと思うので、それがあってこそということもあるのだろうと思うのですが、という場合に、今お考えの捜査の合理化の中には、もし本当に自認して、この手続で最後までいくという話であれば、被疑者の拘束期間の短縮というようなことも射程に入れておられているのですか。

○皸羂儖 拘束期間ですか。

○大出委員 身体拘束期間。つまり、自認して、この手続でいけるという判断になったときには、その段階において、拘束期間を何らかの形で切るというようなことをも射程に入れておられるのかどうかというのはどうなんですか。

○樋口委員 そこは直に結び付く話では必ずしもないかなと思います。ただ、身柄事件で勾留がついて、その期間中捜査を行っているわけですね。ですから、必要な捜査を行っているわけですが、その期間というか、身柄事件の場合の勾留の必要性というのはまた別途の問題ですよね。ですから、今お話のところは、どの切り口で単純化して申し上げたらいいのか大変難しいと思うのですが。

○皸羂儖 通常はこういうことが言えますね。この制度がない現行制度であれば勾留延長されていた事件が10日でこの手続で起訴されるということはあると思うんですね。だから、事実上、運用として勾留期間が短くなってくる。現在の勾留延長事案が、延長されずに10日で起訴される方向に振れていくという実務上の効果は期待できますよね。

○樋口委員 触発されて一言。

○井上座長 どうぞ。

○樋口委員 これは多分制度論ではなく運用論なんですが、即決裁判手続の制度にのせる時期が非常に重要になると思います。

○皸羂儖 それは検察官の問題ですね。

○本田委員 新しい制度をつくるとき、どこまでできるかということは、現行の法体系の中で、どこまで採用できるかという問題も当然視野に入れながら考えていかなければいけないのだろうと思います。この即決裁判手続自体は、事実に争いがなく、比較的情状の軽い定型的な事件について、簡易な手続で処理しようというものであり、現時点において採用可能な、手続の合理化・効率化の方策としてはそれなりに評価できるだろうと考えています。
 ただ、先ほどお話があったように、更なる捜査の合理化ということは、今後の課題として、当然考えていかなければいけないだろうと思います。将来的には極めて重要な課題になるであろうと考えています。むしろ、新たな捜査手法といいますか、捜査の合理化のための新たな捜査手法として、どういうものを導入できるのか、あるいは、有罪答弁制度のようなものをどういう形で採り入れることができるのかということを含めて、将来的には、大きな枠組みの中で検討をしていかなければいけないのだろうと思います。
 というのは、一方で裁判員制度の導入、連日的開廷の実現は近いわけですけれども、訴訟関係人の業務負担が増す部分というのはどんどんあるわけで、その一方で、犯罪の組織化とか複雑化とか、治安情勢の悪化ということが顕著になっており、これが当分の間治まるような状況ではないわけで、そうすると、このような困難な犯罪捜査に対して重要な資源を重点的に投入していかなければいけないわけで、どこかでやっぱり合理化というものが必要になってくる。もうちょっと大きな枠の中で、将来の検討課題として考えていくべきだろうと思います。

○井上座長 皸羂儖も樋口委員も、これはこれとして一応評価するけれども、さらに捜査の合理化につながるような制度を検討すべきではないか、こういう御意見ですので、本田委員が今言われたようなまとめというか、そういう整理かなという感じもするのですが。どうぞ。

○皸羂儖 それを考えて一言。先ほど、池田委員が、類型化された事件だから、当然否認に変わったからといって、あまり捜査する必要はないのではないかとおっしゃいましたね。ただ、供述調書をとっている立場から言うと、捜査事項は仮に増えないにしても、これが自白事件のままいくという前提で調書をとる場合と、公判廷でもしかしたら否認に変わるかもしれないという前提で調書をとる場合とでは、同じ相手から調書をとるにしても、そのとり方が全然変わってくるわけですね。前者であれば、例えば3枚ぐらいでいいものが、後者だと、6枚とか7枚になったりするわけですね。否認に備えた調書にするためには。
 ですから、自白がそのまま公判で維持されるかどうかということは、単に捜査事項が新たに増えるかどうかということだけではなくて、例えば、被疑者の取調べなど、公判での自白の維持いかんにかかわらず、捜査段階で行っておかなければいけない、必要最小限の捜査事項についても、その密度が違ってくるということなんですね。ですから、類型化された事件だから、否認に回っても新しい捜査事項は増えないから問題ないのではないかということとはちょっと違うということであり、やはりそこは捜査にいったん戻すという制度を持っているか持ってないかによって、必要とされる捜査の量は大幅に違ってくるという前提でお考えいただきたいということです。

○井上座長 否認に転じたら捜査に戻すということが前提にならなければ、念のために丁寧なとり方をするという趣旨ですか。

○皸羂儖 そうです。例えば自白の内容でも、これはどっちみち自白はとらなければいけないわけですけれども、自白調書でも、これがそのまま公判廷で自白が維持されるという前提でとる場合の自白調書と、もしかしたら否認に変わるかもしれないという前提でとる自白調書では密度が全然違うということですね。

○井上座長 その点で身軽になるためには、もっと考えるべきだと、こういう御趣旨ですね。

○皸羂儖 いったん起訴しても、もし否認したら、もう一回捜査に戻るという制度を持ち込まないと、そこは合理化にならないということなんですね。

○井上座長 当然戻るという制度にしなければならないかどうかはまた別かもしれませんね。ここから先は、将来検討してもらえばいいと思うのですけど、刑訴法340条の、公訴取消しをしたときに再起訴をすることができるための要件を緩和するということでも対応できるのかもしれません。ここは、このくらいでよろしいですか。まだ、御不満は残るかもしれませんけれども。

○樋口委員 2番目の問題なんですけど、一歩前進という言い方も否定しないのですけど、穴が二つありまして、一つがふさがれたが、一つはあいたままだと、そういう認識でございます。

○井上座長 分かりました。先ほど酒巻委員が言われた、有罪陳述が撤回された場合に関する御意見は、たたき台の「4 即決裁判手続による裁判」の(4)のところの話でしたね。

○酒巻委員 そうですね。すいませんでした。

○井上座長 この項目4の(4)のところで、先ほどおっしゃったようなことを考えるべきだと、こういうことですね。

○酒巻委員 そうです。

○井上座長 ちょっと気が早くて(笑)。

○酒巻委員 申し訳ございません(笑)。

○井上座長 先に進ませていただいて、「4 即決裁判手続による裁判」という点について御意見を伺いたいと思います。ここでは、(3)の科刑制限のところが新たに追加された部分であります。また、(5)につきましては、これまでの議論では、たたき台の案でいいのではないか、たたき台は相当だという御意見と、これには反対だという御意見がありましたが、いかがでしょうか。全部まとめて御議論いただければと思います。

○酒巻委員 まず、新しく設けられた科刑制限については、私は賛成です。他方、新しい(5)の、決定が取り消された場合に、取調べ済みの書証が同意があったものとみなされるという点についてはやや異論がありまして、やはりこれはもとに戻って、原則どおりになる方が筋ではないかと私は考えています。以上です。

○井上座長 ということですが、その点でも結構ですし、ほかの点でも結構ですが、どうぞ。

○皸羂儖 科刑制限については、前回追加をお願いしたところでもあり、このたたき台に賛成です。(5)については、弁護人という立場から考えれば、同意があるものとみなされると、ちょっと使い勝手が悪くなるかなという感じがします。

○四宮委員 私も酒巻委員と皸羂儖の意見と同じです。

○本田委員 私はちょっと反対の意見でして、不相当を理由に取り消された場合に、既に取り調べた書証がまただめになって、同意、不同意の意見聴取からやり直さなければいけないというのは、手続の合理化のため、せっかくこういった制度をつくる趣旨に合致しないのではないかと思います。例えば、事実を認めていて、証拠の開示も受けて、異議がないということでずっと進んでいて、途中で有罪の陳述をひっくり返したため、即決裁判手続の決定が取り消されました、それで、また、書証の証拠能力についても、もとに戻って、改めて意見を聴くところからやり直します、というのでは、こういった簡易な手続をせっかくつくりながら、それを混乱させるようなことを認めることになると思います。通常の公判であっても、当初認めていて、書証についてもすべて証拠とすることに同意していたところが、途中で否認に変わったからといって、その書証の同意、不同意の意見聴取をやり直すかというと、そういうことはないわけで、同意された書証については、否認に転じても、それはきちんと証拠能力が維持されるわけですから、それと同じ考えで制度をつくらないと意味がないと思います。

○平良木委員 私も今の本田委員の意見に賛成で、科刑制限はこれでいい。それから、取り調べられた書証の証拠能力の問題は、今の述べられた切り口と似たところがある。したがって、現行の簡易公判手続の場合はちょっと別ですけれども、このたたき台の(5)は、これでいいのではないかと思っています。

○皸羂儖 本田委員の御意見にも一理はあるのですが、しかし、この不相当を理由に取り消される場合というのは、被告人が否認に回った場合だけではないですよね。自白を維持しているのだけれども、やっぱりこれは不相当だという場合がありますね。このたたき台の書きぶりですと、そういう場合に、弁護人の立場から言うと、当然科刑制限を前提にしていろんな訴訟活動をしているわけで、それを前提にして書証は全部同意しました。そして、自白を維持しているのに、裁判所の方が、これは即決裁判手続によるのが相当でない、と言って普通の裁判に戻ってしまったというときに、それにもかかわらず、その場合でも同意はそのまま生きているとなると、これはちょっと危険というか、弁護人としてはそういう場合があるのだったら、そう簡単には、この即決裁判手続を使えませんよということになって、かえってこの手続が使われなくなると思うのですね。
 むしろ、科刑制限があるということを前提にすると、自認して、証拠までいったん同意した事件が、改めて否認に戻るということは普通は考えられないですよね。むしろ、これはどうも執行猶予ではだめで、実刑相当だというようなことで、裁判所から不相当だと言われてしまう場合の方が多いのではないかと思うんですね。
 そうなってくると、(5)のような制度ですと、弁護人としては、その辺の危険、リスクというのは、ある程度大きく見積もらなくてはいけないから、なかなかこれは使えないということになってしまいますよね。この手続を使うというのは、基本的には、君が犯罪を犯したのは間違いないし、有罪となるのは仕方がないが、実刑にはならないのだから、この簡単な手続でやる方がいい、というのが一番大きなメリットなんですよね。仮に、被疑者から、どうしようかと聞かれたときに、君、どうだ、この制度を使えばいいじゃないか、と言えるというのは、科刑制限があるからということなんですね。
 ところが、被告人本人の態度は変わらないのに、科刑制限が取っ払われて、しかし、証拠の同意がそのまま残ってしまうという道が開かれると、これは弁護人としては、迷っている被疑者に、これを使ったらどうだ、と勧めるのはなかなか難しいです。よほど度胸がないと、こういうことは勧められないということになるでしょう。

○本田委員 弁護人の立場から、皸羂儖の気持ちは分からないわけではないのですが、例えば、通常裁判の場合に、この事案から見れば、弁護人としては執行猶予は間違いないと判断する場合がありますね。それで同意しましたと。ところが案に反して裁判所は実刑にしてしまったということだってあるわけですね。

○皸羂儖 普通の裁判の場合ですか。

○本田委員 普通の裁判です。そうすると、見込みの違いというのはそこであるのかもしれませんけど、要は、それとあまり実質的には変わらないだろうという気がするんです。今、問題になっているのは、恐らく情状面だと思うんですね。執行猶予か実刑かという話ですから。そこで本当にこれが実刑か執行猶予か、ある人の供述調書で変わるというような事件で、もし決定で取り消されたとしたならば、その供述調書がそのまま証拠として維持されたとしても、前の検討会のときにちょっと申し上げましたけれども、その人の証人尋問を請求して、それを裁判所が不採用にするということはまずないだろうし、それを不採用にすれば、恐らく立派な控訴理由にもなりますよね、異議を申し立てておけば。
 また、証人尋問を請求したけれども、採用されずに、調べられなかったとすると、それは、控訴審では、やむを得ず調べられなかった証拠として証人申請できるのではないですか。

○池田委員 多分、有罪であることはそのままでいいんだけれども、量刑が争いになっているという事件で、ある参考人の供述調書の内容が、例えば、殴った回数が実際よりも多かったとか、あるいは、その者の方が嘘をついている部分があるとか、そういうようなところが本当は不満だったけれども、証拠とすることに同意をしたというようなときには、それが量刑上かなり重要なものだったら、その参考人を証人として調べるだろうと思うんですね。しかし、どっちにしても量刑は変わらないよと、どのように被告人が言っても、ちょっとこれは執行猶予というわけにいかないよということになると、多分調べないということもあり得ると思うんです。
 即決裁判手続による事件は、異議がないということで始まって、そこの大きな有罪・無罪について異議がないわけですので、多分、通常の手続で審理する場合であっても、書証は全部同意になるような事件だろうと思うんですね。また、決定が取り消された場合に、被告人側がまた同意をしないと証拠にならないということになると、今の簡易公判手続では、決定が取り消されると、改めて同意がなければ証拠にならないので、かなり使いにくくなっており、それと同じようになるのではないかと思います。それから、調書の内容が、情状関係で量刑を左右する重要な事実になってきたら、その供述者を証人として十分呼べるわけですので、請求権自体が制限されるわけではありませんので、そういう意味では、たたき台のとおり、これは同意というので残しておいてもいいのではないかという気がいたしますけれども。

○皸羂儖 先ほどの本田委員のお話は、全然違うわけですよね。一般の裁判ときには、多分100パーセント執行猶予だと思っても、普通は100パーセント執行猶予ですなんて言わないわけです。場合によったら実刑ですよというようなことを言ってやるわけで、そういうのと、いったん即決になったら基本的には科刑制限があるわけですから、この手続だったら絶対執行猶予ですよというのと全然質が違うわけで、今と同じじゃないですかというのは、それは当たらないと思うんですね。あとは情状面で、被害者の調書、この部分とこの部分はどうしても納得できないと、仮に被告人が言ったとしますね。だけど、やったことはやった、確かにやりましたと、でも執行猶予だからいいじゃないか、同意しろよという話になるわけですよ。それで同意したら、それを読んだ裁判官が、被害者の言っているとおりだと、こいつはとんでもないよと、こんなのは実刑だと、それで、通常の裁判に戻ってしまい、証拠の同意はそのまま生きているとなると問題なわけです。
 それは確かにおっしゃるように、証人請求の必要性をちゃんと証明できれば、それは採用されるからいいじゃないかというふうにおっしゃるんだけれども、それは裁判官だから、そういうふうにおっしゃることができるので、当事者としては、果たしてそれで採用されるかどうか分からないというリスクがあるときに、それでは、この制度を使えるかというと、それは使えないわけです。
 これは、この制度が本当に使われるかどうかは、当事者から見て予測可能性があるかどうか。どの程度確実な予測可能性があるかということで、この制度が使えるか、使えないかが変わってくるわけで、それは逆に言えば、裁判官の裁量がどの程度制限されているかということの裏返しでもあるわけで、そういう意味では、池田委員には申し訳ないと思うのですが、とにかく予測可能性が確実であればあるほど、この制度は使われるし、その中に不確実な要素が入ってくれば入ってくるほど弁護人はリスクを恐れてこの制度は使わない。本人がどうしてもこの制度を使いたいと、でも、あなたは全部認めた挙げ句に、またひっくり返って、証拠も同意のままで、実刑にされちゃうかもしれないんだよ、それでもいいかい、それでも結構です、と言ったら、どうぞとなりますけど、そうでもない限り、この制度は使わないということだってあり得るわけで、この制度を本当にうまく使って、公判も簡素化し、かつ、それで反射的に捜査も合理化しようということであれば、当事者から見たリスクをいかにして少なくするかということが大事だと思うんですね。

○井上座長 もう一点、決定が取り消されても同意があったものとみなすとすると、そうとはされていない現在の簡易公判手続の場合との整合性をどう説明するのかという問題があり、これは、法律専門家としては考えていただかなければならないと思います。今の簡易公判手続については、何らか別の理由があって、あるいは政策的な理由で、そうしているのであるから、今回の即決裁判手続については、そうする必然性はないということなのかどうか、そこの整合性をちゃんと説明しないといけないのではないかと思うのですね。もし、別の扱いをするとすれば。

○皸羂儖 科刑制限があるわけですから。

○井上座長 そういうことを申したのではなく、科刑制限があろうがなかろうが、通常公判に戻った場合の扱いについて、現在の簡易公判の場合の扱いとの整合性をどうつけるのか。区別するとすれば、その理由をどう説明するのかということです。

○池田委員 リスクの問題ですけど、ものすごく微々たるものを言っておられるのではないかという気がするんですね。まず、検察官が執行猶予でいいということで、申し立てるわけですね。弁護人が異議がないというので、そこで裁判官がこれはまずいと、実刑相当だよというのは、現実的にどれだけあるかというと、非常に少ないのではないかと思いますけれども。

○皸羂儖 それは、当事者と裁判官の違いかもしれませんね。その辺のリスクの見積り方が違うのは。

○本田委員 先ほど座長の方から指摘がありましたが、現在の簡易公判とこちらの方で書証の証拠能力の取扱いが違う合理性を説明しなければいけないと思います。確たる考えがあるわけではないのですが、それは手続の始まりが違うのだろうと思うんですね。ちゃんと被疑者・弁護人の同意を得た上で、証拠の閲覧もさせて、被告人の権利保護を十分に手厚くしているというところが、現在の簡易公判手続とは違うので、そこはそれだけの権利保障がきつくなされているから違いがあるのだという説明が一つはあるのかもしれません。

○井上座長 今の簡易公判手続では、被告人が公判で有罪の陳述をすれば、裁判所の判断で、簡易公判手続の決定をすることができるということになっています。その前のところの権利保護が即決裁判手続の方が手厚いというのは、一つの理由になるかもしれませんね。すみません、自分の興味から質問を投げてしまったのですけれど(笑)。まだ言い足りないところだと思いますが、問題点は大体尽きたように思いますので、最後の「5 上訴制限」について御意見をお伺いしたいと思います。これは、A案は、再審事由を理由とする事実誤認の場合は上訴制限をされないということを明示したというのが、前回の案からの修正点ですけれども、この点を踏まえて、全体について御意見を伺いたいと思います。

○池田委員 前回、上訴制限については消極的な意見を述べました。上訴制限の制度自体をもうけることができないとは思っていませんし、弁護権の保障とのバランスの問題で上訴権を制限するというのは十分あり得る選択だと思うのですが、気になる点が三つほどありますのでちょっと指摘させていただきます。
 まず、第1は、前回も述べましたが、略式手続と交通事件即決裁判手続では上訴権の制限はないわけですけれども、軽い刑を科す方が上訴権の制限がなくて、重い方、執行猶予付きですけど、自由刑まで科し得るものについて上訴権の制限があっていいのかというのが、バランスとして気になります。
 それから、第2点は、上訴制限をすることで、かえって制度の使い勝手が悪くならないかという点です。一つは、裁判所が起訴状の記載と少しでも異なる事実を認定しようとする場合には、即決裁判手続によることが不相当であるとして、この手続を使わなくなるのではないか。もちろん、類型的な、本当に絞られた範囲内の事件であれば可能だと思うのですが、例えば、よくある事件では、先ほど樋口委員も言われた暴行・傷害などでは、暴行の態様が、回数ですとか、あるいは手拳だったか平手だったかとか、相手のどこを殴ったとか、そういうような点も争いになることがあるわけですし、また恐喝事件などでも、脅迫文言が一字一句どうだったのかということがあり得るわけですけれども、公訴事実と認定とがずれる場合に使いにくくならないか。
 逆に、上訴制限がなくても、上訴される例は少なくなるのではないかという点なんですけれども、昨年1年間の地裁の単独事件、それも自白事件で執行猶予となった事件が、大体自白事件全体の60パーセント。終局したのは6万9000件、約7万件ですが、そのうち4万2000件ぐらいが執行猶予になっています。そのうち控訴があったのは225人で、0.5パー
posted by: enzaix | 裁判員制度 | 00:00 | comments(0) | trackbacks(0) |-
司法制度改革-裁判員制度・刑事検討会(第26回) 議事録
裁判員制度・刑事検討会(第26回) 議事録

(司法制度改革推進本部事務局)


1 日時
平成15年9月22日(月)13:30〜18:10

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員) 池田修、井上正仁、大出良知、清原慶子、酒巻匡、四宮啓、皸羚行、土屋美明、樋口建史、平良木登規男、本田守弘(敬称略)
(事務局) 山崎潮事務局長、大野恒太郎事務局次長、古口章事務局次長、松川忠晴事務局次長、辻裕教参事官

4 議題
「刑事裁判の充実・迅速化」について

5 配布資料
資料1 「刑事裁判の充実・迅速化について(その2)」の一部修正

6 議事

○井上座長 それでは、所定の時刻ですので、第26回裁判員制度・刑事検討会を開会させていただきます。本日も御多忙の折、お集まりいただきまして、ありがとうございます。
 本日と次の第27回検討会では、前回、前々回の裁判員制度に関する議論と同様で、刑事裁判の充実・迅速化の問題と、検察審査会制度に関しまして、なお議論すべきと思われる論点について、おさらいの議論を行うということになっております。
 議論の進め方も、裁判員制度についてのおさらいの議論と同じように、とりあえずたたき台に沿って順次議論を進めていく、ということにさせていただきたいと思います。もちろん、すべての項目について、同じ比重で議論する必要はないと思いますが、どれを取り上げるべきかという議論を最初にしますと、それだけで終わってしまうかもしれませんので、とりあえずたたき台に沿って順次議論を進めていくということにさせていただければと思います。
 今、申しましたように、次の25日と2回にわたって議論するわけですけれども、この前2日間行った裁判員制度についての集中的議論と比べましても、午前中の分だけ時間が少ないですし、取り上げるべき項目はかなり多いですから、単なる繰り返しの議論は避けていただきたいと思います。また、意見が分かれている点についていは、できればすべての方から御意見をいただきたいと思いますので、お一人お一人の御発言はできるだけ簡潔にし、できる限り結論まで示していただければと存じます。
 一応私の心づもりとしては、本日は少なくともたたき台(その1)の項目については、議論を終えたいと考えております。そして、次回には、たたき台(その2)と検察審査会についての議論を行う。そのような配分でやりませんと、2回ではおさらいの議論といえども終わりませんので、そのことを念頭に置いていただき、よろしく御協力下さいますようお願いいたします。
 最初に議論に入る前に、事務局の方で検討会の議論を踏まえて、たたき台のうち、「即決裁判手続」の一部を修正したものを用意したということですので、資料として本日配付してもらっておりますけれども、それについて説明をしていただきます。また、事務連絡もあるそうですので、併せてお願いしたいと思います。

○辻参事官 刑事裁判の充実・迅速化に関するたたき台のうち、「第5 即決裁判手続」の一部の修正について御説明いたします。お手元の資料を御覧ください。
 即決裁判手続につきましては、本検討会における2巡目の議論において、手続の合理化、効率化に十分に資するものとするためには、上訴制限を設けるべきであり、その前提として弁護人の選任を必要的とするべきであるとの御意見、科刑制限を設けるべきであるとの御意見をいただいたところであります。
 そのような御意見を踏まえまして、たたき台を修正してみたものであります。修正点は4点ございます。
 項目順からいたしますと、逆になりますけれども、1点目は、項目5の上訴制限に関するものです。ここでは、再審事由があることを理由とする場合には、上訴制限が及ばないとする修正をしております。本検討会における議論において、同趣旨の御意見があったことを踏まえたものであります。
 2点目は、項目4の(3)ですが、科刑制限でありまして、即決裁判手続では、罰金刑以下の刑を科する場合を除き、実刑を科すことはできないとするものであります。上訴制限を設けるといたしますと、自由刑の実刑を科すことができるとするのは、相当ではないという趣旨によるものであります。
 3点目は、項目3の(5)ですが、即決裁判手続に係る公判期日は、弁護人がなければ開廷できないとするものであります。本検討会においもて、同趣旨の御意見があったところですが、上訴制限を設けることとする場合には、その前提として、被告人の権利保護のために弁護人を必要的とするのが適当であるとの趣旨によるものであります。
 4点目は項目の2でありまして、被疑者が即決裁判手続によることについて異議がないことを明らかにしようとする場合において、貧困、その他の事由により、弁護人を選任することができないときは、公的弁護人の選任を請求し得るとするものです。即決裁判手続に係る公判期日には、弁護人を必要的なものとするのと同様に、上訴制限を設けることとする場合には、被告人の権利保護のためにこのような制度を設けることが適当ではないかと考えたものであります。また、手続の合理化を図るという即決裁判手続の制度趣旨を十分に実現するという観点からも、このような制度を設けることが適当と考えたという趣旨によるものであります。
 次に、事務連絡でございますが、これはいつも申し上げていることであります。本日も国民の皆様から、事務局に寄せられた御意見の目録をお配りしておりますので、御覧になりたいというものがありましたら、事務局の方へお申し付けいただければと思います。
 以上でございます。

○井上座長 ありがとうございました。今の説明について、御質問があろうか思いますけれども、後に即決裁判手続について議論するところでお願いしたいと存じます。
 それでは、たたき台(その1)の項目から議論に入ることにさせていただきたいと思います。
 まず、たたき台第1の「1 準備手続の目的等」のうち、(1)の準備手続の決定」「(2)準備手続の目的」「(3)裁判員制度対象事件における必要的準備手続」についてですけれども、これまでの議論では余り御異論がなかった点だと思いますが、特に何か付け加えて御意見があれば伺いたいと思います。よろしいですか。
 それでは「(4)準備手続の主宰者」についてですけれども、これまでの議論では、A案を相当とする意見とB案を相当とする意見の両様の御意見があったと記憶しますが、この点についてはいかがでしょうか。

○酒巻委員 前と意見は変わりません。公判を担当する受訴裁判所が準備手続も担当するというA案が妥当だと思います。理由の詳細は以前の検討会において述べていますので、結論だけでいいかと思いますが、要するに、将来の公判を的確に進行させるという準備手続の趣旨、目的からして、公判担当裁判所が主宰するのが合理的で望ましい制度だと思いますし、特段の弊害、問題点はない。予断防止との関係についても、理論的な問題はないと考えております。

○四宮委員 私も基本的には受訴裁判所が主宰するA案でいいと思うのですが、これも前回申し上げたことですけれども、証拠の中身に裁判所が触れる場合には、ほかの裁判体が主宰者になるという制度がいいと思います。理由も前回申し上げましたけれども、事実に関して、裁判員と裁判官が持っている情報が対等であるという対等らしさと申しますか、そういったものが外から見えることが必要であろうということでございます。

○井上座長 証拠開示の裁定や、場合によっては証拠能力の有無の判断をするときに、証拠の中身に触れることがあり得るということですか。

○四宮委員 そうです。

○本田委員 私もA案が妥当だろうと考えます。理由は第2ラウンドで詳しく申し上げたとおりであります。
 証拠の中身に触れる場合は、別の裁判体という御意見があったんですけれども、これについては、現行法の下でも証拠決定をする場合には提示命令という形で行われているところですし、それによって裁判所が心証を形成するということはあり得ないわけですので、証拠の中身に触れる場合を例外にする必要はないだろうと考えます。

○酒巻委員 今の本田委員の説明に賛成ですが、更に付加して申しますと、証拠開示の裁定の場面で裁判官が証拠に触れる場合があることは間違いありませんけれども、そこから事件の実体について心証をとるということではありません。専ら裁定の判断をするために証拠に触れるということです。訴訟手続上の判断は裁判官が行うというのが前提ですから、裁判官と裁判員との間で情報の格差といわれている事態が生じることそれ自体はそのとおりですが、それが何か不当なことであるとは到底思われない。そうだからと言って、特段裁判官が裁判員に対して優位になるとか、事件の実体について心証をとっているということにはならない。したがって、伝統的な意味での予断排除の問題も生じないと考えております。

○大出委員 前回議論の中でこれは真意がどこにあるのかというのは必ずしも明確でないという部分もあるのかもれませんけれども、たしか皸羂儖なり本田委員の方から、準備手続での準備行為というものから、実質的に心証を形成することがあり得るという御意見もあったりしているわけです。つまり、準備手続の結果のみではなく、経過をも顕出するということを主張されたところで、そういうことがあってなぜいけないのかという御主張があったように私は記憶しているものですから、準備手続というものが実体の判断に当たって一定の影響を及ぼすということがあり得るという御認識をお持ちなんではないかというふうに私などは思っていたわけで、その点をちょっと確認したいということです。
 そういうことがないんであれば、私は多分B案というのは私だけだったような話になってくるかもしれないんですが、今言ったような懸念がないということであれば、A案ということもあり得るかなと思っているわけです。
 ただ、四宮委員もおっしゃっているように、証拠に触れて、心証形成ということになる可能性がある場合については、受訴裁判所とは別主体ということを考える必要があるんじゃないかと思っています。
 ですから、全面的にB案で行くということに固執するつもりはありませんけれども、心証形成の可能性がある以上は、その点について配慮した手続というものを考える必要があるだろうというのが現在の考えであります。

○井上座長 多分誤解されているのではないかと思うのですが、準備手続の経過とか結果を公判に顕出するというのは、主張や争点整理の経過等を公判廷に出すことにより、それが場合によっては公判廷での証拠調べに基づく証拠の評価だとか、心証形成に影響を及ぼすことがあるということが主張され、議論されたのであって、準備手続の中で裁判官が心証をとり、それを公判に引き継いでいくということではない。そのようなことは、どなたもおっしゃっていなかったと思います。

○大出委員 それは私の誤解だったのかもしれません。

○井上座長 誤解だと思います。

○大出委員 いずれにせよそうであったとしても、証拠の中身に触れるようなことが想定される場合には、別の裁判体が主宰者となる手続を考える必要があると思います。

○池田委員 前回同様でA案で問題ないだろうと考えます。特にA案でないと、実質的な準備手続というのがうまくいかない。つまり、別の裁判体が主宰者になったのでは、準備手続と公判手続とがうまく一貫したものにならないおそれが非常に強いということを付加して述べておきたいと思います。

○平良木委員 私も基本的にA案が妥当と考えています。言ってみれば事前の準備手続というのは、これはもう当然のことですけれども、心証形成とか量刑判断に及ばないということが前提になっているはずで、準備手続で行われるのは、訴訟進行に関する極めて技術的なものであるので、A案でいくのが望ましいと考えます。

○皸羂儖 私もA案が妥当と考えていて、その理由は皆さんがおっしゃっているのと同じです。付け加えることはありません。

○清原委員 私も当初からA案でよいと思っておりましたし、理由については、皆さんおっしゃったとおりですけれども、特にここのところは裁判の充実・迅速化、及び裁判員制度を円滑に進めていくときに大変重要な部分で、だからこそ受訴裁判所が主宰していただくのが一番合理的で自然ではないかなと考えています。

○土屋委員 B案のような考え方は、裁判の公正さを外から見やすくするという意味で、一種理想的な姿なのかもしれないなという気はするんですけれども、いろんな面で、私はA案の修正案みたいな形の方を支持したいと思っております。
 今まで話が出ているように、証拠の中身に触れるような手続になるとは思いませんけれども、そういうおそれが生じないように、極力した配慮した制度設計をしていただきたいということです。

○井上座長 最後の点ですが、具体的に制度設計はどのようにすればいいのでしょうか。証拠開示の要否とか相当性とかを判断するときに、証拠を提出してもらって、一定限度で見るひつようがある場合に、見方について気をつけろとおっしゃるのか、そういうことをやる以上は、四宮委員のおっしゃるように、別の裁判体に判断してもらうというのか、どっちの方なのですか。

○土屋委員 別の裁判体という考え方も分かるんです。煮え切らないような言い方をしていますけれども、現実の裁判所を見ていきますと、地方の裁判所などは裁判官の数も少ないし、別の裁判所にやってもらいましょうというふうに言ったところでなかなかうまくいかない場面もあるのではないかなということを感じてしまうんです。
 実際、そこまでしなくても、今の裁判所のやり方から見れば、それほど心配しなくてもいいのかなという気もしているわけです。ですから、一番最初のところで外から見たときの裁判の公正さを確保するには、理想的な姿としては、大出委員が言われたような考え方もあると思うんですけれども、現実的に考えたときに、そこまで心配する必要もないかもしれない。実際の裁判所の方の実情を考えても、そこまでしにくいのかなという感じを持ったりもしているということです。

○樋口委員 A案でよろしいと思います。

○井上座長 一応皆さんの御意見を伺いましたが、更に付け加えて御意見があれば伺います。

○四宮委員 本田委員と酒巻委員から私の説に反論がありましたけれども、本田委員のおっしゃるような現行法上も提示命令をやっていますという理由付けは、今度は裁判員が入るのですから、必ずしも妥当しないのではないかということと、酒巻委員がおっしゃった心証をとる訳ではないという点も、私も心証をとるからだめだと言っているわけではなくて、情報の対等らしさが外から見えることが大事だという、仕組みの問題として申し上げているということだけ付け加えたいと思います。

○井上座長 四宮委員に質問したいのですが、裁判員制度対象事件において、訴訟手続上の事項についての判断は裁判官のみで行うのであれば、公判手続に入ってからも、そのために裁判官だけが証拠に触れるということはあり得ることなのですが、そのことと、準備手続の主宰者に関する四宮委員のお考えとの整合性をどう説明されるのでしょうか。この問題は、これまでの議論でも出ていた点なのですけれども、そこはまだお答えになっていないような気がするのです。

○四宮委員 それは中断するのかどうか分かりませんけれども、私の考えを貫けば、公判手続に入ってからも、原則として別の裁判体に判断してもらうということになるんじゃないですか。

○井上座長 そのような取扱いは、実質的にみて、おかしくないですか。

○本田委員 今の座長の方からも質問が出されましたが、例えば公判段階での訴訟手続上の判断というのは、受訴裁判所を構成する裁判官がやるんだという前提に立てば、例えば保釈請求に対する判断とか勾留更新の判断を行うことになるわけですけれども、そこでも情報の格差というのは起きるわけで、その程度の情報格差が生ずるのは当然の前提になっているのではないか。また、それが不当だという話でもないだろうと思うんです。そして、公判段階での訴訟手続上の判断を全部別の裁判体が行うと言ったところで、それは現実的には無理な話です。

○四宮委員 そうすると、全部できるわけじゃないですか。

○酒巻委員 私の意見をもう一回言いますと、訴訟手続上の判断を受訴裁判所を構成する裁判官がするという制度の下では、情報格差が生ずることは間違いないわけですが、そのことは何ら問題ではないだろう。つまり、訴訟手続上の判断をするに際して裁判官は事件の実体について心証をとって、裁判員を説得するようなことをするはずがないので、問題はないという意見であります。

○井上座長 そこまで言い切れるかどうかが、恐らく意見が分かれるところなのでしょう。

○大出委員 裁判員の方たちは専門家でないということでお入りいただくについては、その役割を担うということが可能であり、また、できる範囲でお仕事をしていただくということで入っていただくわけで、そのときであっても、一般的には専門家と対等に議論ができるのかどうかということについては、懸念と言いますか、お入りいただく方たちも、内心心配をして参加されるということがあるわけですから、私は余りらしさというのは好きではありませんけれども、外形的にも裁判員の方たちがその点について、裁判官がただでさえ専門家であるにもかかわらず、手続的には自分のかかわらない手続にかかわっているということがあるということが前提でやった場合には、自分たちが理解できないところでの専門家としての判断があるんじゃないかという推測なり憶測を裁判員がするということは、ある意味ではやむを得ないことになってしまうわけで、できるだけそれを避けるべきなんであって、それは当然だというのは、やはり専門家の傲慢だと言われてしまうんではないかという気がします。

○井上座長 当然だというよりは、裁判官と裁判員の役割が違うので、情報の格差が生じること自体は不可避だろうということなのでしょう。

○大出委員 それをできるだけ小さくするという努力を我々はやはりすべきなんだろうと思うんです。不可避だということは分かりますけれども。

○酒巻委員 大出委員の意見を突き詰めると、訴訟手続上の判断についても、すべて裁判員もやらなければいけないという制度設計も考えなければならなくなる。

○大出委員 それはあり得ると私は思っています。蒸し返す気はありませんけれども、当初、そういう趣旨のことを申し上げたんです。

○池田委員 1点だけ、外から見える公正さというのを、今は裁判官は何によって担保しているかについて述べたいと思います。私たちが法廷をやって、その後学生とか修習生も含めてですけれども、話をする機会があります。そのようなときに、裁判官はほかのところで新聞を見ていて分かっているだろうとか、あるいはほかのことでこういうことを聞いて、それで判断しているのではないかということを言われることはしょっちゅうあります。それに対する私の答は、そのようなことで判断を決められるんだったら、こんな楽なことはない。しかし、裁判というのは証拠に基づいてやらなくてはいけなくて、その証拠に基づいてというのは、判決書できちんと書けなければいけないわけで、判決書に書けないことを書いたら、絶対にその判決は上訴審で破棄されるわけです。ですから、そういうことは絶対にしない。証拠に基づいて心証形成をしているので、そういう証拠にならないものというのが、心証形成を左右するということはあり得ないと思うんです。外から見える公正さというのは、今は理由を書かなければいけないというところによって担保されているのだと思います。

○大出委員 その点について異論があるわけでは全くありません。ただ、先ほど来議論しているのは、そのときにまさに証拠に実際に触れるということが裁判員のいない場で起こってくるということが問題なわけでして、そこをできるだけ、今、池田委員がおっしゃったような外形的にも公正性というものが確保されているということは、我々は手続としてできるだけ追求すべきだと。不可避だと座長がおっしゃったのも、そういう点があることは私も否定しませんけれども、その点をちゃんと裁判員が納得して、裁判官と共通の土俵の上にいるんだということが了解がつくような手続にしておく必要があるという趣旨で申し上げているんです。

○井上座長 それを、準備手続を受訴裁判所を構成する裁判官とは別の裁判官が主宰するという形で担保するのか、それとも、仮に公判で取り調べられた証拠以外のものによって心証形成するということがあっても、それは評議の中で明らかになるはずなので、その評議を通じて浄化されるだろうと考えるのか。そこが、考え方の分かれる点だと思うのです。

○大出委員 もちろんそうだと思います。ただ、後者の部分というのは、不信ということを申し上げるつもりは全くありませんけれども、これまでも我々にとってそこはブラックボックスとまでは言わないにしてみても、手続的に言うと、必ずしも見えない部分だったというのもあるわけですから、そこはどう見えるようにしていくのかということも考える必要があるだろうという気がするわけです。

○井上座長 申し上げているのは、裁判員の人には見えるだろうということなのです。それ以上に、裁判員以外の人にも見える形にしなければいけないのか、ということだと思うのです。
 次は、項目2の「準備手続の方法等」ですけれども、(1)の準備手続の方法と、(2)の出席者については、私の記憶では、これまでの議論で特に御異論はなかったように思いますけれども、いかがでしょうか。よろしいですか。
 それでは、(3)の「準備手続の内容」ですが、この点も、これまでの議論では余り御異論はなかったように記憶するのですけれども、いかがでしょうか。

○四宮委員 今の方法とも関係するのかもしれませんが、(3)の定め方では、「特に次のことを行うものとする」となっていて、現行規則が行うことができるとなっているものと、少し表現が改まっています。特にキのような事実の取調べ等、場合によって準備手続というよりは、公判廷で行うことの方が妥当だというものがあるかもしれません。あるいは、準備手続で行うけれども、これは恐らくこの手続は今皆さんが議論しているのは、非公開が原則という前提だと思いますが、場合によっては、公開して行うということもあるかもしれません。その辺は裁判官の判断によってフレキシブルに行えるように、つまり、準備手続で公開したり、あるいは準備手続で行う事項ではあるけれども、公判廷で行うこととしたり、その辺は裁判官の判断に委ねられているということが確認できたらと思っているんです。

○井上座長 公判廷で行った方がいいというのは、具体的にはどういう場合ですか。

○四宮委員 例えば前にたしか議論が出たのは、違法収集証拠の問題であるとか、そういうものも恐らくは観念的にはキに当たる可能性もあるわけですけれども、それが有罪・無罪に直接関係するような場合には公判廷で行う方が望ましいという意見がたしか多かったと思いますが、そういった場合を想定しておりました。

○井上座長 準備手続で行うが、その手続を公開するというのはどういう場合かについては、どうお考えですか。

○四宮委員 どういうケースか分かりませんが、今の証拠能力の有無の判断のうちでも、証人尋問をして事実の取調べをする場合というのが、あるかもしれません。例えば有罪・無罪に直結しないまでも事実関係に争いがあるというような場合です。もっとも、事実関係に争いがあれば公判でやるんですかね。

○井上座長 訴訟手続に関する事実で争いがあるという場合にも、いろんな場合が考えられますけれども、そういう場合をすべて、公判で事実の取調べを行うべきだということですか。

○四宮委員 公判で行うものと、準備手続で行うものとがあるのではないか。公判で行えばもちろん公開されますけれども、準備手続で行う場合でも公開してもよいのではないか。

○井上座長 争われるものは公判で行うべきだというのは一つの考え方だと思うのですが、そうではなく、準備手続で行っていいのだけれども、それを公開すべきだとする理由がよく分からないのですが。

○四宮委員 特にどういうケースがあるかというのは分かりませんけれども、法廷のドアを閉めないでおいたらどうかというだけなんです。
 例えば事実の取調べをするときに、場合によっては交互尋問を行うという場合があるとすると、そういった手続が公正に行われているということを公開することによって示すということもあり得るのではないかということです。

○井上座長 公正さを公開によって担保するということでしょうか。そういう御意見が出ましたけれども、どうですか。

○酒巻委員 今ひとつ分からないのは、もし公正さの担保という問題があるとすれば、準備手続を公開するということではなくて、別に公判手続でやればいいんじゃないですか。あるいは逆に準備手続で行った事柄を公判に顕出するという形でも問題はないように私は思います。証拠能力の判断のための事実取調べを公判廷で行うということは十分考えられると思いますが、もう一つの準備手続を公開するパターンというのは、余り必要性を感じないというか、その積極的な理由がよく分からないところであります。

○井上座長 たたき台は、証拠能力の判断のための事実取調べなどたたき台に挙げられた事項は必ず準備手続で行なわなければならず、公判で行うことはできないという趣旨でしたでしょうか。

○辻参事官 そのようなつもりはございませんで、例えば証拠調べ決定とか、およそ公判で行われることはないという事項はないのでありましょうから、たたき台の趣旨としては、最終的に法文にした場合に、この柱書きのところがこのままになるかどうかも、いろいろ法制的な検討をする必要もあるので、分かりませんけれども、「行うものとする」というたたき台の表現は、こういうことを準備手続で行うのだという趣旨をできるだけ表したいと思ったということでありまして、準備手続においてでしか行えないというつもりではありません。

○池田委員 私はたたき台の案で賛成です。専ら証拠能力の判断のための事実の取調べであれば、実体判断には結び付かないものなので、それに裁判員の方に関与していただく必要はないだろうと思います。証拠の能力の有無という前提問題はきちんと準備手続で処理をして、計画的な審理ができるようにする方がいいと思いますし、実体に関連するような場合には公判手続で証拠調べをすればよいことですので、準備手続でそういう必要がないものは処理しておく方がいいという、たたき台の考え方が望ましいのではないかと思います。

○井上座長 実体に関連する場合というのは、自白の任意性と信用性の判断がほぼ一体になっているような場合を考えておられるのですか。

○池田委員 それから、違法収集証拠だと主張されている証拠の証拠能力についての判断の前提となる事実の認定も、実体に関係してくる場合というのはかなり多いのではないかと思います。特に今回裁判員制度の対象になると考えている事件については、そうではないかというのは前にもお話ししましたとおりです。また、そういう証拠能力と実体の両方に関係する場合は当然公判段階で証拠調べなどを行えばいいと思います。しかし、鑑定書あるいは実況見分調書の作成の真正だけが問題であるとか、本当はだれが当該文書を作成したのかとか、あるいは供述者が所在不明又は供述不能になったのかどうかが問題になったときなどは、それらの点についての証拠調べに裁判員が加わる必要はないのではないかと思います。

○本田委員 私も池田委員と同じ考えでありますけれども、恐らく違法収集証拠であるとの主張がされている場合は、押収手続に関する手続調書は通常は不同意になりますね。そうすると、当然、公判廷で証人尋問を行うということになるのでしょうから、それ以外のところで公開して証人尋問を行わなければいけない場合というのが、四宮委員の話でも具体例が示されていないのでよくイメージが分からないんです。だから、専ら証拠能力の判断のための事実の取調べと言っても、書証に対する同意、不同意によっては、公開の法廷で行わざるを得ない場合も出てくるわけです。ですから、たたき台に示された案でも、そんなに不都合が出てくるとは思えないのです。

○井上座長 次に、「(4)準備手続結果の顕出」ですが、この点については、御意見いかがでしょうか。

○大出委員 先ほどちょっと申し上げましたけれども、前回も申し上げたことの繰り返しですが、あくまでも準備手続は準備ということになるわけで、先ほど準備手続でやるべきことについて、確認がされたわけですけれども、2の(3)ですね。そういった中身について、準備手続で行うというのは、あくまでも公判を迅速・合理的に進めるという準備のためということであるわけですから、経過としていろいろとう余曲折があったことについてまで顕出をする必要があるのかどうか。公判がスタートの段階でちゃんと進められるような態勢づくりができるということが重要だということになるわけですから、(3)で示されているような結果だけを示せばいいということになるのではないかと思うんで、この点に関する私の考えはは従前と一緒ということです。

○本田委員 私はたたき台の案でいいと考えております。その理由は、第2ラウンドと同じです。
 今、大出委員の方から結果だけという話かあったんですけれども、これは前の議論の際にも疑問点として申し上げたんですけれども、裁判員との情報格差ということを問題にされる大出委員が、準備手続の経過は裁判員に知らせるべきではないと言うのはどういうことなんでしょうか。

○大出委員 経過というものを裁判員が入って全部示すということであればいいですけれども、そこで経過が文字としてまとめられて顕出されるということになったときに、それが最終的に公判で心証形成に資する場合があるということになると、実際に準備手続の場面に立ち会っていた人間と、そうでない人間の間には当然格差が生じると思うんです。それをパーフェクトに100 %経過として顕出することはできないわけですから、必ずしもそうはならないんじゃないかということです。

○本田委員 議論が混乱していると思うんですけれども、要するに準備手続で裁判官がいろいろなことを行うことにより、心証をとるということはあり得ないという前提で、それはやらないという前提で話が進んできて、これが公判廷に結果として顕出されれば、同じ情報に裁判官も裁判員も同じレベルでそれに接するわけです。理屈としてはそうでしょう。

○大出委員 そこの前提が違うわけです。

○本田委員 ですから、手続調書の内容が正確に反映していないという問題があれば別ですけれども、準備手続の経過と結果が手続調書に正確に反映されている以上、裁判員も当然それを知るべきだろうし、同じレベルで裁判官と裁判員が知ればいいという話になるんじゃないですか。

○大出委員 経過をどういう形で顕出するか、今、想定されている限りでは、書面化するという形で顕出をお考えでいらっしゃるわけですね。直接その場面にいて、その手続に参加した人間と、そうでない人間では書面化されたものが法廷に顕出されたときに、本当に同一のレベルでそれを受け止めることになるのかどうかということについて、一緒じゃないかというふうに言えるのかという問題です。私はそれは言えないと思っているわけです。
 情報格差がそこで解消できるんじゃないかというのは、私の立場からすればあり得ないことであって、それが許容される場合と許容されない場合があるわけでして、このケースについては準備手続という形で、しかもそれが心証形成に影響を及ぼさないとおっしゃいましたけれども、公判段階になったときには、まさに顕出されたものによって、事態の進行如何によっては心証形成に資するということになるわけです。そうしますと、現場に立ち会い、直接の内容を見聞きした人間と、書面だけで報告を受けた人間、しかもそれが専門家と専門家ではないという問題も絡んでいるわけですから、そこは全く同じ平面で議論ができることにならないというのが私の意見です。

○皸羂儖 例えば、準備手続の過程で検察官主張の犯行場所が弁護人の求釈明によって、最初はAだったのが、最終的にはDになったとしますね。もし経過を顕出しないということになると、公判段階ではDしか出てこないわけです。裁判員は、変転する経過は分からないわけです。しかし、裁判官はそれを知っている。こちらの方がよほど問題じゃないですか。

○大出委員 まさにそれは経過として、どういう経過があったのかということ自体について、問題になる場合とそうでない場合があると思うんです。つまり、単なる記憶違い、勘違いだということもあるわけですし、そのことを心証との関係でいったときには、具体的にそれは顕出しないということは、それから心証をとってはいけないということになるわけですから、そのことによって同じ平面に立つということが可能になってくるということだってあるでしょう。

○皸羂儖 裁判官は検察官の主張がころころ変わって、ようやくDにたどり着いたことを知っているわけです。ところが、裁判員は全然知らないわけです。

○大出委員 そのころころ変わったということをどうやって顕出するのかという問題ですよ。そのときに、顕出することによって、本当にころころ変わったのが、どういう理由によって変わったのかについて、実際に顔つきを見るということまで、準備手続での心証を最終的に裁判官が知っているということにかかわって、同じような情報提供が裁判員に対して行われるのかという問題ですよ。中途半端な情報提供が行われることによって生じる混乱を避けるということであれば、そこはオミットするという方が賢明な方策だということになるのではないですか。

○皸羂儖 大出委員の御意見であれば、それは経過を顕出することもOKだと。ただ、顕出する以上は正確に顕出しないさいという御意見にならないとおかしいと思います。

○大出委員 一番徹底するということになれば、その話を始めたら、当然のことながら裁判員も準備手続に参加するべきだという話になってくるんです。

○井上座長 大出委員の前提は、こういうふうに主張が変わっていきましたという経過を出しただけでは不十分で、その場の雰囲気とかを感じている人と、単に経過としてこういう事実があったという報告を受けただけの人とでは、評価が違ってくるだろう、ということですね。
 しかし、皸羂儖や本田委員は、その点でそんなに大きな差が出るわけではなく、むしろ、当事者の主張がこういうふうに変わってきたということが後に証拠評価の上で意味を持つことがあるので、それは裁判員にも知らせて、裁判官と裁判員が同じ土俵で評価をした方がいいのではないか、というお考えだと思うのです。そこが意見の大きな分かれ目なのでしょう。

○平良木委員 準備手続が行われると、その都度調書が作られることとなっています。その調書を公判廷に顕出されなければいけないということだから、今の議論というのは言ってみれば当然のことなんです。しかも、もし仮に準備手続の段階で証拠が出てきたとしても、公判手続でそれを朗読するなりして顕出しないと、これも証拠にならないということは、今の証拠法則では当然のことなんです。
 ですから、ここに書いてあることはそれほど特別なことを言っているわけではなくて、従前行われていたことを確認しているだけだという気がするんです。

○大出委員 新しく裁判員が入って裁判をやるということになったときの準備手続の在り方としては、従前のとおりではよくないということなんです。従前のとおり同じように顕出するという方法でいいのか。それが100 %私はよかったかどうかということについては留保しますけれども、今までは同質の裁判官の方たちが準備手続というか、公判でおやりになるということで、そういうことも可能であったということになると思いますけれども、裁判員が入って、裁判員が心証をとることについて、専門家でないということを余り強調するつもりもありませんけれども、そういう立場にいる人間が心証形成の過程の中で、情報において、少しでも違った、質的に差があるものを前提にして心証形成をしなければいけないというのは、極力避けるべきだというのが基本的に私の意見です。

○酒巻委員 まず私の結論は、大出委員以外の方の意見に賛成です。確認ですが、大出委員が先ほどからおっしゃっていることを制度にするとどうなるのでしょうか。私の理解では、結局、一般国民である裁判員の方に準備手続から全部付き合ってもらうのがいいということになると思われます。しかし、ここでは、準備手続に関与するのは裁判官だけであるという前提で、どういう制度を考えるのかということが問題になっているのだと思いますが。

○大出委員 そうじゃないです。今の手続を想定する限りにおいては、準備手続における結論だけを公判に顕出すればいいという意見です。

○酒巻委員 何でそうなるんですか。

○大出委員 だって準備はあくまで準備じゃないですか。公判をさっき言った合理的、迅速に充実したものとして遂行するための準備活動ではないですか。

○井上座長 準備だという点では、平良木委員がおっしゃるように、現行法の下でもその準備手続きについて、経過も含めて公判に顕出するということはあることなので、、それは反論になっていなくて、むしろ、最初から言われているところが御意見の核心的な理由なのではないでしょうか。

○酒巻委員 それを制度化すれば裁判員の方にも最初から全部準備手続にも付き合っていただくということになるんじゃないですか。

○大出委員 そうはならないです。

○井上座長 そうするか、当事者の主張が変わったり、こういう経過でこういう争点に絞られたといった準備手続の経過を、公判の証拠評価の材料として用いることを断念するか、のいずれかになるのではないですか。

○平良木委員 顕出の在り方としては、大出委員がおっしゃるような在り方というのはあり得ると思うんです。例えば民事事件では弁論準備を行う場合、その最後に要約調書を作って、これ顕出するという形にしているんです。そういうやり方はあるんだけれども、今、刑事事件においてそこまでやるかどうかという問題だと思うんです。恐らくこの点については今までのやり方で十分で、特にそこで民事のように主張が錯綜してということはあり得ない。そうすると、今の刑事訴訟規則に基づく手続を前提にしたたたき台の4で十分だろうと思うのです。むしろそこで新たな手続をつくる必要はないだろうという気がします。

○四宮委員 前回申し上げたと思いますが、準備手続というもののイメージが、どうも様々なのではないかという気がしています。多くの意見は、現在行われているものと同じであるという理解のように思われます。しかし、私の理解するところでは、今の準備手続というのは、本来は公判でやるべきところを、準備的な事項については、事前に、言わば簡易な方法で処理をして、それを本来の公判手続に乗せると言いますか、そのような仕組みではないかと思うのです。特に裁判員制度が導入された場合における準備手続というのは、裁判員が入る公判で行われることを事前に一部行っておくというものではないのではないか、というのが私のイメージなんです。先ほど大出委員も準備とおっしゃったけれども、私は、準備手続はまさに舞台裏の準備であると考えます。そこではいろいろなことがあるわけで、例えばこれから議論になる証拠開示を経ながらまさに主張を明らかにしたり、裁判官から釈明を求められたり、主張を撤回したり、変えたりということが、あるのです。そういった舞台裏の準備をして、そして、裁判員が入る公判で何について判断してもらうかというターゲットを明確にして、その任務をはっきりさせる。そのために必要な情報を、そして必要な情報だけを正確に裁判員にスタートのときに伝える、という役割が準備手続だと思っております。
 そうだとすると、もちろん、準備手続の回を重ねればその期日ごとに調書をつくっていくわけですけれども、そういったものを具体的にどう裁判員に提示をしていくのかという問題もあると思うのです。ですから、私はむしろ準備を重ねてはっきりしたものを、主にそれは冒頭陳述においてだと思いますけれども、冒頭陳述という形で準備した結果を裁判員に提示していくということでないと、実効的な準備手続というものは行えないのではないかと考えております。
 その意味で、この案については、顕出という制度が今後の裁判員制度の下で引き続き必要なのかということについては、ちょっと疑問に思っています。準備をした上でその結果を冒頭陳述ではっきりさせればいいのではないかと思うからで、少なくともこの準備手続の経過というのは、なくてもいいのではないか。
 先ほど来、主張が変遷してきたことはどうするんだという疑問がありましたけれども、これは前回も議論になったと思いますが、それをどう公判で弾劾の資料として使うかという問題ですので、平良木委員がおっしゃったように、今の証拠法に基づいて運用していくと思うのですけれども、少なくとも準備手続は供述を取る手続ではありませんし、そういった実効的な準備という目的のために、なるべくここはシンプルにした方がいいのではないかと思います。

○皸羂儖 今の四宮委員の発言についてですが、4の準備手続の経過・結果の顕出のような制度があると、実効的な準備手続ができないとおっしゃっている理由が私にはよく理解できないんです。

○四宮委員 この経過・結果を、どんなふうに書いていくのかということが問題だろうと思うのです。

○井上座長 うかがっていて、準備手続でいろんな経過を踏まえて主張などが整理されていくわけですが、その経過も公判に顕出されることになると、弁護側としては、自由に、余り身構えずにいろんな主張を言えなくなるではないか、というふうな趣旨に聞こえたのですが、そのような理解でよろしいでしょうか。

○四宮委員 そういうことではなくて、例えば今、実際に事前の準備でも行われている部分もあると思いますけれども、例えば弁護側にしろ、検察側にしろ、それぞれの主張をまさに整理をしていくプロセスがあるわけです。
 当てずっぽうでも何でも言っておこうということではなくて、実効的な充実した迅速な公判のためにいろいろ整理をしていくということはあるわけですから、何でも当てずっぽうに言っておけなくなるから困りますということではありません。

○井上座長 準備手続の経過も顕出されると準備手続の実効性が失われるとおっしゃる点が分からないというのが、皸羂儖の御質問だろうと思うのです。準備手続においていろいろ整理していくというのはそのとおりだと思いますが、その過程を記録し、それを公判で明らかにするということをすると、準備手続における主張などの整理の実効性が阻害されるというのは、どうしてなのだろうかということだと思うのです。

○四宮委員 その都度その都度の自由な主張がしにくくなるという面もあるかもしれませんね。

○皸羂儖 それは、公判廷での不意打ちができなくなるという趣旨ですか。

○四宮委員 公判廷で不意打ちはしてはいけないのです。不意打ちをしないために整理をするのです。

○皸羂儖 そうですね。そうしたら、別にその結果及び経過を顕出するという前提でも、実効性のある準備手続はできると思うんです。
 もう一つ、整理整理と言われるけれども、それは当たっているかどうかは別にして、検察は検察なりに整理したものとして出してきているわけです。全く漠然とした主張を出してきて、星雲状態からはっきりさせましょうと言っているわけではなくて、検察は検察して輪郭のはっきりしたものを出してきて、それは弁護人から見て違うのであればどこが違うんですか、こうなんですかと争点を整理するためにいろんなところを主張して、争点を明らかにしていくわけだから、わけの分からないものを整理するというのとは違うと思うんです。そこを前提にして議論しないとおかしいと思うんです。
 だから、争点を明らかにするための手続なんだから、別にその経過と結果を公判廷に出すという前提でやっても、言いたいことが言えないとか、主張すべきことが主張できなくなるという場面は出てこないと私は思うんです。不意打ち主張を隠しておこうというのであれば別ですけれども、公判における不意打ち主張はお互いにしないことにするという前提で議論をするんであれば、顕出についてたたき台のとおりにすると実効性のある準備手続ができないというのは、同じ実務家としてちょっと理解できないんです。

○本田委員 先ほど四宮委員の方から、準備手続はいわゆる舞台裏の準備だという趣旨の話があったんですが、恐らくそれは違うんだろうと思うんです。現行の刑事訴訟規則が準備手続の結果を顕出しなければならないというのは、基本的には裁判の公開の要請だろうというふうに理解するのが素直だろうという気がします。
 具体的に言うと、例えば被告弁護側の主張が変わることもあるでしょうし、検察官の主張が変わる場合もあるかもしれない。準備手続というのは最初だけではなくて、公判の途中で行われることもある。公判での主張と、その後、準備手続をして、整理された主張が異なった場合に、なぜそういうふうに異なったのか、その経過が明らかにならないと、疑問に思っても分からないわけです。
 例えば検察官の主張であれば、殺人事件で、動機は例えば当初は保険金目的だったのが、怨恨という主張に変わりました。その場合に、なぜそういうふうになったのか。あるいは被告弁護側の主張で大きく変わる場合があるかもしれません。その場合、なぜそういうふうに変わったのかというのは、裁判員の方も分からないときちっとした判断ができないと思うんです。

○四宮委員 それは、中間の説示というものをやればいいんじゃないですか。公判の途中で変わった場合でしよう。

○井上座長 裁判官がこういうことがありましたよと裁判員に言うということですか。

○四宮委員 裁判員に、今度は主張が準備手続の結果で変わりました、という場合ですね。

○本田委員 私が言っているのは、裁判員もなぜ主張が変わったのかその理由を知りたいでしょう。それは明らかにしてやるべきです。

○井上座長 検察官の主張が変わることもあるし、弁護人の主張が変わることもある。そのときに、こういう経過でこういうふうに変わったのだということを裁判員に知らせる必要はないのかというのが、本田委員が言われていることで、多分四宮委員が言われたのは、変わりましたということだけを告げればいいではないかということなんでしょう。

○四宮委員 それは裁判官の説明の内容次第だと思います。

○井上座長 しかし、その説明として、こういう経過であったと言うのだったら、同じことではないでしょうか。

○平良木委員 四宮委員のイメージしているところが、前に指摘したことがありますけれども、刑訴規則178 条の10の事前の打合せのイメージではないかという気がするんです。
 それはそれとして、事前の打合せは制度として残ることは残るんだと思うんです。ですから、例えば裁判員制度の場合でも、本当に大変なものは準備手続になっていくし、そうなれば事前の打合せ程度で簡単なものは済む場合だってあり得ると思う。それは使い分けをしていくことに恐らくなってくるだろうと思うんです。

○井上座長 裁判員対象事件の場合には、必ず準備手続を行うということになっているわけですが、その場合でも、平良木委員がおっしゃっているのは、準備手続の前に両当事者間で打合せをすることはあるだろう。その上で正式な準備手続を開いて、公判期日の証拠調べの順序だとかを決めるということはある、ということなのではないでしょうか。

○清原委員 実務が分からないので、私も具体的なイメージをきちんと想像できていないかもしれないんですが、私はこの準備手続というのはあくまでも準備手続であって、公判と違うわけですから、そこのところが余り重くなり過ぎて、裁判官、検察官、そして弁護士の方だけで、あたかも本来的裁判の裁判員登場前の裁判のようなものをイメージしてはいけないと思うんです。あくまでも裁判は公判で行われるべきものである。そこのところは皆様と同じ認識だと思うんです。だからこそ、準備手続というのは、どういうものであったかということは、裁判員の方に要領よく簡潔に分かりやすく示される必要性がある。余りにも雰囲気を分かってほしいからという趣旨を尊重するのであるならば、それなら本来的に制度的に最初から準備手続にも裁判員の方が入っていただくのと同じになってしまうと思うんです。そうしないことに意味はあると思いますので、私はたたき台の案のようにきちんとしていただきたいと思います。
 ただ、たたき台では「調書及び当事者の提出した書面の朗読又はその要旨の告知により」とありますから、裁判の種別とか状況とか、朗読したらそれが数日も掛かるということにならないようにという含みもあってのことだと思うんですが、要は長さではなくて、経緯が明瞭に簡潔に分かるようにする必要があるのであって、これは大変大事なことだと思いますから、繰り返しになりますが、準備手続はあくまで準備手続であって、裁判ではないので、公開されないわけですから、だからこそ分かりやすく中身を知るためにたたき台の(4)は必要かあるではないかと思います。
 実務を知らないので、この辺が余り重くなり過ぎてはいけないんだろうなと思いつつ、軽くなり過ぎたら余り意味がないことになるんだろうなと思いますから、そのためにも、この(4)がないと、非常に準備手続の意義とか機能がかえって曖昧になるような気もいたしまして、実務の先生方で意見が分かれるくらいですから、本来的にどういう形が望ましいのかは、経験はないのですが、できる限り簡潔明瞭に経過と結果が示された方が後に裁判員が加わった裁判が充実するために必要なことだと、伺っておりまして、改めて認識します。

○井上座長 そこは恐らく、実際にそこでそんなに何日もかかるということは、どなたも考えておられないと思うのです。ただ、そういうふうに準備手続と公判をつないでおかないと、主張の変遷などが問題になったときに困るということを、経過の顕出も必要だとおっしゃっている方たちは言われているのだと思います。

○清原委員 その一番大事なところというか、本当に争点にもかかわることになってくるでしょうし、欠かせないものというのはあるように思うんです。

○井上座長 さっきの四宮委員の御意見ですけれども、現行の刑事訴訟規則194条の7による準備手続の結果を明らかにする手続というのは、公判廷でやるべきことを準備手続で行ったから、公判廷につないで公判廷でやったことにするというだけの趣旨では必ずしもないような気がします。やはり、準備手続で何が起こったかということは、事件を判断していく上で重要な場合がある。その場合に、公判で行われたことではないので、そのままでは、それを判断の材料として使うわけにはいかない。そこで、証拠として使うか弁論の全趣旨的な形で使うかは別として、そういうものを公判廷につないでおく。そのような意味を恐らく持っているのではないかと思うのです。
 そして、同じような意味を新しく導入される準備手続にも持たせることが必要ならば、何らかの形での公判へのつなぎが必要になる。準備手続の経過及び結果の顕出が必要だとされる方は、そういう議論をされているのだろうと思います。顕出というのは、準備手続を追体験するということでは必ずしもないだろうと思うのです。

○池田委員 準備手続については、前回座長が整理されましたが、準備手続と公判手続をつなぐ必要があるために、顕出の手続が必要だと考えます。そして、顕出のためには、たたき台には「経過及び結果」と書いてありますけれども、この前も言いましたが、それぞれの準備手続ごとに作成された準備手続調書に行われた事項が書かれていけば、それらはすべて結果ではないかという気がするんですが、いずれにしてもそれらは公判に出さざるを得ない。ただ、出し方はどうかというのが一つ問題としてあって、裁判員が準備手続においていろいろ錯綜した経緯をすべて分からなければ理解できない場合と、そういったものは捨象して、結果だけ分かった方が裁判員にとっては分かりやすいという場合とあると思います。多くの場合は後の方だと思いますので、そうだとすると、この顕出の方法というのは、結果をお互いに冒頭陳述はこういうことでまとまりましたというのを出してもらって、もし経過として違うことがあったということなら、それに付加してでも言えば足りるものではないかと思いますので、そこは運用による工夫の余地があり得ると思います。
 もう一つ、前回座長も言われたことで今日も議論になっているのは、準備手続の中で言われたこと等が、公判で証拠となるかという話があるわけですが、被告人が準備手続に絡むということはあり得るわけですけれども、その中で被告人が述べるものが何らかの形で証拠になるということはあると思うんです。ただ、その出し方というのは、どちらかの当事者が証拠として使いたければ、その調書を証拠調べ請求をするという手続にでもしないと、なかなか裁判員にとっては分かりにくいのではないか。裁判官だけが分かっているのは困るということもありますので、準備手続における供述が重要になるんだったら、その点を証拠化していくという方法を考えるべきではないかと思います。これはたたき台に書くこととは違うとは思いますが。

○井上座長 ほかにこの点で御意見はありますか。なければ次に進みたいと思いますが、よろしいですか。
 「(5)準備手続の充実」についてですが、ここは特に御異論がなかったように思いますけれども、よろしいですか。
 次は「3 検察官による事件に関する主張と証拠の提示」ですけれども、「(1)検察官主張事実の提示」については、特に御異論はなかったように記憶しますので、特に付け加えることがなければ、次に進ませていただきたいと思いますが、よろしいですか。
 (2)についても、やはり当然だろうという御意見だったように思いますけれども、いかがでしょうか。よろしいですか。
 「(3)取調べ請求証拠以外の証拠の開示」ですけれども、この点につきましては、御承知のように、これまでも相当御議論いただき、A案を相当とする御意見、B案を相当とする御意見などが述べられたところですので、改めて御意見を伺いたいと思います。皆さんそれぞれ、これまで意見が出された点については十分御承知の上、ここに臨まれていると思いますので、それを前提とすることができるところは前提としていただいて、更に議論を発展させるという意味で、御意見をいただければと思います。できれば結論とその理由を簡潔に述べていただければと思います。

○酒巻委員 私は基本的にB案が妥当だと思います。この証拠開示のシステムの全体構造について一言だけ申しますと、まず検察官がその主張を裏付ける証拠を開示すること、加えてここに示された取調請求証拠以外の証拠の事前開示の部分があり、更に5の被告人、弁護人側が主張を明示するのに対応してこれに有用と認められる証拠開示が行われるという全体のシステムで見るべきものでありまして、総体として見ますと、従前の開示をめぐる紛争の基になっておりました多くの問題がこれによって解決されることが見込まれ、かつ一定の類型に当たる証拠については、従来よりも広い範囲で早期の証拠開示が実現することになると思われますので、B案が妥当だと考えます。
 なお併せて提案を申しますと、現在B案にはア〜キまでの類型が挙がっているわけですけれども、以前に、いわゆる取調べ過程・状況の書面による記録が作成されるということが関係機関において検討され、この場でも報告されたわけですが、そこで作成される被疑者の取調べ経過にかかわる事柄は、捜査段階における被疑者供述調書の任意性、信用性を争う弁護人にとっては大変重要な基礎資料になると思われますので、その取調べ経過記録もB案の開示対象のア〜キに付け加えて独立の開示対象類型として掲げるのが望ましいと考えております。

○皸羂儖 私も前回同様B案が妥当だと思います。
 それから、先ほどの取調べ経過に関する書面はやはり類型として追加されるべきであるというふうに思います。

○大出委員 私は前回はB案ということだとしても、今、酒巻委員が言われたように、従前に比べればかなり前進した内容になっているんだろうと思うんですが、ただ、いろいろと御議論を伺っていた限りでは、果たしてそれで十分なのかという点については、私なりに懸念もあるので、これは四宮委員のお説であったのかと思いますけれども、そのリストの提出というのは加味して考えた方がいいだろうと思います。つまりA案も加味してということがあってしかるべきではないかと申し上げたと思うんです。改めて考えてみましても、やはりB案では、今、取調べ経過についての書面を追加するということがありましたけれども、それ以外、この間の御議論で伺っていたところで、捜査報告書全般はとりあえずこの類型からは落ちているわけです。
 そういったものがリスト化されて出ていったときに、どういう問題があるのかということについて、これもお伺いした経過もあるわけですが、そうしましたところ、捜査当局としては、もちろん御主張としては分かるわけですけれども、虚偽弁解を利用した攪乱といったことが起こってくるということが最大の理由であるということであったように思うわけです。しかし、そのとき私は申し上げたけれども、確かにそれはないことではないと思いますけれども、捜査当局にとってみれば頭の痛い問題だということがあるかもしれませんけれども、しかし、想定上の問題ということを前提として、リストを提出しないということが言えるほどウェイトの高い問題なのかどうかということであれば、むしろ捜査報告書のたぐいというものが従前起こってきた冤罪等との関係では、初動捜査の段階での捜査当局の動きというものが弁護側に分かっているということによって、冤罪の発生が回避できたケースというのは相当あると言ってもいいわけです。具体的なケースとしてそういうことが現実にあるわけですから、捜査の攪乱とか、そういう側面での虚偽弁解ということを問題にされるのであれば、冤罪の発生ということに対する配慮がもっとあっていいと思うわけでして、そういう観点からすれば、リストを出すということによって防止できる点があることについての配慮は必要なんだろうと思います。
 そういうことで考えますと、一覧表を提出していただくということをお考えいただく必要があるのではないか。その場合、一覧表の作成の負担の問題についての御主張があったように思いますけれども、これは刑罰権の行使にかかわる重大問題なわけですから、確かに負担であることは間違いないかもしれませんけれども、それは対応していただくというのが手続の公正性とか適正性を確保する上では必要だろうと思うので、やはりB案だけでは足りないということで対処していただきたいと私は思います。

○井上座長 結論としては、B案プラスA案ということですか。

○皸羂儖 大出委員の御意見ですと、B案に挙げられた類型に、捜査報告書という類型を追加するのではだめなんですか。

○大出委員 ただB案の要件というのはいろいろと付いていますね。皸羂儖もおっしゃったと思うんですが、捜査報告書を類型として追加するということは必須だと思いますけれども、果たしてそれだけでいけるのかどうかということについて、なお、私は疑義があって、前回皸羂儖は、B案の要件からすると、相当腕のいい弁護士でないと出し切れないんじゃないかと発言されたと思うのです。

○皸羂儖 腕のいい悪いによって左右されますよと言っているだけです。

○大出委員 ですから、左右されるわけでしょう。

○皸羂儖 腕のない人はない人なりに証拠は開示されるんです。

○大出委員 つまり、そこのところはこの要件との関係で、つまり関連性だとか重要性だとか、そういったことについて弁護側がどこまで主張できるかということにかかわるわけです。

○皸羂儖 B案の要件の主張ができないような人はA案のリストを見たって、どれから見るべきか分からないんですよ。同じことなんです。

○大出委員 それを言ってはおしまいで、それはまず出してみてからの話にしていただいた方がいいと思います。

○皸羂儖 例えばリクルート事件では証拠として2,000 箱分を押収してきているわけです。その中には袋一袋ということで押さえてきているものもあって、それについて全部リストを作るというのは負担が重く、基本的に不可能なんです。

○井上座長 大出委員が「出し切れない」と言われた点がよく分からないのですが、要するに、B案はいろんな要件が重なっているので、こういった要件は不要だという御趣旨ですか。

○大出委員 リストが出てくるということになれば付加されているものが多いということは間違いないと思います。

○井上座長 付加されているのだけれども、それは意味がない、あるいは障害になるということですか。

○大出委員 ということがあり得るんじゃないかと。

○井上座長 それは、具体的にはどういう場合ですか。

○大出委員 それは個別のケースによると思うんですけれども。

○井上座長 それでは議論にならないので、具体的に例えば、こういう要件だったら、こういう場合に証拠が開示されない場合が出てくるが、それでは弁護側にとってこんな必要がある証拠が開示されないことになるのだという形の議論をしないと、抽象的に言っているだけでは、話は進まないと思うのです。

○大出委員 例えば捜査報告書などについて、具体的に例えば目撃者、あるいは犯行状況にかかわって情報を持っている人たちの聞き込み等々が行われている。それは場合によっては調書化されていないにしてみても、被告人とは別の者が犯人である可能性というものを示唆するような情報がそこに含まれているというようなものが捜査報告書として存在しているということは多分あり得ることだと思います。ところが、その点について、B案の類型では、そもそも捜査報告書が入ってくれば事情は違うかもしれませんけれども、入ってきていないという状況の下では、それが入ってきた場合であったとしても、検察側の立証との関係ではそういった可能性を示唆するものが検察側から出てこないときに、具体的にリストにそういうものがあるということでも示されないことには、弁護側がそのような捜査報告書について開示を要求するという手立てが果たして生まれるのかどうか。かなり捜査当局側では大網をかけて聞き込み捜査をやっているわけでしょうが、そういったもの、つまり初動捜査の段階で得られた被告人にとって有利な情報というものが出てくるということになるのかどうか。

○酒巻委員 冒頭に言いましたとおり、たたき台の3(3)の部分だけではなく、この証拠開示のシステムには、たたき台の5という部分があるわけです。大出委員の挙げられた例が問題になるのであれば、5の争点に関連する証拠開示のところで、必要性を示して開示請求のターゲットを示せば、開示されることになりますし、場合によってはそれに関係する証拠のリストは裁判官の手元に提出されるわけですから、個別に開示請求していけば目的は達せられるような仕掛けになっていると考えます。

○皸羂儖 これは前回も言ったことで、ここで繰り返すつもりはないんですが、B案は書きぶりとしてやや分かりにくい。
 それから、実際に運用する立場から見ると、確かにこういうふうにしか書けないんだけれども、先ほど弁護人の能力のことが言われましたが、検察官の能力によって、この証拠は関係あるなと判断する検察官と、これは関係ないと判断して開示されなくなってしまうという部分は実務的にはあるであろうと思います。しかし、それはそれでやむを得ないかと思っています。

○井上座長 書きぶりというのは、要件の書きぶりということですね。

○本田委員 私もB案が妥当という意見です。これは第2ラウンドと同じで、理由も大体同じです。それから、先ほど捜査報告書云々の話が大出委員から出ましたけれども、そういった問題は次の段階での争点に関連する証拠の開示というところで十分解決できるようなシステムになっているので、何でもかんでも、取調請求証拠以外の証拠の開示のところですべてが解決されなければならないという問題ではないのではないか。それはお互いに争点を明確にしながら関連するものを開示していくんだという全体のシステムの中で考えれば十分だと考えます。
 それから、リストの話が出たんですが、これは前回もかなりいろいろ申し上げたんですけれども、証拠の標目を記載した一覧表にどこまで記載させるのかという問題が一つあります。単に標目だけ書いたんじゃほとんど意味がないだろう。では、証拠の内容まで書くとすると、これは実質的に全面的証拠開示と変わらないのではないか。そうすると、これに対する弊害というのは、これまで第2ラウンドでいろいろ申し上げていたとおりで、これは到底不可能な話だと言わざるを得ない。そうではなくて、供述者の氏名であるとか、当該事件における立場とか、供述対象事項とか、あるいは鑑定書の対象事項とかを記載するんだということにしたとしても、虚偽弁解の作出の恐れとか、罪証隠滅、あるいは関係者の名誉、プライバシー侵害といった弊害が生ずるのは避けられないことになるわけです。例えば、当該供述者が捜査機関の取調べを受けたことが明らかとなることがあります。しかも、それが被疑者として取調べを受けたということになれは、プライバシー侵害の恐れもある。また、自分が情報を提供したことを外部に明らかにしないということを条件に情報を提供する人もいるわけです。その上で供述書の作成に応じる者もいるわけですけれども、そのような者から捜査協力が得られなくなってしまう。また、供述者名を手がかりに罪証隠滅などを招く恐れも出てくる。加えて、一覧表に基づいて証拠を特定して開示請求がされれば弊害が生ずる恐れがない限り、全部開示しろというのは、まさに何か便宜に使える証拠がないかという探索目的の証拠開示請求を許容することになってしまうだろうと思います。更に一覧表に供述の要旨を記載するとなると、これは負担が大きくてとてもじゃないけれども、できる話じゃないです。仮に記載したとしても、記載した内容の要旨の正確性とか十分性をもって紛糾が生じ、かえって混乱するだけだということになってしまって、全部の事件について全証拠の一覧表を作れという話は到底現実的な議論とは思えない。

○樋口委員 もう既に申し上げたものと変わらないんですけれども、制度としてはB案ということでいいと思います。前回も申し上げたんですけれども、やはり「特定の検察官請求証拠の証明力を判断するために当該類型及び範囲の証拠を検討することが重要であることを明らかにして」という要件でありますとか、カの「直接関係する」といった辺りの解釈、運用は極めて厳格にされることが必要であると考えます。要するに、その趣旨は被告人に虚偽の弁解の根拠とするような材料を与えるという制度になってはいけないということです。それは何がまずいかと言いますと、結局、そういうことになりますと、被告人のあらゆる弁解を想定した徹底したつぶしの捜査が必要ということになろうかと思います。
 そのほかの検討テーマのところでも、前提として申し上げたんですけれども、刑事司法手続というのは、究極的には治安安全の確保に資するものでなければいけない。警察捜査というのは限られた公共財でございますので、それが余りこの辺りの手続を重くすることによって、その適正配分を害するようなものであってはならないだろうということでございます。
 それから、被告人に虚偽の弁解の根拠を与えかねないと考えられる証拠というのは、後のたたき台の4の被告人側による主張の明示があり、5の争点に関連する証拠開示の手続を経て、本来主張を待ってそれに関連する証拠として開示されるものがあるとすれば開示されるんだろうと思います。それは酒巻委員がおっしゃったところと趣旨は同じであろうかと思いますが、そのように考えます。

○四宮委員 私も酒巻委員がおっしゃるように、今回のたたき台の示している証拠開示制度、これを全体として考えるべきであることはそのとおりだと思いますし、全体として考えたときに、相当程度これまでのものを拡充する内容になっていると思っております。ただ、それで十分なのかという問題はあるだろうというのが私の意見です。
 結論は、前回申し上げましたように、AプラスB案ということであります。若干補足いたしますと、リストは有用ではないかと思うのです。B案で何が落ちるかという議論があって、一番有力なものは捜査報告書であろうと思いますが、リストのもう一つの使い方として、B案では、証拠の類型と範囲を特定して請求するわけですけれども、実際の具体的な事件では、どんな類型の証拠があるのかというのは、私ども弁護側にとって分からないわけで、そういったものを知るためには、やはりリストは重要であろうと思います。つまり、証拠の類型、範囲の特定の明示に役立つということと、争点の見落としがないかどうかを確認するという意味で、なおリストは有効ではないかと思うわけであります。
 リスト論に対する弊害について、今日もいろいろと主張されておりますけれども、要するに制度には、マイナス面もあればプラス面もあるわけで、プラス面としては私が申し上げたことが一つです。
 それから、虚偽弁解の誘発という点も逆に本当に罪を犯した人は虚偽の弁解をすることもあるかもしれないし、そうではない人が、そのリストからこういうことだったということを思い出して、主張していくこともあるかもしれません。それはプラス、マスナスあるわけで、一概にすべて弊害ばかりであるというふうにも思えないのであります。
 作成の負担の点もありますけれども、これは前にも申し上げましたように、新たに作るというよりは、いろいろ送致目録などを活用するということもあり得るのではないかと思います。
 むしろリストを不開示にする場合には、例えば鑑定書があることが分からなかったということもあり得るわけで、再審の段階でそういう鑑定書があったということが判明したというケースもあったと聞いております。
 いずれにしろ、プラス・マイナスあるわけですが、そういったプラスの面をより強調して、A案を併用すべきであると思います。
 B案について申し上げますと、酒巻委員がおっしゃった取調べ経過の記録を類型に付け加えることには賛成です。
 それから、皸羂儖のおっしゃったB案の要件ですけれども、ア〜キ、取調べ経過の記録書面を入れるとすればもう一つ増えるのかもしれませんが、そういったものは前回も申し上げましたけれども、類型的、あるいは定型的に防御のために重要であり、かつ弊害も少ないというものですので、いろいろ複雑な要件になっていますけれども、証拠の類型と範囲を特定して、なお弊害がない場合には開示をするという要件にしてはどうかと思います。
 もう一つ、これも前回申し上げましたが、前回は被告人にとって有利な証拠ということも申し上げました。有利というのがなかなか難しい表現なのかもしれませんが、例えば検察官の主張に反する可能性のある証拠とか、いろいろ伺うところでは、例えばイギリスなどのように、検察側の主張事実を崩すに足ると考える資料とか、いろんな表現方法はあると思いますけれども、表現方法はお任せしますが、そういったものを類型に入れていただけると、より一層争点の整理というものに役立つのではないかと思います。

○井上座長 御発言の趣旨を確認したいのですが、リストから思い出すことがあるというのはどういう場合でしょうか。

○四宮委員 私は、リストの記載内容として、最低限、例えば供述調書については、供述者と供述を録取した人と、供述年月日が、押収手続に関する書類であれば、差押えの場所が記載されていれば、そういったものから思い出すことはあるのではないかと思います。

○井上座長 そこが聞いていてよく分からないのです。

○酒巻委員 四宮委員がおっしゃっているのは、例えば大量の書類を自分の会社なり事務所から押収された場合に、リストを見ればその中に自分に有利な書類、メモとかが入っていることが分かる場合もあるのではないかということではないでしょうか。また、検察側の主張と対立する内容の別の鑑定結果があるかもしれないのに、リストがなければその存在自体が分からないのではないかということですね。

○井上座長 大量に書類を押収されたが、その中に有利なものがあるかもしれないという場合は、B案でも開示請求していけば開示されるようになると思うのですが。

○酒巻委員 それを今続けて言おうと思ったんです。四宮委員の御心配は、やはり弁護人がB案の枠組みを最大限活用することによって対処することができると私は思います。
 それから、さきほどの四宮委員御発言の中で、「有利な証拠」というのを類型として掲げるという点ですが、前にも申したとおり、アメリカの法規が「有利な証拠」という文言を使うのはあちらの最高裁判例のリステイトという由来があるんですが、むしろ我が方B案の「特定の検察官請求証拠の証明力を判断するため」という要件により、結果として弁護人が有利に用い得る証拠は開示の対象になるのではないかと思います。

○平良木委員 私もB案でいいと思います。恐らく裁判員制度が動いていくと、証拠開示制度の運用というのはかなり動いてくる可能性というのはあると思うんです。それは拡大するか縮小するか分かりませんけれども、この段階ではB案で十分かなという気がしております。
 取調経過の記録をB案の類型に加えるべきという意見が出ましたけれども、それがここで開示される方がいいのかどうかというのは別問題にして、問題になった場合には、必ず開示されるということが望ましいと考えております。

○清原委員 私は四宮委員のおっしゃった、検察官が主張することと違う証拠になり得る
posted by: enzaix | 裁判員制度 | 00:00 | comments(0) | trackbacks(0) |-
司法制度改革-裁判員制度・刑事検討会(第25回) 議事録
裁判員制度・刑事検討会(第25回) 議事録

(司法制度改革推進本部事務局)


1 日時
平成15年9月12日(金)10:00〜16:30

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員) 池田修、井上正仁、大出良知、清原慶子、酒巻匡、四宮啓、皸羚行、土屋美明、樋口建史、平良木登規男、本田守弘(敬称略)
(事務局) 山崎潮事務局長、大野恒太郎事務局次長、古口章事務局次長、松川忠晴事務局次長、辻裕教参事官

4 議題
「刑事訴訟手続への新たな参加制度の導入」について

5 議事

○井上座長 それでは、第25回「裁判員制度・刑事検討会」を開かせていただきます。
 昨日に引き続いて御参集いただきましてありがとうございます。また、清原委員が非常にお忙しい中、繰り合わせて御出席いただいております。ありがとうございます。
 昨日は、たたき台の番号で言いますと、2の(10)というところまで議論をいたしましたので、今日は「3 裁判員等の義務及び解任」というところから議論に入っていきたいと存じます。
 この項目は、(1)「裁判員候補者の義務」、(2)「裁判員及び補充裁判員の義務」、(3)「裁判員及び補充裁判員の解任」と3つの項目に分かれているわけですが、いずれの点からでも結構ですので、特に御意見があれば承りたいと存じます。

○四宮委員 1点だけ、(2)の守秘義務の点なんですけれども、私は、規定の仕方としてはこれでいいと思うのですが、これは罰則が後ろについていて、その関係で、裁判員あるいは補充裁判員になっていただく国民が話していい範囲と、話してはまずい範囲というのがよりクリアになっていった方がよろしいのではないかと思うんです。
 このうち、「各裁判官及び各裁判員の意見並びにその多少の数」、それから、「その他職務上知り得た秘密」というのは、割合認識しやすいと思うんですけれども、問題は、「評議の経過」です。これは、検察審査会法や、日本の陪審法にも同種の規定がありますし、裁判所法にも同種の規定があるわけですけれども、特に、裁判を1回だけ担当する裁判員の方にとって、どの範囲ならば話していいのかというようなことを、ある程度具体的に議論しておいたらどうかという気がするんです。
 実は、前回も幾つか具体的なものが挙がりましたけれども、例えば、抽象的に事件に関することとか、あるいは評議で出たこととかというので、私自身がちょっと分かりにくかったのは、例えば、ある特定の証拠をもう一度調べ直したというのは、この「評議の経過」に入るかということについては、たしか事務局の方から、「評議の経過」に入るだろうという御説明がありましたし、また他方で、酒巻委員の方から、○○裁判長の正当防衛の説明は非常に分かりやすかったというようなものは、「評議の経過」に当たらないのではないかというお話も確かありました。
 そこは、どういう基準といいますか、仕切りなのかということを少し議論をして、国民の皆さんに分かるようにしておいたらどうかなというふうに思いました。

○井上座長 御意見は、「評議の経過」というのを入れておくのはいいのだけれども、判断基準をはっきりさせた方がいいのではないかという御趣旨ですか。

○四宮委員 はい。

○井上座長 いかがですか、お名前が挙がった方からでも結構ですが。

○大出委員 ちょっとよろしいでしょうか。

○井上座長 どうぞ。

○大出委員 今の四宮委員の御意見では、前回ちょっと話題になりました、各裁判員の意見については、表明はできないという前提になるんですか。

○井上座長 それはオで、そこのところはこのままでいいという御意見だったのではないですか。「評議の経過」のところを特に問題にされたのだと思うのですけれども。

○大出委員 だとすると、今、個別の具体的な話をされる前に、私としては、前回も申し上げましたけれども、各裁判員が自ら述べた意見について表明することは、やはり自由であっていいというふうに現時点でも考えていますので、前回一応理由を申し上げましたけれども、やはり、主体的に裁判員が参加するということで、責任の負い方というのは、それぞれの裁判員の方にお考えいただくべきことであって、他人の主張についてまで踏み込まない限りにおいて、やはり主張を表明する自由は、もちろん表明しないことも自由なわけですが、それ自体制約すべきではないというふうに考えていますので、その点は、一応意見として改めて申し上げておきます。

○井上座長 二つの問題は異なるものですから、まず先に四宮委員から出された問題点について御意見があれば伺いたいと思います。
 裁判長の説明、例えば法律問題についての説明が分かりやすかったというのは、当然に「評議の秘密」には入らないといえるのでしょうか。

○酒巻委員 四宮委員のおっしゃる趣旨は非常によく分かるし、「評議の秘密」について、守秘義務をかけて刑事罰が科される以上、その範囲を明確にする必要があるということは、刑事罰一般の問題として大賛成です。しかし、私は、この文言にある、大きな意味での「評議の秘密」の中には、評議の過程の個々具体的な事柄はすべて入るという認識です。そして、私が以前、裁判長の法律問題についての、例えば正当防衛の制度についての説明は大変分かりやすかったというような感想は、井上座長がおっしゃったように、評議そのものの過程にかかわることではなくて、裁判員を体験して、その体験した経験に基づく印象を述べたものと見ることができる。これは「評議の秘密」とは違うことだろうと私は理解しています。ですから、私自身はこのたたき台で、範囲は十分明解だろうと思っています。

○井上座長 裁判長からこういう点について説明があったというふうに言及すれば、「評議の経過」に当たるのではないのですか。

○酒巻委員 私の挙げた例の趣旨は、正当防衛が問題となったような事件について、裁判官の法律問題についての説明が分かりやすかったという感想レベルです。正当防衛の成否が争点となった事件において、具体的な個々の正当防衛の要件事実の認定や、証拠の評価などについての説明に触れているというわけではないので、区別できるのではないかと思います。

○池田委員 確かに、非常に微妙な問題があると思うんです。非常に活発な議論でしたよというようなことは、あるいは感想としてはあってもいいのかもしれないけれども、でも、それ以上に、だれが何回発言したとか、そうなるともう「評議の経過」になりますので、これはやはり、そこはだめだと言わないと、個々の人の発言内容、それから何が論点になったということまで話すことを認めることになりますので、それは好ましくないと思うんです。
 ですから、事件にかかわらない感想は、守秘義務の対象にはならないけれど、事件に関するもの、個別の事件に関するものは、それは「評議の経過」に入ってくるのではないかと思います。「評議の経過」というのは、ほかに「評議の内容」とか言い換えてみてもやはり難しいんですね。これが、ほかの法律でもいろんなところで使われているように、やはり言い換えにくい概念ではないかという気がいたします。

○清原委員 今のことの時間的な確認をしたいんですが、このたたき台では、ウにおきましても、オにおきましても、「これらの職にあった者は」と言っているんですが、これは、これらの職に現にある間についても、私はこのような義務を課すべきだと思っています。

○井上座長 それは「裁判員及び補充裁判員」という語句でカバーしており、現職である人を指しています。そして、「並びにこれらの職にあった者」というのが辞めた後のことを指しており、両方をカバーしているわけですね。

○清原委員 やはり、そこのところが非常に重要だと思っておりますのは、これらの職にあった者が感想を述べるのと、今ある者が感想を述べる場合、それから、これらの職にあった者が「評議の経過」について話す場合と、今ある者が「評議の経過」について話す場合とでは、やはり同じようであって違う部分もあると思うのです。つまり、職にある者が「評議の経過」について話す状況はどういうことが想定されるかというと、評議の日程が延びた場合に、例えば自分の知っている弁護士の人とか、その他法律関係者などに、こういうようなことがなされているけれども、裁判員としてどのような意見を言うのが適切だろうかというような相談をすることだってあり得るわけですね。ところが、今回の制度の場合には、あくまでも評議というのは、やはりその場に任命されている裁判官と裁判員のみで行うべきであるという前提を置くならば、この「評議の経過」とか、そういうことはやはり話すべきではないと思うのです。ただ、感想というか、帰宅して家族に今日はどうだったと言われて、議論が白熱して疲れちゃったよと話す程度までは、私は許されると思うのですが、その辺りのことを基本的にはもう一度確認すべきで、現在、裁判員又は補充裁判員である場合に、これらの義務を課すことに関して、そんなに疑問に思う方はいらっしゃらないんでしょうが、これらの職にあった場合に、もう話してもいいのではないかというような感想があって、その辺が不分明になって原則が揺らぐということがあってはならないと思いますので、この辺は、「並びに」というところに、むしろ私たちの中で揺らぎが生じやすいのではないかと思います。
 ですから、裁判員及び補充裁判員が果たすべき義務というところを固めて、その上で、これらの職にあった者については、どのぐらいまでは許容度が広がるのか、広がらないのか、そういうふうに分けておいた方がいいのではないかなと思います。

○井上座長 ほかの方はいかがですか。どうぞ。

○本田委員 やはり、「評議の経過」というのは、守秘義務の範囲に含めるべきだというたたき台の案が正しいと思います。「評議の経過」というのはどういう定義ができるのか難しいのですが、一般的には評議がどのような進行過程を経て結論に至ったかという道筋だと思います。先ほどから出ているような、例えば、一般的、抽象的に、「なかなか評議が活発でした」とか、「大変熱心にやっています」というのは、別に「評議の経過」というよりも、外形的な事実に対する単なる評価、感想みたいなものですね。恐らく、それを踏み超えて、この議論についてはこういう説と、こういう説があって、こういう対立がありましたということになれば、まさにそれは「経過」に踏み込むわけで、恐らくこの「経過」という文言で、そこの切り分けはできるんだろうというふうに思います。
 やはり、現に裁判員である者であろうと、あった者であろうと、同じように守秘義務をかけるべきであって、「私は意見が違いました」とか、「私は無罪だと思いましたがしかしこうなったんです」というようなことを勝手に言うことができるということになったら、裁判体が一体として結論を出しているにもかかわらず、そこがばらばらになるようなことを自由に言えるということになるということになって、恐らく裁判体の一体性ということ、ひいては裁判の安定性というものを著しく害するでしょうから、この程度の制限は当然のことだと思います。

○酒巻委員 先ほど、清原委員から、基本的な考え方について御説明がありましたが、私の考えを申しますと、「評議の秘密」の範囲に入る事柄については、ただいま本田委員、あるいは池田委員から意見がありましたとおり、これは現職であれ、辞めた後であれ、基本的に同じであると思います。それは、前にも申しました「評議の秘密」を守るという法制度の趣旨にかかわることですので、ここでは繰り返しません。ただ、先ほど言いましたとおり、その範囲に入らないものについては、辞めた後で感想を述べるということは全く禁じられてはいないという規定だと私は理解し、それは妥当だと思っています。問題は、その区別が本当に一般の方にすぐに分かるかどうかということでしょう。その点については、この制度を開始するにあたり具体例を挙げて、こういう場合は話して構わない、こういう場合はいけないというのをきちんと分かりやすく説明するということで対処するのが望ましいと思います。

○土屋委員 私の考え方は、もう再三話しておりますので、また繰り返しになってしまって3度目になりますけれども、念のためにまた申し上げておきます。
 私は、守秘義務が、裁判員、補充裁判員、あるいはそれらの職にあった人に課されるのは、基本的には当然だと思ってはいるんです。つまり、今指摘されたように、やはり裁判がきちんと行われるためには、やたらにそこで評議された内容が外に出されてしまっていいものだとは思いません。それが大前提です。ですけれども、包括的に何でもかんでもすべて評議の席で出たことは一切外に出せないということになってしまうと、それはいかにも息苦しいことにもなりますし、それから、実際に国民の関心を集めるような重要な裁判がどういうように行われたのかということを、ほかの人たちが知って、それをこれから先の裁判の中に生かしていくという経験の蓄積をしていくことがなかなかできなくなってしまうんではないかということを私はちょっと心配しているんです。前回も申し上げましたけれども、裁判員が自分の経験したことを家族に話したりすること、これは感想にとどまるべきなんでしょうけれども、場合によっては少し機微に触れることもあるかもしれない。ただ、それは外に向かって何か話をしたということではないんだろうと思うんです。そういうことも含めて全部だめだと言ってしまうと、ちょっとどうかなというふうに考えています。
 それから、私は前に述べていますけれども、ほかの方がどう話したのかと、どういう意見を述べたのかということに言及して、あの人はこう言った、あの人はここの場面であの人と争ったとか、そんなことを言ってしまうことがいいとは思いません。しかし、自分がこの事件についてどう考え、どういうふうに今思っているのかという自分の意見を述べることというのは制限すべきではないのではないかと私は考えています。
 もう一つ、以前に意見書の中では書きましたけれども、守秘義務といっても、死ぬまでではなくて、一定のところで解除されるようなことがあっていいのではないか、期間的な限定を考えてもいいんではないかというようなことも思ったりしています。
 そして、守秘義務の範囲は3つだけに限定して課すべきではないかというのが私の意見です。つまり、ここで出ています、各裁判官、裁判員の個別的な意見の内容、それと裁決の結果と、それから、プライバシーだとか、いろんな問題が出てくるわけですから、こういう事項は外に出さないようにしましょうということで、皆さんが合意した内容、そういったものに限定して守秘義務を課すという、いわば守秘義務の範囲を狭めるということなんですけれども、そういうふうにするのがいいのではないかと私は考えております。

○井上座長 「評議の経過」は要らないということですか。

○土屋委員 「評議の経過」は非常に微妙なところなんですが、私が「個別的な意見の内容」と言ったのは、どの方がどういう意見を言ったということも含めているつもりですので、最終的に有罪か無罪かということを言ったということだけでなくて、この事件について、自分はこういう証拠について、こういうふうに考えているというようなことを言ったという、そういう意見も含めて考えておりますので、そういうことに言及するということは、つまりは「評議の経過」に言及することにもつながってきているのかなと思います。ですから、ほかの方の意見を言ってはいけないということの中には、「評議の経過」に言及して、その過程でどなたかがこういうことを言ったということも述べるべきではないというふうに私は考えています。

○井上座長 最初におっしゃったことが、ちょっとはっきりしないのですけれども、今言われたような、守秘義務の範囲を限定すべきだということなのか、それとも、一定の人には言ってよい、家族には言ってよいと、そういうことなのか、そこがよく分からなかったのですが。窮屈だということの結論としてですね。

○土屋委員 家族に言ってもいいというのは、ちょっと表現としてはよろしくないのかもしれません。安易に言っていいとは思いませんけれども、家庭内でいろんな話をしたりするときには、そういうふうになってしまうこともあるんだろうと思うんです。それは感想なのか、どうなのかということになると非常に微妙なんでしょうけれども、そういったごく親しい身近な人に対してお話をするというようなことが望ましいとは思いませんけれども、決して奨励しているわけではありませんが、仕方がない部分もあるかなというふうに思っております。

○井上座長 その辺のところは、少し緩やかでもいいのではないかということでしょうか。

○土屋委員 言わば、感想の領域に入るのかもしれませんが。

○井上座長 第三者のプライバシーに属する事柄について、裁判体の構成員の間で、これは漏らさないでおきましょうと合意したものに限って漏らしてはいけないこととする、しかし、そうでないものについては漏らしてよいというのは、プライバシーというものの性質上、成り立つ考え方なのでしょうか。

○土屋委員 なかなか難しいとは思うんですけれども。

○井上座長 当のプライバシーの主体が漏らしていいですよと言うのならば、それは漏らしてもよいと思いますが、その主体ではない裁判体の構成員が、これは守ってあげます、これは守らないでいいです、といった選択をすることができるというのは、筋が通らないように思うのですけれども。

○土屋委員 つまり、そこで言いたいことは、もう少し枠をはめるような考え方ができないかなと、そういう趣旨なんですね。

○井上座長 「意見」については、大出委員からも問題提起がありましたので、それはちょっと別に置いて、まず「評議の経過」について、具体的にどうかということで議論をしており、それに関係して、土屋委員は、できるだけ限定した方がいいという御意見であるわけですが。

○清原委員 私は、「評議の経過」につきましては、例えば、重要な争点、論点というのは、判決にかかわることが大いにあるわけですから、判決に至る、判決文というんでしょうか、その中で明らかにされるべきだと思っているんです。
 私は、裁判官の方に守秘義務は相変わらずかかり続けるのに、なぜ裁判員と補充裁判員だけがそこで守秘義務が和らげられるのか、そこのところは1点大いに気になります。
 「評議の経過」というのは、それを話す人と話さない人が必ず出てきます。裁判員の人数が3人かもしれないし、11人、12人かもしれませんが、意見を活発に言う裁判員もいるでしょうが、自分は言いたくないということで言わない人もいるでしょう。そのとき、意見が外に出てくると、たかが自分の意見かもしれませんが、そこで評議の様子が伺えてしまいますし、自分の意見と言いながら、実は反対意見があるから自分の意見がこうあるということになりますから、裁判のプロセスあるいはその直後に何げなく言ったかもしれない意見が、裁判体としての一体性を損うことになったり、新たな対立を起こすことも懸念されます。
 私は、裁判員はいろんな方がいらっしゃるものですから、本当に評議の過程で自分の意見なら話すべきであると思いますし、評議の過程で引き出すべき、あるいは引き出されるべきものだと思いますので、評議の外で感想ではなく意見が言われることは、裁判という集中すべきプロセスをあいまいにするのではないかなというおそれを感じます。
 いずれにしても、裁判官と裁判員が守るべき守秘義務というのは同質であることがよいのではないかと思いますし、また、裁判が控訴される場合もあると思いますから、幾ら一定の判決が出た後であっても、裁判員の方が意見を述べることが、その後の裁判に影響をどのように与えるのかというのは難しいことでございまして、そういう意味では、私は、「評議の経過」に関する守秘義務はしっかり課されていた方が、裁判員の方は結果的にはその職務に専念できるし、よりよい評議結果に至るのではないかなと考えます。

○平良木委員 「評議の秘密」というのは、個々の裁判員が自由に意見を述べやすいような環境をどうやって作ってやるかということの裏返しだと思うんですが、そうすると、誰がどう言ったかということが判明して、その裁判員が批判を浴びることのないようにしてやらなければいけないことになります。したがって、ここのところをどこまでしゃべっていいかということは、逆に言うと、ほかの裁判員の保護をどうやって保ってやれるかということにつながってくると思うんです。そうすると、私の考えだと、ここのところは広く網をかけておいた方がいいだろうという気がいたします。ただ、罰則との関係で、これはどこまでかというと、やはり、ある程度厳密な検討が必要だということになると思いますけれども、しかし、先ほどから出ている「評議の経過」というのは、やはり、たたき台に書いてあるように、秘密の中に含める方がいいだろうというように思っております。

○皸羂儖 先ほどの清原委員の御意見は、誠に御立派な意見で、基本的に全く同感です。裁判員と裁判官は協働して裁判をするということになっているわけですから、裁判官の持つ義務と裁判員の義務が違うということは絶対にあってはならない。そういうものを区別すること自体、そういう発想自体がおかしい。裁判官がやるのはだめだけれども、裁判員ならいいと、そういう発想自体が私はおかしいというように思います。

○四宮委員 私も、評議の秘密というか、守秘義務が自由な意見表明を保障する重要な制度であるということは全くそのとおりだと思います。
 問題は、公正な評議、自由な評議というものを確保するために、一体どの程度の規制の制度を設けるかという範囲の問題だと思うんです。そこで、「意見と数の多少」というのは、非常に、守秘義務中の守秘義務といいますか、自由な意見を保障するコアの最低限のものだと思います。他方で、今度は裁判員という国民の方に裁判をやっていただくということですので、国民の理解とか、支持というものも、もう一つ重要な要素になるだろうと思うんです。さっき、清原委員から時間的な経過の話がありましたが、私は、それは非常に大事なポイントだと思います。つまり、公正な裁判、評議の秘密というようなものは、時間によってもある程度変わってくるものがあるのではないかということです。例えば、現に裁判中、あるいは現に評議中は、私は一切、ここに書かれたもの以外でも何でも一切話すべきではないと思います。それは、まだ判決が出ていないからです。そして、判決が終わった後、もちろん、自由な評議を保障するというのは、その後も必要性は続くわけですけれども、それが現に裁判中の人と、そうではない人とで違いが全くないのだろうかというと、もう既に判決が出ているということ、それから、さっき申し上げた裁判員制度を国民に理解、支持してもらうためには、経験者の話が一番有効、有用であるわけですから、それとの調整等もあるので、判決後についての評議の経過というものについては、裁判中とはやはり違った取扱いになってもいいのではないかと思います。
 裁判官と裁判員の守秘義務が違うのはおかしいではないかという御意見については、それはそうなんですけれども、だとすると、日本の裁判官はほとんど外に向かってはお話しにならないわけで、裁判員もそれにならうべきなのかということになります。裁判員制度は、いわば新しい制度ですので、国民に入ってもらう上で、私は義務が違っていいという意味ではなくて、裁判官が今後どのように対応していかれるのかは分かりませんけれども、理屈の上で同じだからといって、一切合切、話してはならないという形にはしない方がいいのではないかと思います。

○井上座長 抽象論としては分かるのですけれども、それをどうやって区別するのでしょうか。

○四宮委員 具体的に書くわけにはいかないので、私が思うのは……

○井上座長 時間が経過したら、一定のものは話してもよいのではないかという御趣旨でしょう。その「一定のもの」というのは、具体的にどういうものが考えられますか。

○四宮委員 それは、ケースによって違いますけれども、要するに話してはいけないことの、さっき申し上げたコアは、各人の意見と……

○井上座長 守秘義務は基本的に続くけれども、一部については、現職でなくなった場合、解除されるという構造ですね。具体的にはどういうことをイメージされているのですか。

○四宮委員 例えば、さっき出たような一般的な感想から少し踏み込んで、具体的な事件について、例えば正当防衛の点が問題になったんだというような話は、終わってからは話してもいいのではないかというような気がします。

○井上座長 それは、公判で争われるわけですし、判決文にも出ているわけでしょう。

○四宮委員 出ていますね。

○井上座長 当事者が争えば、裁判所はそれに応えなければいけませんので、当然判決理由には示されていますよね。それは秘密でも何でもないので、それ以上に評議の内容に立ち入ってということでしょうか。

○四宮委員 具体的にこういうことだというのは、なかなか難しいんですが。

○井上座長 判決文には書かれていないけれども、評議の経過では、実はこういうことも大いに議論したと、そういうことを念頭に置かれているのでしょうか。

○酒巻委員 具体例でお聞きしてよいですか。

○井上座長 とうぞ。

○酒巻委員 例えば、もう裁判は終わった、判決も確定した、それで有罪判決だったという場合を想定します。そして、裁判員だった人が、例えば、5年ぐらい経って、私は実はやはり有罪ではないと思っていたという感想を述べたというのはどうですか。あるいは、刑はちょっと重過ぎたと思ったとか、これはまさにそのときに抱いた心証なんですね。それは、私は、時間が経とうが経たまいが、守秘されるべき事項だと思いますが……

○四宮委員 今のようなものはだめかもしれません。だから、何かと言われると難しいんですけれども。

○井上座長 ですから、気持ちとしては分からないでもないのですが、「評議の経過」についての判断基準をはっきりさせた方がいいと言われるのであれば、逆に、そこから外すとすると、ここは外れます、ここは入りますということをはっきりさせて、具体的なイメージのもとに議論しませんと、抽象論で行っているだけでは、すれ違いに終始してしまうと思うのですよ。

○大出委員 私は、今、酒巻委員がおっしゃったことに関しては、私は言っても構わないと思っているんです。それで、基準ということとの関係でいくと、先ほど土屋委員が少しおっしゃいましたけれども、皆さんのお話を伺っていても、感想程度とか、印象程度とかは、場合によってはお話になってもいいという意見の方は多くいらっしゃるわけですね。
 ただ、先ほど来の議論から見てみても、それと「経過」ということで、一体区別がつくのかどうかということが非常に問題なわけで、座長がおっしゃっているのもそうだと思うんです。そうすると結局、裁判員の方たちにしてみれば、だめだということは、家族に対してもやはりだめだと思うんですね。なぜかと言うと、そこから伝播していくわけで、家族の方が聞いたことを他人に言うということは当然あり得るわけですから、だとすれば家族にもしゃべれないという話にならなければおかしいわけですね。だけど、そうなったときの裁判員の方たちの負担感という問題についてどう考えるのかという問題だと思うんです。ですから、そこは、私はやはり、それぞれの裁判員が自ら主体的に責任を負える範囲で判断をされるということでお任せするということではないかと思うわけです。
 ですから、それは、あくまでも他人の意見なり主張というものに触れたことを言うというのは、そこはもちろんガイドラインを示す必要はあるかもしれませんけれども、最終的には、まさに責任を持って参加された裁判員の方たちが判断をされるべきことであって、それで、一般的に他人の言動にかかわるようなことは言うべきではない。それは、「経過」ということをいってもそうなると思うんです。
 ですから、先ほど土屋委員がおっしゃったことだと思うんですが、他人の意見等について触れることは許されないにしてみても、御本人が、自分としてはこういう意見であったというようなことを言うということはあり得るのではないかと思います。
 それはなぜかと言うと、先ほど本田委員がおっしゃいましたけれども、なぜ評議の秘密が守られるべきなのかということを考えたときに、裁判の公正さだとか、信頼感だとか、安定性というようなことをおっしゃるわけですけれども、ここはもちろん意見が分かれるところだというふうに思いますし、私は意見が分かれるからこそ言った方がいいというふうに思っているわけですけれども、どのようにして、安定性だとか、公正性だとか、信頼感というものを確保すべきかというのは意見が分かれると思うんです。つまり、一切秘密にするということで、これまで確保してきたとか、確保できるというふうに考えてきたのかもしれませんけれども、しかし、実際に裁判員が入って、過半数で評議が決まるということになる以上は、その数が最終的に分かることは多分私はないというふうに思っていますけれども、しかし、その中の意見を、結果と違う意見を言うことがあったとしてみても、それが直ちに信頼感だとか、安定性を損うということには私はならないだろうというふうに考えています。

○井上座長 ちょっと議論が「意見」の方に流れてきていますが、そろそろこの辺から、その問題をも含めて、御意見をいただければと思います。これまで一切しゃべらないということで、公正さや裁判に対する信頼、あるいは裁判制度そのものを守っていると考えられてきたわけですけれども、大出委員の御発言は、それは本当にそうなのかという、かなり大胆な問題提起だと思うのです。その点について御意見を伺えればと思います。

○本田委員 裁判員が裁判体に加わって裁判しているわけであって、裁判員個人が裁判をしているわけではないです。裁判体が結論を出しているわけです。そして、なぜそういう結論が出たかということは、判決書にきちんと書いてあるわけです。裁判員が主体的に参加するから自由に意見を言ってもいいんだという話ではないはずです。裁判員が勝手にやっているんだったらいいですが、そうではないでしょう。だから、それはおかしいでしょうということです。裁判体として評議を尽くして、意見を交換して一つの結論を出し、理由も書いてあるわけです。それなのに、判決について、あれはどうだったこうだったと後で言うことになれば、裁判そのものの安定性というのがなくなるでしょう。裁判員は、裁判体に加わって、その構成員として自分の意見も出してその結論を出しているわけですから、「いや、あれは違いますよ」なんて言ったのでは、裁判に対する信頼なんてなくなると思います。

○井上座長 御意見はそれぞれ分かりますが、本日はおさらいの議論であるはずで、同じことを延々と議論していますとこの問題だけで終わってしまいかねませんので、その辺は心得て、簡潔に理由を言って結論を示していただければと思います。

○池田委員 大出委員が、裁判員に対する負担感と言われましたけれども、ここはやむを得ない負担感で、それは裁判員の義務としては負っていただかなければならないと思います。評議の秘密の重要性は、前回もお話ししましたように、自由な評議ができること、そしてそれがいい裁判につながるということです。自由な評議が確保されれば、いろいろと思いついたこと、間違ったこと、あるいは外に出たら恥ずかしいようなことを言ってもらっても、それでいい議論ができますが、そういうものがないと、皆さん自由なことが言えなくなるわけで、それは望ましくないわけですから、その評議の秘密を守るというのは、やはり非常に重要なことで、これは裁判員の任務が終わってからも同じだと思います。
 自分の意見を言ってもいいじゃないかと言われますが、この前も言いましたように、何人かが言えば、言わなかった人、秘密を守った人の意見も分かることになりますし、また、こういう人がいるとは思いませんけれども、制度設計上は考えなければいけないことは、自分が言ったことと違うことを、つまり、例えば、自分は評議では賛成していたのに、後に、私は評議でも反対したと言ったときに、それではどうすればいいのかというと、ほかの人も、発言せざるを得なくなります。そうすると、もう裁判の評議をすべて見せることになるわけで、そんなことに踏み込んでやらないといけないということまで考えたら、到底いい審理はできないわけです。評議の結果は、判決に書かれるわけですし、その基本的な理由は、関与した皆が納得した上で言い渡されるわけですから、そこで担保されれば、十分なのではないかと思います。

○酒巻委員 意見表明の点についてだけ、私の意見を申しますと、全面的に池田委員のおっしゃったことに賛成でありまして、大出委員の御発言にはことごとく全面的に反対です。理由は、前に述べたとおり。評議の秘密の制度趣旨からいって、自分の意見だから、自分で処分できる、自分で言うのは自由だということには、全くならないと考えます。

○井上座長 更に何かございますか。

○大出委員 いいですか、ちょっと簡単に。

○井上座長 簡潔にお願いします。

○皸羂儖 私の意見を聞いてからの方がいいのではないですか。

○井上座長 では、どうぞ。

○皸羂儖 裁判に対する信頼というのは、ある部分、コアの部分は秘密にすることによってのみ、信頼を確保できるというのが、私は真理だと思います。なぜ判決に既判力があるのかというと、判決は動かない、つまり、一定の手続を経て、一定の結論に達したものは動かないというのが、裁判の安定性とか、信頼を守っているわけです。ですから、それを、裁判が終わったから幾らでも際限なくしゃべっていいとなると、評議が延々と公開の場で続いているようなもので、そんなもので裁判に対する信頼が維持できるはずがないので、大出委員の話は全くおかしいというふうに思います。それから、負担感がどうのこうのと言われましたが、こういう、司法制度という非常に大事な、ある意味では社会の骨格を決める制度を議論するときに、そういうセンチメンタリズムに流れるのは、私は議論の仕方としてはおかしいと思います。

○大出委員 意見を聞いてからでよかったと思います。皸羂儖は、私よりも若いんですが、随分古い御意見をおっしゃるんではないかというふうに私は思いますが、つまり、私は再審が専門ですから、裁判が絶対的に動かないなんていうふうには思っていないんです。間違いというのはあり得るわけですから、変わるということは十分あり得るんです。裁判の結果は、真実ではありませんから、そこは勘違いとしか言いようがないです。
 それから、裁判の結論とは、ルールに従って結論が出ているわけですから、そのルールに従って出たということは、当然全体の認識の中にあるわけで、そういう前提での安定感とか、信頼感とか、正確性が問題なんであって、自分の責任において中身について言ったからといって、そのことがルールを外しているとか、そういうことで裁判の安定性というものが損われるということには、私はならないと思います。
 それから、池田委員のおっしゃったことに関しては、他人の意見の内容について言及していいということは私は言っていませんので、そういう意味では、まさに自らの責任において判断して処分できる分について言及するということであれば、それはまさに主体的な責任において関与した裁判員としての責任の問題であって、そういう責任を問うことによって、初めて裁判員というのは、主体的に参加したという意味が、ある意味では明確になるということだというふうに私は思っているということです。

○井上座長 もう既にこの問題で40分くらい議論していますので、タイムキーパーとしては、先のこともあり、もし、更に付け加えて御意見があるとしても、極めて簡潔にお願いしたいと思います。

○清原委員 主体的にということを大出委員は強調されるんですが、裁判員制度というのは、自ら手を挙げて裁判員になるという公募型の制度ではありませんので、やはりなるべく幅広い方を抽出して参加していただくということになります。もちろん、主体的な責任は、国民がいろいろな場面で負うことがあると思うのですけれども、私は、主体性というところを余りに強調されると、この制度の裁判としての一体性が失われてしまうので、それよりも、評議の過程で、まさに主体的にそれぞれの裁判員の方が意見を表明していただくということに重きを置くべきだというふうに思いますので、評議の場でこそ主体性を発揮していただいた方が実効性があるのではないかなと、そのように感じました。

○井上座長 これくらいでよろしいですか。昨日最初に申し上げたとおり、今回はあくまでおさらいの議論であるということを忘れないでいただきたいと思います。
 次に、「4 公判手続等」のところに進みたいと思います。
 総論の部分は、これまでも異論はなかったように思いますので、ここのところはよろしいですか。各論の議論に入ってよろしいでしょうか。
 次の「(2)準備手続(刑事裁判の充実・迅速化関連)」という点ですが、この項目自体については特段異論はなかったように思います。
 前回の議論の後、刑事裁判の充実・迅速化の方で、たたき台についての議論を行いましたので、準備手続の具体的な内容については相当程度イメージがはっきりしてきたのではないかと思います。そういう状況ですので、それを必要的なものとするということが、ここで書かれていることですが、特にここのところで更に付け加えて御意見がなければ、先に進めさせていただきたいと思うのですけれども、いかがでしょうか。中身につきましては、次回以降の充実・迅速化のところで、更に御意見を伺うということにしたいと思います。
 「(3)弁論の分離・併合」ですが、これは、やや専門的というか、技術的と言ってもいい問題で、被告人が複数の場合、いわゆる主観的併合の場合ですね。共犯者等について一緒に審理するかについては、証拠関係が共通である場合を除いては、分離して審理すべきであるという御意見が述べられており、その点については余り異論はなかったのではないかと思います。これに対して、いわゆる客観的併合、つまり、一人の被告人について複数の事件があるときに、一つの審理手続で審理をするのか、それとも分離するのかという問題については、いろいろな御意見が出たところです。これは、傍聴されている方にとっては理解するのがかなり難しい問題のように思うのですけれども、重要な問題でありますので、是非御意見をお伺いしたいと思います。いかがでしょうか。簡単に言えば、一人の被告人に複数ないし多数の被告事件があり、それが次々と起訴された場合に、それらの事件を一つの公判手続で一緒にやるのか、それとも、事件ごとに分けて公判手続を別々に行うのか、そのどちらにするのかを何らかの基準で仕分けていくのかといった問題と、例えば分けて別々に裁判するとした場合に、刑の関係をどうするのかといった問題がそこには含まれていたと理解しておりますけれども、いかがでしょうか。

○皸羂儖 これは、基本的には併合してやらざるを得ないと思うんです。例えば、殺人を例に取れば、一件一件ばらけてやると無期懲役までだと、しかし、併合して一緒にやれば死刑だという場合があるわけで、仮に死刑判決を出すときに、一つずつの事件を別の裁判体で審理をして、最後の裁判体でまとめて判決をするというようなことも考えられますが、それで死刑判決だということになると、死刑判決を下す裁判体は、場合によっては前の事件の判決は見るけれども、証拠を見ないままということもあり得るわけで、やはり判決の在り方としては妥当ではないと思います。確かに、併合するとだらだらと審理が延びたりして、裁判員の負担が増えるということは否めない事実ですが、ここはある程度負担が増えてもやむを得ないというふうに腹をくくって、併合でやるというのが原則だと思います。

○井上座長 ほかの方はいかがですか。どうぞ。

○池田委員 刑の調整規定ができなければ、併合できるものは、併合するまで待つようになると思います。多分追起訴がありそうだというようなことが分かっていれば、準備手続の間で調整して待って一緒に始めるとか、あるいは、始まってからは、事案によっては何らかの形で併合できるのであれば、ぎりぎり併合できるような方策を探るとは思います。けれども、それでもやはり、手続が始まって選任手続をしてしまうと、集中審理で計画的に審理を始めた後で、また追起訴があることが分かったから何とか一緒にしてくれというのは、やはり無理なのではないかと思います。ですから、幾ら重大な事件が次にあるということでも、やはり併合できないものが出てくるのではないかと思います。現在の法制度であれば、二年でやれというのはありますけれども、そうは言っても、そのぐらい延びても仕方ないではないかという話はあったと思うんですけれども、それが、今回は、期間だけではなくて、裁判員に入ってもらって審理を始めて、そして途中で中断するとなると、別の裁判員になるか、あるいはまた同じ人裁判員によって当初の計画以上に審理を延ばすことになるわけですけれども、そういう新たな負担というのは大きくなるわけですね。それを考えると、やはり切らざるを得ないものというのは必ず出てくるのではないかと思います。現場の裁判官に聞いても、これから裁判員制度になったら、やはり今までのように、客観的併合を原則とするというわけにはいかないのではないかという意見はかなりありますので、刑の調整規定というのは何かつくるべきだと思います。実体法なり、あるいは手続法なりでつくるべきだと前回話しましたけれども、やはり必要なのではないかと思います。

○井上座長 その前提として、同時並行で分かっているという、さっき皸羂儖がおっしゃられたような例で、複数の人を殺害したというような事件の場合は併合できるだろうということですね。

○池田委員 余りにも大き過ぎる、二つを足すとすごく審理期間が長くなるというようなものだとちょっとどうかというのはありますけれども、複数の事件があることがもう分かっているのなら、審理の計画の中で織り込めるところがありますので、そういうものはかなり無理をしてでも一緒にやるだろうという気はするんですけれども。

○井上座長 そういう時差があり、審理が始まってしまった後になって分かったので追起訴して併合するかどうかということが問題となる場合については、高井委員のお考えはどうなのですか。

○皸羂儖 これは、私はやはり中断をして起訴を待って、それでまた再開するべきだと思います。要するに、審理している間にまた死体が出てきましたという事件の場合は、やはりいったん中断して追起訴で併合するというのが基本ではないかと思います。

○井上座長 分かりました。どうぞ。

○本田委員 基本的には、皸羂儖の考え方と同じなんですけれども、刑事手続の目的というのは、実体的真実の発見と、適正な科刑の実現にあるわけですね。今度の裁判員制度というのは、よりよい裁判制度を目指して、裁判員を入れましょうということになったんですけれども、その裁判員が加わったことによって、本来の目的である実体的真実の発見であるとか、適正な科刑の実現というのが損われるというのは本末転倒の話ではないかと思います。やはり、併合審理すれば、ある程度の刑が予想されるけれど、ばらばらにしてしまえば、それとは違った判決が出るというような事態というのは、やはりあってはならないことであって、基本的には併合しなければいけないだろうというふうに思います。
 ただ、裁判員制度になると、準備手続で相当集中的に争点整理をして、実際の審理期間というのは短くなるでしょう。そうすると、現実に審理期間中に追起訴という事態がどこまで起きるのかというと、現実には少なくなると思います。例えば、1週間のうちにすぐにぱっと追起訴できるのか、あるいはそこでぱっと見えるのかということです。ただ、やはり事件として分かっていて、やがて起訴するような状況にあるような場合に、これは無視してやってしまうんだというのが果たしていいんだろうかという気はします。ただ、調整規定がどういうふうに置けるかというのは非常に難しい問題で、これがうまく置けるんなら、それはそれでいいのかもしれませんけれども、そうではない限り、やはりかなり難しいんではないかと思います。

○平良木委員 分離したままで行きますと、最終的にどうしても併合しないといけない事件というのが出てくるだろうと思います。そういうときに、裁判官と裁判員が異なるとすると、心証の引継ぎの問題というのが出てきて、ちょっと困ったことになるというか、かなりロスが出てくるという気がするわけです。ですから、もし裁判官と裁判員が同じだとすると、これは分離したままでいこうと、併合したままでやろうと、ちっとも問題はないと思うんです。どちらでいってもいいと思います。そのときには、中断する必要はないし、それぞれ進めても構わない。

○井上座長 同じ構成の裁判体が、二つの事件を担当するということですか。

○平良木委員 できればです。ただ、裁判員は、もともと重い事件で1回限りということが前提になっているので、そこのところとの関係というのはやはり出てくるだろうという気がしています。
 最終的に、もし併合が、例えば多少ずれていても簡単にできるような仕組みができるんだったら、それも一つの方法だろうと思います。ただ、今の手続を前提にすると、それは難しい。

○井上座長 恐らく、ほかの方は、審判が分離されれば別個の裁判体が担当するという前提で、このパズルのような問題を議論しているのだと思うのです。それと、誤解を招いてはいけないので敢えて申しますと、併合すれば刑が重くなるということでは必ずしもなく、併合した方が被告人にとっては量刑としては有利になることも多いのです。さっきの例だけを念頭に置いて見ますと、もっぱら死刑の方向に行く議論だと思われかねず、それでは不正確ですから。

○酒巻委員 今、座長が言っていただいた点を申し上げようと思っていたところです。弁護士の方はよく御存じと思いますが、現在の刑法の併合罪の規定を前提にすると、一人の人間がそれなりに重い罪をたくさんやったとされ裁判になっている場合は、むしろ併合された方が、ばらばらに審理するよりは結果として刑は軽くなる場合も多々あるだろうと思います。そこで、被告人にとっても、これまでのやり方であれば併合審理されていたのが、裁判員制度になってやむを得ず分離になった場合に、そのままでいいのだろうかという問題があるわけです。
 なお、平良木委員のおっしゃったような場合というのは、多分今我々が設計している制度ではあり得ないんだろうと思います。分離された場合は、別の裁判員の入った、別の裁判体が審理するというのが当然の前提だろう。その上で、私の基本的な考えは、やはりできる限り一緒に審理できるものは、一人の人間が複数罪を犯したというものですから、全く無関係の場合は除いて、できる限り一緒にやるべきであって、そのことによって刑についても従前と余り違わないことになるのが望ましい。しかし、次々と追起訴が繰り返されて、それをずっと待っているということも恐らくできないであろう。そうだとすると、やむを得ず分離してやらざるを得ない場合が出てくる。また、併合すると、それだけ裁判員の方の判断すべき事柄の負担は増えますので、そのような観点から事件を分離する場合もあると思います。
 そうすると、結局、今の両面ですね、一緒にやればもっと重くなったかもしれない、あるいはまとめて一緒にやったら軽くなったかもしれないという、刑を調整する何らかの法律制度をつくって、調整をする必要は制度としてあるだろうと思います。しかし、これは、具体的な案を私は持っておりませんけれども、今の刑法の併合罪の考え方に一定の修正変更を加えることでありますとか、あるいは、一つの裁判手続で下された刑を、後から出てきた別の裁判所がそれを変動させて調整するというような制度にならざるを得ないので、いずれもなかなか難題ではある。しかし、そういう仕組みを、分離した場合のためにつくっておく必要はあるだろうと思います。

○井上座長 今の御意見では、一つは、実体刑法上の手当として、刑の調整規定を設けるか、もう一つは、手続的に、どこかの裁判体が最終的に量刑をし直すか、そのどちらかだということですけれども、現在でも、分離してやる場合があるわけですね。その場合も、結局、同じ問題が起こると思うのですけれども。

○酒巻委員 ですから、そういうことをやるのであれば、何で裁判員が入った事件だけ、調整規定が必要なんだという問題が出て、私は、裁判員の事件だけそうするのだという理論的な理屈はないと思っていますので、そうだとすると、全部、これから先、一般的な制度としてそういうのをつくらないと理屈が立たないのではないかという批判ないし議論が出てくる可能性があるだろうと考えています。

○井上座長 池田委員の問題意識は、裁判員が入ると、併合するのが難しい場合が増えるだろうということを前提にしているのだと思うのです。最初から全部分かっている、でも例えば重大な事件ばかり十数件もあって、併合して審判したのでは、どのようにうまく審理計画を立ててみても何年も掛かるだろうという場合であっても、やはり併合するべきだということなのかどうか、ということでしょう。

○本田委員 確かに、追起訴の場合と、最初から起訴が何件か十何件かされていて、それらを併合する場合と、いろいろあると思うんです。最初に10件なら10件、殺人なら殺人が起訴されている場合に、分離してやったとしても、連続殺人事件なんかで相互に関連があるということになれば、結局全部をやっていかなければいけない、特に一番最後の殺人なんかを審理するときは、最初の殺人からの背景をずっと立証していかないと本当に分からないので、結局それだけの時間が掛かるわけです。そうすると、分離しても結局同じ時間が掛かるので、そんなに負担軽減の効果というのはないんだろうと思います。かえって10個の裁判体を組んでやる分だけ裁判員を多く集めてやらなければいけないので、負担は結構大きくなるんではないかという気がしております。
 そうは言っても、起訴した事件の関連性が薄く、分離しても特段の支障がないような場合もあるでしょう。対象事件ではないもので、特に殺人とほとんど関係のない事件みたいなものは、分離してもらってもいいだろうと思います。
 ただ、その場合も併合していれば若干刑が軽くなるかもしれないけれども、分離すると重くなるという問題があるのかもしれませんけれども、これは、現行法上も同じ問題があるんだろうと思います。
 追起訴のところについては、先ほど申し上げたんですけれども、やはり基本的には適正な科刑の実現、あるいは実体的真実の発見という観点からは、可能な限り併合してやるべきだろうと思いますけれども、実際に現在でも、結審してしまった後、あるいは判決が出た後の併合というのはあり得ないわけで、そういう場合はしょうがない。追起訴の併合はどこまでできるのかというのは、先ほど少し申し上げましたように、実際は準備手続中にまた起訴があったような場合には、これは、関連性がある以上は一緒にやってもらいたい。関連性がなければ、あるいは薄ければ、併合することなく、別の裁判体でやってもらってもかまわないでしょうということです。では、実際に準備手続が終わって、本体の審理期間がどれぐらいあるんだろうかというと、それは事件によって違うと思うんです。3日ぐらいで終わるのは、3日以内に追起訴するのは無理ですから、それはもう併合してもらうのは無理かもしれない。これも、現在でもあることですけれども。そうではなくて、それもやはり数か月掛かるような事件、やはりそれが密接の関連のある事件であるならば、それは併合してきちんとした事実を解明して、適正な科刑を実現すべきではないかという気がします。

○平良木委員 まず、最初に、裁判員が一つの事件に関与すると言いますか、1回限りのものだというときに、1回限りだというときのくくりを決めておかなければいけないと思います。

○井上座長 期間ですか。

○平良木委員 いや、例えば、追起訴という形で来たんだったらいいというのか、あるいは追起訴ではなくて、裁判所の併合があったら当初の段階で一つというのか。

○井上座長 1回限り、という場合の単位の問題ですか。

○平良木委員 そうです。今の段階だと、恐らく1件かどうかというのは起訴状で数えられています。起訴状が一つだとすると、これは1件だという数え方をしているはずなので、そうすると、それを分離したときにどうなるかという問題も出てくるし、それから、いわゆる追起訴してきた場合に、それを別に数えるのか、その中で一つと数えるのか、こういう問題も恐らく出てくると思います。

○井上座長 そこは、まさに御議論いただければと思うのですが、これまでは、手続が1個、審判が1個ならば、それは一つの裁判体の担当であるという前提で議論されてきたと思うのですけれども、それだとおかしいということでしょうか。

○平良木委員 だから、おかしいんではなくて、池田委員が言ったように、例えばいつの時点で追起訴があるかということによって、それだって変わってくるだろうということですね。

○井上座長 それは、どうもぐるぐる回りの議論であって、実質は、追起訴があった場合に併合して一つの裁判体で審理することを認めるべきなのか、併合は認めないで別の裁判体に審理させるべきなのかということに帰着するのではないでしょうか。

○平良木委員 最初の、裁判官と裁判員が、例えば二つ事件が来ても一つの裁判体でできる場合があって、ただ、手続上は二つでやっていくという場合が例外的に認められるかどうか、これは認められないとすると……

○井上座長 分離しても同じ構成の裁判体に担当させるということですか。しかし、ほかの方は、そうは考えておられないのではないでしょうか。手続が別ならば裁判体も別だということを全体とされているように思うのですけれども。

○皸羂儖 裁判員になるのは1回だけだという問題と、併合するか、分離にするかというのは次元の違う問題だから、そこは整理して議論しなければいけないと私は思います。
 それから、先ほどの分離による不都合というのは、先ほどの本田委員の意見とほとんど同じなんですが、全部認めている事件ならいいんですが、例えば、事件が5件あるとして、最初の1件、2件は認めているけれども、3番目は否認していると、4番目と5番目は認めているというときに、5件をばらばらにしてやる場合、否認している事件の証拠というのは、例えば後の事件、あるいは前の事件との関連で有罪、無罪が分かれてくるということもあるわけです。そうすると、3番目の事件の実体的真実を発見するためには、その前の事件、更にはそのまた前の事件も全部そこで審理しなければいけないということになるわけで、かえって二重手間になると思うんです。そういう意味でも、私は原則は併合でなければいけないと思います。

○井上座長 例外はあるということですか。さっきから基本とか、原則とおっしゃっているのですけれども。

○皸羂儖 私は、本当は100パーセント併合でなければいけないなと思っていますが、具体的な事例で、本当に例外的にこれは分離してもいいかなというのが出てくる余地も多分あるだろうということで、原則としてはとか、基本的にはと申し上げているんです。

○井上座長 分離した場合には、今どおりでよく、何らかの手続的あるいは実体的な調整規定は必要ではないという御意見ですか。それとも、その場合には、やはり何らかの手当を考えた方がよいという御意見ですか。

○皸羂儖 本当に納得できる合理的な調整規定が置けるのであれば、それは置いた方がいいと思います。果たしてそんなものがあるんだろうかというふうに今は思っているんですけれども。

○四宮委員 ちょっと今の御意見に質問です。

○井上座長 どうぞ。

○四宮委員 自白事件と否認事件がある場合は分離するというお立場ですか。

○皸羂儖 違います。そういう場合は、余計に併合しなければいけないということです。

○四宮委員 そうすると、証拠がどうなるんですかね。

○井上座長 証拠が共通している場合があって、それが両様の意味を持つということなのでしょうか。

○四宮委員 いや、つまり、証拠が共通していて、否認事件については、今の手続で言えば不同意だと。ところがもちろん、認めている事件では同意していると。

○皸羂儖 証拠が同一ということを言っているのではないのです。

○井上座長 ある調書が、こっちの関係では同意するが、こっちの関係では不同意だと、そういう場合のことをおっしゃっているのではないということですか。

○四宮委員 そういう事態は起こらないんですか。

○皸羂儖 そういうことは今だって起こります。それはもう、あっちの関係と、こっちの関係と。

○四宮委員 今の手続を前提にしてしまうと、その場合、同じ裁判員が、この事件では証拠を見て、この事件では見ないということにするという扱いになるわけですね。今の裁判はそうなんですけれども。

○井上座長 理屈で言いますと、例えば、伝聞証拠かどうかが相対的に決まってくるような場合に、そういうことが生じ得るとは思いますが、その問題と皸羂儖が出された問題とはどうも違っているようですね。

○皸羂儖 全然違うんです。同じ証拠があるとか、証拠が共通だということを言っているんではないんです。ですから、今の四宮委員の言ったことと私の意見は全く関係がない。

○井上座長 池田委員、どうぞ。

○池田委員 今の皸羂儖のお話は分かるんですが、現行の刑訴313条の分離併合について、「裁判所が適当と認めるとき」ということを変えろという趣旨なんですか。もしそうでなければ、今、客観的併合については、被告人の利益が当然ある、併合されれば、その併合罪の利益があるから、それは大きなものと解釈上考えられています。例外的に余りにも審理の進行度が違うもの、あるいは両方とも大きくて、別々のところで共犯者もいっぱいいて、証拠が共通ではなく違うというもの、そういうものを除くと、実務的には、ここは被告人の併合の利益というのを尊重しろということになっていて、検察官なり、被告人なりが併合してくれといったら基本的には併合しているわけですね。
 しかし、これから裁判員制度になったら、これに対してもう一つ、裁判員への負担というのは、考慮要素にならざるを得ないと思うんです。
 そうすると、今よりは、併合にならないものが出てくることは間違いないと思うんです。それは、裁判官の裁量を同じように認めている以上、その考慮要素であることは間違いないので、それは動きますよ。
 動いたときに、もちろん、実体的真実の発見と適正な量刑というのは当然維持しなければいけないので、そこは全部考えて、できるだけそれを損なうことがないように考えると思うんですけれども、しかし、変わると思うんです。それでいいのかと、要するに、刑が重くならないものもあるかもしれない、刑が軽くならないものもあるかもしれない、それで、調整規定を置いておかないで本当に大丈夫なんでしょうかということなのです。でも、それは例外的な場合だから、もうそれでいいんだということにして、それで済むのかということだと思うんですけれども。

○井上座長 皸羂儖の御意見で、分離すべき場合はあり得て、その場合については調整規定というものも考えられるかもしれないけれども、しかし具体的には難しいのではないかということですね。
 ですから、そこのところは余り矛盾はしていないと思うのです。そういう調整規定ができるのならばそれに越したことはないという御意見だと思うのですけれども、問題は、具体的に妙案があるかどうかですね。それについては、前の第2ラウンドで、多少アイデアが示さたわけですけれども、決定打かどうか。そのようなアイデアが幾つか出ているという、まだその段階だと思うのです。

○本田委員 調整規定というのが、本当に納得できるような合理的なものができれば、別に私はそれでいいと思っているんですけれども、それはなかなか難しいだろうという前提なんです。
 先ほども言いましたけれども、分離、併合の問題で、現在の運用を裁判員が入ったときに変えなければいけないかというと、私は、先ほども申し上げたように、その運用を変えることによって、量刑がかなり際どいところで変わってくるような問題が出てくる以上、それは変えるべきではないだろうと思います。「適当と認めるとき」というのは、やはりそこは合理的な判断をしてくださいということが法律に書いてあるわけで、だから、そこは現在の運用を、裁判員の負担を考えて変えることによって、本来の目的が損われるというのは、やはり本末転倒ではないかなという気がしております。

○井上座長 そこは、意見が分かれるかもしれませんね、それだけ長い期間掛かるとしますと、それに耐えられるような、あるいはそういう負担をお願いできるような裁判員がどれだけ確保できるかということとの見合いの問題になるでしょう。

○本田委員 その点について言えば、1件の事件でもものすごく長く掛かる事件というのがあり得るわけなんです。だから、そこは長いのに耐えられるかどうかというのは、基本的な問題であって、そこをどうするかというのは、また別の問題だろうと思います。

○井上座長 この点は仕切ってしまうようで悪いのですけれども、この場で名案はないかどうかという議論をこれ以上続けても、恐らく今の段階では確定的な答えは得られないように思います。方向としては、皆さん矛盾していることを言っておられるわけではなく、問題があるという認識は共通しているので、調整規定として何か妙案を考え出せれば、それは検討の対象に当然なってくると思います。ですから、そういう方向でさらに考えていくということにして、この段階での議論は一応おしまいにするということにせざるを得ないのではないかと思います。そういうことでよろしいですか。
 次が、「(4)公判期日の指定(刑事裁判の充実・迅速化関連)」ということですが、その次の「(5)宣誓等」を含め、異論は特になかったように思われますので、ここのところはよろしいですか。
 次が「(6)新たな裁判員が加わる場合の措置」ですが、以前の御議論では、たたき台の考えに対する異論というものは特になかったと理解しておりますけれども、更に更新手続の具体的な在り方について、もう少し突っ込んで議論をしていただいた方がいいかと思われますので、御意見があればお伺いしたいと思います。

○皸羂儖 これは、検察官及び弁護人が、どういう資料をつくるかは別にして、従前の証拠調べの争点及びその争点に関する証拠調べがどうなっているかというようなことを、それぞれの立場から分かりやすく説明するというような手続になるということだと思います。今は、裁判所だけでやるわけですけれども、そういうことだと思います。

○清原委員 私も、このところは、裁判員になる方の立場に配慮して、大変丁寧な対応を用意しておいた方がいいと思うんです。補充裁判員の方ではなくて、新たな裁判員として加わるときには、それまでの経過の中で、新たに加わる人が、どうしても遠慮だとか、萎縮だとか、そういう気持ちを持ちやすいんですが、それを取り除くということが必要です。
 もう一つは、検察官の立場、あるいは弁護人の立場においても、そうした新たに加わる裁判員の方が公正に今までの経過を引き継いでいただくために、私も、今、皸羂儖が御指摘のように、それぞれの立場から今までの証拠調べのことなどを説明していただいた方が公正でもあり、手続上は時間を取ることにはなりますが、同じ証拠であっても、それぞれの立場からの調べの観点などの違いを理解もしやすいし、より正確な実質的な心証をとることができるのではないかなと思います。もちろん、時間的な負担はかかってしまいますから、新たな裁判員が加わる場合、新たな裁判員のみならず、ほかの裁判員の方にも時間的に少し負担感が出てしまうかもしれませんけれども、公正な裁判のためには丁寧な手続をしていただいた方がよいと考えます。

○井上座長 ほかの方はいかがですか、どうぞ。

○四宮委員 これは、前回も申し上げましたが、極めて例外的な場合だろうと思うんですけれども、今のお二人の話に私も賛成です。争点の理解の点では、やはり両方の当事者がきちんと問題点を指摘し、今までの経過を分かりやすく伝えるということが大事だろうと思います。
 むしろ問題は、証拠調べの結果について実質的な心証をとる、その措置の方であろうと思います。この場合、特に新たに加わる裁判員にとっても、やはり、直接主義、口頭主義の要請が十分に満たされるように工夫をする必要があって、特に証人尋問についてはビデオで録画をしておいて、それを示す。例えば、長期間にわたる場合もありましょうけれども、その場合には、両方の当事者がここを見てほしいと、いや、こちらを見てほしいということで、両方の当事者が、ここを見てもらえれば、大体証言の内容が分かるということで、証言態度等も含めて情報を与えることができると思いますので、そういった工夫をすべきであると思います。

○井上座長 すべての証人についてということですか、それとも、両当事者が重要だと思う証人の重要だと思われる証言部分ということですか。

○四宮委員 それは両方あると思います。

○井上座長 お考えではどちらなのですか。すべての証人について、全部やるべきだということなのかどうかですが。

○四宮委員 できれば、すべてやった方がいいという意見です。つまり、証拠の評価というのは、当事者が大事だと思うことと、判断者が大事だと思うことというのは、違ったりする場合もありますので。

○井上座長 当事者に、ある部分を選ばせるわけでしょう。

○四宮委員 しかも、裁判所は必要だということで採用しているはずですので、原則は、全証人について当事者がそれぞれこういう証言でしたということをやると。

○井上座長 混ぜ返すようですけれども、それだと全部やり直すのと同じですね。

○四宮委員 ですから、さっき申し上げたように、全部を見せるのではなくて、それぞれの証人についての重要な部分ということです。

○井上座長 その理屈でいきますと、原則としてすべての証人について、両当事者のみならず裁判所も重要だと思う部分があれば、やってもらうということになるのですか。

○四宮委員 はい。

○井上座長 分かりました。そういう御意見です。

○本田委員 基本的には、皆さんがおっしゃったようなことと余り変わらないと思うんですけれども、要は、実質的に、新しい裁判員の人が心証がとれるようなものでなければいけないということと、余り負担をかけるというのもいかがなものかという気がするんです。それで、具体的には、まず検察官が公訴事実の要旨であるとか、重要な事実についての主張を分かりやすく、もう一回主張をしてみる。弁護人は弁護人の方で、被告事件についての陳述、主要な主張を重要な部分について争点に即してやってもらう。それで不十分だと裁判所が判断するのなら、裁判所の方で主張についての整理を若干補充してもらってもいいんではないかと思います。証拠調べの方も、争点に即した重要な部分について、要旨の告知であるとか、朗読とかを行うわけです。あるいはビデオの再現というのがあるかもしれませんけれども、全部についてやる必要はないだろうと思います。やはり、全体の主張との関係で、必要な部分を分かりやすいように選んでやればそれで十分ではないかと思います。
 そういう手続が終わった後、当事者がそれぞれ、これまでの証拠調べ、あるいは主張についての意見みたいなものを、検察官がやり、弁護人がやり、必要ならば裁判所がそれについて若干の補充をするというようなところで、大体全体像と、それから争点についてはどの程度の立証が行われているかということが分かるように、なるべく負担が軽くなるような形でやっていくのがいいんではないかという気がします。

○井上座長 ほかに特に御意見がないようでしたら、ここはこのくらいでよろしいですか。
 次が「(7)証拠調べ手続等」という項目ですが、この項目では、供述調書の信用性等については、その作成状況を含めて、裁判員が理解しやすく、的確な判断をすることができるよう立証を行うといった点をめぐって御議論があったというふうに理解しております。この点についてはいかがでしょうか、どなたからでも結構ですが。

○四宮委員 この点については、前回たしか本田委員の方から、いろいろ公判における立証方法等も改めて、裁判員が理解しやすいようにするというお話がありました。
 もう一つは、前回の7月でしたか、法務省の方から取調べ過程・状況の書面による記録制度の検討状況の報告がありましたし、また、最高検察庁における提言も配布されております。
 裁判員の理解に資するために、特に取調べ等、供述調書の作成状況に関する立証ですけれども、そういった客観的な資料が必要だということについては、あるいは立証を客観化していくということについては、恐らく大方の合意があるのではないかと思います。
 是非そういう方向でやってほしいんですけれども、問題は、今、検討中である取調べの記録制度というもので十分だろうかということが一つです。これは、記録される内容を拝見いたしますと、作成者、名宛人等、客観的な事実、これは前回法務省の方からは、なるべく記載内容そのものに争いがないようにということで客観化に努めたというお話があって、それはそれで結構なんですけれども、それだけに状況そのものがなかなか分かりにくいのではないかという気がいたします。
 それから、最高検察庁の提言につきましても、現在の制度を前提としていろいろ工夫をいただいているわけですけれども、例えば、特信性の立証方法につきまして、客観的事実の資料というところでは、例えば取調べ時間というような例示にとどまっておりますし、任意性に関する立証方法でも客観的で明解な立証という記述ではありますけれども、今のような書面による記録制度とか、あるいは現場における指示説明の録音録画、それから弁護人の接見交通等、それから被告人の供述調書の開示等の方法であります。
 今のような資料だけで、裁判員が、作成状況に関する争いについて、一定の心証をとることが可能であろうか、十分であろうかという気がいたします。
 これは、この提言が、現在の制度の下で、裁判員制度とは別に、その発足前に、とにかくこういった形で分かりやすくしていこうと、客観化していこうということは大変評価できるわけですけれども、裁判員の入った裁判の場合にこれで十分だろうかというふうに思います。
 むしろ、そこから更に踏み込んで、ビデオに記録をしていただいて、私個人はちょっと別の問題で、ビデオは証拠になってもいいのではないかと思っていますが、これは全然別の話ですけれども、特に任意性や特信性、それから信用性の立証という方法については、ビデオはやはり最も直接的で有効なものなのではないかと思います。
 ですので、少なくとも状況の立証方法として、こういったビデオによる録画記録というような方法を取り入れる必要が、裁判員制度の下ではあるのではないかと思います。
 そこでお願いなんですけれども、最高検察庁におかれては、是非とも裁判員制度の発足までに、更に十分な検討、実効的な制度の、私の希望はビデオ記録ということですけれども、検討を引き続きやっていってほしいと思います。

○井上座長 分かりました。そのような御要望ですが、いかがですか。

○本田委員 最高検の提言というのは、先ほど四宮委員から御紹介がありましたように、現行制度の下における検察が取るべき諸方策というものをいろいろ検討して、立証を可能な限り分かりやすいものにしていこうということで、ああいう提言を出したわけです。
 何といっても、刑事事件について立証責任を負うのは検察ですから、今後どうするかということになると、裁判員制度の制度設計、あるいはその手続の在り方というのを十分踏まえて、また、現在検討しております準備手続を含む刑事裁判の充実・迅速化のための諸制度と、こういうものが、もし裁判員制度よりも先に施行されるのであれば、そういったものの運用状況も見定めながら、裁判員制度の対象事件において、供述調書の信用性等を迅速かつ分かりやすい方法で立証するための方策について、今後とも引き続き検討していくということは考えております。その際、録音録画ということを検討対象から除外するというようなことは考えておりません。

○四宮委員 もちろん、検討していただくんですけれども、私たちは是非検討の内容として、今回、提言とか、記録制度で示される資料というのは、言わば争いになる作成状況については、言葉が適切かどうか分かりませんが、状況的な証拠、状況的な事実になるわけです。ですから、裁判員にとって状況的な事実から推論してほしいということではなくて、直接証拠、つまりそれは結局、私はビデオの録画が一番いいと思っていますけれども、それが一番分かりやすいわけですので、少なくとも任意性、特信性、信用性の立証の方法として、そういうものによるというような制度にしていくべきではないかと思います。

○井上座長 御意見は分かりました。その前提として、任意性と特信性、いずれも証拠能力の要件ですが、それを裁判官が判断するのか、それとも、裁判員も入って判断するのかについては、必ずしもまだ整理されていないと思うのです。ただ、手続問題という意味では、そこははっきり仕分けをすべきであり、「信用性等」というふうに本田委員が言われたのは、まさにそういうことを含意されていたのだろうと思いますが、信用性は当然全員でやるので、仕分けが難しい問題であることは確かですけれども、言葉の使い方として、その区別を念頭に置いて議論していただければと思い
posted by: enzaix | 裁判員制度 | 00:00 | comments(0) | trackbacks(0) |-